『私は、自分が生まれ育った火星の人々を救いたい一心で行動してきました。でも余りにも無知だった』
多数の戦艦と無数の敵モビルスーツに囲まれている状況の中、クーデリアは話す。
労働者たちの願い、テロの真相、ギャラルホルンの虐殺など。
そうしてる間に敵がどんどん近づいて来た。
「来るぞ!」
「くっそ~、うじゃうじゃといやがる」
「それでも、やるしかないだろ」
一夏達は目の前の敵に向けて武器を構える。
『今、私の船はギャラルホルンの艦隊に包囲されています。ギャラルホルンに問いたい、あなた方は正義のために戦う存在ではないのですか?これがあなた方の正義なのですか?ならば、私はそんな正義は認めない!』
ギャラルホルンの艦隊から出撃する無数のモビルスーツが向かって来ている光景を見ても、臆することなく力強く言い切る。だが……。
『もし、私の発言が間違っていると言うのならば、構いません。今すぐ私の船を撃ち落としなさい!!』
この言葉を聞いた瞬間、敵も味方もまるで時が止まったかの様に固まってしまった。
「おいおい……」
「なに言ってくれちゃってんのぉ!?」
クーデリアがギャラルホルンに啖呵切った事に昭弘とシノは顔を引きつらせていた。
そんな中、一夏はこの後何が起こるのかを想像し、慌てて三日月に声を掛ける。
「三日月!」
「うん、やろ…『待て、一夏、三日月!』ん?」
「ユージン?」
一夏と三日月は飛び出そうとするが、ユージンに止められる。
二人は「何故?」と首を傾げていると、その理由は直ぐに分かった。
一夏達に向かっていた敵モビルスーツが次々と止まり、道を開け始めたのだ。
「おいおい、どうなってんだ?」
「急に止まったぞ?」
「一体、何が?」
シノ、昭弘、一夏はこの状況に戸惑いながら周りを見ていた。
そんな中、三日月だけはどこか関心した様子で話す。
「……凄いな、あいつ」
「三日月?」
「俺達が必死になって、一匹一匹プチプチと潰してきた奴らを、声だけで止めた」
そうしてる間にいつの間にか艦隊の包囲から抜けた。
―――
同時刻、とある船で二人の男がモニターに映されたギャラルホルンの包囲網を抜けた鉄華団を見ていた。
「あいつ等、何をやってんですかね?あんなのさっさと撃ち落としちまえばよかったのに」
恨めしそうに言うのはかつて鉄華団に所属していたが、彼らを裏切ろうとしてボコボコにされ、更にパンツ一丁にされてギャラルホルンに送り付けられた哀れ(笑)な中年の男――トド・ミルコネンだった。
「統制局が作戦の中止を命令したのだろう」
艦長席に座っている長い銀髪に仮面を付けた男――モンタークが答える。
「え、何でまた?」
「おそらく、アフリカンユニオンからの要請だ。これ以上国際的な信用を失わせる訳にはいかないからな」
「へぇ、じゃああのガキ共は命拾いしたと言う事ですかい?たく、悪運の強ぇ奴らだぜ」
「ふふ、さすがは革命の乙女と言った所か、期待以上の見世物だった」
モンタークは微笑みながら興味深そうに映像を見る。
「さて、私達はこれから彼らに接触する。トド、くれぐれも彼らを刺激しないように」
「へいへい、分かってますよ~」
トドはそう言いながら気だるげな足取りでブリッジを出る。
そしてモンタークは座席に設置されたコンソールを操作し、画像を出す。
そこには、グレイズのコックピットを潰していたハルファスの姿だった。
「……まさかとは思ったがやはり……」
―――
ギャラルホルンの包囲網を抜けた一夏達は、ブリッジに集まった。
理由はフミタンが今回の件について話すと言って来たからだ。
ブリッジにはまず、コロニーの労働者に物資を届けたオルガ達と買い物の途中でテロに巻き込まれた一夏達、そしてタービンズの名瀬とアミダが居た。
ちなみにダンテは未だ医務室で寝込んでいる。
「さて、詳しく聞かせて貰うぜ?フミタン・アドモス」
「……はい」
オルガはフミタンにいくつか質問するとフミタンは抵抗すること無く全て話した。
自分達が運んでいた荷物の事、彼女がクーデリアと別れた経緯、ノブリスの目的、などを詳しく話す。
「―――以上が私が知っていることの全てです」
「……」
フミタンの話が終わると周りは何も言わずに複雑そうな表情を浮かべる。
