アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜   作:ドラソードP

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第55話 城ヶ崎姉妹とプロデューサー

第55話

城ヶ崎姉妹とプロデューサー

 

 

 幸子達を送り出した後は特にやることも無く、ただぼんやりと景色を眺めていた。そろそろ日も暮れてきて空は夕暮れ色一色になる。そしてそんな中、辺りでは花火目当てと思われる人が更に増えてきており、河川敷は段々と混雑を見せてきていた。先程まではうちら以外にブルーシートなどを敷いている人はまだあまり居なかったのだが、今は視界内にまちまちと場所取りをし始めている人が見えてくる。

 しかし、先程から疑問に思っていたのだが、何故かうちらの周りには誰も場所取りをしに来ない。俺の格好からして不審がられているのだろうか。ここまで露骨に警戒されるとなんだか複雑な気持ちだ。やはり、ちゃんとした服装についてもう一度考えておかないといけないのかな、と思わさせられる。

 いや待て、そもそも俺は流行りのファッションだと見て聞いたからこの服を引っ張り出してきたのに、なぜそれで警戒される必要があるんだ。そんなに怖い顔してるのか? 俺。普段はコーヒー飲んでるだけの実質無害な人間だぞ。

 

 まあ良い。そんなことはともかく、俺は幸子の帰りを待っている中、人混みの中に何やら見慣れた姿の人物を見かけた。向こうもこちらに気が付いたのか、俺が軽く手を振るとこちらへと寄ってきた。

 

「あれ? もしかして幸子ちゃんのプロデューサー?」

 

「ああ、やっぱり美嘉か……」

 

 案の定、その見慣れた人物は美嘉だった。

 結局こんな場所でも偶然とはいえ会ってしまうとは、やはり彼女とは何かしらの縁があるのだろうか。いや、それとも単に世界や日本が狭いだけなのか。もし後者だとしたら実につまらない世界だ。

 

「色々奇遇だねー、こんなところでまで会うなんて。プロデューサーも花火を見に?」

 

「ああ、大体そんな感じだな。プロデューサーも、ということはそっちもなのか?」

 

「うん。友だちと花火を見る為に、ちょっと待ち合わせしててさ」

 

「なるほど、そういうことか」

 

 と、美嘉と話していると、その美嘉の横に見た事の無い少女が立っているのが見えた。雰囲気はどことなく美嘉に似ている感じだが、見たところ年齢はまだ美嘉より幼い。また、美嘉とは違い金髪の長髪で、更に髪を横で束ねて小さなツインテールのようにしている。これは俗に言われる、ツーサイドアップという髪型だろうか。

 

「ねーねー、おねーちゃん。この人がもしかしておねーちゃんのプロデューサーだったりするの?」

 

「違うよ莉嘉。この人はアタシのプロデューサーじゃなくて、アタシの後輩のプロデューサー」

 

「なーんだ、おねーちゃんの担当プロデューサーじゃないんだ」

 

「お姉……ちゃん……?」

 

「ああそっか、プロデューサーとは会うの初めてだったね。この子が前に話していたアタシの……」

 

 そこまで美嘉が言いかけた途端、その横に居た少女が美嘉との会話に割り込むような形で入ってきた。

 

「はいはいそうでーす! アタシがカリスマJKアイドル城ヶ崎美嘉の妹、カリスマJCアイドル、城ヶ崎莉嘉でーす! よろしくー!」

 

「美嘉の妹……城ヶ崎莉嘉……城ヶ崎……まさか、この前言っていた例の妹か!?」

 

 そういえばこの前の美嘉のライブの際に、美嘉からアイドルを目指している妹が居ると聞いていた。年齢は恐らく幸子と同じ位、今はまだアイドル見習い、という話だったから、恐らくこの子がそういうことになるのか。

 

「こーら、莉嘉。アンタはまだアイドル見習いでしょ。ちょっと落ち着きなさい」

 

「えー……だからこそ折角アタシを売り込むチャンスだと思ったのにー……つまんないのー」

 

