アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜 作:ドラソードP
第52話
カワイイボクのお休みタイム
女子会、川島さん、パソコン、色々あったとある夏の台風お泊まり会だったが、気が付けば時刻も夜の十時を回ろうとしている。
という訳で時間も時間だし、特にやることもなくなった俺と幸子は寝る準備をしていた。
「ほら、一応簡易的だがシーツ配られたぞ」
「なんだか薄っぺらいシーツですねぇ……こんな薄さじゃ、カワイイボクが風邪を引いちゃいますよ」
「なんだ、じゃあ俺の分のシーツも被るか?」
「プロデューサーさんの分?」
実際俺は暑がりで、家でなんかだと夏場なんかは本当に薄い布団で寝ている。酷い時なんかはリビングでテレビを見たまま寝落ちする事もあるくらいで、寒さや風邪などには滅法強い身体だ。
「別に構わないぞ。寒さには滅法強い系プロデューサーなんでな」
「偉くピンポイントに強いプロデューサーさんですねぇ……その強さを少しは仕事に……」
「一人で寝るか?」
「そ、それは困ります! ボクはウサギさんと一緒で、孤独になると死んじゃうので! プロデューサーさんは強いです、強い!」
幸子は一人で寝るのが怖いのか、必死に謝る。まるでその姿は来年高校生になる者の姿では無く、暗闇に怯える小学生低学年の子供みたいだ。
「まったく……というかお前、中学三年生ってことはつまり、来年でもう高校生だろ? 普通にそんなこと言って……ないで……」
俺はそこで言葉を詰まらせる。
「……あれ、どうかしましたか? プロデューサーさん」
「いやちょっと待て、自分で言っておいてあれだが、そういや今日寝る時って俺達は一緒の部屋で寝るのか……?」
そう、今まで全くその辺を気にしないで話を進めていたが、幸子と話しているうちに俺は一つの疑問にぶち当たった。
『同じ部屋に中学生の女子と成人の男が二人きり』
まずくはないだろうか。いや、俺の考えすぎなのかもしれないが、一応家族では無い他人の男女が一つの部屋で寝ることになってしまう。これでは何が起きた、いや不本意にも起きてしまった時に何も言い逃れができない。
それに何も無かったとしても、少しでも疑われた時点で、俺の社会的立ち位置が木っ端微塵に無くなることになる。
「それ、よく良く考えてみれば確かに、色々絵面的にも社会的にもまずいですね……」
「まさか、こんな問題が……」
俺と幸子は考え込む。これについては割とどうしょうもない問題かもしれない。
「まあプロデューサーさんが言う通り、女性経験もほとんど無さそうなプロデューサーさんのことですから、ボクなんかみたいなカワイイアイドルが隣で無防備に寝ていたら、それは襲いたくなっちゃうという気持ちも分からなくもありませんが……」
「廊下で寝るか?」
「すいませんでした」
しかし、こんな感じで冗談交じりに話していても現実は変わらない。
いっそ幸子だけ寝かして俺はコーヒーがぶ飲みで朝まで起きているか? だが、それでは問題の根本的な解決にはなっていない。
では二人でずっと起きているか? 駄目だ、幸子を俺のためにわざわざ起こすのは気が引ける。じゃあ結局俺はどうするべきなんだ?
とりあえずこんな感じで俺は頭をフル稼働させ、何か良い手段はないかと必死に考えていた。
「それにしても本当にどうするよ、幸子。真面目な話、会社側に言って各自別々の部屋を借りて寝るか? 別に、俺の方は一緒に寝るのは構わないが、それについては社会が許してくれなさそうだしな……」
「そ、それは怖いですよ……プロデューサーさん。このプロダクション無駄に広いし、部屋もおっきいし……」
「じゃあどうするんだ。やっぱり一緒の部屋で寝るのか? まさか朝まで起きているとか言うなよ?」
「あ、朝まで起きていましょう!」
「……ッ!」
俺は頭を軽くかく。これは珍しく本当にどうしようもない問題だな。まさに、言葉の通り八方塞がりか。
と、そんな感じの状況の中、幸子が不意に口を開く。
「……プロデューサーさん」
「なんだ?」
「本当のことを言うと別に、ボクの方ならそんな細かいことは気にしないですよ?」
「お前は気にしなくても、俺の方がだな……」
「大丈夫です。ボクは、プロデューサーさんのことを信頼していますから。他の人から何か言われたら、ボクがちゃんと説明しますので」
「あー、まあ……だけどさ……」
「なんです、もしかしてカワイイボクを信用していないんですか?」
「いや、決してそういう訳じゃ無いが__」
「だったらいいじゃないですかそれで。逆に、そこまで考えすぎな方がボクからしたらアレですよもう」
幸子は必死に説得してくる。そんな姿を見ていたら逆に、ここで拒み続けている俺の方がおかしいな、と思えてきた。
