アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜   作:ドラソードP

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第46話 幸子会 〜二宮飛鳥編〜

第46話

幸子会 〜二宮飛鳥編〜

 

 

 部屋では女子四人組が仲良く話をしている。俺はそんな彼女達の素も少し見てみたい為、あえて話の輪には入らず、傍らからその様子を眺めながらコーヒーを飲んでいた。

 

「……ちょっと飛鳥ちゃんのその気持ち、わかるかも。アタシがわざわざモデルをやめてこっちの世界に来た理由の一つに、新しい物や見たことないものへの挑戦、好奇心みたいなものが結構あったからさ」

 

「まあ、ボクの『未知のセカイへの探究心』も、言ってしまえば聞こえだけ飾っているもので、実際の意味としてはどこにでも居る、ありふれた少女の好奇心の一つに過ぎないのかもしれないね」

 

 現在の女子会の話題は飛鳥が何故アイドルになったのか、そして飛鳥が言う『未知のセカイ』とは何なのか、といった内容だ。

 最初は会話も途切れ途切れで話がなかなか続かなかったが、そこは最年長の美嘉が話題を提供するなりして上手く舵を取って、進行してくれた。お陰でこの通り、女子会は盛り上がっている。

 

「というか、好奇心を持っていない人間なんて居るんですかねえ。え、ボク? それは勿論、カワイイボク自身の将来への期待や好奇心でいっぱいですよ」

 

「ま、まあ幸子ちゃんの好奇心についてはアタシは分からないけど、多分そうなんじゃない?」

 

 美嘉は幸子の発言に苦笑いをしつつも、話を続ける。

 

「とにかく、別に良いんじゃない? 今はまだアイドルとしての指標とかが固まってなくてもさ。アタシだってまだ、確実な目標みたいなものはくっきりと見えていないし」

 

「なるほど、つまりはアイドルとしての目標を探し求めるということ自体が、今ここに在るボクの目標と言うわけか」

 

「ちょっと堅苦しい言い方だけど、多分そんな感じかな」

 

 なんだか会話の流れだけを見ていると、女子会と言うより、美嘉のお悩み相談室みたいになっている。実際美嘉は学年も高校三年生になるらしいし、芸歴も長くて、妹も居て、それは色々と経験豊富だから、自然とそうなるのだろうな。ある意味、彼女の存在は幸子達に良い影響をもたらしてくれそうだ。

 

「そういえば好奇心といえば一つ、飛鳥さんについて気になることがありますね」

 

「なんだい? この機会だ、折角だから質問なら受け付けるよ」

 

「いや、そこまで大したことじゃ無いんですけど、なんで飛鳥さんはいつもエクステを着けてるんですか? それに毎日会う度に色が変わっていますし、なんだか並々ならぬこだわりを感じるというか。同じく、何かしらこだわりを持つ存在として気になります!」

 

「確かに……もりくぼも少し気になっているんですが」

 

「あれ、乃々さんも気になるなんて、珍しく気が合いますね」

 

 確かに飛鳥は毎日様々な色のエクステを日替わりで着けており、エクステとは珍しいな、と俺も前から気になっていた。普通、ファッションに扱うのがなかなか難しいエクステをあえて身につける辺り、飛鳥なりに何か意図やこだわりがあるのだろうか。本人が良いというならば詳しく聞いてみたい所だ。

 

「ああ、このエクステについてかい?」

 

 そう言うと飛鳥は自分のエクステに軽く触れる。

 

「これについては良く聞かれるんだけど……そうだな、何か身に付けている理由などがあるとするならば、このセカイや社会への、ボクなりのささやかな抵抗、かな?」

 

「ささやかな抵抗?」

 

「ああ。まあとは言ったが実際、このエクステを着ける、という行為にそこまで徹底する必要があるのか、と言われるとそこまでこだわりがある訳でも無いのかもしれないがね」

 

 そう言うと飛鳥は、普段から何故エクステを付けているのかについて話し始めた。

 

「この人間社会というものは今や、様々な法や規則、時間、繋がり、その他の様々な物に縛られ、抑制される時代だ。それらは決して間違っていることではないが、縛られ続けると人間と言うものは少しだけ窮屈になってくる」

 

「あーわかるわかる。別に悪いことをしたい訳じゃないんだけど、何かルールとかに反発したくなる気持ちや時期、アタシにもあったなー……」

 

「ああ、だがかと言って、それが罪を犯すことへの肯定にはならない。しかし、そのまま社会に縛られ流されるだけの人生では、いつしか自分という固有の存在意義は消えてしまう」

 

「社会……? 縛られる……? 存在意義……??」

 

 乃々が首を傾げる。そして助けを求める様に何故かこちらを向く。どうやら突然現れた難しい単語の数々に、乃々の頭が適応できていなさそうだ。

 俺はある程度この手の話は分かるから、説明してあげられないこともないが……

 

「だからせめて、自分という存在で居続けるために、このセカイに自分を変えられないために、ボクの場合はエクステを着ける、という行為でセカイに抗っている。とは言っても、所詮これもたかが知れた中二の少女の、囁かな抵抗に過ぎないのかも知れないがね」

 

「あ、あうぅ……」

 

 次から次へと放たれる難しい単語に乃々が反応に困り、視線が右へ左へ泳いでいる。わざわざ自分達の為に話してくれている飛鳥の為に、必死にできない反応を頑張ってしようとしている姿が、無駄に尊く可愛らしい。この秘められた天然の清純さこそ、幸子に足りていない要素なのでは無いのだろうか。

 ちなみにその幸子の方は、困っている様子こそ見られ無いが、そもそも話の内容を理解出来ていなさそうだ。話が難しい難しく無い以前に、幸子にとってそんな周りの社会を気にする暇があるなら自分のことを考えているだろうからな。

