インフィニット・ストラトス ~力穢れなく、道険し~   作:鳳慧罵亜

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ああ、気がついたら一週間経っていた……。

すごく遅れてしまいまして申し訳ありません。
次話はなるべく早く投稿しるよう努めます。


黒い羽、白い翼・前編

生徒会室では、現在楯無、虚、蘇摩の3人が書類の山と格闘していた。

ただ淡々と書類を書いて、印を押してパソコンにデータを入れる。の繰り返しだが、かなりくるものがある。

 

かれこれ1時間はこの作業を通しで行っている。そろそろ限界が近くなってくる頃合。

 

「あーもう!なんでこんなに書類が多いのかしら!?」

 

「以前の襲撃に加えて、来年の部活の予算案などのまとめ、その他諸々が一度に来ていますので。今年は教師の方々もお忙しいということで一回に回ってきたようです」

 

「半ば不運で、半ば自業自得だな。とはいえこの量は多すぎる」

 

「愚痴ばかり言っていても書類は減りません。一枚一枚やっていきましょう」

 

そんな感じで、書類の片付けをやっていた。各々の前には書類の他にカップが置いてあり、紅茶の香りが伝わってくる。

一口飲んでまた書類の山と向き合う。疲れたらまた一口飲む。その繰り返しなのだ。

 

だが、1時間も続けていけば、書類の山はかなり減ってきていた。始めた頃の5分の1くらいには既に減っており、残りも少なくなってきているので、

あともうひと踏ん張りといったところになるだろう。

 

「ここまで片付けておいてなんだけどさ虚さん。一夏はいいとして、本音はどこいったんだ?」

 

蘇摩はここにはいないあの常に眠たそうにしているクラスメイトの行方を姉に訪ねた。聞かれた虚はため息をつきながらこういった。

 

「本音は簪様のところに行っています。こういう時は病的に鋭い子ですので、仕事をしたくなかったのでしょう」

 

「うふふっ。本音ちゃんがいないのはいつものことなんだし、書類の山だって去年も虚ちゃんに私と3年生の先輩の3人だけでやっていたのだから変わらないわよ」

 

そうして、また書類の束に向き合う。あと10分もすれば終わるだろう。長かったが、ようやくこの書類の山とはおさらばだ。

カップに手を伸ばし、紅茶を一口。……遂に清涼剤が切れてしまった。

 

こういった長く淡々とした技能と集中力が求められる作業において清涼剤というのは絶対不可欠なのだ。

長い作業は精神的に磨り減っていき、休憩も何もなしだとどんどん集中力が切れていき、作業に支障が出てきてしまう。そこにちょっとしたお菓子や飲料などがあれば

それを口にする時間だけでも休憩になるし、口に何かを入れることで気分が回復し、集中力も一度着ることができてまた作業を行うときにつながる。

飲料は喉を潤し、気晴らしの無駄話にも華が咲けば、また作業に打ち込めることができようというもの。

 

それが切れると致命的なのだ。

それが今切れてしまった。こうなると清涼剤がなくなったという事実に精神がダメージを受けて、もう清涼剤が使えないという負担がかかり、

そして作業をしていくと作業中に精神的に磨り減っていき、清涼剤を求めてもないという事実にまた打ちひしがれる。そしてそのまま作業が続行される。

 

負の悪循環に陥ってしまう。

 

「虚ちゃん。紅茶が切れちゃった。注いでくれる?」

 

「ただいま。蘇摩さんもどうです?」

 

「サンキュ。俺も頼むわ」

 

ありがたい。これで残りもなんとかなりそうだ。

 

――――

 

「はぁぁぁぁ……。なんとか終わっわね~」

 

「全くだ。2度もペンを持ち帰ることになるとはな」

 

「両手使えるって羨ましいわ。私なんてもう右手がヘロヘロで箸も掴めないわよ」

 

「お疲れ様です。お嬢様。蘇摩さん」

 

虚が奥から茶菓子を持ってきてくれた。それを俺と楯無は左手で掴む。俺はもともと左利きだからいいが、楯無は右利きだったので、左手で掴んでいるが

流石にあの量をずっと片手一本で書き続けるのはきついだろう。

 

「ああー右手ではしもつかめないということは、昼ごはんが食べられないわ~」

 

「……」

 

「……」

 

次にどんなセリフが出てくるか、それを蘇摩と虚は簡単に想像がついた。虚は無言のままに紅茶を啜り、蘇摩は半ば呆れたような表情で茶菓子を口に放り込む。

 

「蘇摩にあーんしてもらわないと私食べられないわね!よろしく♪」

 

「そうだろうと思ったよ」

 

「4年前からの仲とは言え、そういった行動は周りに余計な誤解を生むことになります。自重してください」

 

虚が諌めるように言うが、楯無は「いやん♪」とまるで聞く耳を持っていない。そういえば、4年前もお嬢様が蘇摩さんに

あーんを要求し、それに応えた蘇摩がお嬢さまの父親に見つかり大騒動に発展したことが……無論お嬢様のお父上は蘇摩にボッコボコにされましたが。

 

……最近、あいつの行動が積極的になってきている気がする……。何故だ?

