4月下旬。
「では、呼んだら入ってきてくださいね」
先生――確か山田という名前だった――がそう言って教室の中に入ってしまうと、少年は1人廊下に取り残された。
1年1組。
今日から転校することになるIS学園―――の中でも少年が所属することになる教室の中からは、時折生徒の声が聞こえてくる。どれもこれも女の子の声だった。
当然と言えば当然か、と少年は思う。
この学園は、とある理由から実質的な女子高だったのだから。
だった、というのは、この学園ではたった2人だけ男子生徒がいるからだ。
1人は自分、もう1人は―――
「あら、もしかして
「え?」
声のしたほうを振り向けば、一人の少女が立っていた。
少年の身長は164cmと平均よりも低いが、彼女は輪をかけて小さい。おそらくは150㎝ぐらいだろう。
長い髪をツインテールにまとめ、整っていながらも多分に幼さを残した可愛らしい顔立ちの少女だった。
こちらが振り向くなり露骨に残念そうな顔をしなければ、胸が高鳴っていたかもしれない。
「アンタ、誰?一夏じゃないわよね?」
「えーと、僕は
「はぁぁぁ!?転校生?しかも男子?聞いてないわよ!?」
いきなりの大声に、思わず気圧されてしまう。
ちなみに織斑一夏とは、2人の男子生徒のうちのもう片方だ。
テレビで見たことはあるが、彼は少年よりも背が高く、顔立ちもキリッと整った美男子だ。
どちらかというと童顔の少年とは見間違えようがないのだが、この学園で男子を見たらまず一夏である、という常識が少女の判断を曇らせたのだろう。
「それはホラ、秘密にされてましたから。大騒ぎになったらマズイですし」
すると少女はがっくりと肩を落とし、何やらぶつぶつとつぶやき始めた。
「……何でよりによって今日なわけ?なによせっかくの計画が台無しじゃない。和やかなクラスで『そういえば2組に転校生が来たらしいよー』『しかもクラス代表だってー』『じゃあ織斑くんと対戦するの?』『でも1年の専用機持ちは織斑君だけだから余裕だねー』とか話してるところに『その情報、古いよ!』と颯爽とインパクト抜群の登場をキメる予定だったのに……」
(インパクトはあるんじゃないかな?……主に僕の中で)
若干うんざりしつつも、一応声をかけてみる。
「あのー……」
「そ・れ・な・の・に!おんなじタイミングで男子の転校生が来たらインパクトが埋もれて薄れるじゃない!それじゃぁダメなのよ!そんなんじゃアイツには―――」
「廊下で何を騒いでいる」
その声と同時に、脳天にすぱーん、と衝撃が走った。
「痛ぁ!?」
「あだぁ!?」
どうやら2人とも固いもので頭を叩かれたらしい……あれは、出席簿だろうか?
恐る恐る顔を上げると、そこには最近知り合ったばかりの、スーツを着こなした黒髪の女性が立っていた
「お、
「ち、
「織斑先生と呼べ。まったく、さっさと自分のクラスに戻れ」
「は、はい…」
少女は去り際にじろりと少年を睨むと、そのまますごすごと歩いていった。
覚えてなさいよ、と聞こえた気がしたが、多分気のせいだろう。
(というか一方的にあの子がうるさかっただけで、僕は騒いでないよね……)
この女の子とは後に色々とあるわけだが、それはまた別の話である。
「ところで
「え?……あぁ、しまった!」
どうやら少女の話に気を取られて、中から呼ぶ声に気づけなかったようだ。
「さっさと行け」
「は、はい!すいません!」
慌てて扉を開けて教室の中に踏み出すと、クラス全員分の視線が少年に集中した。
見渡す限りの女子、女子、女子……皆一様に驚きの表情を浮かべている。
前の列にいる唯一の男子―――件の織斑一夏だ――もやはりポカンと口を開けて驚いていた。
転校ってこんなにプレッシャーがかかるんだな、と思いつつ、少年はまだ幼さの残る顔に緊張を浮かべながら自己紹介を始めた。
「初めまして、今日からこのクラスに来ました、
静まり返る教室に気圧された少年―――空護は最後に付け加えた。
「えーと、見ての通り、男です」
初めましての方は初めまして、作者のハンバルと申します。
というのもISの二次創作は初めてではなく、5年ほど前にも別サイトにて
連載していたのですが、様々な要因により打ち切りとなってしまいました。
その後もちょくちょくアイデアや妄想が浮かんできたため、以前の作品を
原型として今回、新たに連載させていただきます。
拙い文章ではありますが、どうぞお付き合いいただければと思います。