これからもよろしくお願いします。
クーデリアとフミタンを探しにホテルから出たオルガ達は町中を走り回っていた。
「おい!そっちはどうだった?」
「駄目だ。居ねえよ」
「探す範囲が広すぎるよ」
オルガ達は一旦集まった後、報告を始める。
そしてシノは大通りの方に視線を向けるとそこには武装した大勢の組合員が列をなして歩いていた。
「しっかしあいつ等、あんな物騒な物を持ってどこに行くんだ?」
「偉い人の所でしょ?」
「その前にギャラルホルンとぶつかっちまうだろ?」
「いや……」
ユージンの言葉にオルガは否定する。
「ただ抑えるだけなら、もうやっているだろう」
「どういうことだよ?」
「油売ってる場合じゃねぇってことだ」
オルガはそう言うとまた探しに行った。
一方イサリビでも慌ただしく動いていた。
「お~い!そっちの立ち上げ、早くしろよ!」
「パイロットが居ないのにですか?」
「団長達、帰って来たんですか?」
「いや、まだだ。何か知らねえが、面倒な事になってるのかもな」
雪之丞は機体の整備をしていた子供たちにそう言うとハルファスの所に行く。
「お~い!そっちはどうだ?」
「こっちはもう終わりました!何時でも出せます!」
「そうか!」
整備をしていたタカキから聞いた雪之丞はそのままハルファスを見上げる。
背部のバックパックと両肩、そして腰後部には新たにスラスターが追加され、ブルワーズとの戦闘で失われた左腕のワイヤークローは先端に五本の棘が付いたナックルシールドに換装されている。
そしてサブアームにはガトリング砲を装備していた。
「でも、機動力はかなり上がってますけどその分、燃費が……」
「まあ、一夏なら大丈夫だろ」
「……そうですね」
――――――
一夏side
「はあ、はあ、クーデリアさん!フミタンさん!どこにいるんですか!」
俺は二人を探しに走り続けたが一向に見つからなかった。
やがて息切れし、立ち止まって息を整える。
(住人に二人の事を聞きながら探しているけど全然見つからない。本当にどこに居るんだ?)
そう思いながら歩いていると大通りの方から声が聞こえた。
(なんだ?)
大通りに出るとそこには大勢の組合員の人達が看板や銃、さらにはモビルワーカーを持ち出して歩いていた。
『子供達から未来を奪うなー!』
「「「子供達から未来を奪うなー!」」」
組合員の人達はそう叫びながら歩いて行く。
あれがオルガが言っていた組合員の人達か。
「って、見てる場合じゃないな。早く二人を探さないと……ん?」
俺は路地裏に戻ろうとした時、見覚えのある女性を見つけた。
「あれって……フミタンさん?」
一度目を凝らしてみるがその姿は間違いなくフミタンさんだった。
「フミタンさん!」
「一夏……さん?」
フミタンさんは俺の方に振り向くと驚いた表情で俺の名前を呼んだ。
「良かった、無事で」
「どうして此処に?貴方はビスケットさんとアトラさんを助けに行ったんじゃ……」
「二人はもうすでに助けました。それよりフミタンさんこそどうしたんですか?ホテルで待っていると言ってたのに居なくなっていましたし」
「それは……」
「まあ良いや。此処は危ない、早くクーデリアさんも見つけてイサリビへ戻りましょう」
俺はクーデリアさんを探しに歩き出そうとしたがフミタンさんは一歩も動かずじっとしていた。
「フミタンさん?」
「すみません一夏さん、私は皆さんの下には戻れません」
フミタンさんは何処か悲しそうな表情を浮かべながら言う。
「戻れないって、どういうことですか?」
「さっき言った通りです。私は戻れない、いえ、戻る資格は無いんです」
戻る資格は無い?どういう意味なんだ?
「フミタン?」
疑問を浮かべていると突然、聞きなれた声が聞こえた。
振り向くと大通りの向こう側にクーデリアさんが居た。
「フミタン!」
クーデリアさんは手を振りながら俺達の下に駆け寄るが、組合員の女性がクーデリアさんを止める。
「下がってください。危ないですよ」
「あ、すみません。人を探してて」
「とにかく下がって」
「クーデリアさん?クーデリアさんじゃないですか!」
突然、組合員の男性がクーデリアさんの名前を言った瞬間、周りの目が変わった。
「え?クーデリアって、この人が!?」
「ああ、ニュースで見たよ!間違いない!」
「え?何なのですか?」
クーデリアさんは戸惑っているが組合員の人達はそのまま連れて行った。
(そう言えばここの組合員はクーデリアさんが武器を提供したと思っていたんだったな)
兎に角、クーデリアさんを何とかして連れ出さないと。
ドカ――――ン!!!