 

「ともかく、ここまで長々と御託を並べて話をしてきたが、要するに中二の少女のちょっとした自己主張と言う訳さ」

 

「つまり飛鳥ちゃんは、ちょっと大人とかに反抗したいお年頃ってことでしょ?」

 

「……そう簡単に訳さないでくれ。熱弁していたこちらが恥ずかしくなってくる」

 

 飛鳥は恥ずかしそうに顔を赤らめ目を背ける。いつもクールで大人びた雰囲気を持つ彼女が、こうやって感情を顕にするとは珍しいことだ。

 

「なんだ、飛鳥ちゃん結構可愛い顔するんじゃん」

 

「かっ可愛い!? と、突然キミは何を言い出すんだい」

 

「ほらほら〜、そういう反応を天然でする辺り、可愛さポイントかなり高いよね」

 

「ぼっ、ボクをからかうのはやめてもらいたい物だね……」

 

 飛鳥は可愛いと言われることに慣れていないのか、その顔には明らかな動揺の色を見せる。

 しかし、俺からすれば普段は可愛いとと言われるよりどちらかと言うとかっこいいと言われるタイプの彼女だが、アイドルらしい可愛い系路線も充分アリなんじゃないかと思うんだがな。

 まあ、あの様な言動や格好をしているが、外見も中身もまだ中学二年の少女だ。可愛らしいところがあっても別におかしくはない。むしろ当然だろう。

 

 と、幸子の方にふと目を向けると、そこには飛鳥を羨ましそうに見る幸子の姿がそこにあった。

 

「ボクという存在が居ておきながら、みんな飛鳥さんのことを可愛い可愛いって褒めてばかり……」

 

「あれ、もしかして幸子ちゃんヤキモチ妬いちゃったり〜?」

 

「や、妬いてなんていませんよ! ただ、すこーしだけ羨ましかったと言うか……えーっと、うーん……」

 

「フフッ、ほらほら〜、このままだと飛鳥ちゃんに可愛さで負けちゃうよ〜」

 

「ぷ、プロデューサーさんはどう思いますか? プロデューサーさんはボクのことを、一番カワイイと思ってくれていますよね!! ね!?」

 

「さあ、どうなんだろうな?」

 

「プロデューサーさん、またそうやってボクをからかって!! 後で許しませんよ!!」

 

「はいはい怖い怖い……」

 

 とか言っておいて、俺の中での可愛いアイドル一番は勿論幸子だ。やはり自分の担当が世界で一番可愛いに決まっているからな。

 ただ、美嘉や飛鳥等がいるこの場で下手にそんな事を言ってしまえば、またあらぬ誤解を招く事になるだろうから、俺はその気持ちを心のZIPファイルに圧縮しておくことにする。

 

「さて、じゃあ飛鳥ちゃんのエクステへの疑問は晴れた? 幸子ちゃん」

 

「はい。飛鳥さんの、エクステに掛けた熱い思いは充分伝わってきました」

 

「ご希望に応えられた様で、ボクとしても良かったよ」

 

 飛鳥は調子を取り戻したのか、いつもの口調に戻っている。だがまだ少しだけ顔が赤い。

 

「とりあえずじゃあ、同じ話題をずっと話しているのもアレだし、他に何か新しい話題の提供を希望しちゃおっかな」

 

「カワイイボクについての話は勿論、最後の大トリですからねえ。プロデューサーさんの話はつまらなさそうだからいいですし」

 

 俺は何故か、会話の流れの過程で突然罵倒された。

 とは言え、実際俺もまだ他のメンバーの話を聞きたいところだったし、別に構わないがな。

 

「そっかー、じゃあそうなると残るのはアタシと……」

 

 そう言うと、美嘉は乃々の方へ視線を向ける。

 

「アタシは最年長だからあんまり出しゃばっちゃいけないし、ここは後輩に任せる場面だよね」

 

「そうですねえ。それじゃあ次は流れ的に、乃々さんに何か話してもらうとしますか。ボクも実の所、この中で一番素性を知りませんし」

 

「ひいぃ!? なんでそうなるんですかぁ〜……」

 

 乃々は後ろに後退りをする。

 

「だって……もりくぼについての話だなんてそんなものないし、飛鳥さんや美嘉さんみたいな面白い話も多分できないし……」

 

「大丈夫大丈夫、怖くなーい、怖くなーい……悪い様にはしないからさ……」

 

 美嘉が席を立ち乃々の方へ近寄って行く。

 

「ひいぃ!?」

 

 なんだか美嘉の目が怖い。というか美嘉に限らず、幸子まで何か怖い目をしている。

 そんなアブナイ目をした美嘉達を見て、身の危険を感じたのか乃々は机の奥へ更に下がって行く。

 

「そんなぁ……あうぅ……」

 

 という訳で、この調子だと次の話題は乃々についてになるのだろうな。これまでうまい具合にステルスしていた乃々だったが、遂に幸子と美嘉という猛獣に目をつけられてしまった。

 果たして乃々はどうなってしまうのか、再び次回へ続くのである。




お久しぶりです。
なんだか色々やっていたら一週間も……
ある意味、暇になり過ぎてもなんだか気が散ってしまって集中できないです。

そう言えばイヴちゃん可愛いですね。
そのうち出そう(唐突)
だいたい、作者のこんな流れでこのお話は書かれています。

さて、お知らせなのですが、しばらくの間投稿が更に遅れるかもしれませぬ。
理由として、11月の某日に迫ったとある日を記念した、幸子の短編を書き始めたからです(最近遅れているのもその影響)
できるかぎり投稿もやればやっていきますのでご了承ください。

次回、もりくぼ可愛い(結婚し(ry

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