インフィニット・ストラトス ~力穢れなく、道険し~   作:鳳慧罵亜

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初めてのISでの戦闘描写。うまく書けてるか不安です


傭兵VS軍人

「ああ、俺が恥をかく前に言っておく」

 

蘇摩は模擬戦開始前にこんなことを言いだした。

 

「ISを動かすの今日が2回目なので、ずぶのド素人です」

 

「だからなんだ?そんなことで手加減などするわけがなかろう」

 

蘇摩の発言をバッサリと切り捨てたラウラ。確かに、生身でとは言え自身を上回る力を魅見せられたのだ。ISは性能の差こそあるが、結局は登場者の実力と技術でどうとでもなるようなものだ。

ラウラは驕りではなく、技術であれば1年生、いや全学年の中でもかなりレベルの高い技術と実力を持っていると自負している。だが、そんな彼女でも捉えることは叶わなかった蘇摩の反応速度。

ISのハイパーセンサーの恩恵があるとはいえ、一筋縄ではいかないことは重々承知している。

 

「おいおい、いつ俺が手加減してくれといったんだ?」

 

不敵に笑いながら蘇摩は言った。

 

「ただ、負けた時の言い訳を述べさせてもらっただけさ」

 

カウントダウンが始まる。

 

3

 

(さて、今の俺の能力で、どこまで通用するか)

 

蘇摩は最初からラウラに勝てるなどとは思っていない。ISの能力は一回りもふたまわりも彼女が優っている。しかもAICという、強力なアドバンテージがある。勝つのは、まあ無理だ。これは模擬戦。殺し合いじゃないのだから。

 

2

 

(やつの能力は未知数。だが、奴の反応速度ならAICの間を縫って近接戦闘は必ずしてくる。そこが勝負の境)

 

ラウラは蘇摩が近接戦闘を仕掛けることを確証していた。奴の機体のブースタの配置は、突進力を重視したもの。それは高速で相手に肉薄し、一撃を与える強襲型に見られる傾向。

近接戦闘に使うものが剣か銃かまではわからない。だが、遅かれ早かれ、その瞬間に流れは一気に動く。

 

 

「叩き潰す!」

 

「行きますか!」

 

GO!!

 

開始のブザーが鳴る。その瞬間両期待は一気に距離をとった。ラウラは、自分と同じ様に距離をとった蘇摩に少し驚いた。いや、自分と同じじゃない。奴の方が一瞬先に距離をとったのだ。

 

(ほう、一夏と違って、闇雲に突進するわけではなさそうだ。この機体の特性を理解していると見えるな)

 

ラウラは地面を滑るように下がりながら、6基のワイヤーブレードを射出。それは、それぞれが独自の機動で蘇摩に迫る。弾丸のような速度で、6基の複雑な機動は生中な技量で出来る物ではない。

それをいとも容易くやってのけることが、ラウラの実力を無言のままに語っている。

 

凄まじい速度で迫るワイヤーブレード。それは蘇摩の機体へ複雑な機動を描きつつ迫る。その速度は蘇摩のISよりも速く、モノの数秒で蘇摩を捉えた。だが、迫り来る6基の刃を前にしながら、

蘇摩は余裕の笑みを浮かべていた。

 

「そらっ!!」

 

蘇摩が機体のマントを翻す。藍色のマントはワイヤーブレードと蘇摩のアビス・ウォーカーのあいだに割ってはいる形となる。弾丸の如き速度で、ワイヤーブレードはマントへと突き刺さる。

が、

 

「チッ。防刃仕様か!」

 

ラウラは舌打ちをする。6基の刃は加工のマントへ突き刺さったが、防刃仕様のそれを貫通することはなく、僅かに突き刺さった跡の小さい皺を残すだけにとどまった。

 

「じゃ、今度はこっちから行こうかなっ!!」

 

蘇摩は両手にレイレナード製重機関銃『03-MOTORCOBRA』を呼び出す。だが、呼び出しの最中にラウラは既に体制を立て直し、迎撃の準備を済ませていた。

蘇摩は、まだISに慣れきっていないため、武器の呼び出しにも結構な時間を食ってしまっていた。だが、そんなことは彼は百も承知。そのために、用意した武器なのだから。

 

