やはり俺がチート部隊の隊長をするのは間違っている   作:サラリーマン

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前の話切るとこミスったな


文化祭2

さっそくめぐりさんが実行委員長となった相模に司会をやらせているが予想していた通りやばかった。実行委員の部署を決めようとしていたのだが、噛むのはいいがそれを恥ずかしがり、どんどん声が小さくなりほとんど聞こえなくなり、最終的にめぐりさんがさばいてしまっていた。

俺は仕事の楽そうな記録雑務にした。俺と同じ記録雑務にはさっき知り合った竹宮先輩と雪ノ下がいて、竹宮先輩は記録雑務の担当部長となっていた。そのほかの俺の知っている人では有志統制には犬飼さんと歌川、広報宣伝には荒船さん、保健衛生には楓子さんが担当部長となっていた。そしてそのまま各部署ごとに顔合わせをし、その日は解散となった。

 

***

 

文化祭まで一か月をきると教室での残留が解禁となった。そしてうちのクラスの黒板には

 

『監督 海老名姫菜 

 演出 海老名姫菜

 脚本 海老名姫菜』

 

と、ドリームチームの名前が書かれていた。その隣には役名が書かれている台本はすでに配られている。劇の内容は「星の王子さま」だ。中を見てみたが「ワシの行った星は百八式まであるぞ!」「とある飛行士と変態王子」というところで読むのをやめた。一人配役が発表されるたびに教室は指名された人の悲鳴が響く。

 

「それじゃあ最後!王子さま、葉山隼人!ぼく、千種霞!」

 

うわーこいつら面白い顔すんな。片方は顔を青白くし、もう片方は目を腐らせた。

 

「ねえ比企谷。何やってんの?」

「うおっ!って千種妹か」

 

急に声をかけられて、振り向くとそこには千種妹がいた

 

「演劇の配役を決めてんだよ。台本あるから見るか?」

「見る」

 

千種妹に台本と渡すと、黙々と読み始めた。千種妹が台本を読んでいる間、俺が暇を持て余していると俺のスマホが震えた。スマホを見てみるとLI○Eが起動されていて画面の端にはユイがいた。それから文字が出てきた。

 

『パパ!私も読みたいです!』

『ユイが読んでいいもんじゃないからだめだ』

 

俺は素早く文字を打ち込むとスマホの電源を切った。さすがに切ってある電源を入れるなんてことしないよね?…できないよね!?

幸いそれから勝手に電源がつくなんてことはなかった。ユイと激しい(?)攻防を繰り広げていたら、いつの間にか千種妹が台本を全部読み終わっていたようだ

 

「ひなちんがあたしを呼んだのはこーゆーことか」

 

千種妹はそうつぶやくと俺たちのいる教室の後ろから前で騒いでる海老名さんたちに近づいた。

 

「お兄これに出んの?」

「あ、明日ちゃん!そうそう霞君はこれに出るんだよ!」

「いや何言ってんの?出ないからね」

「え、出ないの?お兄?きっと出たらおもしろいとおもうんだけどなぁ~」

「いくら明日葉の頼みでも――

 

瞬間、海老名さんがニヤッとしたのを俺は見逃さなかった。たぶん千種妹も同じような表情をしているだろう。なぜわかるかって?このあとやりそうなことを知ってるからだよ

 

「おねがい!おにーちゃん♡」

 

ほらこれだ。俺たちシスコンに対しての一撃必殺。じわれやぜったいれいどみたいに確率ではなく絶対に決まる技。妹によるお願い攻撃だ。これをされて落ちないシスコンはいない…はずだ!ほら千種も

 

「まあ妹の頼みだからね」

 

見ての通り落ちた。抵抗する人が減れば勢いが減るのは分かりきっていて、その後すぐに葉山もあきらめたようで抵抗をやめた。それを見てから俺は実行委員会に向かった。

 

***

 

数日後、いつの間にか雪ノ下が記録雑務から副実行委員長になっていた。雪ノ下一人抜けたところでもともと文化祭当日まで記録雑務の仕事は少ないし、情報処理にたけているオペレーターの竹宮先輩もいるので仕事量はそこまで変わっていない。

そんなわけで定例ミーティング。各部署ごとの報告から始まった。

 

「まずは宣伝広報からお願いします」

 

担当部長が現在の進捗状況を報告すべく起立する。

「掲示予定の七割を消化し、ポスター制作についても、だいたい半分終わっています。」

「そうですか、いい感じですね」

 

相模は満足げにうなずくが横から声が上がった

 

「いいえ少し遅い。文化祭は三週間後。掲示箇所の交渉、ホームページへのアップは既に済んでいますか?」

「…まだです」

「急いでください。社会人はともかく、受験志望の中学生やその保護者はホームページを結構こまめにチェックしていますから」

 

