素晴らしい世界かもしれないが不死人には物足りない   作:みーと

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言い忘れてましたけど、基本感想は次話の更新の時に返してます。



第3話

 

 

 

 

この世界にはアクシズ教というものがある。

元の世界における白教のようなものだ。グウィン王の叔父であるロイドを主神として崇めるもの達である。時代が進むにつれ、廃れていく宗教ではあるが、信徒の1人であった聖騎士リロイなどは記憶に深く刻まれている。

 

何故こんな話をしているのか。

それはひとえに女神を名乗る女が金をせびるからである。

 

「俺の信奉する神はグウィンドリン様とヨルシカ様だけだ。アクシズ教徒とやらではない」

 

「あ、すみません。……どうか、お金を貸してくれませんか?」

 

「ふむ、構わんぞ」

 

「本当ッ!?」

 

良いとも。アストラの上級騎士であったオスカーに救われ、今の俺があるのだ。他人への施しは躊躇う理由もない。人に施されたのだから、人に施すべきだろう。

 

「いくら欲しい?」

 

それ以外にも高難度な依頼の報酬が貯まるばかりなのだ。この世界では食事と宿代以外には使っていない所為である。武器など買う必要もないからだ。

 

「えっと2000エリスあれば……」

 

自らをアクシズ教の御神体であるアクアと名乗った女性はチラリと背後にいた少年に目をやった。随分と奇怪な格好である。少なからず興味を持った。

 

「後ろの少年は連れか?」

 

「はい…」

 

「なら2人分で2万エリスもあれば今日の宿代も足りるだろう」

 

財布というほど上等なものではない。革で出来た袋から硬貨を取り出し、アクア嬢に手渡す。

 

「え?こ、こんなに貰って良いの!?」

 

「構うものか。人の助け合いとは何時でも何処でも重要だ」

 

全てが澱んだロスリックの地では白い蝋石こそが救いなのだ。時に心折れかけた者を手助けし、時に心折れそうな自分を支えてもらう。独りでは倒せぬ強敵も徒党を組んだならば、恐れる必要はない。

 

「ありがとうございます!この恩は何時かきっと返します」

 

「期待せずに待っていよう」

 

パタパタと少年の元へとアクア嬢は走って行ってしまった。

すると俺に声をかける前に一悶着あったのだろう。渋い顔をした少年に対して、アクア嬢は得意げに豊かな胸を張っていた。

 

「ほら、言ったじゃないカズマ!人は見かけに寄らないのよ!」

 

「いや、見た目ゴツ過ぎて恐いじゃないか。身長2mはあるぞ、あれ。パッと見て良い人には見えないから」

 

「本当に馬鹿ね、あれは騎士の鎧でしょ。騎士は婦女子には優しいのよ」

 

ふむ、別に俺は騎士ではないのだが。アルトリウスを騙る以上は騎士としての振る舞いも必要だろうか。残念ながら俺は戦士であり、騎士ではない。その辺は上手くやれる自信がなかった。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

数日後、アルトリウス(仮)はめぐみんと共にギルドを訪れていた。

隣の爆裂幼女は凄まじく上機嫌で、今にも踊り出しそうだ。

 

「ふふ、ふふふッ」

 

訂正、気味の悪い笑みも浮かべていた。

 

「見ましたか!見ましたよねッ!私の爆裂魔法がドラゴンの頭を吹き飛ばしたのをッ!」

 

さて、この言葉は何回目だろうか。最初の数回は自分の爆裂魔法がドラゴンに通じた事を喜んでいるのは明白だったので、大人の優しさを持って接していたがいい加減にして欲しい。馬車に揺られている間も延々と己の爆裂魔法の自慢を繰り返す。最初の微笑ましさは何処へやら、うんざりするほどにしつこかった。

ちなみに詳しく言えば、俺が『竜狩りの槍』を用いて瀕死にしてからの一撃である。そんなに自慢するならソロで狩ってきて欲しい。

 

めぐみんを竜の討伐に連れて行ったのは間違いだったかと思わざるを得ない。最初はビクビクとしており、竜の威容を前に戦々恐々だった癖に手柄を譲る形でトドメを刺させた途端にこれである。まるで自分の爆裂魔法だけで倒したような言い方をするなと言いたい。しかもその後ぶっ倒れて俺に後始末をさせた癖に。