「……分かったよ。そこまで言うなら。ただしその代わり、俺も幸子を信頼するから、もし何かあった場合に責任を取ってくれなかったら、俺は346プロの中庭で『輿水幸子は台風の風と暗闇が怖くて一人で寝られない、十四歳の新人アイドルです』って大声で叫ぶからな」
「なっ……!! じょ、上等ですよ!! 」
という訳で幸子の強い押しもあり、俺達二人は結局この部屋で寝ることになった。幸子に説得されているうちに俺もまあ、一日位別に平気だろ、そう思えてきたのだ。
それに幸子の意見を聞き、確かに幸子を見ず知らずの場所で一人で寝かすことの方が危険なのでは、と後々考えているうちに思えてきた。
それならいっそ、俺と二人きりになった方がお互い共に安心できて良いのかなと。
とりあえず、そうと話が決まったらそれからの流れは早く、お互いに布団を敷くなりして寝る前の準備は整った。
「一応俺が床側で寝るから、幸子はソファで寝て良いよ」
「そんなの、言わなくても当たり前じゃないですか。プロデューサーさんはカワイイボクを冷たい床に寝かせるつもりですか」
「……そりゃそうだな」
俺は寝る前にやり残したことが無いか、幸子に一応確認する。
「さあ、歯はもう磨いたか?」
「磨きました」
「トイレには一応行ったか?」
「行きました」
「よし。じゃあやることがないならもう電気消すぞ」
「はーい!」
俺はスイッチを押して電気を消す。部屋は真っ暗とまではいかないが、意外と暗くなる。
「ひっ……!!」
「なんだ、大丈夫か? お前確か暗い所とか怖いんだよな。アレなら小さな電気、付けておくぞ」
「ぷ、プロデューサーさんが何故それを……ま、まあじゃあお願いします……」
「何故ってこの前のゲリラ豪雨の時暗いの怖いってビビっていたじゃねえか……」
俺は部屋の小さいライトを付ける。すると部屋は寝るのに支障が出ない程度に、少しだけ明るくなった。
「それじゃ、何かあったらすぐ起こしてくれよ。トイレとかへ行くんでも、とにかくなんでも構わないからさ」
「はい……」
「じゃ、おやすみな幸子。また明日」
「おやすみなさい、プロデューサーさん……」
そのお互いのおやすみを境に、途端部屋からは一切の声が途切れる。そして部屋には、台風の風の音だけが響き渡る。
さて、幸子にそんな感じでおやすみを言って数十分くらい経ったか。やはり慣れない場所のせいか寝付けなかった俺は、幸子がちゃんと眠れているか心配になってしまい、部屋の音へと耳を澄ました。外の風がうるさく、幸子の寝息等はうまく聞こえないが、今の所問題は無さそうだ。
「ふぎゃあ!?」
しかし、そう思っていた丁度その矢先、外で猛烈な突風が吹き、窓が大きな音を立てる。そして隙間風の音が部屋の中に響き渡った。その突然の大きな音に幸子は声を上げる。
「あー……やっぱり怖いか?」
「うぅ……やっぱり、怖い物は怖いですよ……」
相変わらず幸子は、この前のレッスン中にゲリラ豪雨に襲われた時のようになっていた。台風は朝方まで止まないと聞いていたので、恐らくこのままだと幸子は眠れないまま、朝を迎えてしまいそうだ。
「しゃーねーな……」
俺は床から起き上がると、外の台風に怯えている幸子の元へ向かった。幸子はソファで毛布にくるまって、体育座りの格好で震えながら座っている。
「やっぱり苦手なんだな、暗闇とか大きな音」
「に、苦手って程じゃないんですけど、多少は……ですねぇ……」
「何が多少だ、バリバリ震えてるじゃないか。どこが苦手って程じゃないんだよ」
心底怯える幸子を見かねた俺は、幸子の横に座ってあげると、軽く肩に手を回す。そして、幸子を落ち着かせてあげるために背中を軽くさすってあげた。すると幸子は、さんな俺に甘えるかのように、身をこちら側へと潜らせてくる。身体がより密接に触れる事により、幸子の震えが更に伝わってきて、その怯え具合がよくわかった。
「……本当に大丈夫か? なんなら、寝るまで起きててあげるくらいなら別に構わないよ」
「だ、大丈夫です! そんなまさか、カワイイボクがわざわざプロデューサーさんの、貴重な睡眠時間を奪うだなんて……」
その時、再び突風が吹き窓が大きな音を立てる。
「ふぎゃあ!?」
「……全く、強がりも大概にしとけよ」
幸子の震える小さな手に、俺は手を添えてあげる。すると幸子は、その添えてあげた俺の手を必死に握ってきた。なんだか俺に、突然小さな娘でも出来たような錯覚ができる。
「プロデューサーさんがそこに居てくれるありがたみ、なんだか色々身に染みてわかりました……」
「だったら、そんなありがたい人をこれから少しは、丁寧に扱ってくれよ?」
「それとこれとは別ですから」
「へいへい……」
まあ俺も丁寧に扱ってくれ、なんて言ったものの、実際今のガサツな位の関係の方がやりやすいし、むしろそれが無くなってしまったらちょっぴり寂しい気がする。何だかんだ、俺は幸子とのこんな毎日を、文句を言いつつも満喫しているからな。
本来なら、今頃俺と担当アイドルはまだまだぎこちない間柄だったのであろう。だけど、幸子は違った。
