僕がいちばんセクシー   作:カイバーマン。

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1ステップ 春色転校生

 

 

 

「僕と結婚してお嫁さんになってよ」

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

極平凡な家族を持ち、極平凡な中学生。鹿目まどか。

なに一つ不自由なく暮らしていたある日。

彼女は学校へと向かう通学路の途中で凄く珍妙な生物と出会った。

一見まるでクレーンゲームの商品として置かれている人形のように見えるが……

 

「あ、唐突にキュートなプロポーズしちゃってごめんね、つい君があまりにも可愛かったから我慢できなくて」

「……」

「僕の名前はキュウべぇ、宇宙一可愛くてセクシーでナイスガイな生命体さ」

「え、え~……」

「僕と六本木で飲まないかい? きっと君を満足させてあげるよ」

「私未成年なんだけど……」

 

末恐ろしい程のナルシストな地球外生命体と出会ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

珍妙なナマモノと出会ってあれから数日後……。

 

 

鹿目まどかは今、昼休みを利用して自分が通う見滝原中学校の屋上で弁当を持って座っている。

 

珍妙なナマモノ、キュウべぇと共に。

 

「“授業”というものは退屈だね、まどかはあんなの聞いていて飽きないのかい?」

「アハハ……でも大人になるのに必要な事だからね」

「そうかな、僕の「いかにセクシーになれるのか講座」の方がきっと大人になる為に効率いいと思うけど」

「……なんかえげつないネーミングセンスの講座だね……」

「聞いてみるかい? 君は素質十分だからかなりのセクシーになれるよきっと」

「ま、まだ早いと思うからいいよ……!」

 

相変わらず無表情でとんでもない事を言ってのける謎の地球外生命体・キュウべぇ。

彼と出会って数日、まどかは彼と色々話している内に色々と彼の事情がわかってきた。

 

「キュウべぇは宇宙からきた宇宙人みたいなモンなんだよね?」

「ああそうさ、遠い宇宙からはるばるここまでやってきたプリティーで罪深い宇宙生命体さ」

「ぷ、ぷりてぃ~? でもキュウべぇはなんで地球にやってきたの?」

 

キュウべぇに対しちょっと困惑の表情を浮かべながらまどかは恐る恐る聞いてみる。

するとキュウべぇはあっけらかんとした口調で

 

「ああ。その辺は忘れた」

「へ!? 忘れたの!?」

「生憎僕は自分の美しさを追求する事以外あんま興味無くて、あ、君の事は興味ムンムンだよ」

「それで忘れちゃうかな普通……」

 

こちらに振り向き首をかしげて見せるキュウべぇにまどかは頬を引きつらせどう答えていいかわからない様子だ。

 

(この子凄い自分に自信があるんだなぁ……私と大違いだよ……)

「ん~なにかを集める事が目的だったとかだったような気がするんだけど、なんだろう? ジュエルシード? ドラゴンボール? 神のカードだっけ?」

「違うと思うよ……」

「うんまあきっとどうでもいい事さここに来た目的なんて。君に逢えた事と比例すればほんのちっぽけな事なんだよきっと」

「ポジティブシンキングだね……」

 

目をつぶってうんうんと頷くナルシスト小動物に対してまどかは苦笑しながら弁当を一口食べた。この生き物は口が開けばすぐに自分で自分を褒めたたえる……。

 

(まあ自信を持つ事っていい事だよねきっと……限度があると思うけど)

「それよりまどか、僕のセクシーボイスに聞き惚れてるのはわかるけど、“例の話”の返事は出来たかい?」

「え? もしかして“アレ”の事……?」

「そりゃあそうさ、僕は今か今かと待ちわびているよ、君の返事を」

 

箸を持ったまま弁当を食べる作業をピタリと止めてまどかは困った様子でキュウべぇに向き直る。

するとキュウべぇはニコリと可愛げに笑って小首を傾げ

 

「僕と結婚してお嫁さんになってよ」

「いやあの……ごめんキュウべぇちょっと色々質問いいかな……」

「なんだいまどか、なんでも言ってごらん。カッコいい僕がズバッとクールな回答して上げよう」

 

