アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜   作:ドラソードP

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第48話 幸子会 〜城ヶ崎美嘉編〜

第48話

幸子会 〜城ヶ崎美嘉編〜

 

 

 俺達が部屋に集まってワイワイガヤガヤ色々うるさくやっている中、外の雨風は一層激しさを増していた。時折吹く突風に、窓が歪な音を立てる。だが、四人のアイドルはそれもお構いなしに騒ぎ立てて行く。

 

 というわけで、一頻り乃々の話題で騒いだ俺とアイドル達四人は、再び女子会の話題に戻り話を続けて行っていた。飛鳥も乃々も言いたいことを言えスッキリしたのか、全体的に女子会は落ち着いてきている。

 だが、美嘉はそんな女子会の消えかかっていた話題の火にガソリンを撒き散らし、女子会は本日一番の大炎上を見せるのであった。

 

「さーて、とりあえずひと段落したし、みんな何かアタシに相談とかない? 今まではみんなに話題を提供してもらっていたけど、今度は逆にアタシがお悩み相談を受けちゃおうかなー、なんて」

 

「ほう、カリスマギャル兼カリスマアイドルこと城ヶ崎美嘉お姉さんのお悩み相談教室か」

 

「うん。一応さ、アタシってこの中だと一番年長じゃん? だから何か、みんなの手助けになってあげられないかなって思ってさ」

 

 美嘉の提案に他の三人も良いですね、と頷く。

 

「なるほどな。確かに、今日の流れを見ていても美嘉の意見は幸子達に少なからず良い経験になってそうだし、良いんじゃないか?」

 

「お悩み相談……ですか。そうですねぇ……じゃあここはやっぱり恋愛についての話とかもいけますか?」

 

「うっ……」

 

 美嘉の顔が引き攣る。

 

「何かいきなり凄く段階飛ばしたえらく直球な質問するなあおい。普通こういった場合は芸能界とかの悩みから聞いていく物なんじゃないのか?」

 

「別にいいじゃないですか。これは女子会なんですし、お堅い話題じゃなくても。それに……実際本当にボクが聞きたいことなんですし」

 

「……色恋の話か。良いのではないだろうかとボクは思うのだが」

 

 と、今まであまり話してこなかった飛鳥が意外にもこの話題に反応する。

 

「ん、どういうことだ?」

 

「ああ。これはあくまでもボク個人としての意見だがこれから先、様々な表現力などを求められるボク達にとって、そう言った経験や話題を共有し、広めていく事は意外と重要な事ではないだろうか。そういった面でも、人生や芸能界の先人に話を聞けるのは中々良い経験になるのでは、と思ったのでね」

 

 幸子は恐らくここまでしっかりと考えて聞いたつもりはなかったのだろうが、飛鳥の真面目な意見を聞いて俺は納得する。

 

「……なるほどな、そういう考え方もあるか。確かに、何もおかしくは無いな。悪い、楽しい女子会に水を差しちまって」

 

「というかそう言えばこれ、自分で言っておいてなんですが女子会だったんですよね……」

 

 主催者が忘れていてどうする、と俺は内心ツッコミを入れる。というか女子会をやっていなかった自覚はあるんだなお前。

 

「さあ、じゃあそんなわけで、早速そんな悩める幸子への美嘉先輩のアドバイスを色々聞いてみるか」

 

「れ、恋愛相談か〜……」

 

「ん、どうした? 美嘉」

 

 美嘉は恋愛という単語を聞いて、明らかに動揺していた。何事にも動じず、完璧対応だった彼女にしては珍しい反応だ。

 

「あ、ああ大した話じゃないし気にしなくて良いよ! うん! 本当、本当に!」

 

「美嘉がそう言うなら別にこれ以上聞いたりはしないが……」

 

 しかしそう言いつつも美嘉は目を泳がせて冷や汗をかいている。いや、まさかな……この風体といつもの雰囲気や、カリスマギャルの肩書きからして『そんなこと』は……無いよな?

