とある船のブリッジのモニターに映されたとある戦闘の映像が流れていた。
それを見た一人の男が悲鳴を上げていた。
彼の名前はマルバ・アーケイ。元CGSの社長だ。
「もうちょっと大人しく見れないのか?マルバ」
そこへマルバと一緒に見ていた白いスーツを着た男がマルバに注意する。
「そんなの出来る訳ないでしょ!あいつら、俺の船を勝手に乗り回しているんですよ!」
「はあ、もういい、別のものを映してくれ」
「了解」
男が船員に命令すると先ほどの映像から三日月の機体バルバトスが敵部隊と戦っている映像に変わる。
「ほ~、あの白いモビルスーツ中々やるな。あれって確か、あんたが施設の動力炉にしていた奴だったか?」
「ええ、そうです」
男の質問にマルバが答えるとバルバトスに一機のモビルスーツが近づく。
「!!?」
マルバはある事に気づき、そのモビルスーツを凝視する。
(な、何だあれは!?あんなの持ち込んだ覚えはねぇぞ!何なんだあれは!?)
それは一夏が乗るハルファスだった。
「なあマルバ、あの青いのは何なんだ?あんたの話ではあの白いの一機だけだったよな?」
「そ、そのはずですが」
「ふ~ん」
マルバはそう答えると男はそのままモニターに映った戦闘を笑いながら見ていた。
―――――――――
一夏side
前回の戦闘の後、俺と三日月は食堂で飯を食っていた。
「すごい食欲だね。二人共」
「仕事の後は腹が減るんだよ」
「そうだな。特に力仕事とかをよくするからな」
「……そうなんだ」
「ん?どうしたアトラ?」
「あ、あのね、ああゆうのってこれからもあるの?」
……この前の戦闘の事か。
「多分ね。クーデリアを狙っている奴らが居るみたいから」
「そうだな」
「三日月、一夏さん、怖くないの?」
「別に?」
「俺もあまり無いな」
「……どうして?死んじゃうかもしれないんだよ?」
俺達の答えにアトラは納得出来ない様子。まあその気持ちは分かるが。
「そうだとしても、どの道戦わなければみんな死ぬ。そうだろ、三日月?」
「一夏の言う通りだ。それに」
三日月は左腕につけたアクセサリーをアトラに見せる。三日月から聞いた話だとアトラが作ったお守りらしい。
「俺にはこれがある」
「う、うん////」
三日月の言葉にアトラは顔を赤くしながら笑う。
(……お守り…か)
二人の様子を見ていた俺は首にかけたペンダントを見る。
(……これも俺の事を守ってくれているのかな)
脳裏に元の世界の事を思い出す。あの世界は女尊男卑とかで酷かったが、この世界と比べるとかなり平和だと思える。まあ、俺が居た所とここを比べるのはどうかと思うけど。
あ、そういえば千冬姉はどうしているんだろう。ちゃんと片付けが出来ているのかな?
「そういえば一夏さん」
昔の事を思い出していると、アトラが聞いて来た。
「ん?なんだ、アトラ」
「今まで気になっていたんですけど、その首にかけてるペンダントは誰かに貰ったんですか?」
俺の首にかけたペンダントに指さす。
「ああ、これか?これは昔、箒って言う幼なじみの女の子に貰ったんだ。ちなみに俺の彼女でもある」
「か、彼女!?一夏さんはその人と付き合っているんですか!?」
おお、すげぇ驚いてる。
「まあな、けど次の日にその子は引っ越ししたから離れ離れになっているけど」
「そうなんですか。……あ!もし良かったらその事を詳しく教えてくれませんか?」
「え?そんなに面白いとは思えないぞ?」
「大丈夫です。ちょっと参考に聞きたいだけですから/////」
アトラは頬を赤くさせて三日月を見る。
?……何を参考にしたいのか気になるけど別に良いか。
「まあ、話すくらいなら良いけど」
「本当ですか!」
「ああ、時間がある時で良いか?」
「はい、大丈夫です」
「ごちそうさま」
アトラと約束をして丁度、三日月は食べ終えた食器を片付ける。
「あ!そうだ。二人共、ちょっと良い?」
「ん?なんだ?アトラ」
「今からみんなにお弁当を届けたいんだけど手伝ってくれないかな?」