初プロデュースのアイドルが、お互いに腹を割って本音で話せる幸子みたいな子で、本当に良かった。今みたいな状況になってみると、尚更そう感じる。
「まっ、実際今のは冗談だ。いつでも、何だって頼ってくれて構わないよ。俺はお前の、輿水幸子だけのプロデューサーなんだからさ」
「知ってます」
「そこはもう少し、いつもみたいに自分専用のプロデューサーだってよろこんでくれよ……」
「イヤです」
「はい」
外の雨風が一層強くなってきた。だが、幸子俺の手を握ってからというものの、不思議と先程までは震えていない様子だった。しかし、とは言いつつも、大きな音が鳴るとやっぱり手を握る強さは強くなるがな。
「落ち着いたか? 幸子」
「はい、なんとかですが。でも、仮にもし、ボク一人だったら大丈夫だったか分かりませんけど……」
幸子は身体をまた、こちら側へと少し寄せてくる。
「……そう言えば、話は少しだけ変わりますが、さっきはボク、美嘉さんたちと理想の男性に求めるものがお金だとか、自分に釣り合う人だとか言っていましたよね?」
「ああ、そうだったな」
「本当のことを言うと、ボクの理想の人はお金持ちや、ボクに釣り合う人でもなんでもなかったんですよ」
「じゃあ、実際の所はどうなんだ?」
「プロデューサーさんみたいな何の変哲もないけど、でもたまに誰かに優しいことをしてあげられる、そんな人です」
「なんだ、カワイイボクの大胆な告白か?」
「う、うるさいですねぇ!! プロデューサーさんみたいな人とは言いましたが、こうやってボクに意地悪するプロデューサーさんは、やっぱり大嫌いですよーだ!」
「嫌いで結構。俺もあんまり、お前に好かれる様な事はしていないしな」
「そうですよ。毎回毎回カワイイボクを心配ばっかさせて……」
しばらくの沈黙がある。すると幸子は再び口を開く。
「でも、嫌いですけど、別に好きじゃないって訳ではないですからね……」
「どっちなんだよ……」
全く、困った物だ。これが吊り橋効果ってやつなのか。もしくはビビり過ぎて、恐怖で思考回路がバグったか。残念ながら、幸子の頭の修理は俺のサポート外だ。
「……なあ、幸子」
「……なんです? プロデューサーさん」
「そろそろ寝ろ」
俺は幸子のおでこを軽くつつく。
「イテッ……い、いきなりカワイイボクに何するんですかプロデューサーさん!!」
「ほら、その勢いがあれば台風も怖くないだろ?」
「……そうかもしれないですけど」
幸子は何かもの言いたげな様子だ。
「……でも、だとしても、もう少しだけこのままここに居てください、プロデューサーさん」
「全く、しゃーねー……な……」
俺は軽く伸びをする。なんだか今日の疲れが出てきたのか、急に眠くなってきた。
「……ありがとうございます」
「なんか言ったか?」
「言ってないです」
薄暗い事務所の部屋の中、俺と幸子は肩を寄せ合い、無数の雨風が降る外をただただ無言で眺めていた。
それから日付を跨いで数時間後、気が付くと俺は幸子を寝かしつけたまま一緒にソファで寝てしまっていた様だ。ふと脚に重みを感じて下を見ると、幸子は俺の膝を枕にした状態で寝ていた。
なんだか明るく感じ窓の外を見ると、既に台風は過ぎ去っており、そこにはとても綺麗な朝日があった。どうやら、この感じだと今日はもう普通に家に帰られそうだな。
俺はなんだかまた一人の家に帰るみたいで、昨日の騒がしい女子会等を思い出してしまい寂しい様な、でも家に帰られる様で安心する様な、そんな様々な感情を抱いていた。
「まだ早いし、もう少し寝るか……」
俺はそっと幸子の頭を撫で、幸子の少しはだけていた毛布をかけなおしてあげると、その場でもう一眠りすることにした。
今作者は福島県に免許を取りに来ているのですが、先日猛吹雪の中を半袖にジーパンで買い物に行ったら、あだ名が松岡修造になりました。
さらに教官からは地球温暖化の原因と呼ばれ合宿所で少しの有名人です。
寒さに強いプロデューサー? 私は寒さに強すぎる小説家(自称)です。
さて、今回は羨ましい位に幸子とプロデューサーがイチャイチャしてました。
自分でも書いていて恥ずかしい、うん!
どれもこれも原因は公式が幸子とプロデューサーのイチャイチャを書いてくれないから自分が書くしかなくなったんだ! もっとカワイイ幸子やドヤ顔な幸子をよこせ!(過激派)
こんなんじゃ俺は満足できねえぜ!!
次回、アイドルマスターシンデレラガールズ ルート幸子
朝チュン展開(大嘘)
俺達の満足はこれからだ!
※すいません、作者は長期間の雪と疲労のせいで頭がやられてます。しばらくはこのノリにお付き合い下さいまし。
文章の改行や空白
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前の方が良い
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今の新しい方が良い