「……まったく、本当に莉嘉はテンション上がると止まらないんだから……」

 

 美嘉はその少々元気過ぎる妹、莉嘉に溜め息を漏らす。元気過ぎる妹の制御に回るその姿は、さながら苦労の耐えない姉か。なんというか、絵的に映える姉妹だな。

 

「ふふっ、良いじゃないか。若いうちは元気なことに限るよ。それに、明るくて素直な子は是非とも欲しいって、うちのプロダクションも言っていたしな。あー……妹の莉嘉ちゃんだっけ? 莉嘉ちゃんみたいな子なら多分プロダクション側もまさに大歓迎なんじゃないか?」

 

 その美嘉の妹、城ヶ崎莉嘉は姉である美嘉とはまた少し違う雰囲気を纏っていた。確かにファッションセンスや口調、その他顔の雰囲気などは姉と同じ片鱗を感じるが、やはりまだ全体的に幼く、世間を知らない純粋無垢な少女といった感じだ。また、幼いと言っても幸子の幼さ等ともまた違う。というか幼いという言葉よりかは、まさに何色にも染まっていない、純粋という言葉の方が似合うだろう。

 その姉譲りのカリスマ性と若さゆえの純粋さの両立。ある意味これからの伸び代がかなり期待できる、未来のシンデレラ候補の一人なのかもしれない。

 

「……プロデューサーからそう莉嘉を褒めてもらえると、姉のアタシとしては凄く嬉しいね。まっ、それにしても莉嘉はちょっと落ち着きが無さすぎて、年の割にまだ色々と子供っぽいけど」

 

「ちょっとおねーちゃん! またアタシのことを子供扱いしないで!」

 

「ま、まあなんだ。別に落ち着きが無かったり、少し子供っぽいだけなら良いんじゃないか? こっちなんか毎日幸子とのハイテンションで高度なやり取りに、クタクタだよ……」

 

「クタクタ……? そう言ってる割にいつも息ピッタリで、アンタ達二人はお似合いだと思っていたけど」

 

「……お似合い……か? 俺と幸子は」

 

 正直あの性格の幸子と毎日居ると色々疲れるし、悩みの種が色々増えるというのは事実だ。ワガママに付き合わされるわ、パシリにされるわ、買い物の荷物持ちにされるわ、挙句今日みたいに休日に外に連れ出されるわ。だが確かに、そんな幸子との日々が嫌か、と言われるとそうではなかった。むしろ今はそんな日常に慣れてきたせいか、この幸子とのやり取りが無くなったら色々寂しいのかな、なんてすら思えてくる。

 そう考えると美嘉が言うとおり、俺と幸子は仲が良くてある意味? お似合いとも言える関係なのかもしれないな。

 

「……まあ、美嘉が言うならそうなのかな。それに考えてみれば業界に関しては、俺より美嘉の方が先輩な訳だし、そんな先輩からお似合いと言ってもらえるなら、俺は幸子との仲について少しは安心できるな」

 

「いや、安心も何も多分誰が見てもアンタ達二人はお似合いだと思うよ。普通、プロデューサーとアイドルがあそこまで友達みたいに親密に話すことなんて無いと思うし。現にアタシの所だって、仕事のやり取り以外はあんまり話さないからね」

 

「……実際そんなもんなのか? 他の部署の担当と、プロデューサーの関係って」

 

「そうだね〜……まあこれはアタシの所に限った話だけど、割と仕事面以外では結構ドライな感じかな。実際こういう休みの日に一緒に出かけたりなんてしないし。本当の所は、アタシも二人みたいなやりとりや間柄にちょっと憧れてるかも」

 

「ほう? じゃあなんだ、うちと担当を交換してもらうか?」

 

「遠慮しておく。アタシがプロデューサーの担当アイドルになったら……」

 

「なったら?」

 

「なったら……」

 

 美嘉は何かを言おうとしたが、俺の顔を見た瞬間何故か言葉を濁して目を背けてしまった。

 

「……あっ……な、何でもない……!!」

 