大きなしっぽを振りながらキュウべぇが返事をすると、まどかは恐る恐る彼に尋ねて見た。

 

「あのさ……それって私がキュウべぇと結婚してお嫁さんになるって事だよね」

「ああそうさ、こんなセクシーイケメンを夫に持つなんて全く君は宇宙一の幸せ者だよ」

「でもさ……キュウべぇって宇宙人だし……」

「愛に生物の違いなんて関係無いよ。大事なのは愛し合ってるかどうか、それだけさ」

「う~ん、なんでだろう……いい事言ってると思うのにそう感じない……」

 

キッパリと断言する自分よりずっとちっこい小動物にまどかは首を傾げてみる。

愛し合うことだけが大事だと言うがやはり生物の違いは如何なものか……。

 

「それにさ、どうしてキュウべぇは私なんかと結婚したいの? この辺だと私なんかよりも綺麗な人は一杯いるよ」

「僕はね、鹿目まどか、君に一目惚れしたんだよ」

「へ?」

「こんな感情初めてだ、生まれてこの方“自分以外の生き物に恋した事が無い”この僕が一目見ただけで君にハートを射止められてしまったんだよ」

「な、なんで私なんかに……」

「実はねまどか……君は自分が思ってるよりもずっと魅力を秘めているんだ、いわゆるダイヤの原石という奴だね」

 

急にトーンを下げてキュウべぇは語りだす。

 

「君が僕のお嫁さんになれば、僕は君を今よりも“数兆倍”ビューティフルに出来る自身がある」

「数兆倍!? それ私どうなっちゃうの!?」

「まあ地球はおろか銀河系でもトップを飾れるぐらい、宇宙女王≪スペースクイーン≫と称されるだろうねきっと。やったねまどか、宇宙一の夫と結ばれる上に宇宙一の女王になれるんだ」

「そこまでいくと元の私の原型無くなっちゃうんじゃないかな……ていうか宇宙女王ってなに?」

 

宇宙女王だかなんだか知らないがいきなりそんな破天荒な称号貰えると言われても全く実感が湧かないし嬉しくもなんともない。

 

数日前はただ普通の中学生だったのだ、だがしかし、このナルシストナマモノに出くわしたおかげでまどかの人生の歯車は大きく狂い始めていた。

 

「式場は何処がいいかな? 火星? 木星? 思い切って太陽でしちゃうかい? 暑そうだけど君と僕の愛の炎なら乗り切れるよね?」

「出来るなら地球でやって欲しいんだけど……でもキュウべぇ、やっぱり私まだ結婚とか無理だよ。私まだ中学生だし、子供なんだよ?」

「愛に大人とか子供とか関係無いよ、大事なのは愛し合ってるかどうか、それだけさ」

「あれ、デジャブ?」

 

勝手に自分の弁当を食べ始めるキュウべぇに途方に暮れるまどか。

これは何を言っても聞かなさそうだ、完全に自分を嫁にすると決めている。

 

(困ったなぁ……お付き合いもした事ないのに結婚とか無理だよ……しかも相手が宇宙人……)

「この弁当凄い美味しいよまどか、さすがまどかが愛情込めて作った弁当だ」

「これ作ったのパパ……」

「なんてこった、いきなりお義父さんの手料理が食べられるなんて。僕はなんてラッキーセクシーボーイなんだ、世界中に嫉妬されるのも無理はない」

 

そう言ってなおまだ弁当にがっつくキュウべぇ。例えまどかではなくその父親が作った弁当であっても、キュウべぇにとっては満足らしい。

 

「キュウべぇってホント前向きなんだね……」

「後向きに生きてもなにも得しないからね、人生何事もポジティブに生きる事が一生を楽しむ秘訣さ」

「へ~そうなんだ、じゃあ私ももうちょっと前向きに頑張ろうかな……」

 

キュウべぇの言う前向き精神にそんな悪い気はしないと思ったまどかは呑気に顎に手を当てそんな事を言うと勝手に人の弁当を食べているキュウべぇは顔を上げてこちらを向いた。