レイレナード製の銃器は例外なく、高速連射と大口径弾による高い攻撃能力を旨としている。それはその会社が製造しているISが高機動戦闘用の物で、そういう装備が不可欠になっているのだ。

 

両腕の重厚から吐き出される。毎分5000発の弾丸の嵐。反動が強い類の重機関銃は、本来弾をばら撒いての面攻撃に使用されるもの。そのセオリー通りに、蘇摩は銃器を扱っている。

流石は一流の傭兵と言うべきか、銃の使いもなかなかのもの。たまを広範囲にばらまきつつも、しっかりと対象を捉えている。その弾丸の嵐、数の圧倒的暴力の前にラウラは立ち尽くし、

恐怖に怯えるのではなく。それを愚だと鼻で笑うかのように、腕を前に突き出した。

 

瞬間

 

彼女に向かって牙をむき出しにする弾丸の嵐は、すべて彼女の前で吹きやんだのだ。

AIC。ISの駆動に必要不可欠なPIC、つまり受動的慣性操作を応用した武装。その前に、弾丸はすべての動きを止め、彼女の前にひれ伏すかのように止まるのだ。

蘇摩は無駄だと悟ったのか、引き金を引き絞る指を緩めた。同時に吐き出される弾も止まり、排莢された薬莢が地面に落ち、ほかの薬莢に当たった音も止む。

 

だが、彼は銃をしまうと、今度は両腕に巨大な砲台を展開した。

 

日本が誇るISを造る2つの企業のひとつ、対艦巨砲主義で世界的に有名な有澤重工が誇る3代砲台の一つ、『糠平』

 

3代砲台の中で、唯一椀部脱着型のものだ。右腕で、砲身を支えるようにして、構える。その巨大さは見たもの全員のかをを引きつらせるものだ。

 

それはラウラも例外ではなく。思わず「なんだその化物砲は!?」と聞いてしまった。

 

――――

 

アリーナでは、ラウラと蘇摩の戦いを見ていた一夏と代表候補生たちが話していた。その中でも、蘇摩の戦いに感嘆するものもいる。

 

「突進力重視って言うから真っ先に突撃するかと思ったら・・・・・・」

 

「奴は一夏みたいな馬鹿者ではないということだろう」

 

鈴の言葉に答えたのは箒だ。一夏は横で「馬鹿で悪かったな」と愚痴ている。

 

「やっぱりラウラもすごいよ。動きながらあれだけのワイヤーブレードを個別に操れるなんて、そうできないよ」

 

「対する蘇摩さんもすごいですわね。いくら防刃マントでも、あれだけの数を一度に防ぐのはなかなかできるものではありませんわ」

 

シャルロットとセシリアは互いに二人を観察し、評価している。そして、蘇摩が両手に重機関銃を呼び出した。

 

「呼び出し時間はまだまだだね。まあ、動かしたのが2回目なら不思議じゃないけど」

 

シャルロットの言うとおり、彼はISの展開から武器の呼び出しは初心者に少し毛が生えた程度の時間を食っている。おそらく、あれがプロ同然の展開速度ならラウラに手傷くらいなら負わせただろう。だが、今は既にラウラは迎撃態勢に入っていしまい、蘇摩の撃ちだした弾丸は尽く、ラウラのAICによて防がれた。

 

「あれ、カナダのレイレナード社の奴じゃん。あそこの銃器って、物はいいんだけどさ。性能が尖んてんのよね」

 

そして、銃器をしまい、今度は巨大な砲塔を呼び出した蘇摩。それを見た全員が顔を引きつらせた。

 

「げ、あれって」

 

「有沢の糠平だな。あのような物まで持っているとは、砲撃戦仕様の機体には見えないのだがな」

 

箒は一度だけ、有沢の体感巨砲主義について知る機会があった。とは言っても有沢のPR映像がネットに流れていただけなのだが、破壊力は、凄まじいの一言に尽きる。

 

奴の装備している糠平などまだ可愛い方だ。ほかの2つは途方もないものだったのだ。

 