 俺は美嘉に少しだけ疑惑の目を向ける。

 

「じゃ、じゃあとりあえず……まずは最初に、みんなが理想の彼氏に求める物とか、タイプを聞いていっちゃおうかなー……なーんて」

 

「理想のタイプですか……」

 

 美嘉に問われ三人は少し黙って考え始める。

 

「うーん……ボクの場合は無難に、お金ですかねえ。もしくは、ボクに釣り合うだけの素晴らしいルックスと中身を持った人か……いやいやそれとも……」

 

「やはり……ボクの場合はだが、未知のセカイを見せてくれるかどうか、だろうか。意味の無い、形だけの恋愛など限られた時間の無駄にしかならないからな」

 

「もりくぼは……多分できないと思うので……ないです」

 

 三人は各自思い思いに、自分の将来の相手の理想を話して行く。が、三人の答えは俺にとってもはや分かりきった物だった。

 

「とりあえず幸子、お前金って……」

 

「い、いやー……何か咄嗟であんまり思いつかなかったので、とりあえず、一番現実的かなー……と」

 

「最近の女子は色々現実的過ぎだよ……」

 

 本当にそこまでブレないんだな、とむしろ心の中で感心している。まあ逆に、その調子ならばなんだかんだ幸子と合う良い相手と出会えるんじゃないだろうか。何せビジュアル『だけ』は無駄に良いからな。金目当ての男には気を付けろよ?

 

「というか、飛鳥さんはまた未知のセカイですか!」

 

「し、仕方が無いだろう。実際ボクもキミと同じで、思いついたことを言っただけだ。生憎、未だ恋愛等という物をしたことが無い身なものでね」

 

「確かに、それを言ったらボクだってそうですよね……というか、だからこそ恋愛とかをよく知っていそうな美嘉さんに聞きたいんじゃないんですか!」

 

「ま、まあアタシは一応聞いておこうかなーって聞いただけだから。別に分からないなら分からないで、構わないよ? 全然、全然!」

 

 と、三人の意見を聞いた美嘉が聞こえるか聞こえないかの小さな声で何かを言ったのが分かった。

 

「へ、へぇ〜……やっぱり皆恋愛とかしたことないんだ〜……良かった、安心した」

 

「ん、なんか言ったか? 美嘉」

 

「あ、あ〜いや、何も言ってないよ! うん、うん!」

 

「そうか……」

 

 気のせいか、俺は美嘉が安心したとも言った様に聞こえた。しかし幸子達が気にせず会話を続けている感じを見る限り、どうやら俺の聞き間違いだった様だ。まあまさか、な。そんな訳は無いか。

 どうやらまた、俺の変な邪推が入ってしまった様だ。

 

「じゃあそんな『恋愛についても詳しそう』な美嘉さん自身が理想の相手に求めるものって、一体何なんですかねえ?」

 

「確かに、ボク達に質問するからには、そろそろそんな先輩の見解も聞いてみたいものだな」

 

「ア、アタシ!?」

 

 と、疑いが晴れようとしていた矢先に、美嘉は幸子に話を振られ何故か異様に驚き焦る。今の話のどこに驚く要素があったのか。

 

「ん、どうした? 本当に大丈夫か?」

 

「あ、いやー……何でもないよ、大丈夫」

 

 そう言い考え始めた美嘉はしばらく悩んだ後、自信なさげに答える。

 

「そ、そうだなー……アタシの場合かー……うーん……あはは、何だろうな〜……」

 

 美嘉はオーバーリアクションで俯き考え始める。部屋はクーラーが付いていて涼しい筈なのに、なんだか異様に汗をかいている。

 

「そうだ! じゃあ美嘉さんは答えを言わないでください! ボク達が美嘉さんの理想の人に求める物を言い当てられたら、それってつまりボク達に美嘉さんみたいなカリスマの素質があるってことですもんねえ?」

 

「あ、あはは……そうなの……かな?」

 

 幸子はドヤ顔になり立ち上がる。

 

「フフーン! ズバリ、ファッションセンス! とかじゃないですか?」

 

「ファッションかー……ま、まあ確かに重要かなー……?」

 

「あ、あれ? うーん、反応からしてなんだか違いそうですねぇ……」

 

 と、突然立ち上がると幸子は飛鳥の元へ行き、なにやらお互いに小声で話し始める。

 

「飛鳥さんはなんだと思います?」

 

「……恐らく彼女は、一般人のそれからすると様々な面が大幅に乖離している。つまり、君が言ったファッションセンスなどと言った単純な答えは、まず無いと考えて良いだろう……」

 

「単純な答えはまず無い……フフーン、なるほどです」

 

 すると幸子は再びドヤ顔で美嘉に思い付いた様々な予想を言い放っていく。そしてそれに続き飛鳥や乃々も予想を考え美嘉に言っていく。

 

 と、その後も妙に張り切った幸子と飛鳥は思い付いたものを美嘉に言っていくが、一向に当たる気配がない。そしてついに痺れを切らした幸子が美嘉に詰め寄る。

 

「じゃあもう何なんですか! 早くカワイイボクに答えを教えて下さい!」

 

「結局そうなるのかよ……」

 

