やはり俺がチート部隊の隊長をするのは間違っている 作:サラリーマン
その日は朝から大変だった。朝食時には箸がぽきんと折れ、登校するときには家を出て一歩目で靴ひもがきれた。さらには上から鳥の糞が落ちてきた(避けたけど)。授業では事前予告なしの英単語のテストがあった(もちろん合格したけど)そして昼食のためにベストプレイスに行くと、いつも座っている場所には鳥の糞が。
もうね、ここまでくると分かったわ
『門発生、門発生。大規模な門の発生が確認されました。警戒区域付近の皆様は直ちに避難してください』
遠くで避難を促すアナウンスが聞こえる。とうとう大規模侵攻が始まるようだ。
俺はトリガーを起動し、グラスホッパーで屋上まで跳ぶ。そこにはオペレーターも含めた総武高のボーダー隊員が集まっていた。各学校にはこういう非常時の時にボーダー隊員が集合する場所が定められており、そこで本部にオペレーターを送り届けるものや学校側に避難誘導するものなどを決める。
でだ、だいたいこういうのは暗黙の了解として一番年上の人かランクが高い人が仕切ることになっており、なぜかみんな俺を見ていた。もたもたしている暇もないわけで俺は溜息を一つ吐き、指示を出した
「楓子さんは謡を拾いつつオペレーターを本部まで送り届けてください。学校の避難誘導は俺と…奈良坂で行います。他の人たちは本部の指示に従いつつ警戒区域からトリオン兵出さないように倒していってください。後千種隊は少し残ってくれ」
「「「了解!」」」
各人が俺の指示を聞き屋上から飛び出していく。
「千種隊、お前らはまだ経験が足りない。だから絶対に単独で行動はしようとするな。これは戦争だ。何が起こるかわからない。一人で対処できないことは必ず起こる。だからチームで対処しろ。いいな?」
俺の言葉にうなずいたのは三浦と川崎の二人だけだった…え?俺けっこういいこと言ったやん
「え、なに。比企谷はわざわざそんなこと言うためにあたしたち残したの?マジウケる。そんなこと私たちが一番わかってるよ」
「そうそう。それに俺たちで対処できなかったら、他の人になすりつ…協力してもらえばいいだろ」
おい千種兄。お前協力の前になんて言った
「早くいかないと撃破数稼げないしあたしたちはもう行くよ」
そう言って勝手に千種達も警戒区域の方に向かっていった。
「じっくりと話したことはなかったんだが…すごいな」
「ああ。まあわかってるようだし俺たちもさっさと避難誘導終わらせて向かうか」
「だな」
屋上から飛び降り、総武高の生徒が集まっているグラウンドに行く。
「校長先生、ボーダー隊員比企谷と奈良坂です」
「これはどういうことなのかね」
「ネイバーの大規模侵攻です。ひとまず今集まっている人をシェルターに避難させます。奈良坂ついて行ってくれ。俺は学校に逃げ遅れた人がいないか確認する」
校長先生がアナウンスをかけ、総武高の生徒は近くにあるシェルター目指して避難していく。それを確認しつつ上から順に声を出して逃げ遅れがいないか確認していく。
四階は、いない。三階は、いない。二階は
「あれ?比企谷君?」
「鶴見先生何してんすか」
遭遇したのは鶴見留美の母親で総武高の保険医の鶴見先生
「逃げ遅れがいないかの確認をね。比企谷君も?」
「ええ。先生は下から来たんですよね?下の確認は終わりましたか?」
「うん。上は比企谷君が確認してくれたのよね」
「はい。ならあとはこの階だけですね。この階は俺が見るんで先生は先に避難してください」
生身の人間とトリオン体の人間。見て回るのなら確実にトリオン体の人間の方が早い。それを分かっている鶴見先生は任せてくれた
「ねえ比企谷君。留美は…ううん。何でもない。確認お願いね」
鶴見先生はそれだけ言うと昇ってきたばかりの階段を下りていく。
「先生、留美ならきっと大丈夫ですよ」
鶴見先生は振り返らずにうなずいて、すぐに姿が見えなくなった。そして俺もさっさと二階の確認を終わらせる。幸い、鶴見先生が確認してくれた一階も含めて逃げ遅れた人はいないようなので良かった。
『奈良坂こっちの確認は終わった。逃げ遅れた人はなし。そっちの手伝いは必要か』
『こっちももうすぐ終わるから必要ない』
『わかった。なら俺は先に警戒区域に向かう』
避難の方も手伝いが必要ないことが分かり、グラスホッパーを用いて全力で警戒区域を目指す。本部と連絡を取りつつ向かった先はまだ誰も到着していないところでトリオン兵が大量にいた。メタトロンを使えばどれだけ大量にいようとも一瞬で殲滅することは可能だ。出し惜しみはしたくないが、いざというときにトリオン切れにはなりたくない。なのでまだ俺はノーマルトリガーで戦っている。