「……それを俺達に聞かせてどうするつもりだ?」
「それは……「団長さん!」お嬢様?」
フミタンがオルガの質問を答えようとした時、突然クーデリアはフミタンの前に立った。
オルガは「何だ?」と首を傾げると。
「お願いします!どうかフミタンを許してくれませんか?」
その言葉にオルガは眉をひそめ、聞き返した。
「……こいつはあんたを裏切ったんだぞ?」
「ええ、分かってます。でも、それでも、私にとってフミタンは大切な家族なんです!」
クーデリアの懇願にオルガは悩む。
いくら依頼者の頼みでも裏切り者をこのままおいても良いのかと。
その時、シノがオルガに声を掛けて来た。
「なあ、オルガ。別に良いんじゃねえか?ここに居たって」
「おいシノ、そんな適当な事を」
「けどよユージン。うちのチビ達は凄く懐いてたし、居なくなっちまったら悲しむぞ?」
「それは……そうだけどよぉ」
団員たちが、フミタンの事で話し合っている中、それを聞いたオルガは「はぁ」とため息をつく。
「そうか、お前等がそこまで言うなら。良いだろう、今回の事は不問にするが次は無いぞ」
「……はい」
「団長さん、ありがとうございます!」
オルガの言葉に団員達(一部は特に)は歓喜の声を上げる。
クーデリアは頭を下げた後、直ぐにフミタンの下に駆け込み、うれしそうな表情で話しかける。
「さて、お前等、喜んでる暇は無いぞ。これからどうするのかを考えなきゃならん」
名瀬の言葉に周りは緩んだ気を引き締める。
これからの方針を決めようとするが……。
「つっても、ギャラルホルンに目を付けられた以上、このルートは使えないな」
「何とかならないのか?」
「無理だろうな。二つの共同宇宙港が抑えられてる時点で不可能に近い」
元々は地球軌道上に有る2つの共同宇宙港のどちらかで降下船を借り、地球に降りる手筈だった。
だが、コロニーの件で目を付けられ、二つの宇宙港が抑えられてしまった。
それにより地球に降りる手段がなくなってしまった。
その事実に周りの空気が重くなる。
「すみません、私のわがままで……」
「気にすんな。過ぎた事を掘り返してもどうにもならねぇ。今は目の前の問題をどうするか考えようぜ」
落ち込むクーデリアにオルガは気にしてないと言う。
その時、艦内に警報が鳴った。
「何だ?」
「こちらに接近してくる船を補足、その船から通信が来てます」
「繋げろ」
オルガがそう命令すると、モニターに仮面を付けた銀髪の男が映された。
『まず、突然の事に謝罪する。私はモンターク商会の社長モンタークと申します』
「……俺達に何の用だ?」
『実は商談が一つありまして、そちらの代表とお話をしたいのですが』
―――
突然接触して来た仮面の男モンタークさんとオルガ達はハンマーヘッドの応接室で話をしている頃、俺はモンターク商会が持ち込んで来た物資の運び込むのを手伝う事になった。
「それにしても凄い量だ。これ全部がタダで提供されたんですよね?おやっさん」
「ああ、そうだ。今チラッとリストを見たが、モビルスーツの装甲と武器、推進剤や弾薬などの消耗品が腐るほどある」
そんな話をしながら整理しているとおやっさんの下に三日月が来た。
「おやっさん、物資の運び込み終わったよ。」
「そうか、お疲れさん。後はやるから、お前等はこの事をオルガ達に報告してくれ」
「分かった」
「了解」
おやっさんの頼みを了承し、オルガ達の下へ向かう。
途中で船員の人達に聞きながら探しているとモンタークさんと一緒に居るオルガとビスケットを見つけた。
「オルガ、物資の運び込みが終わったよ。今おやっさん達が確認している」
「そうか、お疲れ。こっちも……三日月、どうした?」
「……」
三日月はオルガの問いかけに答えることなくじっとモンタークの顔を見る。
そして首を傾げながら―――。
「ねぇ、何でチョコの人がここに居るの?」
―――と言った。
それを聞いたモンタークは仮面の目の部分を開けて笑みを浮かべる。
「ふふ、あの双子のお嬢さんは元気かな?」
「!もしかて、あの時のギャラルホルン!?」
「なに!?」
話を聞く限り三日月とビスケットはこの人と会った事があるらしい。
てか、何で三日月はあの人の正体が分かったんだ?