宣伝担当が気圧されてへたり込むように座った。雪ノ下の隣にいる相模は何が起きたか分かっていないようでポカンとした表情で雪ノ下を見ていた

 

「相模さん続けて」

 

促されてようやく会議が再開する

 

「あ、うん。じゃあ有志統制お願いします」

「…はい。有志参加団体は現在10団体」

 

遠慮がちに発言する担当とぎこちない返事をする相模

 

「増えたね。地域賞のおかげかな。次は…」

「それは校内のみですか?地域の方々への打診は?去年までの実績の洗い出して連絡を取ってみてください。例年、地域とのつながり、という姿勢を掲げている以上、参加団体減少は避けないと。それから、ステージの割り振りは済んでいますか?集客の見込みと開演時のスタッフの内訳は?タイムテーブルを一覧にして提出をお願いします。」

 

先に進めようとする相模を遮る形で厳しい追及をする雪ノ下。

そんな調子で会計監査、保健衛生と会議が進んでいく。そのたびに雪ノ下の確認と指示が飛ぶ。なお、保健衛生の担当部長の楓子さんは他と比べて追及されることは少なかった。

 

「次、記録雑務」

 

いつの間にか進行も雪ノ下がやってしまっていた。

 

「特にないです。」

 

竹宮先輩はこう報告した。実際、俺たち記録雑務は文化祭当日の記録がメインであり、この段階での仕事は少ない。

相模もそれは分かっているのかうなずくと会議を終わらせようとする。

 

「じゃあ今日はこんなところで…」

「記録は当日のタイムスケジュールと機材申請、出しておくように。」

 

各部署の報告の問題点の洗い出し、それの対応策を協議した後、今後のスケジュールの共有。話すべきことをすべて話し終え、終了の空気の感じ取り会議室の雰囲気が弛緩した。

 

「では委員長」

「うん。えっと、明日からもお願いします。お疲れさまでした。」

 

定例会議が終わるとみんなが雪ノ下の辣腕をほめた。どちらが委員長なのかわからない、と言う人もいた。そんな中で委員長である相模は取り巻きを連れて逃げるように会議室から出て行った。その姿をほとんどの人が気づかなかった。

 

***

 

次の日の放課後、俺が会議室へ向かうと会議室の前には人だかりができていた。人なみをかき分けて進み、中を覗いてみるとピリピリとした雰囲気になっていて、その発生源にはめぐりさん、雪ノ下、そして陽乃さんがいた。

 

「姉さん、何でいるのかしら」

「有志の書類の提出に来ただけだよ」

「何かやるんですか?陽乃さん」

「あ、八幡!めぐりから有志団体が足りないって聞いてね。だったらOBOG集めて管弦楽でもやろうかなって。ね!いいでしょ雪乃ちゃん」

「好きにすればいいじゃない。どうせ決定権は私にはないもの」

「へぇ~雪乃ちゃんが委員長じゃないんだ。じゃあ誰が委員長なの?」

「相模というやつなんですけど今は…」

 

一応会議室を見回してみる。俺が乱入してからほとんどの人が席に着いて、確認はしやすかったがやはり相模はいなかったが

 

「まだ来てな―――

「すみませーん!クラスの方に出て遅れました!」

 

俺の言葉を遮るようにして入ってきやがった

 

「はるさん、この子が委員長です」

「あ、実行委員長の相模南です」

「ふ~ん。実行委員長がクラスの方に参加して遅刻ね~」

 

そう言いながら陽乃さんはじっくりの相模を観察する。その視線に相模はびくっとしていた

 

「あの…その…」

 

相模が必死に言い訳を考えているとふっと陽乃さんは微笑んだ。

 

「さっすが委員長!文化祭を最大限楽しめる人こそ委員長にふさわしいよねー」

「あ、ありがとうございます」

 

さっきまでとは違う急に表情の変化に戸惑いながらも、おそらくここに来て初めてであろう肯定に相模は表情を明るくさせた

 

「で、えーと何がみちゃんだっけ?三上?それは三上ちゃんに失礼か。甘噛み?まあいいや。委員長ちゃんにお願いがあるんだけど。有志として参加したいんだけど、雪乃ちゃんにしぶられちゃってね…」

 

嘘くさいしおらしい演技をする陽乃さん。

 

「…いいですよ。有志団体足りてないですし、OGの方が参加してくて下されば地域とのつながりをアピールすることもできますし」

「きゃーありがとっ!卒業しても帰れる母校って最高だな~。友達にも教えてあげよっと」

「あ、じゃあその友達の方にも出てもらえばいいんじゃないですか?」

「おっ!グッドアイディーア!さっそく連絡してきていいかな?」

「どうぞどうぞ」

 