何か不安なことでもあるとでも言うのだろうか。まさか、俺の帰還指示をどこかで聞いていたのか?

 

焦燥が生まれてきた。だが、それは表情に出すことはしない。もし知られていないのなら、知られないように振る舞う。しれれているなら余計な不安は与えたくない。

 

「ん?」

 

楯無が、俺が無言なのに気がついて、声をかけてきた。

 

「どうしたの蘇摩。黙り込んじゃって」

 

「いや、昼飯お前に渡すのは何がいいかなと思ってな」

 

「おお?なんだかんだ言って蘇摩も乗り気?やっぱり可愛い女の子にあーんするなんて滅多にない経験だもんね♪」

 

「カップのコンソメスープにサンドウィッチでいいな。あれなら利き手じゃなくても簡単に食べれるだろう」

 

「え!?」

 

楯無が何やら驚いた表情をする。いや、普通こう言うだろう。そう思ったが、この人たらし(楯無)は俺の予想を上回っていた。

 

「まさか、あーんじゃなくてサンドウィッチで口移ししてくれるの!?やた♪」

 

「なぜそうなる!?しかもちゃんと説明したよな!?片手で食べられるって言ったよな俺!?」

 

「あらん?なんだか急に耳が遠くなっちゃったわ。うふふ♪サンドウィッチで口移しかあ。楽しみね」

 

「てめえ一回マゾにしてやろうか?」

 

ブツン

 

突然、部屋の明かりが消えた。虚は部屋の入り口にあるスイッチを何度押しても、つかないことを確認する。

誰が言うまでもなく、3人は生徒会室を出た。そして、その異変に気づく。

 

「廊下も全て消えている」

 

「停電かしら?にしても」

 

すると、今度は防衛用のシャッターが順々にしまっていった。それにはさすがに驚いた楯無は声を荒げた。

 

「ちょっと、なんでシャッターが閉まるのよ!」

 

「しるか」

 

シャッターが閉まりきり、昼間で明るかったはずの廊下は新月の夜のように真っ暗になった。

蘇摩は、生徒会室の入口に備え付けてある懐中電灯を取り、灯りを付ける。

 

ちょうど皆出払っているのか、少なくともこの廊下には自分たちしかいなかった。

 

「……2秒経過。おかしいわね」

 

「はい。緊急電源に切り替わる様子もありませんし、非常灯も付きません。何かありますね」

 

「虚ちゃんは蘇摩の電灯もらって。蘇摩」

 

「わかっている。こっちは既にゴーグルつけてっから」

 

お久しぶりの出番となったRAVEN7つじゃない7つ道具。望遠機能付き赤外線暗視ゴーグルを装着。

あたりが、薄緑色に包まれ、虚と楯無が真っ白に見える。

 

『お姉ちゃん。どこ?』

 

「簪ちゃん?私たちは生徒会室の廊下にいるわ。簪ちゃんは」

 

『各専用機持ちは学園地下のオペレーションルームに集合。今からマップを転送する。防壁に遮られた場合は破壊を許可する』

 

千冬の静だが、それでいて強い声が割込み回線でつながる。その発言から察するに、またしても襲撃なりの事態に陥った可能性が高い。

 

「またかよ」

 

思わず蘇摩はそう言ってしまった。

 

――――

 

蘇摩は真っ暗な廊下を、一人走っていた。楯無と虚は先にその地下のオペレーションルームとやらに向かってもらい、自分は部屋に置いてある『仕事道具』をとってきていた。

もうすでに『仕事道具』は取ってきて、あとはオペレーションルームとやらに行く途中だ。

 

「……?」

 

ふと、蘇摩はピタリと足を止めた。自室からここまで結構な距離を走っていたというのに息一つ乱さないとはさすがというべきか。

だが、今は別の方が問題である。

 

暗視ゴーグルに何やら見える。

 

赤外線を感知するこのゴーグル。真っ暗悩みでも誰かがいればすぐに赤外線が反射し、真っ白な影になって見えるのだ。

見えるのは人影。それも数名いる……。

 

学園の女子にしては動きが落ち着きすぎで、隙が無い。つまり……そういうことだろう。

 

にぃ……と、口角が釣り上がる。

 

(面白くなってきやがった……)

 

「おい、誰だか知らねえが、人んちの家に土足で踏み入ってきたんだ。相応の駄賃は払ってもらうぜ?」

 

「……」

 

見える白い影は無言を通す。

 

チャキ……。

 

「!」

 

ダダダダダダダダ!