 俺はそんな美嘉の突然の反応に、クエスチョンマークを浮かべながらじっと見つめる。

 

「アタシったら何考えているのよ……バカッ……!」

 

「……いや、どうした?」

 

「あ……い、いや……ちょっと変な想像しちゃって……」

 

「自分から変な想像って言っていくのか……」

 

 俺はそんな美嘉の不思議な様子に、喋りだそうにもなんだか喋りだせなくなってしまった。というか俺の顔を見て思い付いた変な想像ってなんだ。美嘉、お前は頭の中で何を見たというんだ。

 と、そんな中突然口を開き、場の様子を良くも悪くも変えたのは、こちらのやり取りを何か疑問を抱いているような目で見ていた莉嘉だった。

 

「そういえばさっきから話を聞いてて思ったんだけど、『おじさん』ってプロデューサーなんでしょ? どんな子の担当をしてるの? 可愛い子? 有名な子? もしかして、おねーちゃんみたいなすごい人!?」

 

「ん? ああ、そうだよ。おじさんはプロデューサーで……おじさん!?」

 

 途端に俺は不意に死角から何かで撃たれたような痛みがした。どこを撃たれたのか。腕か、足か、胴体か、もしくは頭を撃たれて俺はもう死んでいるのか、いや違う。

 

 

 

 

 俺は撃たれたのだ、『心』を。

 『純粋さ』という鋭き弾丸で、一貫きに。

 

 

 

 

「ちょっ……こ、こら莉嘉!! いきなり初対面の人におじさんとか言っちゃダメ!! ……大丈夫? 気を悪くしてない? プロデューサー」

 

「イイヨ、ベツニ。ゼンゼンイタクモカユクモナイヨ」

 

 参ったぜ、実際結構響く物だ。俺もまだ若いつもりではいたんだが、子供からしたらもう二十歳を過ぎたら皆おじさんなんだな。こう中学生くらいの子にあそこまで自然におじさんと言われると、どう足掻いても致命傷にしかならない。回避手段が無かった。

 

「えーっと……ごめんなさい、プロデューサーさん……」

 

「へ、平気! ああ、全然大丈夫だよ莉嘉ちゃん! おじさんなら平気平気!」

 

 俺は美嘉に怒られてなんというかしょんぼりてしてしまっている莉嘉に、フォローを入れる。

 

「ま、まあおじさんが担当しているアイドルはまだテレビとかには出ていない子なんだけどさ、幸子って言うんだ。そりゃあ可愛いけど常にテンションが高くて世話のかかる子でね。それで俺はあいつとはなんだかんだいい関係を築かせて貰っているっていう話を……」

 

「へ〜……幸子ちゃんって言うんだ〜……わかった! 家帰ったら色々調べてみるね!」

 

「……ま、まだ表立ってデビューして無いから調べても大した情報は出ないだろうと思うけどな……ははは。しかしおじさんか……おじさん……」

 

 莉嘉は低反発素材並の勢いで元のテンションに戻る。流石は子供、そのあたりはあっさりだな。

 だが『おじさん』な俺の方はダメだ。表面では普通に話しているが、実際はおじさん発言がまだ頭の中を離れないでぐるぐる回っている。たまに幸子に言われるおじさん発言とは、痛みのレベルが違い過ぎる。

 どうやらこの件については、個人的にしばらく引きずりそうだ。

 

「し、しかしそれにしても驚いたよ。まさか姉妹揃ってアイドルで、それだけでなく二人共美人さんだったとは。二人から比べたら、うちの幸子なんか普通より少しナルシストなだけで、それ以外はただのちっこい中学生だからな」

 

「えー!? ホント!? アタシ美人!?」

 

「び、美人!?」

 

 妹の莉嘉は美人と呼ばれ普通に喜んでいる様子だったのだが、なにやら姉である美嘉の方が莉嘉以上に驚いている様子だった。

 

「あ!! お姉ちゃん照れてる照れてるー!!」

 

「てっ……照れてなんかっ!!」

 