 

「そうさ、僕等の未来も前向きに頑張ろう。一人で行く道よりも二人で行く道の方が険しいと思うが、きっとそれ以上に楽しい幸福も待っているよ」

「なんでキュウべぇってそういうセリフすぐ口から出せるの……? だから結婚とかそういうのはまだわかんないよ……」

「あ、美味しかったよまどか、お義父さんによろしく」

「え! 全部食べたの!? 私全然食べてなかったのに!」

「まあウルトラキュートでカッコいい僕のリーダースマイルに免じて許しておくれ」

「リーダースマイルってなに!?」

 

まどかが気が付いた時にはキュウべぇはナイスな笑顔をして弁当をものの見事に完食していた。

空になった弁当を持ってまどかが涙目になっていると。

 

二人が座っている場所から数メートル先のこの屋上へと出てくる為にあるドアが突然キィッと開く。

 

「鹿目まどか、やはりここにいたのね……」

「あれ? 確か転校生の……」

 

空になった弁当を片付けながらまどかはそちらに顔を上げる。

見るとそこには長い黒髪をなびかせる一人の少女の姿が。

 

最近まどかのクラスに転校生としてやってきた暁美ほむらだ。

 

「前々から言おうと考えていたんだけど……遂にあなたに言う決心が付いたわ」

「え……?」

 

彼女が屋上へやって来た途端いきなりこちらを見据えてそう宣告する。

訳が分からない様子のまどかだが、キュウべぇの方は彼女のスタッと膝から床に飛び下りてとまどかを護るように彼女の前に立つ。

 

「気を付けてまどか! アレに近づくのは危険だ!」

「え、なんで?」

 

いきなり何を言うかと困惑するまどかにキュウべぇは振り返らずに答える。

 

「僕は気付いていたのさ! あの小娘はね! 隙あらば君の事を舐めるように凝視していた事をね!」

「舐める!?」

「授業中も隠れてペロペロ! まどかが友達と喋ってる時も隠れてペロペロ! まどかが教室の掃除してる時も隠れてペロペロ! 体育の授業でまどかが体操服を着て汗を流していた時なんか特に舐め回すように堂々とペロペロ見続けていたんだ! 君の友達の美樹さやかがドン引きする程に! つまりとびっきりの変態野郎だよ彼女は!」

「なにそれ恐い! 色々な意味で!」

 

キュウべぇのとんでもない情報に驚きを隠せないまどか。

だが驚愕の表情を浮かべるまどかに謎の転校生・暁美ほむらは仏頂面で微動だにしない。

 

「惑わされないで、そいつの言う事は全部デタラメ」

「え、そうなの?」

「そうよ」

 

彼女は長い黒髪を掻き上げ、まどかをしっかりと直視した。

 

「ペロペロじゃなくてレロレロよ」

「言い方の問題だったの!?」

 

平然としたまま言い放つ直球的な言葉にまどかがつい声を大きくして叫ぶ。

今の発言で大体この転校生がわかってきた。

確実にヤバいと……。

 

「あ、あの“暁美さん”どうして私の事をそんなに……」

「……」

「あれ?」

 

まどかは自分が彼女を名字で呼んだ瞬間、彼女が若干揺らいだように感じた。

 

苗字で呼ばれた事が悲しかったのだろうか……。

 

暁美ほむらはぐっと奥歯を噛みしめるとまどかに向かって

 

「ダーリンでいいわ」

「ダーリン!?」

「この忌々しい泥棒猫め! あろうことか僕のマイハニーにダーリンと呼べとは! 惑わされないでハニー! 君のダーリンは僕だけさ! さあ僕だけを見て!」

「ちょっと黙っててキュウべぇ!」

 

転校生と珍獣に翻弄されながらまどかは疲れた様子でため息を突くと、暁美ほむらに向かって恐る恐る話しかけた。

 