 

連続した発砲音が響き、狭い廊下に無数の鉄の雨が降りかかる。それは壁や隔壁にぶつかり、高い金属音を響かせてゆく。

だが、そこに本来あってしかるべきはずの音が聞こえない。

 

そう、肉を突き破り、血の噴き出、倒れる音が。

 

「!?」

 

影は驚きのあまり硬直した。目の前の男が、目に捉えられないほどの速さで、蛇行しながら接近してくるのだ。

銃弾は一発たりとも、当たるどころか絣もしない。そして、気づいたときには掌が、自分の眼前に迫っていた。

 

――――

 

「では、状況を説明する」

 

IS学園地下特別区画『オペレーションルーム』

 

本来ならば学園生徒誰ひとり例外なくその存在を知るはずのない場所。

そこに現在学園にいる専用機持ち全員が居た。

 

いや、全員という表現はよくない。詳細に言えば蘇摩ひとりがそこにはいなかった。

 

篠ノ之、オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィっヒ、楯無、簪の7人が並んで立っている。その前には織斑千冬と山田真耶の2人のみがいる。

この特別区画は完全に独立した電源で稼働しているらしく、学園全域の電源が落ちた状態でも問題なく稼働していた。

 

「作戦を説明する前に、蘇摩はまだ来ないのか?」

 

千冬の疑問に、楯無が簡潔に答える。

 

「蘇摩なら遅れてやってきます。作戦は私の方から説明しておきます」

 

「そうか。なら時間もない。早速はじめるぞ」

 

現在、学園は何らかのハッキングを受けており、殆どの機能が停止した状態にある。

 

それを解決するために、学園の主な専用機持ちには、ISのコア・ネットワークシステムを応用した電脳ダイブを行い、解決に当たるというものだった。

彼女らも初めて行う試みに多少の不安もあったが、千冬の激励に応じて、その電脳システムのある部屋へと向かっていった。

 

残ったのは千冬に真耶、楯無の3名だった。

 

「……さて、お前には別の任務を与える」

 

「なんなりと」

 

普段のおちゃらけた雰囲気は完全に消えて、暗部の人間としての顔が出ている楯無。そこには普段見せている明るさは完全に無く、冷徹な人間の仮面があった。

 

「おそらく、この混乱に乗じて、システムのハッキングとは別の勢力が来るだろう」

 

「敵―――ですね?」

 

この混乱に乗じて、必ず動く国はある。そう千冬は睨んでいた。

 

「あいつらは戦えん。悪いが『更識』の力、頼らせてもらう」

 

「お前にとっては厳しい防衛戦になるな」

 

「ご心配なく、これでも私は『楯無』ですので」

 

そう笑ってみせる楯無。千冬はその笑顔がどことなく『奴』に似ている。そう思った。

 

「お前のISもフルメンテが必要なほどにはダメージを受けているはずだ」

 

「ご安心を。ISを使う技術が『更識』ではありませんので」

 

更識の長として、学園生徒の長として一歩も引かない強い眼差し。

 

「ふう」

 

千冬が溜息をついたとき、オペレーションルームのドアが開いた。

 

「!」

 

「済まない。真っ暗なもので『仕事道具』を持ってくるのに多少手間取った。」

 

入ってきたのは蘇摩だった。だが、その姿は普段のIS学園の制服ではなかった。

 

なめらかな光沢を放つ膝まである純白のコートに、黒いズボン。コートの下にに見えるベルトの右腰には、黒い光沢を放つ杖のようなものが見える。

全くの隙のない身のこなしで、入ってくる蘇摩。その動きはまさに強者を思わせる雰囲気だった。その右手には隠しているが何かを持っている。

 

「遅かったな。ラーズグリーズ」

 

「お土産持ってきたんで勘弁してください」

 

背中に隠していた右手を前に出す。そして、放り投げる仕草を行った。

 

ドシャ

 

すぐに落ちる音がして、3人はそれに視線を落とす。すると、楯無は表情を変えることなく、千冬は眉がピクリと動き、真耶は「ひっ」という小さい悲鳴を上げ、青ざめてしまった。

それは……人の生首だった。

 

「ここに来る途中にであった連中ですよ。多分偵察班か何かでしょう。4人ほどいましたけど、首の原型をとどめてたのはそいつだけだったんで」

 

なんでもないように、まるで今日はいい天気ですねー。とでも言うような軽い口ぶりでそう言ってのける蘇摩。だが、その元はすなわち

4人中3人は、首の原型をとどめないダメージを被ったということになる。

 

「……作戦の内容を伝える」

 

「いいっすよ。大体はわかってますんで、あとはこちらの好きなようにやらせてもらいます」

 

「どうするつもりだ?」

 

「全員殺して回る」

 

醜悪な笑みを浮かべてそう言い切った蘇摩。千冬はそれに不安を覚えた。

この任務が不安なのではない。もし、コイツが何らかの理由で敵に回った場合。

 

私は……こいつを倒せるのか?

 

「……任せる。行ってこい」

 

「了解しました」

 

「ja(了解)」

 

そう言って、2人はオペレーションルームをあとにした。




感想、意見、評価、お待ちしています。

……今回は前半の雰囲気と、後半の雰囲気のギャップが上手く書けていたらおk。
タイトルからあとの展開を察する人もいるのかな……?

……罵倒られないよう頑張ります。
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