「良いよ。一夏は?」
「俺も良いぞ。丁度食べ終わった所だし。それでアトラ、弁当は?」
「ちょっと待って、今持ってくるから」
アトラはそう言うと厨房に行く。俺は食器を片付けてしばらく待つとアトラは大きなバックを二つ持って来た。
「お待たせ!」
「良し、行くか」
俺と三日月はアトラが持って来たバックを一つずつ持つ。
「え?持ってくれるの?」
「女の子に重い物を持たせるわけにはいかないだろ?」
「一夏の言う通り、これは俺達が持つよ」
「……ありがとう、二人共」
「それじゃあ、行こうか」
「うん」
「ああ」
俺達は作業中のみんなに弁当を届けるために食堂を出た。
弁当の配達の途中にクーデリアさんと会い、少し話した後クーデリアさんも一緒に行く事になり今は倉庫に来ていた。
「みなさーん!お疲れさまー!お昼ですよー!」
アトラの一声に作業していた子供たちが集まって来た。
「ほら」
「ありがとうございます!」
「大丈夫よ。まだあるから」
「ど、どうぞ」
「ありがとうお姉ちゃん」
「はい」
「ありがとう一夏さん」
俺達は子供たちに弁当を渡した後、昭弘に渡すためトレーニングルームに向かった。
トレーニングルームに着くと三日月は弁当を一つ持って入る。
「昭弘、昼飯」
「ふぬう、あ、置いといてくれ。ふん」
昭弘は腹筋をしながら弁当を置いとくよう三日月に頼む。
「じゃあ、ここに置いとく」
「三日月、一夏、後で、シュミレーター、付き合えよ」
「うん、良いよ」
「俺も良いぞ」
昭弘と約束をし、最後にモビルスーツの格納庫に向かうためにエレベーターに乗る。
「じゃあ、そのテイワズって人の所に行くの?」
「アトラ、テイワズは人じゃなくって会社だぞ。ですよね?クーデリアさん」
「ええ。ただ、仲介に頼める人物が居ないので簡単にはいかないようですね」
仲介人が居ないのか、確かに難しいだろうな。
「ふ~ん」
三日月は興味無さそうだな。
「ふ~んって、興味ないのですか?大事な事ですよ?」
「別に?オルガがちゃんとしてくれるだろ?大体、あんたがなぜ地球に行くのかを良く分かってないし」
「え!?私達、地球へ行くの!?」
「言ってなかったっけ?」
「う、うん。でもどうしよう。おしゃれな服とか持ってないのに」
「そのまんまで良いんじゃないの?」
「だって、地球に行くんでしょ?田舎者だって思われないかな?」
流石にそれは無いんじゃないかな。
「私が地球に行くのは、火星の人々の自由な暮らしを勝ち取る為です」
いきなりクーデリアさんが話し始める
「300年前の厄祭戦によって、再分化されていた地球の国家群が四つの経済圏に統合されてたのは知ってますよね?」
「知らない」
「あ、そうですか」
クーデリアさんは気を取り直して話を進める。
「それを受けて火星、木星などの圏外圏でも、それぞれの経済圏による分割統治が積極的に進められました。
クリュセ自治区は経済圏の一つアーブラヴの支配下に入ったのですが開拓時代に結ばれた不利な惑星間経済協定の名目の下、長年の不当な搾取にさらされてきたのです。
この状況を改善するために私は地球のアーブラヴ政府と交渉を続けました。そして先日、アーブラヴ代表である蒔苗東護ノ介氏が対話のテーブルにつくことを初めて了承してくれたのです。
私の目的は火星の経済的な独立を勝ち取る事、それが全ての火星の人々の未来につながる事を信じています」
なるほど、これがクーデリアさんが地球へ行く理由か。
クーデリアさんの説明が終わるとアトラは拍手をする。
「クーデリアさん凄い!」
「ふ~んじゃあ、あんたが俺達を幸せにしてくれるんだ」
「え?」
クーデリアさんは一瞬呆けた顔をするが直ぐに顔を引き締める。
「ええ、そのつもりです」
エレベーターの扉が開くと俺達はエレベーターから出た。
格納庫に着くとおやっさんと数人の子供たちがモビルスーツの整備をしていた。
「お疲れ様で~す。お弁当で~す」
「おう、ありがてぇ。お~い!区切りの良い所で飯にしようやぁ!」
「了解!」