「え、えとダーリ……じゃなかった、暁美さんと私って出会ったの最近だよね? 会うのも学校だけだし私達そんな親しい訳じゃなかった筈だけど?」

「……」

「……暁美さん?」

「……」

「……ごめん、じゃあほむらさんじゃダメかな……」

「しょうがないわね……一万歩譲って承認するわ、今はそれでいいとしましょう」

(なんか疲れちゃうな……)

 

名字ではなく下の名前で呼ばれるならまあいいかと言った感じで渋々承諾するほむらにまどかは疲労感を覚えながらも話を続ける。

 

「それで……ほむらさんはなんで私の事を……」

「決まってるじゃない」

「いやわかんないんですけど……」

「私はあなたを一目見て確信したのよ」

「ほえ?」

 

首を傾げるまどかにほむらは一歩近づく。

確信のこもった表情で

 

「この子はきっと己の命尽きても護るべき存在の人なんだと」

「初対面の人相手にそんな感情抱いちゃったの!? それはさすがにマズイよ!」

「一目惚れとはそういうものよ」

「全然違うよ! 一回見ただけの人にそんな重い感情抱かないよ!」

「いや不本意ながら僕もそう思ったよ? まあもっとも僕は死ぬつもりはないけど、君を残して死ぬわけないさ」

「もう二人共なんなのさ……絶対おかしいよこんなの……」

 

情熱的な視線を送ってくるほむらとキュウべぇにまどかはガックリと肩を落としていると。

ほむらはそんな彼女の前にいるキュウべぇにジリジリと警戒しつつ近づきながら、ふと口を開く。

 

「まどかさん、私がここに初めて転校してきた時の姿覚えてる?」

「う、うん。メガネ掛けてておさげしてて、ちょっと大人しめな子だったような……」

「ええ、あの時はやっと病院から退院できて、初めての学校と初めてのクラスメイトに緊張もあったし恐かったの」

 

遠い日を思い出すかのようにほむらは空を見上げる。

 

「だけどあなたは、そんな私に対してとても優しくしてくれた……」

(私なんかしたっけ……)

「転校初日の初めての授業、その時、私がうっかり机から落としてしまった消しゴムをあなたは笑顔で拾ってくれたわね」

「あ、うん……(そんなのあったっけ……?)」

「それで決めたのよ、「この人と結婚しよう」って」

「それだけ!? それだけで!? ていうか結婚ってどういう事!?」

 

長い話になるのかと思いきやほんの数秒で終わってしまう彼女の回想にまどかがツッコミを入れるも、彼女はスル―して話を続けた。

 

「それからはあなたに気に入られる為にイメージチェンジに取り組んだのよ」

「いやイメージチェンジって……」

「まずおさげはなんか今時じゃないから止めて」

「いやおさげはおさげで良いと思うけど、ていうかその発言はおさげの人に失礼だから……」

「メガネもなんか地味の象徴っぽいから掛けるの止めたわ」

「いやメガネ掛けたら別に地味になるって訳じゃ……」

 

的外れな意見にまどかがいちいち言葉を挟むが、ほむらの話はまだ終わらない。

 

「それから“あなたへの愛の力”で学力向上して、“あなたへの愛の力”で運動能力を高め、“貴方への愛の力”で病弱なのを克服して、私はあなたの隣に唯一立てる存在になったのよ」

「愛の力でどうにかなるモンなのそれ!?」

「視力もあなたへの愛の力で上げたわ。前は末期の乱視だったけど今じゃマサイ族の視力に匹敵するわ」

「なんでマサイ基準で比較するの……ていうか人間技じゃないよ……」

「ショッカー本部で改造されたんじゃないの? 頭に余り物のネジ突っ込まれたとか」

 

誇らしげにそう言うほむらだが強引すぎるその超強化にまどかは頭痛を感じ、キュウべぇはボソッと呟く。

 

「僕のまどかを振り向かせる為に君がてんで意味のない事に時間を注いだのはわかったからさ、そろそろ教室にでもショッカー本部にでも戻ったらどうだい? 今彼女は僕との安らぎの時間を求めているんだよ」

「全く哀れな珍獣ね、私がここに来た本来の目的は白いナマモノの妄想に付き合ってる彼女を助ける為よ、さっさと私と彼女の為にこの世から一片のDNAも残さず消滅しなさい」