しかしだ、わざわざ彼女の機嫌を損ねるような真似をする必要もないかと考える。

 

 

相も変わらず、虚ろな目で歪な笑みを浮かべるルナ嬢に内心手を合わせながら、依頼の完了を報告した。

 

 

「アルトリウス、何か依頼を受けましょう!一日一爆裂がまだ済んでいません」

 

一日一善みたいに言わないで欲しい。

一日一爆裂ってなんだし。

 

「む、むむ…」

 

「どうした、めぐみん嬢」

 

どうやら彼女は依頼書とは別にパーティーの募集板を見ているらしかった。

 

「これを見てください」

 

覗いてみるとどうやらアークプリーストがメンバーを欲しがっているらしい。アークプリーストと言うのは謂わゆるヒーラー。回復職である。聖職者らしいが、ロスリック基準で言うと聖職者はとんでも威力の奇跡で暴れまわる危険な連中である。ゼロ距離の太陽槍とか即死である。しかも回復してくるから面倒だ。

 

「これ、参加してみませんか?パーティーに回復職がいるだけでかなり違いますよ」

 

「ふむ、めぐみん嬢だけで参加したらどうだ?俺とのパーティーは解消しよう」

 

正直、これからも爆裂自慢をされるかと思うと切にパーティーを解消したい。

 

「どうやら彼処の2人組なようですね。早速、襲撃しましょう」

 

「他人の話を聞け」

 

一瞬、捨てられた子猫の様な顔をした後、無理やり俺の腕を引いて件のアークプリーストだろう者の元へと向かって行く。誰も組むなんて言ってないんだが。

 

「募集の張り紙、見させてもらいました」

 

そうして始まるめぐみんの自己紹介。いつも通りに周りの目は冷たい。だが、それが正しい。俺だって本当はこんな子と関わりたくない。どれくらい関わりたくないかというと下水を這い回るネズミくらいには関わりたくない。奴らの出血ダメージは馬鹿に出来ない。

 

「ちなみにこっちの鎧はアルトリウス。アクセルの街にその名を轟かせる頭のおかしい騎士です」

 

「あ、こないだはどうも。お陰様で冒険者になれました」

 

「それは良かった。だが、アクア嬢、その様子を見る限り冒険者としての幸先は良いものではなかったようだな」

 

ははは、と乾いた笑みを浮かべていた。

 

「なんですか、知り合いなんですか?いつの間に知り合ったんですか?」

 

「先日、少々金を貸しただけさ」

 

俺に声をかける前に何人かにあしらわれていて哀れだったからな。

 

「まぁ、いいです。そこの冴えない男、私の名前に文句があるなら聞きますよ」

 

やはり紅魔族のノリは理解し難いものらしい。

 

 

 

 

 

「つまりジャイアントトードが2人では狩れないので、メンバーを求めていたわけですか」

 

「ああ、そうなんだ。で、参加してくれるのか?」

 

奇怪な装いの少年、名を佐藤和真というらしい。どうやらアクア嬢ではなく彼がパーティーリーダーだったようだ。

 

「私を参加させたいのですか?竜さえ屠る爆裂魔法を操るこの私を!」

 

「え、ドラゴン倒せるのかッ!?」

 

「無論です。私の爆裂魔法は最強ですから」

 

早速か。頭痛が痛い(誤用。

そのドヤ顔に糞団子を投げつけたい衝動に駆られる。だから俺が瀕死にさせて動きを封じなければ当たりすらしないだろうにと。

 

「まぁ、9割はこの人が独りでやりましたけど……」

 

「小声で言っておけば後で責められても文句は言えないだろう、なんて詐欺師のような事を考えるなよ、めぐみん嬢」

 

だらだらと冷や汗を垂らしながら彼女はこちらを睨んだ。さして気にせずカズマ少年へと声をかける。流石に詐欺に遭うのを見過ごすほど腐ってはいない。

 

「カズマ少年、この幼女はいくつか……いや、いくつもの欠陥を抱えている」

 

「なんで言い直したんですか」

 

不服そうなめぐみんが口を尖らせる。

 

