インフィニット・ストラトス ~力穢れなく、道険し~   作:鳳慧罵亜

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蝶と獣

爆風が晴れたそこには装甲が拉げ、一部のアームが捻れ曲がり、破損し、義手となった左手の機械部分が露出したオータムとアラクネの姿があった。

 

「ぐ……がはっ……て、てめえ……!」

 

「うふふ♪後ろから敵を撃つのって、爽快とした気分が味わえるのよね~。あなたも一度やってみたら?その時間があればの、話だけど♪」

 

ISの絶対防御に守られたお陰で致命傷は避けられたが、それでも深手には変わりはない。しかもエネルギー残量も残り300を切った。強奪したISは改造を加えて、

シールドエネルギーが4000を超える数値を持っているはずだったというのに、今はこのざまだ。

 

本来この任務は簡単なもののはずだった。織斑一夏のISを奪い、撤収する。それだけのはずが、あの時、私の左手を切った男に阻まれ、ただでさえ化物の相手をしている時に

情報とは違うが、あのISはロシア製のモノのはず。つまりロシアの国家代表とも対峙している状況。

 

最悪だった。こうなったら、しばらくコイツとはお別れになるからあまり使いたくなかった。強奪したとは言えど、このISに愛着があるのも事実。

だが、ここはそれよりも、撤退することの方が優先だ。

 

「さて、亡国企業(ファントム・タスク)。お前がどこまで知ってるかは知らねえが、『取引』の材料にはなるだろう。おとなしくしてもらおうかな」

 

首筋に大剣を突きつけ、蘇摩は言った。正直なところ、蘇摩はオータムから得られる情報などはゼロに等しいものだろうと思っている。組織のお偉方の考えていることを

いちいち下っ端連中が知っているはずもない。幹部クラスとなれば話は別だろうが、コイツは幹部でもなんでもないから、まあISは『取引』の材料にはなるだろうが。

搭乗者なんて、適性高いやつ攫って、教育すれば簡単に代表候補生レベルの奴は作れるだろうしな。

 

ぶっちゃけ、コイツ(オータム)は殺しても構わない。が、この場には楯無だけではなく、無駄に暑い一般人もいるから言わないが。

これくらいの配慮は出来るつもりでいる。

 

「じゃあ、どうする?一応『お客さん』として扱わせてあげるわよ」

 

楯無も言葉に気を付けてくれているからよし。まあ、お客さんという名前と実際の扱いの差がひどいな。

 

「けっ!誰がてめえらなんかに捕まるかよお!!」

 

オータムは拡張領域(バス・スロット)から取り出したらしい、閃光弾のようなものを使用した。

 

「ちっ」

 

舌打ち。コイツはISにも効果のあるやつだ。通常スタングレネードはISには効果がない。もともと便宜上は外宇宙探査用として作られたもので、

中には直視した瞬間目が焼ける太陽のようなものもあるわけで、それらに対応するために、ハイパーセンサー越しの光量は自動で調整される。

 

今回のは、それを見越した対ISようの光量調整を無効化する類のものらしい。どういう技術を使っているかは知らんが、いいもん持ってんじゃん。

 

と感心してはいられん。すぐにISのレーダーを使い位置を確認するが、今度はレーダーがノイズを立てて全く見えない。おいおい、高濃度のプラズマ渦流でも流れてんのかよ。

破裂したプラズマ団は渦流となり、周囲にECM効果を引き起こす。おかげで、そいつを使えば自分も相手もレーダーが一時使い物にならなくなるわけだ。

 

プシュッ

 

なにか空気の抜けるような音がした。その音にいち早く感知した。楯無が叫ぶ。

 

「さがって!あの女自爆するきよ!!」

 

「「!!」」

 

急ぎ一夏はブーストを吹かし下がる。俺は大盾を構えなおす。こいつを持ってると運動性及び機動性が15%ほど低下するのだ。それほどにこいつが重い。

たしか軽く3桁の重量を持っていたはずだ。その分その防御能力は折り紙がつくのだが。

 

ドワォ!!

 

「またか!」

 

聞き覚えのある音に思わず突っ込む。だが、それは爆発音にかき消されたので良かった。ISの自爆は凄まじい爆風と閃光を引き起こし、戦場となった更衣室が、何と綺麗に真っ平ら。ロッカーが

最早見る影なしにブッ壊れている。

 

そして、あの蜘蛛女は取り逃がしたようだ。

 

「くそっ。3人もいてたったひとり捕まえらんねえとはな。俺も落ちたもんかね」

 

自分の対応の悪さに若干嫌気がさす。ISで自爆するなんざ何考えてんだよ。ひとつ間違えりゃ、自分だって吹っ飛んでいたぞ。少なくともそんなリスキーな真似、俺はしない。

 