「あの二人共……なんか知らないけど口喧嘩は止めて……ってあれ?」

 

一人と一匹が睨み合って激しい火花を散らしているのをまどかが呆れながら止めようとするがふとある事に気付いた。

 

「ほむらさん……キュウべぇが見えるの?」

「? 見えるわよ、教室や帰り道であなたにそのナマモノが慣れ慣れしく口説いてるのよく観察してるし」

「え!? キュウべぇって他の人にも見えるの!?」

「クラスで騒がれてるの気付かなかった? 「最近、鹿目さんが連れて来るあの喋る白いナマモノなに?」って」

「通りでなんか影でヒソヒソ言われてる感じがすると思った……」

 

丁寧に答えてくれたほむらの説明にまどかはひどく落胆したようだった。

 

「……私てっきりキュウべぇって特定の人以外には見えないとかそういう設定なのかと……」

「僕にはそんな使い古された設定ないよまどか、僕のこの美しいボディを見れない人がいるなんて可哀想だろ?」

「って事は私、みんなの前で堂々と学校にキュウべぇ連れて来てたんだ……うわぁ、なんか恥ずかしい……ていうかなんで誰も言ってくれないの……」

 

顔を両手で押さえてショックを受けるまどかにキュウべぇは「ハハハ」と無表情で笑い飛ばしたした後平然と言う。

 

「まあいずれ君と僕の関係は知られる事になっていたんだ。これからは胸を張って言ってやればいい、「この全人類誰もが崇め奉るであろう美しい者は私の愛しい旦那様です」ってね」

「今度からは「私にひっついてくる気持ち悪いストーカーミュータントです、誰かミンチにして殺して下さい」って言うようにしなさい」

 

いきなり会話に加わって来たほむらの方に、キュウべぇはゆっくりとそちらに振り返った。

 

「あのさ、勝手に僕とまどかの会話に入って来ないでくれないかな? それにストーカーは君だろ、僕等の帰宅途中を君がずっと尾行してるの知ってるんだぞ」

「……あなたみたいな未確認生命体から彼女を護ろうとしてるだけよ」

「夜な夜なまどかの家の屋根裏に忍びこみ、寝ているまどかを天井から荒い息を吐きながら凝視しているというのも護ってると言うのかい?」

「当たり前よ、全てはあなたみたいなちんちくりんから彼女を護る為」

「ちょっと待って! 私が落ち込んでる間になに二人で凄いぶっちゃけた話してるの!?」

 

本人が知らない所でディープな会話がエキサイティングしているのでまどかは落ち込むのを止めて顔を上げて叫ぶ。

 

「ほむらさんそんな事してたの!? 家宅侵入罪だよそれ!」

「それは否定しないけど、これはあなたを愛するが故の行動だったの」

「影でコソコソしてハァハァ言うのが君の愛なのかい?」

「そういう愛の形もアリだと思うわ」

「いやナシだよ! それがアリならこの世の終わりだよ!」

 

キュウべぇに向かって平然とそう言うほむらにまどかはズバッとツッコミを入れた。

 

「頼むからそう言う事はもう止めて!」

「……まどかに私の愛を全否定された、死にたい……」

「死ねばいいと思うよ? コレ以上僕とまどかの邪魔をしないでくれ」

「キュウべぇもいい加減にして!」

「……まどかに怒られた、激しく死にたい……」

 

まどかがつい怒鳴り声を上げるとほむらとキュウベぇはその場で床に両手をついて一気にテンションが下がって落ち込んでしまった。

いきなりネガティブに陥っていた二人にまどかは慌てて二人に声をかける。

 

「い、いや別にそこまで落ち込まなくても……私もついカッとなっちゃってごめん……」

「……じゃあこれからもお邪魔していいかしら?」

「アハハ……屋根裏からじゃなくてドアから入ってくるならいいよ」

「わかったわ……あなたの為に今度ピッキングの仕方を覚えて来るから」

「頼むから普通に家に来て!」

 