「えー? だっておねーちゃん顔真っ赤だよ? それになんかさっきから気になってたんだけど、なんだかおねーちゃんずっと目が泳いでるし」

 

「そ、そんな訳ないし、何嘘を言ってんの莉嘉……」

 

「そう言えばさっきからおねーちゃんを見ていて思ったんだけど、なんだかこの人と話してる時だけいつもと比べて少し様子がおかしいような……もしかして、おねーちゃんはこの人に……」

 

「こ、こら莉嘉ぁ!! そんなにからかうとアタシ怒るよ!!」

 

「いや、確かに莉嘉ちゃんが言うとおり、なんか顔が真っ赤で茹でダコみたいだぞ、美嘉」

 

「えっ……ちょっ!?」

 

 美嘉はスマホを取り出し自分の顔を見る。そしてそこに映し出された真っ赤な自分の顔を見て、焦ったかのようにすぐさまスマホを再びしまう。

 

「な、ななっ、ななんでアタシがプロデューサーのことを……」

 

「べつにいいじゃん! 丁度良い機会だと思ってさ。だっておねーちゃん今までカレシとか居なかっ……」

 

「莉嘉、流石にそれ以上はダメ、ストップ。本当に怒るよ」

 

「はい」

 

 しかし本当に二人は、まるで俺のことなんか居ないかの様に自然にやりとりしているな。無論それは悪い意味とかでは無く、人前でもその姉妹の仲の良さを隠さないという意味でだ。そのやりとりを見ていてああ、本当にこの二人は仲が良いんだろうなと思える。

 

「……なんだかその調子だと、かなり仲が良さそうだよな。姉妹共に」

 

「……まあ、いつもこんな感じだけど、なんだかんだ言って莉嘉はアタシの掛け替えのない、自慢の妹だからね」

 

「じゃあアタシからすればおねーちゃんは自慢のおねーちゃん!」

 

 ああ、尊い。ただその一言に尽きる。あまりに強大な姉妹愛の前に、俺は心臓に電撃が直撃したかの様な錯覚を得る。まるで心臓麻痺を起こしそうだ。なんだか一々俺にダメージを与えてくるな、この姉妹は。

 

「……そうだ!! そう言えば……そのー……おじ……おにーさんはプロデューサーなんだよね!? アタシ、絶対に本物のアイドルになるから……だから、その時はプロデュースしてよ!!」

 

「お、お兄さん……?」

 

「莉嘉、この人はおじさんでもお兄さんでもなくて、プロデューサーさんだよ。莉嘉の飛び付きそうな位の勢いに困惑しちゃってるでしょ。それにアンタはまだまだデビューには早いって」

 

「むー、せっかくアタシを売り込む良いチャンスだと思ったのにー!」

 

「まあ、その勢いと元気があればデビューもそう遠くないだろう。多分いずれすぐに、お姉ちゃんみたいな綺麗で立派なアイドルになれるぞ」

 

「ちょっ……だからそんなにアタシをおだてても何も出ないよっ!」

 

「あー! おねーちゃんまた照れてる照れてる~!」

 

「てっ、照れてなんていないし! 何デタラメ言ってんの莉嘉!」

 

 美嘉は莉嘉に茶化され異様に焦る。一体美嘉はさっきから顔を赤くしてまで何に焦っているんだろうか。一昨日部屋に集まった時の最後といい、突然蒸気機関車の様になる美嘉の頭の沸点については、色々と疑問だ。

 しかし、それにしてもこういう風に感情を表に出している姿を見ると、実際彼女も年頃の普通の女の子なんだな、と俺は思う。恐らく妹と一緒だから、というのもあるのだろうが、なんというかプロダクションや現場にいる時などの仕事モードがオフで、刺々しいカリスマオーラが無いように感じられる。そして何より、いつも以上に親近感があった。

 

「……な、なに? なんでプロデューサーはアタシを見てニヤニヤしてるの? まだそんなに私の顔赤い?」

 