突然爆発音が響き、視線を向けると本社の入口の一部が燃えていた。
俺は突然の事で固まっていると組合員のリーダーらしき人が慌てた様子で他の人達に話しかけていた。
「攻撃は待てと言ったはずです!」
「いえ、私たちは何も……」
どうやら自分達がした訳ではないようだ。
『事態窮迫につき、危害射撃を開始する』
「待ってくれ!俺達じゃない!俺達じゃないんだ!」
組合員たちは今の爆発は自分たちじゃないと叫ぶが聞き入れる様子は無く、ギャラルホルン側のモビルワーカーが組合員側のモビルワーカーを破壊した。
「撃って来た!撃って来たぞ!」
「くっそー!」
何人かが銃を持って応戦する。
その時、ギャラルホルンのモビルワーカーから何か撃ちだされた。
「?ガスじゃない?」
「ただの煙?」
組合員たちが不思議に思っている中、俺は煙の隙間からギャラルホルン側のモビルワーカーに装備された機銃が動き出すのが見えた。
「フミタンさん!」
嫌な予感がした俺は、フミタンさんの手を引いて物陰に伏せる。
「ぎゃああああ!?」
「痛い、痛いよ!」
「死にたくない!」
銃声と組合員たちの悲鳴が大通りに響き渡る。
そしてしばらくして銃声が止むのを確認すると俺は直ぐに起き上がる。
「大丈夫ですか?フミタンさん」
「は、はい」
俺はフミタンさんの手を引いて立たせる。
煙が晴れると、そこには未だ炎を上げ続けるモビルワーカー、機銃に撃たれて倒れている大勢の人々、そしてそこから煙と血の匂いが漂っていた。
「そんな……こんなの、虐殺じゃないか!」
元の世界でもここまでの事はしなかったのに、あいつら平気で。
俺は本社の正面入り口から撤退するギャラルホルンを睨む。
だが今は、クーデリアさんとフミタンさんを連れてここを離れることが先だ。
「フミタンさん」
「・・・・・・」
呼びかけてもフミタンさんは答えずその場に佇んでいた。
俺は仕方なくフミタンさんの手を掴む。
「!?、何を…」
「すみませんが一緒に来てもらいますよ」
無理矢理手を引きながらクーデリアさんを探しに行く。
しばらく行くとクーデリアさんを見つけた。
「クーデリアさん!」
傍に駆け寄ると、クーデリアさんは血まみれの女性を抱えながら涙を流していた。
「一夏さん、フミタン」
「クーデリアさん、その人は」
俺は未だ泣き続けるクーデリアさんに話しかける。
「……この人は、先ほどの銃撃で……」
「……そうですか」
この言葉に俺は再びギャラルホルンに対して怒りがこみ上げたが何とか抑える、クーデリアさんに手を伸ばした。
―――――
(私は一体何をしてる?)
フミタンは目の前に居るクーデリアを見ながら考えていた。
(私はもう、お嬢様と共に居る資格は無いはず……なのに)
フミタンは自己嫌悪になりながら見上げる。
その時、向こうの建物の窓から光が見えた。
「?」
それに目を凝らすとそこには黒いスーツを着た男が二人、しかも内一人はスナイパーライフルを持ってこちらに向けていた。
「!?」
フミタンはその二人に見覚えがあった。
この大通りに来る前、接触して来たノブリスの手の者だった。
そして彼等が今、狙っているのが……。
「お嬢様!」
フミタンは反射的にクーデリアさんを守る様に抱きしめる。
「「フミタン(さん)!?」」
二人は突然の事に驚いている中、銃声が響いた。
その時、一夏の首にかけていたペンダントが光を発し。周囲にドーム状の透明な膜のような物が三人を包み、銃弾を防いだ。
―――――
一夏side
「なんだ……これ?」
俺は突然の事で理解が追いつかず周囲に張られた膜を見る。
そしてしばらくするとペンダントの光が消えると同時に周囲の膜が消えた。
「今のは……一体」
俺は首に掛けたペンダントを見る。
(さっき、突然銃声が聞こえた瞬間、これが光ってあの変な膜が出て来たと思ったら今度は銃弾を防いで……いろんなことが起こり過ぎて何が何だが分からなくなってきた)
取り敢えずこの事は後で考える事にした俺は二人を連れて近くの建物に避難する。
「あの、一夏さん」
「静かに。さっき撃って来た奴がまだ狙っているかもしれない」
俺は入口前で周囲を警戒していると別の路地裏からアトラと一緒に探しに行っていた三日月が走って来た。
「一夏!」
「三日月!」
三日月は一夏達の下へ着くと一夏、クーデリア、フミタンと順番に見る。
「みんな無事みたいだね」
「三日月、貴方も何でここに?」
「何でって、二人がホテルに居なかったからみんなで探してたんだけど」
「アトラさんとビスケットさんは?」
「もう助けた、今アトラがオルガ達を連れて此処に向かってる」
「そうですか。良かった……」
三日月は二人の無事を伝えるとクーデリアさんは安堵の表情を浮かべる。
「とにかく、早くオルガ達と合流しよう」
「待ってくれ、何処かに俺達を狙っている奴らが居るから移動するのは……」
「大丈夫だと思います。これ以上留まれば、ここから脱出が難しくなるでしょうから」
此処でずっと黙っていたフミタンさんが話しかけて来た。
「俺達に向けて撃って来た奴らの事、何か知ってるんですか?」
「……はい」
「何の事?」
「ああ、そっか。三日月はさっき来たばかりだったな。実は……」
俺は三日月にさっき俺達の身に起こったことを話した。
「そうだったんだ。……とゆうか、よく無事だったね」
ああ、全くだ。あの膜が無かったら俺達の内、誰かが死んでいたかもしれない。
「ところであんた、そいつらの事を知ってるって言ってたよね?それってどういう意味?」
三日月はフミタンさんを睨みながら聞く。
恐らくフミタンさんを怪しんでいるのだろう。
「三日月、それは後にして。今は早くオルガ達と合流しよう」
「……分かった」
三日月は納得できてない様子だが頷く。
「よし、行こう」
「うん」
俺と三日月はオルガと合流するため、二人を連れて移動を開始した。
それにしても、このペンダントから発した謎の光と膜は一体何なんだろうか?