虚無の魔神   作:千本虚刀 斬月

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10話 鬼道術式全集

 

 

 

 

 ウルキオラは今、京妖怪達とともに宴会に参加している。この春で羽衣狐が中等部から高等部に進学する事に対する祝いである。洋式の豪邸に合わせたのか羽衣狐も普段の制服ではなく黒のドレスで着飾っている。人間の使用人達は予め羽衣狐が言いくるめていた為、皆出払っている。羽衣狐は配下の妖怪達から祝いの言葉や貢物を受け取っている最中だ。

 

(ただの進学程度で随分と大仰な事だ。)

 

そこでウルキオラは、羽衣狐を見つめている見知らぬ幼女の存在に気が付いた。

 

「おい、何だ貴様は。あの女狐に用があるならそんな所に突っ立ってないで直接話しかければいいだろう。」

 

「ふぇ!にゃ、何だお前は。お前こそ名を名乗れ。」

 

「・・・ウルキオラ・シファーだ。」

 

「そうか。私は狂骨の娘だ。」

 

(・・・狂骨?・・・・・・・・・・・・ああ、そういえば居たな。)

 

ウルキオラはそんな事を考えていると、羽衣狐の方からやって来た。

 

「ここにおったか、狂骨。しばらくぶりじゃのぅ、ウルキオラ。」

 

「はい。お姉様。ご進学、おめでとうございます。」

 

狂骨は羽衣狐に花束を手渡した。羽衣狐も微笑みながら花束を受け取り、狂骨の頭を撫でる。

 

「愛い奴じゃのぅ。それで、お主からは何か無いのか?ウルキオラ。」

 

ウルキオラは小さめの箱を羽衣狐に渡した。

 

「ここで開けてみてもよいかの、ウルキオラ?」

 

「好きにしろ。」

 

箱の中身は黒いボディカラーのケータイであった。

 

「ふむ。これは携帯電話というやつか。」

 

「ああ。貴様の立場と今後のことを考えると、即座に連絡が取れる手段は在った方がいいだろう。」

 

ウルキオラも既にケータイを購入していた。ボディカラーこそ白であるものの、羽衣狐に渡したモノと同じ機種である。ちなみに、そのことを知った羽衣狐は何故か少し上機嫌になっていた。

 

 

 宴会も一段落着いたところで、ウルキオラは部屋の一角に設えられているバーカウンターで静かにブランデーを飲んでいた。そこに羽衣狐が狂骨を連れて来た。

 

「ウルキオラよ、妾達にも何か出してくれんかの?」

 

ウルキオラは舌打ちしつつも、羽衣狐にはバーボンをロックで、狂骨にはカクテルをだしてやった。

 

「シンデレラ。ノンアルコールカクテルの代表格だ。」

 

「つまりはミックスジュースじゃの。」

 

「な、なんだとー。わたしにもちゃんとお酒を出せー!」

 

「喚くな、耳障りだ。貴様のようなガキにはそれで充分だろう。」

 

結局、その宴会は日が昇り解散するまで騒がしいままであった。

 

 

 

 

 

 ウルキオラは一人で鍛錬をしていた。ただ、この鍛錬はあくまで黒崎一護との再戦に備えてのものでそれ以上の意図は無い。破面としての闘争本能はあるが、グリムジョーやノイトラと違い力そのものに対する執着は特に無いのである。

 

周りからは求道者と揶揄されることもあるが生真面目な性分ゆえに、妥協する事無く黙々と没頭しているだけである。これ以上は非合理的だと判断すればあっさりと見切りを付けて引くことも出来る。

 

鍛錬が終わって虚神殿に帰り着くと、ケータイが鳴り響いた。羽衣狐からの着信だった。

 

「何のようだ?」

 

『ウルキオラ、今週末は予定を空けておけ。ちと妾に付き合え。近頃、無粋にも土足で京の都を荒らし回る輩がおってな。そろそろ仕置きが必要じゃ。』

 

「・・・まあ、いいだろう。それで、ほかのメンバーは?」

 

『妾とお主の二人で充分足りるであろう。多少の手間隙はかかるかもしれんがな。』

 

「何故鬼共を使わない?貴様が自ら出向かずとも、奴らに任せれば済む話ではないのか。」

 

『・・・妾とて偶には加減無しで暴れたくなる時もあるのじゃ。』

 

どうやら羽衣狐もああ見えて結構ストレスを溜め込んでいたらしい。

 

 

 週末になり、ウルキオラと羽衣狐は無粋な賊共を誅罰するために山間部に赴き、おびき寄せるために霊圧と畏を解放する。

 

「そういえば妾達の畏とお主の霊圧はだいぶ違うの?」

 

「そうだな。俺達の霊圧とは、霊力によって重圧の様な過負荷を強いる。特に十刃クラスのものだと並の霊能力者程度では近づいただけで圧倒しうる。そのかわり貴様達のような畏を持ち合わせてはいないがな。」

 

その様な事を話していると夜になり、満月が全容を見せた頃に漸く件の賊共がやってきたようだ。その正体は人狼の群れであった。数も質もそこそこと言ったところか。とはいえ満月の光を浴びた状態でも大半が巨大虚並で、ギリアン級が数体程度だが。