「やった飯だ!」
しばらくした後、区切りを着いた子供たちが俺達の所に来た。アトラとクーデリアさんはみんなに弁当を渡す。
「俺もこっち手伝おうか?」
「ああ、力仕事の時にな。今は細かい調整をやっているからよ。一夏はともかくお前は字を読めねえだろ?」
「そうか、分かった」
「三日月、貴方字を読めないのですか!?」
「うん?」
「うんって、だってこんな複雑そうな機械を動かしているのに?」
クーデリアさんはバルバトスを見ながら言う。
「字を読んで動かすわけじゃ無いからね。モビルワーカーと大体一緒だし、後は…感?」
「か、感?」
「そんなに驚く事かな?」
「あの、学校とかには?」
「行ってないよ。行った事がある奴の方が少ないんじゃないかな?一夏は行った事があるんだっけ?」
「ああ、行ってたよ。途中までだけど」
正確にはこの世界に来る前だけど。
「まあ、生きてくだけで精一杯の奴が多いからな。マシな施設に居た奴はいくらかは教わってはいるんだがな」
「そうですか」
「配り終わったよ~」
配達を終わらせたアトラが戻って来た。
「アトラは字を読めるんだっけ?」
「うん!おばさんに教えて貰ったから」
「三日月、もし良かったら読み書きの勉強をしませんか?」
「え?」
「私が教えますから!読み書きができればきっとこの先、役に立ちます。本を読んだり手紙や文章を書くことで自分の世界を広げることができます!」
クーデリアの話を聞いた三日月は少し考える。
「…教えて貰えば?三日月。お前がやりたいと言ってた農場に関する本とかを読めるようになるぞ?」
「そうか、じゃあやってみようかな」
俺は三日月に言うとやる気になった。そこにタカキと数人の子供たちが来た。
「俺も読み書きを出来るようになりたいです!一緒にやれせても良いですか?」
「俺も俺も!」
「俺にも教えてよクーデリア先生!」
「せ、先生?えっと」
クーデリアさんは困った顔で俺達の方に向く。
「良いんじゃないか?教えて上げても」
俺がそう言うとクーデリアさんは子供たちに向く。
「ええ。私で良ければみんなで勉強しましょう」
「やった!」
「すげぇ勉強!」
それを聞いた子供たちははしゃぎ始める。
「みんな偉いわね。うん!じゃあ私も教えて上げるからいつでも聞いてね」
アトラがそう言うと子供たちは嫌そうな顔をする。
「ア、アトラかぁ」
「俺、クーデリア先生が良いなぁ」
「む!何よ!何が不満なの!」
「落ち着けってアトラ」
俺はアトラをなんとか宥める。その後俺は格納庫に残り、三日月たちは別の場所に移動した。
「じゃあ、おやっさん、俺は何をやればいいの?」
「ああ、お前にはハルファスの整備を頼む」
「分かった」
残った俺はおやっさんと共にハルファスの整備をすることにした。
「う~ん、リアクターの調整って難しいな。それに各部のモーターに変な負荷がかかっているし。…はあ、こんな時、束さんが居ればなぁ」
俺はあの天災科学者のことを思い出す。
…いや、居ない方が良いな。あの人がこの世界に来たら、何しでかすか分からない。とゆうか独学でエイハブリアクターやモビルスーツなどを作ったり、ギャラルホルンにちょっかいとかを出しそうだ。
そう思っているとおやっさんが様子を見に来た。
「一夏、ハルファスはどうだ?」
「正直お手上げです。やっぱり専門の技術者に聞かないと分かりません」
「そうか、まあしょうがねえよ。こいつとバルバトスはろくな資料がないからな」
「そうですね」
俺はハルファスを見上げながら話していると突然警報がなった。
「なんだ?」
「おやっさん、少し外します!」
「お、おう」
俺は格納庫から出てブリッジに行く。途中で三日月とオルガと合流しブリッジに入る。オルガは何があったのかを聞くとフミタンさんから他船からの停止信号と伝える。
『ガキどもよ、俺の船を返せ!』
突然モニターに見知った顔が映る。
「社長!?」
ビスケットが目の前に人物を見て驚く。モニターに映る男はかつてのCGS社長マルバ・アーケイだった。