トリオン兵の数は多いが冷静に処理していく。なるべくトリオンを消費しないように一太刀、一発で仕留める。
識を使いながらの戦闘は何度かこなしてきたが、まだ慣れてはいない。しかし今回はしっかりと反応できた。
しゃがみ、急いでその場から距離を取る。俺の頭があった場所には白くて太い腕があり、その腕の持ち主は今までに見たことのないトリオン兵だった。
『ユイあれは』
『あれはアフトクラトルで開発されたトリオン兵ラービットだと思われます。ラービットはトリガー使いを捕獲することを目的に開発されたので、とても強いです!』
『オーケー』
ユイに言われるまでもなく識を使い始めてから感じる圧力?みたいなものがほかのトリオン兵とは段違いだ。それだけでもう強いことが分かる。
それが二体。新しくもう一体が俺が倒したバムスターの腹の中から出てきた。しかも色違い。きっと捕まえれば3V以上だと信じてる。
まあそんなことは置いておいて、だ。色違いの方(先に遭遇したのが白だったから白を通常種と仮定)は何かしら通常種とは違う能力みたいなものを持っているのが定番だ。だからやつも何かしらの能力を持っていると考えられる。そうでもなきゃ色を変える必要はないしな。そう考えさせるためのブラフって可能性もあるが、なんにせよ警戒するに越したことはないだろう。まあほんとにブラフでしたってパターンが個人的にはうれしい。だからお願いします!ブラフであれ!
「ハチ君下!」
と思っていた時期が俺にもありました。色違いが地面を殴ると俺の足元からとげみたいのが生えてくる。フランの言葉で先に離脱していた俺にはダメージはない。しかし今のが色違いの能力か?
「フラン、ファル。色違いは地面を殴ることで任意の位置にとげを発生させる能力だと推測するがどう思う」
いつの間にか出てきていたフランとファルに問う
「そうだね。私もそう思う。ファル君は?」
「情報は少ないけど今の情報で考えるなら僕も同じ」
『ユイ今の情報を本部に伝えて他に情報がないか聞いてきてくれ。』
『了解しました!パパ!』
「俺たちはさっさとこいつらを倒すぞ!」
「「うん!」」
俺より強い二人が前衛となり、俺が後衛、二人のサポートだ。
さっき仕切った手前、この編成に少し思うところもないことはないが、それを飲み込み二人のサポートに回る。
ただこの二人は俺のサポートが必要ないくらい強いわけでものの三分もしないうちに倒してしまった。
「うーん意外と弱かったね」
「いやお前らが強すぎんだよ。A級部隊が1チームで倒すところを一人で倒しやがって」
戦闘中に風間隊がラービットを倒したとの通信が入ったのだ。
「まあまあきっと陽乃さんとか太刀川さんとかも一人で倒せると思うし…あれ?この歌…」
ファルは聞こえてくる歌に気付いたようだ。この歌は警戒区域に設置されているスピーカーからフランとファルが戦い始めた時くらいから流れ始めた。
この歌の正体は謡のブラックトリガー、セブンアークスの一つ天璇≪ザ・テンペスト≫だ。その能力は簡単に言えば、バフデバフスキル。例えばバフならば術者が味方と認識した人すべてにその恩恵を等しく授ける、というものだ。
前所有者はデバフしか使っていないようだったが本来効果が高いのはこっちのバフスキルの方だ。
「だから今日は調子が良かったのか」
「ファルの謎も解けたことだし、第二ラウンドと行こうぜ」
新たに開く大量の門とそこから出てくるたくさんのトリオン兵。
ボーダーA級部隊隊長とゆかいな仲間たちvsトリオン兵団。その火蓋は切って落とされた
***
時は少しさかのぼり、アフトクラトル遠征艇内
「比企谷ぁ!殺してやる!絶対に殺してやる!!」
「どうやらあそこに映っているのがミナミの因縁の相手のようですね」
「ああ…ウィザ何を見ている」
「いえ…懐かしい友がいたもので」
ハイレインの問いかけにウィザは答えた。ハイレインはウィザの見ていたモニターを見るがウィザと同じくらいの歳の兵は見あたらない
「まあいい。ウィザとヒュースは予定を変更し先ほど確認された金のひな鳥を捕獲してこい。ランバネイン、エネドラ、ミナミは予定通り玄界の兵を散らしてこい」
「ちょっと待ってよハイレイン!ウチは比企谷を殺すのよ!」
「ミナミ口の利き方に気をつけなさい。それにミナミが玄界の兵をたくさん殺せばきっと彼は来るわよ」
ミラはミナミを諭し、いくつかの門を作る。そこを通りアフトクラトルの兵士たちは玄界の戦場に降り立っていく。そして誰も通らなかった門にたくさんのトリオン兵の卵を投げた。
今、玄界の戦場に角の生えた鬼が解き放たれた