素晴らしい世界かもしれないが不死人には物足りない   作:みーと

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ちなみに今度ちゃんと書きますが、篝火の前に召喚サインを書いて放置してたら主人公は異世界に呼ばれました。



第2話

 

 

「……アルトリウスさん、もうレベル30ってどういうことですか?」

 

ギルドで依頼を受ける際、やたらと露出度の高い受付であるルナ嬢が心底戸惑ったように言った。ちなみに名前など思い出せなくなっていたので、狼騎士のモノを拝借している。

 

「毎日、依頼以外でもモンスターを狩っている。このくらいは普通だろう」

 

「いや、たったの2週間で30は異常ですから」

 

彼女は若干引き気味で言った。

どうやら、最近は他の冒険者達にアクセルの街に現れたキチガイ騎士などと呼ばれているらしい。

 

「取り敢えずレベルは120まで上げようと思うんだが、おかしいだろうか?」

 

「人間辞めたいんですか?」

 

もう既に辞めてます、なんてことは言えない。不死人は人外だろう。

しかし、120くらいでやるのが楽しいと俺自身は思っているのだが、どうだろうか。武具も揃っているレベル帯だ。闇霊として侵入し、白霊達と純粋な技量で争うのが醍醐味だと思っている。ただ武器をぶんぶんしてるだけじゃ勝てないぞ。俺のレベルは実際には180くらいあったがな。

 

「まぁ、取り敢えずこの一撃熊の複数討伐依頼を受けさせてくれ」

 

「おかしいですね。駆け出しの冒険者に紹介する依頼じゃないんですが…」

 

ルナ嬢、貴方は疲れているんだ。

なんか目が死んでる。可哀想に、きっと大変な心労があるのだろう。愚痴くらいなら付き合おうと思った。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

一撃熊というだけあって一撃が重い。

しかし、あらゆる異常に耐える力を与え、闇を跳ね返す加護を持った『狼騎士の大盾』を前には意味もない。

本当にかつて見えた奴の左手が潰れてて良かったと思わざるを得ない性能である。俺の主観だが、アルトリウスは盾を失わなければ深淵の主マヌスに敗れることはなかっただろう。

 

熊だけあって家族単位なのか、群れではない為に一匹ずつ確実に仕留めていく。攻撃を受け止め、仰け反ったところを袈裟斬りに。その動作を延々と繰り返し、狼は熊を狩っていく。持久力の数値が低い為に連続で受け止められないのはご愛嬌。

 

やがて指定された討伐数に届いた。あとは死体を売るため、ずるずると引きずりながらアクセルの街へと戻っていく。

 

頭のおかしい騎士の日常である。

 

無論、人の噂とは広がるのが早いものでそんな姿を眺める者がいた。類は友を呼ぶ、頭のおかしい奴の周りにはキチガイが集まるものである。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

何処か遠くを見ているルナ嬢に依頼の達成を報告し、死体を換金したあとは酒場の卓についていた。

不死人であるがゆえに食事は必要ないが、なんとなく周りに合わせて口に入れてみていた。なんだか自分が人であった頃が思い出される………気がした。そもそも人であった頃など殆ど覚えていないかった。

 

ぼーっと活気に溢れたギルド内を見渡しながら、クリムゾンネロイドなる酒を煽る。

 

「あなたが噂のキチガイ騎士ですね?」

 

すると、目の前にローブ姿の幼女が現れた。

やたらと偉そうと言うよりも背伸びをしているような小柄な女の子だ。

 

「人をキチガイ騎士などと呼んでおいて好意的な反応を引き出せると思うか?」

 

全くもって失礼である。ロードランやドラングレイグ、ロスリックではこの程度、可愛いものである。本当に頭のおかしいやつは人喰いミルドレッドとか、積む者とか、指の連中である。他にも仮面でショーテルを持ち、貴公とか言いだしたら黒。ちなみに無名の王を1人で倒す奴も頭おかしい。

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操る者……!」

 

こいつも頭がおかしい組だったか。

爆裂魔法とはあれだろうか。よく亡者がやってる火炎を纏った後の抱擁だろうか。あれは死ねるので出来れば近づきたくないのだが。

 

「あんまり大人をからかうんじゃないぞ。ほら、本名を言え、本名を」

 

めぐみんというのは青ニート先輩と同じでニックネームなのだろう。

 