「ですが」

 

セシリアが疑問を口にした。

 

「いくら対艦巨砲主義の有澤重工が誇るキャノン砲だとしても、ラウラさんのAICの前には全くの無力なはずです。なのにこの局面で使うとはどういうおつもりなのでしょうか?」

 

セシリアのそれは最もな疑問だった。そう、ラウラの搭乗機『シュヴァルツェア・レーゲン』の特殊武装。AICは慣性停止システム。実体のないエネルギー兵器ならいざ知らず、実弾に対しては無類の効果を発揮し、1対1なら無類の強さを発揮する。それを前にして機関銃のそれより、巨大で捉えやすい砲弾を使用するのは愚策と呼べるもの。撃てば間もなくラウラのそれに止められて無力となるであろう。だが、

 

「まさか。彼のさっきの乱射は、もしかして・・・・・・」

 

シャルロットは、ふとひとつの可能性を思いついた。それは代表候補生たちの中でも、ずば抜けた技量と、柔軟な思考力を持つ彼女だからこそ思いついた可能性でもあった。

 

――――

 

「糠平か。だが、それもこのAICの前では・・・・・・!?」

 

ラウラも、セシリアと同じ考えを持って蘇摩の砲撃を迎え撃つ用意をした。

 

(AICは起動したまま打たれた砲弾を受け止る。有沢のキャノン砲は威力こそあるが通常のPAICでは御しきれないほどの反動を持つ。奴のISでは一瞬だろうが、その反動で隙ができるはず。一瞬は言え隙は隙、そこにレールカノンを撃ち込み、ワイヤーブレードで畳み掛ける)

 

戦術を頭の中で立てるラウラ。自分が優位でも、絶対に格闘戦は仕掛けない。ラウラは心のどこかで分かっていた。それは本能とも言うべきもの。

 

格闘戦ではほぼ確実に負けるだろう。生身での戦闘力が直に関わる唯一の距離、それが格闘戦だ。銃撃はISの補助でどうとでもなるが、格闘戦はそうはいかない。

軍人であるラウラは、格闘戦でもかなりの自信がある。その腕は格闘戦主体の鈴と互角以上に渡り合えるレベル。だが、その彼女をもってしても奴、蘇摩には絶対に格闘戦を仕掛けない。

 

蘇摩の格闘戦は自分より上であることは先の喫茶店で理解している。だからこそ、中距離以遠で確実に仕留める。

 

レールカノンに電流が注ぎ込まれ、二本のレール上にローレンツ力が形成されていく。

 

(これでいい。あとは奴が撃つのを待つ)

 

自己の能力と相手の能力を客観的に分析した上での堅実な対応。だからこそラウラは見逃した。目の前の人間が、笑っていることを。

 

ガァオォン!!!

 

およそ形容しづらい轟音と共に吐き出された砲弾。ラウラはしめたと思った。

 

(奴の砲弾は近接信管じゃない。もらった!!)

 

砲弾は、ラウラのAICに絡め取られ、完全に停止―――

 

爆ぜた。

 

「馬鹿な!!」

 

ラウラは驚愕の声を上げた。いやこの場にいた全員が目の前の光景目を見張った。

放たれた砲弾は完全にラウラのAICに絡め取られ、停止したはず、なのに、停止したにもかかわらず、爆発した。体感巨砲主義の砲弾は、爆発力も凄まじく、AIC射程ぎりぎりで爆発したにもかかわらず、爆風だけでかなりのエネルギーを持って行かれた。

 

「くっ!!」

 

慌てているラウラだが、この状況で次に起こることを予想しない彼女ではない。

 

絶好の好機。私でも見逃すはずはない。奴の突撃に備え、彼女は体制を直しつつ、腕を前に突き出そうとするが、

 

「残念だったな!!」

 

ギイィィン!!

 

「ぐはぁあ!!」

 

(なんて突進力だ!たった0.5秒前後で10m以上の距離を詰めるだと!?)

 

袈裟斬りで受けた強烈な斬撃で彼女の体は吹き飛んだ。そう、彼女の予見通り、格闘戦に入った瞬間に勝負は大きく動いたのだった。




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