 美嘉は視線を泳がせる。なんだか答えをあまり言いたくなさそうな様子だ。しかし幸子の押しに負けたのか、美嘉は暫く悩んだ後しょうがない、と言った感じで口を開く。

 

「そ、そうかー……じゃあ、答えを言っちゃおうかなー……なーんて……」

 

 幸子達は真剣な表情で美嘉の顔を見つめる。幸子達に見つめられた美嘉はついに躊躇いつつ、それを口にする。

 

「じゅ、純粋な愛……とかかな……?」

 

 その時、部屋の空気が固まった。皆美嘉が言った言葉を理解出来なかったのか、一瞬の間があく。

 そして、そんな空気の中で最初に口を開いたのは、幸子だった。

 

「美嘉さん、純粋な愛ってそれ」

 

「純粋な愛、か。これはまた簡単に見えて、大変で重要な物を選ぶのだな。流石人生の先を往く者は、考えることも違う。まだアイドルとして、人間として未熟で小さなボク達には到底思い付かないことだ」

 

「ちょ、ちょっと待ってみんな、なんでそんなにニヤニヤしてるの?」

 

「いや、そのー……普段の見た目やカリスマギャルの肩書きからして俺が想像していたのと違ったというか……思っていた以上に、美嘉って純粋無垢だなーって」

 

「こ、こーゆうのはさ、やっぱり人に聞くもんじゃないよ! 皆違うし、ケースバイケース、なんでこんなこと質問したんだろうねーアタシ、本当に。ははは……」

 

「本当だよ、聞いたのは美嘉の方だろ……」

 

 俺は首を傾げる。やはり何か怪しい。なんだか反応がいつもの美嘉らしくないというか、この話題になってから俺からも何故か視線を逸らすし。

 と、そんな美嘉の反応を見ていた俺の中には、ある一つの予想ができてきていた。そう、美嘉には

 

 

 

 

『恋愛経験が無い』

 

 

 

 

のではないかと。

 俺は視線を逸らし挙動不審な美嘉に更に注意深く目を向ける。

 

「な、何? プロデューサー。さっきからなんだかアタシのことをそんなじっと見つめて……も、もしかしてアタシみたいなのがタイプなの?」

 

「へぇ、プロデューサーさんやっぱり美嘉さんのこと好きなんですねぇ……前の時から気になっていましたけど、ボクなんかよりボンキュッボンな美嘉さんの方が……」

 

「い、いや違う。誤解だ幸子。むしろ俺は幸子みたいな、全体的に小さい子の方がどっちかっていうと……」

 

「待ってください、それだとつまりロリコ……」

 

「いやそういう意味じゃなくて!」

 

「いや今の言い方だとそう言う意味にしか取れませんよ!」

 

「ま、まあアタシは他人の恋愛感にはケチを付けないからね、どんな恋愛感を持っていても何も言わないよ、うんうん」

 

 いや、咄嗟に言われて嘘をつこうとしてしまったが、実際のところ幸子みたいな歳下より、歳上の方が好きだ。

 しかし、そんな俺の話はさておき、美嘉は先程から無理をして笑顔を作ろうとしているが、なにやら顔が異様に引き攣っている。

 その反応を見て流石に何かおかしいと思ったのか、俺だけでなく幸子も何か怪しんでいる。

 

「あの〜、美嘉さん? なんだかさっきから顔色悪いですけど、大丈夫ですか?」

 

「ん……? あー、うん! 大丈夫、何もおかしくないよ! なにも隠してなんていないから!」

 

「隠してなんて……?」

 

「あっ……」

 

 俺はその言葉を聞き逃さなかった。そしてたった今確信する。

 

 

 

 

 

 

美嘉はクロだ。

 

 

 

 

 

 

 間違いない、美嘉も幸子達三人と同じで『恋愛経験ゼロ』だ。

 

 それもアレだ。恐らく恋愛に興味が無いのでは無く、家の自室等で一人、少女漫画や恋愛映画などを見て恋愛に憧れているようなタイプの、そんな本当に純粋無垢な方の恋愛経験ゼロだ。

 

「……一応先程から気になっていたから聞くが、もしかして美嘉ってまだ、異性と付き合った事とか……」

 

「あー!! ストップストップ!! プロデューサーそれ以上言わないで!! ダメ!! というかそれ以上言っちゃダメ!! ダメ!!」

 

 美嘉は突然席を立ち上がり見たことも無い勢いで取り乱し始めた。飛鳥や乃々も、というか俺と幸子ですら見た事の無いその美嘉の反応に、一同は余計気になり黙り込んで美嘉の方を向く。