「いや、顔はもうそんなに赤く無いよ。たださ、なんか仕事モード以外の美嘉を見るのが珍しい気がしてな」

 

「……やっぱりアタシ、いつも皆に変な壁張っちゃってた?」

 

 美嘉は申し訳なさそうに聞き返してくる。

 

「いやいや、別にそういう悪い意味じゃないよ。たださ、こうして色々な表情をしている姿をみると、美嘉も幸子達と同じ一人の女の子なんだなって」

 

「……そう?」

 

 美嘉は一人の女の子、という言葉を聞き、一瞬ながら嬉しそうな表情を見せる。しかしすぐに、美嘉は表情を落とした。

 

「確かにプロデューサーが言う通り、アタシって現場やプロダクションにいる時は常に『皆が憧れるカリスマJKアイドル、城ヶ崎美嘉』で居続けるために、気を引き締めていたからさ。割と自分の感情や私情は、あまり出さないようにしていたってのはあるかも」

 

「なるほど、流石プロだ。やっぱり日頃の心構えからして違うな」

 

「……別に、そんな風に褒めて貰えるような物じゃないよ。本当なら自分を飾らないで、皆の理想で居られるのが一番だと思うから……」

 

 

 

 

『本当なら自分を飾らないで、皆の理想で居られるのが一番』

 

 

 

 

 俺はその美嘉のたった一言に、今まで見えなかったカリスマJKアイドルとして存在する彼女の弱音の様な、孤独のような、そんな彼女の本質が少し見えた気がした。そしてそれと同時に、彼女の内にあるアイドルとしての並々ならぬ覚悟も。

 

「……あんまり、そういうのは一人で背負うなよ?」

 

「大丈夫、いざとなったら『今』はアンタ達が居るからさ」

 

「そう言ってもらえると、俺としても嬉しい」

 

 と、なんだか会話が少ししんみりとした雰囲気になってしまった。そんな場の空気を察してか、美嘉は落ちてしまった声のトーンを戻す。

 

「さて、折角の楽しい花火大会だしこの話はおしまい! 話は変わるけど、そういえば今日プロデューサーは一人なの? いつもは絶対に近くに居る筈の幸子ちゃん達が見当たらないけど」

 

「いやまさか、俺は花火なんて賑やかな場所に、一人で来るような質の人間じゃないよ。いつも通りアイツら三人が一緒だ」

 

「そうだよね。なんかプロデューサーが一人でこういうところに来るのって想像出来ないし」

 

「……そう言われると、それもそれでなんだか色々複雑だ。一応俺は賑やかな場所は苦手だが、だからと言って引きこもりなタイプの人間なつもりじゃなかったんだがな」

 

「確かに、引きこもりな人がそんな奇抜な格好はしないか」

 

「……やっぱり奇抜だったのかこの格好」

 

 美嘉にそう言われてしまったらもうおしまいだ。何せ、プロのコーディネイターに服装がダサいと言われてしまっているようなものだからな。逃げ場がまったく無い。

 

「むしろ何をどうしたらそんな格好になるのか……色々ファッションとかに関わるアタシからしたら、そっちの方が疑問だよ……」

 

「生憎、社会人になってからはスーツしか着てないものでな」

 

 なお学生時代も学生服しか着ていなかったので、結局私服という私服が無いことに変わりはない。というかむしろ、なんで俺はこんな服を持っていたんだ。これを買った当時の俺は、何か気が狂っていたのか?

 

「でもプロデューサー、よく見てみると案外顔も悪くは無いし、身長もそこそこ高いし、色々勿体ない気がするんだよね〜……」

 

 と、美嘉は俺をじっくり眺めてくる。かと思えば今度は俺の周りを独り言を言いながら歩いて回り始めた。そして再び止まり何かを考えているかのような素振りを見せると、美嘉は突然口を開いた。

 

「うーん……よし、分かった! 」

 

「ん、どうした?」

 

「いやさ、もしプロデューサーが良いっていうなら今度、雑誌で読者モデルをやっていたアタシが直々に流行りの服でコーディネートしてあげちゃおうかなって。なんだか、プロデューサーを色々大改造したくなってきたかも」

