…今日のあたしは一味違う。
あたしは鏡の前で自分の姿を確認していた。もう準備を始めて30分は越えたと思う。だけど、全く無駄とは思わない。なぜなら今日は
……もう少しオトナな雰囲気出せないかな?
何だか最近彼には子ども扱いされている気がする。別に嫌というわけではないのだけど……いや、やっぱりちょっと嫌かもしれない。
……理由は分かってる。
そう、考えれば理由はわかるのだ。多分初めて会った時から今までの積み重ねだと思う。
あたしは彼との思い出を、髪をセットしながら思い出すのだった。
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〜麦野と勇真が出会う数日前〜
「さいゆうりょくこうほ?」
「ああ、そうだよ。」
いつもの様に開発をするために研究所に行くと、担当の先生がいきなりそんな話しをしてきた。
「彼は君と同じ歳ですでにレベル4らしい。しかもそれで天狗にならず開発に取り組み、社交性も高いからと私達研究者の中では彼をかなり高く評価しているんだ。」
「ふぅ〜〜ん。すごいね。」
はっきり言ってそんな人とは一生関わりがないだろうと思ったので適当に返事を返したが、次にきた言葉に激しく動揺する事になった。
「ああ、だから今度会いに行こう。」
「………え?今なんて?」
「今度の土曜日あたりがいいかな。その日は大抵能力開発をしているらしいし。」
「え、ちょ、ちょっとまって!」
「ん?どうしたんだい?」
「な、なんでそんな話しになってるの?それにあたしは……。」
「……大丈夫だよ。君が自分の能力のせいで悩んで無気力になってしまっているのは知ってる。これでも担当だからね。
だからこそ会いに行く事にしたんだ。レベルも社交性も高いならきっと君自身の事を見てくれるさ。」
「……でも…。」
「最悪私のせいにしてしまえばいい。大丈夫、周りからの評価は子どもの能力に怯えて言う事を聞いた研究者になると思うから少しくらい悪評が増えても問題ないよ。」
「…でも、向こうがあってくれないんじゃない?」
「ハハハハ、アポなしで行っちゃえばいいんだよ。」
「……うぅ。」
はっきり言って噂通りの人だとしたらとてもあたしなんかとは友達になってくれない気がしたけど、普段気弱な担当さんがあたしの為を思ってこんな無茶な提案をしてきたと思うとどうにも断る事が出来ず、
結局あたしはこれを了承するのだった。
当日の土曜日、
あたし達は今彼の能力測定を堂々と見学している。担当さんが言うには
「こういうのはビクビクしてたら話しかけられる。逆に開き直って堂々としてたら案外ばれないもんだよ。まあばれた時はすごい怒られるけどね。あ、これ僕の経験談だから。」
だそうだ。一体いつそんな経験をする機会があるのだろうか。
……ほんとに話しかけられないや。
そう、本当に誰もあたし達に話しかけないのだ。たまに通る人も挨拶をしたりする程度、話しかけると彼の様子を一緒に見ながら普段の様子を話す人まで出てくる始末だ。
それで大丈夫なの?
話しを聞くに、彼の能力は
今も車を持ち上げている。さっきは160の掛け声の後、周りを囲んだピッチングマシンから投げられたボールを余裕で避けまくっていた。彼は本当に人間ですか?
開発が終わった後、担当さんは「さあ、ここからは君が頑張るんだよ」と言ってきた。一緒に来ないのかと視線で訴えると、今度は「子どもだけの方がいいよ。時間は稼いであげるから存分に話してきなさい。それに大人として最低限の事はしないとね。」と言って部屋の方に歩いて行った。
それからすぐに彼を見つける事ができた。測定が終わっても平然としている。
……あたしなんか測定の後は疲れてぜんぜん動けないのに。
これがレベル4の力かと思って見ていると、すごい不思議そうに見つめ返された。
あたしは焦って名前と目的をすごい詰まりながら言ってしまった。
彼はあたしの自己紹介の後、何も言わずあたしの事を観察し始めた。
ああ、これはダメかもしれない。
担当さんに申し訳ないな、と思っていたら。この視線には慣れているはずなのに何故か視界が歪んできた。彼が何か口を開こうとしているのを見て、何を言われるのかを考えてしまい涙が止まらなくなった。
まぁ、結局彼は初めての人を観察する癖があっただけというオチだったのだが。
さっきの返事が貰えないまま時間が経って、彼はどうかしたのかと聞いてきた。あたしは返事が貰えてないと言った。
え?それまでに何かなかったか?も、ももちろんよ?恥の重ね塗りなんて絶対にしないから。
でも彼は聞き取れなかったようで何度も聞いてきた。あたしはあってから恥しかかいてないことを思い出し、彼にも少しくらいかいてもらおうとイタズラをすることにした。
あたしの今日の恰好は担当さんのお墨付きだ。これでドキドキさしてやろう。
結果は惨敗だった。
彼は特に反応せず、少し考えた後あたしの耳元で「喜んで」と言ってきた。その後、あたしは気づいたら車の中にいた。
あたしは次は見返してやろうと心に誓い、とりあえず能力開発に積極的に取り組もうと決めた。
それから数日後、何か女の人がお金や仲間、力を自由に使える仕事に興味はないか?と聞いてきたが、あたしは彼に追いつく必要があったので、二つ返事で断った。何故かとても驚いた顔をしていた。理由は分からないけどすごいスッキリした。
それからまた数日がたって、久しぶりに会った彼に能力の自慢をしたら特に驚いた様子もなかったので少し不満だった。
それを感じ取ったのかすごいと言って頭を撫でてきた。いや、別に褒めて欲しかったのではないのだけど。すぐに声に出そうと思ったが、少し待つことにした。
まぁ、まだ彼の方が能力の扱いは上手いわけだし仕方がないか、そう思い仕方なく《し・か・た・な・く》しばらくは彼がしたいようにさせてあげた。別に嬉しくも気持ち良くもない。
ないったらない!!
そしてつい先日、
彼はあたしの特別な存在、初めての存在になりたいと言ってきた。その前に何かあった気がするけど忘れてしまった。
まぁ、そこまで言うなら仕方がないなぁ
なんかその話を担当さんにしたらすごい複雑な顔をされた。
…そういえば、別れる前に他の人には言っちゃダメって言われてたっけ?
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「よし、できた!」
服装も完璧、髪型オッケー、身長だけ少し足りないけどオトナの雰囲気はある。と思う。これであたしもオトナの仲間入りだ!
あたしはそう思いながら彼…勇真くんとの待ち合わせの場所に向かうのだった。
なんか30分くらい前に着きそうだな……。