 

「……そ、そうだよ。ま、まあプロデューサーが言う通りアタシ、恋愛とかー? 全くしたことないし……」

 

その時、歴史は動いた。

 

「嘘だろ」

 

「嘘ですよねぇ?」

 

「……本当かい?」

 

「良かった……美嘉さんも恋愛経験無いんだ……」

 

「う、うるさいなぁ……いや、だってさー……その……」

 

 美嘉は乃々みたいに小さな声で何かをボソボソと言い訳のように話していく。しかし言葉を並べれば並べる程、声はだんだん小さくなっていき、気がつけば俯いた状態で顔を隠していた。もう今にも頭から蒸気を出して爆発してしまいそうな状況だ。

 

「フフーン? 美嘉さん、先程から何かおかしいと思っていましたがそう言うことでしたか……」

 

「心中を察するよ、カリスマJK城ヶ崎美嘉」

 

「大丈夫です、もりくぼも仲間ですから……」

 

 あれだけ机の下に引っ込んでいた乃々が気が付いたら美嘉の横に座っていた。どうやら、あんなカリスマオーラを放つ美嘉にですら自分と同じことがある、と分かっただけで同情の気持ちでも湧いてきたのだろう。乃々は美嘉の背中を擦り頷いている。

 

「あーやめやめやめやめ!! この話はもう無しで!! これ以上この話続けたらアタシ怒るよ!?」

 

「怒るも何も、話を振ってきたのはそっちだろ……」

 

 手で顔を隠して黙り込んでいた美嘉は急に立ち上がり今までにない剣幕で話し始める。一瞬手を離してこちらを向いた時の美嘉の顔は、恥ずかしさのあまり顔がゆでダコみたいに真っ赤になっていた。恐らく今彼女の頭の上に鉄板と卵を置いたら、目玉焼きができるだろう。

 

「あれ、ということは美嘉お姉さんの皆へのアドバイスは?」

 

「恋愛は聞くものじゃないから! やっぱり各自で色々頑張って!!」

 

「じゃあ、美嘉お姉さんのお悩み相談は?」

 

「終わり!! 終了!!」

 

「プロデューサーさん、何かもうアレですね、女子会めちゃくちゃですよ」

 

 美嘉はしばらく形にならない動きをとった後、故障したかのように急に動きを止めて座り込み、テーブルに突っ伏したまま動作を停止してしまった。

 

 恐らくあまりにもの熱量に、美嘉のCPUが耐えきれなくなり熱暴走でも起こしてしまったのだろうな。

 

「まあ、むしろ別にそれでいいんじゃないかと俺は思うんだがな。逆に恋愛とかを知らない、純粋無垢な少女だからこそ、表現できる物もあるのかもしれないし」

 

「そ、そうですよ美嘉さん! それにボク達はアイドルなんですから、恋愛を知り過ぎていたらそれはそれで問題じゃないですか!」

 

 因みにここのアイドルが恋愛OKなのかNGなのかは俺は知らない。が、少なくともファンからしたら純白で穢れのないアイドルの方が需要はあるだろうな、間違いなく。というか一、アイドルファンとしての俺なら、その方が嬉しい。

 

「幸子ちゃんも、プロデューサーも、もうやめて……逆にこうやって変にフォローされた方が、恥ずかしくなるから……」

 

 美嘉は突っ伏したまま話を続けていく。その声にはなんというか、覇気というか生気すら感じられなかった。もはやあのカリスマオーラの欠片すら感じられないほどにだ。

 まさか、美嘉が恋愛話でここまで追い詰められるとは、俺は全く予想外だった。

 

「……とりあえずあれだ、水か茶でも飲むか?」

 

「……水で宜しく」

 

 とりあえず俺は、一見完璧に見えるカリスマギャルにも完璧じゃない部分があるんだな、ということが今日のこの出来事で痛いほどよく分かった。

 とりあえず、俺は少なくともそのガラスの靴より綺麗で汚れのない、そんな彼女や幸子達の健全で純粋な恋愛をこれからも心から応援しています。

 

 頑張れ、恋に恋する? 乙女達よ。




美嘉みたいな姉が欲しかった。
こんな姉に甘えたかった。
膝枕されながらいいこいいこされたかった。
膝の上に乗っけてもらいたかった。

莉嘉、頼む、変われとは言わないから俺を莉嘉とおねーちゃんの間に入れてくれ。


さて、次回から暫くまた新話遅れると言うか執筆休みます。
理由? そんなのデレステの報酬に幸子来たからやろいい加減にしろ!

では、全力疾走で行ってきます!

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