 

「ほう、カリスマJKアイドルのコーディネート講座か。頼むとしたら果たして金額はどれ位になる?」

 

「なんと……今ならアタシの気まぐれで、無料キャンペーン中! 時間と暇さえあれば、いつでも良いよ!」

 

「よし、頼んだ」

 

 俺は即決する。恐らく現役のカリスマギャルに直々にファッションチェックしてもらえる機会なんて、人生で二回と無いだろう。最近の調子だと今後幸子と出かける機会も更に増えてくるだろうし、俺的には丁度良いタイミングだった。

 

「しかし、実際いきなりどうした。そんなに俺の格好が目に余ったのか?」

 

「いやいや、違う違う。そうじゃなくてさ、プロデューサーって服を着る素体としてはかなり良いモノ持ってると思うんだ。だから色々見ていたら、プロデューサーに合う服はなんか無いかな、なんて考えてきちゃって」

 

「素体が良いだなんて、そんなに褒めて貰って良いのか?」

 

「なんだかんだ、顔とスタイルだけは良いからね!」

 

「だけっておい……」

 

「それに例えどんなに可愛いアイドルでも、まずはその担当がオシャレじゃなきゃ。カワイイアイドルには、それに釣り合うだけのカッコイイプロデューサーでいなくちゃね」

 

「確かに、美嘉先輩が仰る通りそりゃそうだ」

 

「それじゃあそうなら決まり! 明後日の幸子ちゃんのライブ、パパッと無事に成功させて気分良く買い物に行こう!」

 

「そうだな……わかった。了解!」

 

 と、こうして十分近く立ち話をしてきた俺達だったが、俺は莉嘉がそろそろ立ち話に退屈そうしてきているのが目に入ってきた。どうやら、少し長話が過ぎたか。

 

「そういや美嘉。美嘉はここで結構長いこと話しているけど、その待ち合わせしている友人とやらの所には行かなくて大丈夫なのか?」

 

「ああ! そうだった!」

 

「まあ、俺も美嘉とこんな感じで話していたら、おつかいに行ってる幸子に浮気だのなんだのってまた怒られるかもしれんしな。積もる話とかは、またプロダクションの方でするとしようか」

 

「そうだね、了解」

 

 そう言うと美嘉は人混みの方へ歩き始めた。

 

「じゃあごめん、急になっちゃったけどアタシ達はそろそろ行くね〜。幸子ちゃんのプロデューサー達も、花火大会楽しんで」

 

「了解、そっちも楽しんでなー」

 

 美嘉が歩き始めると、莉嘉もその美嘉の後ろに着いていくような形で歩いて行く。

 

「じゃープロデューサーさん、またねー!!」

 

「ああ。君とはいずれ、プロダクションや現場で会いたいものだ」

 

 こうして美嘉達は手を振りながら再び人混みの中に消えて行った。その寄り添う二人の姿はさながら姉妹だったか。

 

 しかし……

 

 

「城ヶ崎莉嘉、か」

 

 彼女とはそう遠くない未来にまた会う気がする。それも知り合いなどとしてでは無く、アイドルとして会社や、はたまたステージや舞台で。そう俺の勘が告げていた。

 

 

 

 

「プロデューサーさん! ただいまです!」

 

「ああ、幸子達か。おかえり」

 

 美嘉達を見送ってすぐ、恐らく近くのコンビニに行っていたのかビニールをぶら下げて幸子達が帰ってきた。

 

「フフーン! ちゃんとプロデューサーさんの分のコーヒーとかも買ってきましたよ? そこまでちゃんと考えられるなんて、やっぱりボクってカワイイだけじゃなく有能なんですねぇ……」

 

「おお、ありがとな。丁度喉が乾いていたんだ」

 

「お礼ならいりません! だって、このボクですから!」

 

 こうして花火を見る準備も整った俺達は、ブルーシートの上に座った。持ってきた簡易的なテーブルの上には、幸子達が買ってきた飲み物とコンビニ弁当の様な簡単な食べ物、その他お菓子類が置かれている。