 

「何じゃ奴らは。どこの妖怪じゃ。」

 

「ウェアウルフか。その起源は東ヨーロッパとされるらしい。まあ今の時代、人間に紛れれば比較的容易にこの国に入ってこれるようになったからな。こういう事もあり得るか。」

 

「なににせよ不愉快の事よな。一匹たりとも生かして帰さん。」

 

羽衣狐は三尾の太刀を抜刀し、次の瞬間には3匹が八つ裂きになったいた。

 

「ほう、どうやら響転は問題無く使いこなせるようになったか。」

 

ウェアウルフ達はウルキオラの放つ虚閃で薙ぎ払われ、羽衣狐に切り刻まれていく。群れの6割程を壊乱したあたりで一際強大な銀灰色のウェアウルフが出てきた。この群れを率いるボスである。妖気だけなら初対面時の卍解した黒崎一護に匹敵しうる。

 

「オノレエェェ。偉大なる狼王ロボの末裔であるこのオレがこのような蛮族共に負けるなど在り得ぬ事だ!絶対に許さんぞ!男の方はブチ殺して女の方は徹底的に陵辱してくれるわ!」

 

「下衆が。先祖が偉大だからといっても、その末裔まで優秀とは限らないという見本だな。」

 

ウルキオラは虚弾を撃とうと手を向けるが、羽衣狐が遮った。

 

「ウルキオラ、お主は周りの雑魚を頼む。アレは妾が殺す。」

 

羽衣狐は畏を全開にして、9尾を展開する。キレていた。

 

「・・・まあ、いいだろう。さっさと始末しろ。」

 

「言われるまでも無いわ。」

 

「テメェ等、このオレを舐めてんじゃねぇぞおぉ!!」

 

ウルキオラは斬魄刀を抜刀し、目前の2匹を切り捨て虚弾の弾幕で一気に14匹を肉片に変えた。すかさず被弾して生き残った死に損ないの首を刎ねていく。人狼も反撃を試みるが、例え直撃したところでダメージにもならない。人狼程度ではウルキオラの鋼皮を破る事などできはしないのだ。最後の5匹をまとめて虚閃で消し飛ばし、僅か10秒ほどで人狼の群れを殲滅したウルキオラは羽衣狐の戦いに眼を向ける。

 

羽衣狐は響転と二尾の鉄扇を使い相手の攻撃を食らう事はないが、尻尾と三尾の太刀によるカウンターを浴びせても致命傷といえるほどの深手には至らない。狼王ロボの末裔を自称するだけあって高い身体能力と持久力に回復力、硬い毛皮を有している。少々厄介だ。羽衣狐がそのように考えを纏めていると相手が動いた。今までのような直線的な軌道ではなく、狼の敏捷性を生かした動きである。

 

「ハッ!油断しやがったな女狐!!」

 

羽衣狐の尻尾による自動迎撃を掻い潜り死角から爪を振り下ろそうとしたその瞬間、心臓を貫かれていた。

 

「!!!―――――――――何・・・・・だと」

 

「四尾の槍・虎退治。あの状況でスキを見せてやれば食い付いて来ると思っておったわ。まんまと罠にかかりおったな、駄犬。」

 

ウェアウルフは羽衣狐によってバラバラに解体されたのだった。狡猾さはやはり狐の方が上だったようだ。

 

「さて、帰るとするかの。」

 

 

 虚神殿に帰り着いた頃には既に陽が上っていた。羽衣狐は両手に油揚げを大量に詰まった袋を持っている。帰る途中の老舗の豆腐屋で買い込んだものである。一体どれだけ好きなのか。

 

「ウルキオラ、妾は稲荷寿司を所望する。」

 

「・・・・・貴様も手伝え。」

 

「うむ!」

 

稲荷寿司だけでは味に飽きるしバランスも悪いので油揚げの照り焼きや挽肉の巾着煮等も作ったのだが羽衣狐が買い込んだ分の4割程は使いきれなかった。

 

「余った分は持って帰れよ。」

 

「いやいや。ウルキオラよ、ここにも油揚げを常備しておくべきじゃろう。」

 

(コイツ、入り浸るつもりか・・・)

 

羽衣狐はやはり油揚げ料理の6割を平らげてのけた。

 

「ウルキオラが来てからこの虚神殿にいわくつきの物品の持ち込みが増えたらしいのう。」

 

「大半が塵だが稀に本物が混じっているな。使えるかどうかは別にして。」

 

「どれ、ちと見せてみよ。」

 

呪いの絵馬、夜に動き出す人形、釘の刺さったままの藁人形、印刷っぽい水墨画、御札多数、錆び付いたナイフ、心霊写真、ロザリオ、etc.

 

羽衣狐は琴線に引っかかる物は無かったのかあっさりと興味を失っていたが、ウルキオラはその中にぶ厚い書物が埋もれていることに気づいた。その本の表紙にはこう記されていた。

 

『鬼道術式全集』

 

 

 

 




ヤバイ。このままだと晴明さんがフルボッコすぎる。
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