もしかして第六感的な物でもあるのか?
「そんなに警戒しなくても、こちらは何もしない」
「……何が目的だ」
オルガは警戒を解かずにモンタークに問う。
すると、思いのほかあっさりと答えが返って来た。
「私の目的は、腐敗したギャラルホルンを変革したいと考えている。
そのためにはまず、君達にはクーデリア・藍那・バーンスタインとアーヴラウ代表の蒔苗東護ノ介によって行われる交渉を成功させると共に、ギャラルホルンの権威を堕とす手伝いをして欲しい」
「「「な!?」」」
それを聞いた俺達(三日月は除く)は言葉を失う。
「そんなこと、俺達なんかに出来る筈は……」
「だが現に、コロニーではそれをやってのけアリアンロッドを退けた。それを見て私は君たちと手を組めば目的を果たせる事が出来ると思った。利害の一致と言う奴だよ。ここまで言っても、まだ信用ならないかね?」
オルガ達は何も言えず、目を逸らした。
「…まあ、よくよく考えてくれ。所で君達に聞きたい事があるんだが」
「……まだあるのかよ」
「君たちが所有している機体、ハルファスをどこで手に入れた?」
「え?」
モンタークさんの言葉に俺達は首を傾げる。
なぜそんな事を聞くのか?そう思っているのを察したのか理由を教えてくれた。
「少し気になった事があってね。まあ、これは個人的な事だから気にしなくていい」
そう言うモンタークさんは何処か真剣になっているように見えた。
ちらりとオルガを見ると、オルガは頷いて来た。どうやら喋っても問題ないと判断したんだろう。
俺は再びモンタークさんに向き直り、ハルファスを見つけた場所を伝える。
それを聞いたモンタークさんは「そうか、火星に……」と呟くと真剣な顔から再び柔和な笑みに戻る。
「私はこれで失礼する。ああそれと、私の正体については内密に。もしこれが破られるならば、商談は無かった事にさせてもらう」
そして、モンタークは仮面の目の部分を再び隠して去って行った。
「……どうする?オルガ」
「危険な賭けだが、ギャラルホルンに目を付けられた以上乗るしか無いのも確かだ。まあその辺りは、クーデリアの判断にもよるがな」
「……そうか」
―――
「火星で見つけた……か。その話が本当なら”あれ”も火星の何処かにあるのかもしれないな」
鉄華団と商談を終えたモンタークは先ほどの一夏の話を思い出していた。
「ASW‐G‐38 ガンダムハルファス。悪魔の名を冠する機体でありながら、天使の力を宿した禁忌の存在か」
座席にもたれ掛かったモンタークの呟きは、まるで何かを知っているような口ぶりだがそれを問う者はこの場に居ない。
そして、モニターに映る地球を見ながら更に呟く。
「かつての災厄が再び訪れるという予兆か、それとも……」