まどかに言われて立ち上がり、髪を掻き上げてまたよからぬ事を企み始めるほむらにまどかは懇願すると、続いてキュウべぇの方に向き直る。

 

「あの、キュウべぇ……」

「ミラクルプリティーボーイな僕が怒られるなんて……親父にも怒られた事無いのに……」

「そうなんだ、ごめんキュウべぇ……でもほむらちゃんとコレ以上わけのわからない争いをしてほしくないんだ、だから……」

「それは出来ない、愛とは常に誰かと争う物なのだから」

(うわ凄いまっすぐな目……)

「じゃあまどか、僕と彼女の争いを止めて欲しいなら……」

 

ケロッとした表情でこちらを見るキュウベェにまどかが頬を引きつらせすと、彼はふとまどかに首を傾げて一つ尋ねて来た。

 

「ここで君が、僕とこの小娘のどちらかと結婚するか決めてくれ」

「なにその急な選択肢!? 出来ないよそんな事! あらゆる意味で!」

 

物凄いディープな選択権を託されまどかは驚愕の表情を浮かべる。

だがほむらは彼の意見に「ふむ」と呟き縦に頷いて

 

「悪くない考えね、これであなたが目の前から消え失せるなら満足よ」

「そうすればこの因縁に幕を下ろせる筈だから、ま、当然僕なのはわかってるけど」

「え~……」

 

勝手に二人で同意して話を進め出すのでまどかが困惑の色を浮かべるも、ほむらとキュウべぇは睨み合って激しくヒートアップする。

 

「まどかは私が貰うのよ、ナマモノはナマモノらしくナマモノとくっついてればいいわ」

「バカ言わないでくれファッキン小娘。まどかは美しいこの僕の下で光り輝く女神なのさ」

「まどかにあなたのばかばかしい妄想を押しつけないで」

「妄想じゃない、理想≪ビジョン≫さ。セクシー覇者の僕と君と一緒にしないでくれ」

「あなたどの基準で自分が美しいだとかセクシーだとか思ってるの?」

「福山雅治」

「もう止めてよ二人共!」

 

二人が不毛な争いをいつまで経っても止めないのでまどかは一喝し、ハァ~と深いため息を突く。

そろそろ昼休みも終わる、さっさと教室に戻らねば……。

 

「あ~あのさ……私達まだ会って間もないよね、キュウべぇと会ったのもほんの数日前だし、ほむらさんともこうやって話すの初めてだしさ……だから」

 

結婚なんてまだ考えた事も無い未知の領域だ。しかも相手が同性or宇宙人、どちらかを選ぶなんて出来ない。ならばと思いまどかは恐る恐る二人に尋ねる。

 

「まずはお友達からで……いいかな?」

「友達……」

「友達からか。確かにまどかの言う通りいきなり結婚ではなく、手順を踏まえて愛を育んでいった方がいいかもね。カッコいい僕とした事が少し急ぎすぎちゃったかな」

「育むって……ほむらさんもそれでいいよね?」

「ええ、なによりもあなたの意見だし、私は生涯あなたの言う事なら全て聞くって誓ってるから」

「僕だってそうさ、君の願いはなんでも叶えて上げるよ」

「アハハ……」

 

彼女の決めた結論にキュウべぇとほむらは納得した様子を見せてくれた。まどかも苦笑しながらホッと一安心し、ニコッとほむらに笑いかけた。

 

「じゃあこれからよろしくね、ほむらさん」

「……」

「え?」

 

話しかけたのだがほむらはうんとすんとも言わない。何故かこちらをジーッと凝視している。

不思議に思ったまどかは彼女に口を開いた。

 

「ほむらさんどうしたの?」

「……あ、ごめんなさい。あなたの笑顔を間近で見たからつい……」

 

ハッと気付いたほむらはさっと髪を掻き上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「視姦してたわ」

「なにそれ!?」

「警察呼ぼうかまどか」

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休みの終了をお知らせするチャイムが学校中に静かに鳴り響く。

 

まるで宇宙人と少女達の物語の始まりを告げるように


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