インフィニット・ストラトス 通称IS。
それは天才科学者篠ノ乃束が宇宙での活動を想定して作りだしたマルチフォーム・スーツ。
発表当初は全く興味すら持ってくれなかったが、日本へ撃ち込まれた二千発以上のミサイルの約半数を束が作ったIS《白騎士》が迎撃し、さらに各国が日本に送り込んだ大量の軍事兵器の多くを無力化した。
後に『白騎士事件』と呼ばれるようになりその圧倒的な性能を発揮したISは世界中に知れ渡るが各国は宇宙に進出せず軍事利用して各国の抑止力となった。
だがこのISには女性にしか使えないと言う欠点が存在していた。
それにより男女の地位は逆転してしまい、女尊男卑の風潮が世界中に広まっていった。
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一夏side
第二回IS世界大会モンド・グロッソに出場する千冬姉を応援するためにドイツに来ていた。
けど、俺はあんまり気乗りしなかった。周りの人達からいつも姉に比べられ、『出来損ない』やら『凡人』などと言われる。どんなに頑張っても、自分を認めてくれないように思えて、それが苦痛だった。
でもそんな自分を理解してくれる人が少なからずいた。
自分の姉の織斑千冬、五反田弾やその家族、御手洗数馬、鳳鈴音、ISの生みの親である篠ノ乃束とその妹の篠ノ乃箒。
この人たちだけがいつも俺を支えてくれた。
会場に設置された時計を見る。試合が始まるまでまだ時間があるようだ。
俺は席を立ち、トイレに向かって廊下を歩いていると突然誰かに布のようなもので口と鼻を抑えられ、そのまま意識を失った。
「う、うん…あれ、ここは?」
目が覚めると廃墟のようなところに手足を縛られて居た。
「気が付いたか、織斑一夏」
俺は声がした方に振り向くと数人の女がこちらを見ていた。
「誰だ、あんたら?」
「俺達は織斑千冬の大会二連覇を阻止するためにお前を人質にした」
人質?たかが大会ごときで?
「それにしてもこれがあの織斑千冬の弟か、噂通りの出来損ないだな」
……またか、どいつもこいつも、俺を馬鹿にしやがって!
俺は目の前の女を睨むが手足が縛られているため身動きが取れない。なんとかしようともがいていると部下と思しき男が目の前の女に近づく。
「織斑千冬が試合を破棄しました」
「そうか、じゃあこいつは用済みだな」
女がそう言うと懐から拳銃を取り出す。
「悪く思うなよ。目撃者でもあるお前に私達の事を知られるわけにはいかないからな。恨むんなら非力な自分を恨むんだな」
女は銃口を俺に向ける。
俺は…死ぬのか?…こんな所で?
ピシ、パリン
突然何かが割れる音がした。
「なんだ?」
自分を誘拐した仲間の一人が上を見る。俺も上に視線を向けると何もない空間に亀裂が入っていた。
「な、何だ?あれ」
ピキ、ベキ、パキ
亀裂は徐々に広がり俺はその亀裂に引きよせられた。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
亀裂に飲み込まれた俺はまた意識を失った。
「……い……か?……」
誰かに呼ばれる声が聞こえる。
目を開けると俺と同じくらいの二人の少年が居た。一人は褐色の肌に銀色の髪をした勝気そうな少年、もう一人は俺と同じ黒髪で表情が乏しい少年。
俺は起き上がると銀髪の少年が安心した様子で話しかけてくる。
「やっと起きたか。お前、何があったんだ?手足が縛られていたみたいだし」
銀髪の少年が無造作に置かれた縄に指さす。どうやら縄をほどいてくれたみたいだ。
俺は周りを見渡すと見た事が無い建物が並んでいた。
「ここは、何処?」
「ここ?ここはクリュセ独立自治区だけど?」
「クリュセ?」
どこの国の地域名なんだ?
「クリュセを知らないのか?」
「うん」
「クリュセを知らないって、どこに住んでたんだお前?」
「俺はドイツの第二回IS世界大会《モンド・グロッソ》の会場に居たんだ。けど変な奴らに攫われてどこかの廃墟に捕らわれてたんだ」
そう話すと二人は首をひねる。
「あいえす?もんど・ぐろっそ?なんだそれ?」
「え?」
俺は銀髪の少年が言った事に戸惑う。
「ISを知らないのか?」
「少なくとも俺は知らねぇな。ミカ、何か知ってるか?」
「知らない」
どういうことだ?ISを知らないなんて。
俺は詳しく聞く事にした。
「……なあ、少し聞きたい事があるんだけど」
「なんだ?」
「この世界の情勢とかを聞いても良いかな?」
「え?別に良いけど、俺達が知っているのでいいか?」
「ああ、それで良い」
俺は少年からこの世界について聞いた。厄祭戦、ギャラルホルン、モビルスーツなど聞きなれない単語に戸惑うが何よりここは火星ってことに驚いた。
そして話を聞く限りここは俺が居た世界とは違う世界ということが分かった。
「…とまあ、こんな感じだけど…分かった?」
「うん、大体分かった。ありがとう」
銀髪の少年の話を聞いた後、俺は不安でいっぱいだった。これからどうすれば良いのか。何時、元の世界に帰れるのか。そう考えているとまた銀髪の少年が話しかけて来た
「ちょっといいか?」
「え?う、うん」
「もし良かったら俺達と一緒に来ないか?」
「……え?」
予想外の言葉に戸惑う。俺の心を察したのか少年は話を続ける。
「何かお前、寂しそうな目をしているんだよ。まるで、どこにも居場所が無いみたいにさ」
俺、そんな目をしてたのか。
「それでどうする?一緒に行くのか?行かないのか?」
「……行くよ。どの道、帰る場所が無いから」
「よし、決まりだな。俺はオルガ・イツカ、オルガって呼んでくれ。それで隣に居るのは」
「三日月・オーガス、三日月で良いよ。あんたは?」
「俺は織斑一夏」
「そうか。よろしく一夏」
「よろしく、一夏」
「こちらこそ、よろしく。オルガ、三日月」
俺は二人に握手を交わした。