 

「さて、いよいよあと少しで花火大会が始まりますねぇ」

 

「ああ。この調子だとあと数十分もしたら始まるんじゃないか?」

 

「フッ、いよいよか。普段より間近で見る光の花は、果たしてボク達をどの様に、どこまで魅せてくれるのか。実に楽しみなものだ」

 

 どうやらみんな、花火大会を心待ちにしてくれているようで良かった。

 なんだかんだあまり喋らない乃々も普段より穏やかな表情をしているし、これは二人を誘ったのは正解だった様だ。こういう反応を見ると、三人を連れてきた俺にも連れてきた甲斐が有るって物だな。

 もっとも、その花火大会に行くというのを提案してくれたのは他でも無い幸子なんだがな。ある意味俺にもこういった知り合いと出かける、という初めてに近い体験をさせてくれた幸子には、俺の方からも感謝しなければいけないなと思った。

 

「さて、開始時間までしばらくあることですし、適当にお話でもしていましょうか」

 

「彼女が言う通り、そうだな。折角友人同士でこうして集まれたんだ。話を弾ませるのも悪くないのかもしれない」

 

「結局、居るのはいつものメンバーだけどな」

 

「それは言わない約束だろう? 幸子のプロデューサー」

 

 というわけで俺たち四人は、花火大会が始まるまでの時間を有意義に過ごした。まあ有意義に、とは言ってもいつも通りの雑談と何ら変わりは無いんがな。それでも俺としては普通に楽しかったが。

 

 だがそんな楽しい時間の中、今まで殆ど口を開かなかった乃々が突然に口を開いた。

 

「あの……皆さん……?」

 

「ん? どうした乃々」

 

「なんだか、私達の周りだけ妙に人が少なくありませんか……?」

 

「いや、大丈夫じゃないか? 多分俺の風体のせいだろ」

 

「いや、まあ……そうかもしれないですけど……でもそれにしても、さっきから何か変な視線を感じるような気がするんですけど……」

 

 乃々は視線を感じると言った。幸子達は気のせいですよと流したが、俺は何故かその一言が不安だった。

 

 何だろうか、この胸騒ぎは。

 何かがおかしい。明らかに違和感がある。

 

 そしてこの後、ついにその乃々と俺の不安は現実となってしまうのであった。どうやら少し不用心過ぎたか。

 花火大会を楽しむ俺達に背後から忍び寄る悪意があったことを、この時はまだ誰も知らなかった。




Q 随分投稿遅かったな、何していた?
A 学生生活終わって仕事が始まった&連日デレマスで総選挙チケ集めだよ察して。

Q お前いっつも妄想で文章書いてるよな。喜多日菜子Pかよ。
A そうだよ(肯定)

Q なんか最近美嘉お姉ちゃんカリスマブレイクしてない?
A 意図的にそうしてる。てかカリスマアイドルに見えて実は恋愛に関してポンコツ、妹ラブとかそういうギャップ可愛いじゃん。とりあえずそんなことより美嘉付き合って(切実)

Q なんだかんだTwitterやる暇はあるのな。
Aそうだよ(肯定)

Q このSS見てくれているみんなは総選挙誰に投票すると思う?
A 幸子だよ。

Q 最後に一言。
A 総選挙は皆、幸子をよろしくね!


さて、皆さんお久しぶりです。
作者は地の底から帰ってきました。

しかしこうして色々妹に言われて、色々意識しちゃうみかねぇを想像すると、色々妄想が色々オーバーロードしそうです。
意外と本当は普通の女の子な美嘉、自分は推していきたいです(しかし衣装はどう見ても普通の女子高生じゃないんだよなぁ……)

という訳でなんか不安な終わり方でしたが次回、プロデューサーが無双してすっきり爽快ハッピーエンド!(Gガンダム風ネタバレ次回予告)

では最後に一言





『幸 子 を C u 5 位 で 終 わ ら せ る な』

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