ダンジョンに獅子が挑むのは間違っているだろうか   作:双盾

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プロローグ的な物です。
次回以降はもっと内容多めになります。


荒野に一人

「我が一族も、広き世界を知るべき時が来たようだ」

 

始まりは族長のこの言葉であった。

凍てつきの大地。その下で我らイクサビトの一族は生きていた。

少し時を遡り、数ヶ月前のことであった。

 

我らが民の住処に外界の者が現れ、外の世界を知った。

そして、交流を求められた。俺はその時の、第一交流人員として選ばれ、様々な世界を見た。

自らとは異なる容姿を持つ2つの種族。そんな彼らが和気藹々と交流する様も。

遠き大地の巨木を見た。

 

その地に住まう民を見た。

病毒に犯され、苦しむ民には目もくれずに、狂ったように悲願を達成せんとばかりに狂う皇帝。

やがて悪しき巨人は蘇った。

だが全ての民が結集し、己が持てる全力を持ってして、巨人を撃退した。

 

そこから少しの時を経て、俺の所属したパーティーは未知の迷宮を発見し、その最深で眠る真の災厄を見た。

俺達は死力を尽くし、真の力を発揮する前に真の災厄さえも撃滅した。

 

そして今に至るまでに、世界は平穏を取り戻した。

我らが族長もまた、世界を見た一人。

 

「時が満ちた、と言うことですか」

 

「その通りだ」

 

広き世界を知るべき………つまり新たな大地の開拓と未知と遭遇。

その時が来たと宣言したのだ。

困惑するものもいた。

しかし悲嘆するものはいなかった。

 

「いざ!!旅立ちの時!!」

 

そして俺は、更なる未知を求め、里を旅立った。

 

 

 

 

 

 

あれからいくつの月日を重ねただろうか。

あれからいくつの未知と出会っただろうか。

様々な種族と出会い、様々な集落と出会った。

盗賊の撃退や餓死寸前の俺を助けてくれた心優しき集落の長。畏怖を抱き攻撃してきた集落もあった。放牧の民、田畑と共にありし一族もあったな。

などと思い出を楽しむこともできるほどには旅の楽しみというものを理解できるようになった。

そして―――――

 

「あれだな」

 

旅の道中で知り合った冒険者から聞いた街。

神の降り立つ地。

今だ果ての見えぬ迷宮。

様々な派閥が迷宮に挑む。

話しに聞いた街が、漸くその姿を現した。

その街の名は――――

 

「ようやく我が双眼に捉えたぞ!!オラリオ!!」

 

 

 

 

 

と、叫んだはいいが。

オラリオの見える地点はここから見た限りでもざっと80~90kmほどはある。

その途中に湖や集落、森と言ったものは見えず、ただただ砂と乾木の荒野が広がっていた。

 

「まいったな」

 

すでに水は底を尽きかけている。予備の食糧はあるが、干し肉などといったものばかりで、汁気のあるものは残っていない。

空は晴天。雲一つない。

照りつける太陽。時折吹くそよ風以外に体を冷却する要素はない。

八方塞か。

せめてこの背にある武器を捨ててしまえば何とか辿り着けるのだろう。

しかしこれらには数えきれないほどの局面で助けてもらっている。

族長直々に頂いた族宝でもある。捨てられるはずがない。

 

「ぐっ」

 

突如視界が眩む。

平衡感覚が薄れる。

頭痛にも似た鈍痛が頭を揺らす。

こんな場所で倒れるわけには………

 

「あと………一歩……及ばず……か」

 

背の金棒を杖代わりに歩くが、視界の明滅は激しさを増し、やがて意識は暗転した。

 

 

 

 

 

ゴトン………ゴトン………

鈍い音が鼓膜を揺らした。

音がするたびに微かな浮遊感と衝撃が背に伝わる。

湿った何かが額に乗せられている。

徐々に意識が明確になっていき、俺は目を開き、体を起こした。

 

「おお、起きたかい」

 

「っ………拙者は………」

 

拙者は、俺が普段使う一人称だ。身内や信頼できる仲間の前では素である俺に変わるが、ここは里から遠くはなれた異国の地。身内がいる筈も無い。

目を開くと向かいの男が様子を伺ってきた。

浅黒い肌に人間としては大柄。服装は戦闘職ではなく商人がよく来ている物だ。

どうやらここは荷車の中らしい。

つまり俺は、助かったのか。

 

「身体はどうだい?色んな種族がいるからね、亜人らしいけど、濡れたタオルで冷やすくらいしかできなくてね」

 

「いえいえとんでもない!拙者こそ、助けていただきありがとうございます」

 

すぐさま正座し、頭を下げると、また眩暈に襲われ、フラリとよろめいてしまう。

俺の様子にまあまあと言いながら両肩を押して荷車の床に押し倒す。

 

「君はまだ横になっていた方がいい。オラリオにもうすぐで着く」

 

「!!かたじけない」

 

どうやら男は、俺の行き先を知っていたらしい。

いや、初対面でもそれはすぐ分かるか。オラリオに向かって歩いた俺の足跡や倒れた方向から簡単に読み取れてしまうな。

おとなしく横になると男は笑った。

 

「なぁに。困ったときは、お互い様だよ」

 

「!……そうでござるな」

 

彼の言葉に俺もふっと笑い、荷車に揺られながらオラリオの到着を待った。

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