「ち、違うわい!本名ですし!」

 

ふむふむ、めぐみんが本名なのか。

 

「酷い名前をつける親だな」

 

「酷くないです!紅魔族的には普通ですから」

 

なるほど、見た目タマネギの鎧を誇らしく身につけるカタリナの騎士達と同じ要領なのかもしれない。

 

「アルトリウスだ。それでめぐみん嬢、何かご用かな?」

 

「おっと、そうでした。ふ、アルトリウスよ、我と手を組み世界を支配しようではないかッ!」

 

「……ああ、パーティーを組んで欲しいのか」

 

難解な言葉を使う。この遠回しな発言はどうにかならないだろうか。

 

「まぁ、端的に言えばそうです」

 

「だが、どうして俺なんだ。その紅魔族とやらがなんなのかは知らんが、そこで随一なのだからそこそこな魔術師なんだろう。わざわざ俺と組まずとも引く手は多いのではないか?」

 

「ギクッ!?」

 

訳ありか。

 

「そ、それはですね、あれです。それです。わ、私の力についてこれる前衛職がいなくてですね」

 

あたふたと隠す気もないような嘘をついていくめぐみん。

呆れた面持ちで彼女を眺める。すると、しゅんと肩を落としてしまった。

 

「ふむ、組むのは構わんのだが、俺の受ける依頼は高難度ばかりだぞ。お前の身の保証が出来ない」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

組んでも良い、その言葉でめぐみんはぱぁと花が咲くように笑顔になった。なんというか、ちょろい。ドラングレイグの親切な何某さんも自分や他の不死人相手にこう感じていたのではないだろうか。

 

「ふふふ、爆裂魔法は最強の攻撃魔法!たとえどのような難敵だろうと一撃で粉砕してみせようではないか!」

 

「今度、この街からずっと先に行ったところにある岩山に住み着いているらしい竜種を狩りに行くんだが、一緒に行くか?」

 

「……え?」

 

竜種と言っても所詮は空飛ぶトカゲ。岩の古龍のような絶対強者ではないことは確認済みである。試しに竜狩りの槍を突き刺してみたが、簡単に貫けた。原盤強化しただけはある。

 

「安心していい。竜狩りには慣れている。まぁ、流石にオーンスタインほどではないがな」

 

「お、おーんすたいん?」

 

「ああ、かつて争った男でな。竜狩りにおいて奴の右に出る者はいなかった。唯一、太陽の長子が彼に並ぶ存在だったらしいがな」

 

懐かしい。あの絶望の都、アノール・ロンドにおける最後の絶望。竜狩りオーンスタインと処刑者スモウ。片方倒すとパワーアップとかいい加減にしろと声を大にして叫んだのは良い思い出だ。

ところでその後にドラングレイグの青聖堂に古い竜狩りなるそっくりさんが居たのだが一体……。何より、アノール・ロンドで倒したはずなのに古竜の頂に武器とか鎧が落ちてるのは何故。いや、無名の王を追ったかららしいが。……俺が倒した彼は何者だったのだろうか。

 

「よく分かりませんが、紅魔族的に興奮する名詞がぽんぽん出てきます!」

 

まぁ、話を戻そう。

とにかく何者であろうとオーンスタインは強かった。スモウも強かった。そして、その後の太陽の王女はすごかった、その一言に尽きる。なんというかアノロン攻略して良かった。わざわざ遠眼鏡と太陽虫取りに戻ったほどだ。

とにかく思い出がたっぷり詰まったアノール・ロンド。

 

 

エルドリッチ……許すまじ。

 

ニトは良い、好きなだけ喰ってしまえ。お腹壊しそうだがな。

だが、プリシラとグウィンドリンはダメだ。暗月警察的に許さん。俺は悲しくて仕方なかったよ。

 

「あ、あの、なんか殺気みたいなの溢れてますよ…」

 

「む、すまん。少し怨めしい相手を思い出してな」

 

見渡せばめぐみんだけでなく、他の冒険者達も何事かと此方に目を向けていた。

彼らに謝罪し、頭を下げるとまた酒場には喧騒が戻った。

 

 

 

 

 

丁度、この頃とある世界のとある場所、1人の少年が死の間際だったりする。

 

 

 




エルドリッチは許せん。
グウィンドリンは百歩譲って見逃してやるがプリシラはダメだ。
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