「仕方ないわ。今回は痛み分けってところね、少なくともあの女のISはしばらく使えないから戦力は落ちたと思っていいから」

 

『ソーマ?』

 

「イツァム?どうした」

 

プライベート・チャンネルでイツァムから連絡が入った。声からして若干息が切れているから、かなり激戦だたようだな」

 

『ごめん。2機とも逃げられた。あいつら半端じゃないわよ』

 

「つかお前は2機相手にしてたのかよ。こっちは3対1のリンチ状態で取り逃がしたってのに流石だな」

 

蘇摩の正直な関心へのイツァムの返事が、なぜかバツの悪そうなものだった。

 

『その、最初は1対2だったけど、あとから中国とフランスの代表候補に助けられて、ね一機は行動不能に追い込んだけど、そこからもう一機がすごいことになって、ボロボロよ』

 

「デュノアに凰が?敵さんもかなりの手練がいるようだな」

 

『後で詳しいことは話すわ』

 

「わかった」

 

通信を切る。楯無し達のほうを見ると一夏ががっくりとうなだれていた。どうやら楯無がまたからかっているらしい。そして、楯無の指には一夏が被っていた王冠がくるくると回っていた。

あー、はい。状況はわkりました。あの王冠は、手に入れた奴が一夏と同じ部屋ですせるというもの。本人の意思関係なくに、だ。

 

「予想はついていたが、あいつにとっちゃ精神的に過労で寝込むかもな」

 

そして、それが俺自身にも言えることを。俺は自覚していた。

 

――――

 

「く……かはっ」

 

正直、体の調子は思わしくない。あの時、撃ち込まれた衝撃砲が、不運にも『核』に直撃した。心臓より13mm右にあるこの臓器は僕にとって重大な部分であり、だからこそISの装甲も

かなり高い強度になっていたはずなのに、衝撃砲の威力は装甲の強度を上回る破壊力で、装甲に多大なダメージを与えた。

 

しかも、直撃を受けたときにその衝撃が、僕の核にダーメージを与え、今僕は動くことがままならない状態にある。

今、僕等は街の郊外にある廃墟で、休息をとっていた。

 

彼女―――マドカは僕を心配して、ここまで運んでくれた。

 

「レイ……っ」

 

優しく、僕を壁にもたれかけ、彼女はISのハイパーセンサーを用い、この辺一帯を監視し続けている。IS学園からオータムの脱出が確認された時に急いで、彼を抱えて脱出した。

追跡はなかったが、それでも追ってが来ないとも限らない。

 

そして、侮っていた。あの女―――オーストラリア代表、イツァム・ナーを。

代表候補の2人は大したことはなかった。フランスの代表候補は人は優秀だったが、ISの性能が私のサイレント・ゼフィルスに遠く及ばない。あしらうのは簡単だった。

中国の方も、格闘戦で私に負けた時点で終わっている。

 

だが、あの大菜は別格だった。標準、回避、移動、防御、攻撃、操縦技術の全てがずば抜けて高い。第2世代と第3世代、ISの性能差がなければ恐く負けたかもしれないほどに。

ISの操縦技術では認めたくはないが、やつの方が上。私はあの女に、少しだが尊敬の念を覚えた。できればあのおおなは殺さないでおきたい。

戦いになれば不利だが、ISの性能差で勝っているし、私にはビットの偏向射撃(フレキシブル)による攻撃と、何より、レイがいる。

 

コイツがいれば、私はなんだってできる。私の復讐が終わり、レイの復讐が終われば、その先には何が待っているのだろう。

こいつと一緒なら、何が待っていても簡単に超えることができると、私は信じている。

 

だが、私は復讐の途中でひとつやることが増えた。

中国の代表候補生。あの女はレイを傷つけた。

 

あの女は私の力のすべてを使ってでも、殺してやる。絶対に、絶対に許しておけるものか。

 

「マドカ、スコールから連絡。オータムの回収が終わったって」

 

………忘れかけていたが、オータムの件はどう処理しようか。

あの女は何かにつけて私に噛み付いてくる。ISの能力は私に及ばないくせにうるさいものだ。

まあ、それはその時に考えていこう。それより、大事なのは

 

「どうだ?レイ」

 

「もう少し……体の反応がもう少しで回復するから、それまでこのまま……」

 

「わかった」

 

優しく彼を抱きとめる。白い肌に金色の髪が映え、エメラルドブルーの瞳が綺麗だ。

 

私は目を閉じ、あの日のことを思い出していた。




感想、意見、評価、お待ちしています。

本格的に動き出したオリ主その2。なんか変な物が出てきましたが、
あれがなければ、レイはいろんな意味で大変なことになります。
精神的にも、肉体的にも、ISてきにも。

次の話で、彼らの関係が劇的に変化した話を出すつもりです。
お楽しみに。
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