業火の奇術師   作:ジュースのストロー

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注意!!

怪盗キッドの逆行小説です。
黒の組織に侵入してます。
たまに人殺します。
人格改変有ります。

それでも良い人は続きをどうぞ↓




業火の奇術師 1

 

真っ赤な満月が夜空に浮かぶ。辺り一面が月の明かりで照らされる中、倉庫街の狭い道、そこに慌ただしく走る1人の女の影がいた。

女は逃げる緊張下の中でも気分が高揚していた。ここまで来てしまえば、残りはあと僅か。任務達成間近の達成感に自然と口元が弧をかく。

 

「ふふっ、やったわ! これで私達は「〝私達は〟どうしました?」

 

急に登場した男に驚きを隠せない様子の女はすぐに周りを見渡して、声の主を発見する。その姿を見て思わず舌打ちと共に小さく言葉が漏れた。

 

「ちっ………もうバレたか…」

 

暗闇から女の前へと姿を現したその男は、口元に笑みを浮かべながらその女と対峙した。その笑みは涼やかな筈なのに、その男から発されるプレッシャーのせいでとてもそうは思えない。先程まで浮かれた表情だった女の顔に冷や汗が伝う。

女は焦っていた。黒の組織に侵入して情報を盗み出すなど簡単に出来るとは思っていなかったが、それでもこれまでやれる事はやって来た。その集大成ともいえる今回の騒動で、やっと情報を入手して逃走をしている所なのだ。情報操作によって事が発覚するのを遅らせて逃走の時間を稼ぎ、余裕を持って本部に帰る筈だったのに……今、目の前の男に見つかったという事は即ち企みの失敗を意味する。

 

「あら、こんばんは。どうして貴方がこんな所に?」

 

どうせ無意味だとは思うが、しらばっくれた言葉を投げかけてみる。単純な戦闘能力では勝ち目がないし、会話の間に何か突破口が見つけられるかもしれない。

 

「それはこちらのセリフですね。貴方は今頃、パリに向かってる筈ですが。」

 

やはり騙されてはくれないが、どうやら会話をしてくれる気はあるみたいだ。手に獲物も持たずに、プラプラとしている様子から見て隙を付けば逃げる事位なら出来るかもしれない。

 

「ちょっと遅れちゃってね。だから私、急いでるの……それじゃあね!!」

 

長話をしても自分が不利になるだけだと、セリフと共に男に向かって銃を2発打つ。勿論急所を狙った的確な攻撃だが、簡単に殺されてはくれないだろう。その結果を見もせずに建物の影に逃げ込もうと走り出す。

脇目も振らずに逃げなければ男相手に勝ち目なんてない。それに相手が男だけとは限らないのだ。何処かに部下を忍ばせている可能性の方が高いだろう。だから再び見つかる訳にはいかないのだが、幸いな事に今いる倉庫街を越えれば街中に出る。そこで銃を乱射などしたら、何かあると言う様なものだ。奴らとてここまで大きな支部の1つを簡単に失いたくはないだろう。事実、女もずっと監視をされていたから本部との連絡など取れていないし、本部は組織の場所など分からない。これから戻って、急ぎ情報を伝え、ようやく任務が達成される筈だったのだ。

倉庫街の道無き道を周りを警戒しながらも、あたかも自分の庭の様に駆け回っていた女は気づかなかった。自分が向かう先にある足元の透明な糸に。簡単に回り込んでいた男の存在に。

女が気付いた時には足が取られ、視界が反転していた。急激な変化に驚いたものの、すぐに罠だと気付いた女は糸を切ろうとナイフを取り出して構える。しかし、糸を切るよりも早く女に近付いた男はそのナイフを蹴飛ばして地面に叩きつけた。

ここからの逃亡は絶望的。唯一持つ武器の銃も、この体制で打っても上手く狙いが定まらないし、先程の2発でも掠りもしてない男の様子から無理な事は想像に難くない。これまで女が組織に潜入して情報を得るために多くの者を、事を犠牲にして来たのに捕まってしまった事が悔やまれる。せめてもの抵抗として、男の顔を睨んでからこの世を去ろうとしていた女が目を上に上げると、思考が停止した。

 

「は?」

 

思わず漏れてしまった声も仕方がないだろう。そこには今まで対峙していた30代程度の男性ではなく、中学生位の少年がいたのだから。

少年はニコニコと人好きする笑みを浮かべるだけだが、月明かりに照らされた特徴的な真っ白のチェスターコートからも分かる様に先程まで女を追い詰めていた筈の男と同一人物と見て、間違いないだろう。本当はこんなに若かったのかとか、何故今更本当の姿を現したのかとか女の頭に、焦りながらも疑問が飛ぶ。

暫くの間、膠着状態に陥っていたが急に少年が先程までよりよりも高い声で笑い出して均衡が破られる。

 

「ふふふっ、すみません。女性に手荒な真似をしてしまって。それに随分と驚かせてしまった様だ。」

 

その声に苛付き睨みつけるが少年はどこ吹く風。確かに先程までの自分はさぞ間抜けな顔をしていたであろうが、笑われるのは気分を害する。それに謝るなら、この拘束を解いて欲しい。そしたらダッシュで逃げるのに。

 

「また逃げられたり、撃たれたりしたら困りますから、このままで失礼しますね。1つだけお話があります。……私と契約をしませんか?」

 

 

■□■

 

 

揺れる電車の中、女は先程まで対峙していた相手の事を考える。思い返すと胡散臭い話ではあったが、女が今生きている事がその証明なのだろう。

 

「契約……ね。」

 

そう契約。その内容は今回女を見逃す代わりに、男に色々と協力しろという物だ。しかも盗んだ情報はそのまま持って行っても構わないらしい。思わず聞き返してしまったが、少年は相変わらずニコニコしたまま。どうせ殺されるなら、大人しく従った振りをすれば良いと考えた女は契約を呑み、そして今に至るのだ。

正直言って、全く信用してなかったし殺されるだろうと考えていたのに拍子抜けではあるが、これから協力させられる内容に不安がよぎる。いや、それよりもまずは自分が持つ情報を本部へと安全に届けなければいけない。公共の乗り物ならまだ手を出しにくいだろうと考えて地下鉄に乗り込んだ女は、追っ手を警戒して遠回りにCIAの支部に戻るつもりである。

少年が構わないと言って渡してくれた情報によって少なくとも1000は超える者が逮捕されるだろう。先程まで死を覚悟していたからか、思わず笑みがこぼれる。そういえば、と少年が最後に残した言葉を思い出した。自分が少年に敵か見方かを尋ね、少年はこう返したのだ。

 

「私は名探偵の見方ですよ。」

 

名探偵とは一体誰を指すのか。恐らくだが黒の組織でも自分が所属するCIAでもないだろう。謎は深まるばかりで、何も信用する所はないのに何故か弟と同じ位のあの少年を信用したいと感じている自分がいた。

 

「スピリタス……世界で最もアルコール濃度の高い酒か……。」

 

 

□■□

 

 

「もしもし、ボス。こちらスピリタスです。手筈通りに獲物は逃がしました。……はい、かしこまりました。……それでは。」

 

ピッ

 

誰もいなくなった倉庫街で電話をした男は口元に笑みを浮かべた。未だ男が何を考えているのかは、誰も分からない。

 

 

 

 

 






今回登場した女性、名探偵コナンの主要人物の1人です。
誰だか分かりましたか?


■□■


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