見事に陽乃さんに操られているな。いったい何のつもりで…ってまあだいたいわかるけど。たぶんそのことでアイコンタクトで呼ばれてるし

同じ様に呼ばれていためぐりさんと楓子さんと一緒に出て行くと怪しまれるので、まず俺が隠密を使って誰にも気づかれないようにして会議室を出る。それから順に楓子さん、めぐりさんと集まる。

 

「みんなさ、あんまりお母さんが雪乃ちゃんの一人暮らしをよく思ってないのは知ってるよね?」

 

俺だけがうなずいた。花火大会の時に少し愚痴みたいな方で聞いていたのだ。

 

「それで千葉村の話を聞いて、これから自分で成長できそうにないなら実家に連れ戻そうと決めたみたいで。その判断は私に任されていて今回やろうかなって」

「つまり?」

「委員長ちゃんを使って試そうかと」

「具体的には?」

「全然考えてないけど…どうかな?」

 

さっき相模にしたのとは違う本当にしおらしい態度をとる陽乃さん。

俺たちは目を合わせると、うなずき合う。

 

「はるさんの頼みならもちろん!」

「私もいいですよ」

 

めぐりさん、楓子さんと順に答え、そして俺も答える。

 

「いいですけど、それで仕事が遅れたら手伝ってくださいよ」

「もちろん!」

「それじゃあ決まったことだし戻りましょうか」

 

それから集まった時と同じようにバラバラに戻ってった。あ、こそこそ集まらないで普通にボーダー関連だって言えばよかったじゃねーか

 

***

 

俺たちが自分の持ち場に戻りしばらく仕事をしていると相模が急に立ち上がり声を出した。

 

「皆さんちょっといいですか?」

 

全員が手を止め相模を見る。この時嫌な予感のした俺は気づかれないようにスマホを起動しユイに音がしないように録音を頼んだ。電源を消したことで最初はいじけていたユイだったがあとでできる範囲で言うことを聞くことを条件に何とか聞いてくれた

 

「少し考えたんですけど文実はちゃんと文化祭を楽しんでこそかなって。やっぱり自分が楽しまなきゃ人を楽しませられないっていうか」

 

どっかで聞いたセリフだな

 

「文化祭を楽しむためにはクラスの方も大事だと思います。予定も順調にクリアしてますし少し仕事のペースを落とすっていうのはどうですか?」

 

こいつ、仕事もできないのにやる気までないのかよ

 

「相模さんそれは違うわ。バッファをもたせるための前倒し進行で」

 

雪ノ下が異を唱えるが横から明るい声が邪魔した

 

「いやーいいこと言うね!私の時もクラスの方もみんな頑張ってたな~」

 

陽乃さんの方を向くとウインクされた。このタイミングでさっきのアレをするみたいだ。タイミングとしてはいいと思うがこのままだと少しまずいかもな…

 

「あーちょっといいか」

 

全員の目がこちらを向く。ふぇぇぇ~怖いよ~…やめよ。きもいな

 

「委員長さんに聞きたいんだが自分の発言に責任とれるよな?」

「はぁ?なに言って

「いいから答えろよ。イエスかノーか。どっちだ?」

 

少し威圧を込めながら言う

 

「い、イエス」

「そうか。ならいい」

 

俺は席に座るとまた気づかれないようにスマホを操作する

 

『ユイ録音できたか?』

『ばっちりです!パパ!』

 

それだけ確認すると、俺は目をあげた。その時には拍手多数で相模の案は可決された。陽乃さんが手伝ってくれるとはいえ確実に増えるであろう仕事に俺は溜息しか出なかった。

 

――おまけ――

 

下校時間を迎えると全員が帰る準備をし始め仲がいい人と塊になって帰る人がいる中、俺は陽乃さんにどこから取り出したのかわからないギターと楽譜を渡されていた。

 

「え~と陽乃さんこれは?」

「ギターと楽譜だけど?」

「それは知ってます。なんでこれを俺に渡すのかってことです。」

 

俺の問いに答えたのは陽乃さんではなく楓子さんだった。

 

「この文化祭に私たち比企谷隊でバンド組んで参戦することにしたんですよ。ハチさん」

「それで八幡君にはギターしてもらおうと思って!」

「いや、俺楽器なんて授業でしかしたことないから無理ですよ」

「大丈夫ですよ。まだ約一か月ありますし」

「いや文実の仕事も!」

「私たちもありますよ」

「防衛任務も」

「だから私たちもあるって」

 

そこでスマホが震える。画面を見るとユイが出たいと言っていた。周りに誰もいないことを確認するとユイを実体化させる。

 

「どうしたんだ?ユイ」

「私もパパたちのバンドみたいです!」

「ほらユイちゃんもこう言っていることだし。だから八幡」「ハチさん」「八幡君」

「「「やって/やりなさい」」」

「…はい」

 

ユイのお願いと三人の圧力に屈するしかなかった俺はその日から文実に防衛任務に加えてギターの練習という超過密スケジュールとなった。

 


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