「それは言葉で説明するよりも直接見た方が早い。まずは試しに彼女の実力を測ってからでもパーティーに入れるかどうかを決めるのは遅くはないだろう?」

 

「やだ、この人この世界で会った誰よりも常識人」

 

何故か、感動しているカズマ少年達を連れ、草原へと繰り出した。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

広い草原を見渡せば数匹のジャイアントトードが発生していた。

 

「私の爆裂魔法は最強であるがゆえに詠唱に時間がかかります。その間はよろしくお願いします」

 

「そうか。なら俺とアクアで1匹足止めするから、アルトリウスさんは他のを頼めます?」

 

「了解した、と言いたいところだが、今回はあくまでめぐみん嬢の長所と短所を知る為のものだ。俺はめぐみん嬢の護衛だけをさせてもらおう」

 

「は、はぁ…」

 

俺がやっても良いのだがカエル相手ではすぐに終わってしまい、めぐみん嬢の出番がなくなる。せめて呪殺が出来る煙でも吐き出せば話は変わるが。奴らの集団戦法には散々な目に遭わされた。

 

「黒より黒く、闇より暗き漆黒にーー」

 

めぐみんの詠唱が始まる。

なんか毎回詠唱が違う気がするが、細かい事を気にしても仕方ないと放り捨てた。だってめぐみんだもの。

 

ふと視線を移してみれば、ジャイアントトードにアクア嬢が喰われていた。口から足だけが出ている。あれは大丈夫なのだろうか。俺もファランの森のグールに喰われた経験があるが、あれとは別か。

 

「ーーエクスプロージョン!」

 

どうやら詠唱を終えたらしいめぐみんが爆裂魔法を放つ。

その閃光はジャイアントトードを包み込み、跡形もなく消し飛ばした。

 

「おぉッ!!」

 

カズマ少年がその威力に歓声を上げた。

ここまでは良い。俺の目から見ても中々の威力であるのは間違いない。しかし、この倒れ伏す幼女の後始末をしなければならない。

 

「……て、あれ?」

 

「カズマ少年、これがこの幼女の欠陥の一つだ。めぐみん嬢は消費魔力の関係から爆裂魔法を一度放つと動けなくなる」

 

「はぁぁぁぁあッ!!?」

 

「ば、爆裂魔法は最強の攻撃魔法。必然的に消費魔力も大きくなるのです」

 

普通は一発しか撃てない魔法をメインになんかしないという指摘はすべからく捨てられた。紅魔族はもう少し常識を持って欲しい。

 

すると何かを悟ったようなカズマ少年がこちらへと歩んできた。

 

「あの、アルトリウスさん。こいつら放っておいて俺とパーティー組んでくれませんか?」

 

若いというのに何という目をしているのだろう。ルナ嬢と同じ気配がする。これは労らねばなるまい。

 

「安心したまえ、カズマ少年。いつの間にかカエルに喰われためぐみん嬢も、足すら見えなくなって本格的に危ないアクア嬢も俺が助けよう」

 

「あ、いや、もうあいつらは消化されていいんです」

 

素直ではないな、カズマ少年。

まるで俺の呪術の師であったクラーナのようだ。よく馬鹿弟子と謗られたものだが、あれも好意の裏返しと思えば可愛いものだ。

 

背負っていた大剣を片手で構え、アクアを飲み込んだジャイアントトードの下腹部を貫くように突き刺す。あまり上だと飲まれた彼女も死んでしまう。

無論、手心を加えているし、急所ではないこともあり、即死ではない。呻きながら、血と共に飲み込んでいたアクアを吐き出した。彼女の無事を確認し、瀕死のカエルの頭を踏み抜く。頭蓋が潰れる不快な音と共に絶命した。

 

「さて、次はめぐみん嬢か」

 

足先が痙攣している。

ぬめっとした体液と赤黒い血液に汚れたアクア嬢を一瞥し、早く助けてやろうと思うアルトリウスだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カエルは呪死カエルしか出てこない。あいつらは集団で襲ってきて黄色の煙で殺される。

やっぱ『火継ぎの大剣』装備時に薪の王としての力を使えるとか胸熱だと思うんだけど、どう?
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