羽衣狐と京妖怪達は生き肝集めに専心している。そのため、陰陽師をはじめとした人間の霊能力者達との戦闘の機会も増えてきた。特にウルキオラは霊能力者達の間ではある意味羽衣狐以上に有名になっている。
最近のウルキオラは基本的に単独行動である。今日も一人で街外れにある寂れた公園の近くを歩いていたら、複数の人間共に取り囲まれた。ただのチンピラでは無い。察するに、野在の退魔師だろう。丁寧にも人払いの結界を張り、武装を展開する。
「こいつが噂の魔神サマかよ?」
「油断するな。花開院の陰陽師達をはじめ数多の霊能力者達を尽く屠り去っていると聞く。最初から全力でいくぞ。」
「ああ。こいつを仕留めれば箔が付く上に花開院から報奨金が出る。」
それをウルキオラは瞑目し、黙って聞いていた。だが
「・・・・・・・・・・・ゴミが」
ウルキオラは霊圧を解放した。それだけで片付く雑魚ばかりであった。否、ウルキオラが規格外なのであって今回の霊能力者達も弱いわけでは無い。まあ、いずれにしても彼らが辿る末路に違いは無いのだが。
ウルキオラは携帯で羽衣狐に連絡を取り、生け捕りにした霊能力者達を取りに来させる。最近の単独行動はこうして上質な生き肝を釣るためであった。一人で歩き回っていれば此方から狩って回るまでも無く彼方の方から態々やって来るのだ。やらない手は無い。
ウルキオラは今、東京の浮世絵町にいた。かつて羽衣狐を斃したぬらりひょん率いる奴良組と、隠神刑部狸が率いる四国八十八鬼夜行の抗争に関する情報を掴んだためである。偵察にはウルキオラが適任と判断されたのだ。
「田舎出の狸共でも、今の奴良組の力を測る物差し位にはなるであろう。」
鬼童丸はそのように評価していた。だが、戦争に絶対など無い。程度の差はあれど必ず想定外のイレギュラーが生じるものだ。ウルキオラは今回の抗争において最大級のイレギュラーと成り得る者を視ていた。
「やはり居たか、黒崎一護。400年前と同様に奴良組についている様だな。」
一護は高層ビルの一室で隠神刑部狸・玉章と対峙していた。偵察に赴いていた牛頭と馬頭の正体がバレて、四国妖怪達に捕らえられ重傷を負っていたため助けに入ったのである。玉章はいきなり窓を破って乱入してきた一護に多少は驚いたようだったが妖刀・魔王の小槌で斬りかかる。だが、一護も斬月で受け止め、鍔競り合う。
「その姿、君が噂の死神、黒崎一護か?」
「ああ、俺が黒崎一護であってるぜ。で、その剣は一体何なんだよ?ボロい癖してすげえ嫌な感じの霊圧だ。」
「ほう、中々に鋭いね。この刀は四国に伝わる神宝で魔王の小槌って言うんだよ。斬った相手の血を啜る事で力を無限に増長する刀でね。君もこの神宝の糧にしてあげるよ。」
玉章はサディスティックな笑みを浮かべながら畏を解放する。だが、三羽の鴉天狗が乱入してきた。
「オメエ等は牛頭と馬頭を頼む。ワリィけどここはひとまず退散させてもらうぜ、玉章。―――――月牙天衝!」
玉章はこの月牙を凌いだものの、体制を立て直した頃には一護達は既に失せていた。
「成る程。噂に違わぬ、と言ったところかな。だが、この魔王の小槌があれば勝てない相手ではない。次こそはリクオ君諸共に神宝の糧にしてやろう。フフフフフ」
ウルキオラは2㎞程離れたビルの屋上からこれを視ていた。会話の内容も読唇することで大まかになら把握できた。
「四国妖怪達の実力は雑魚同然だな。だが、魔王の小槌とやらは気になるな。能力はまるでアーロニーロの
ウルキオラはもう少し様子を視ていく事にした。
数時間後、大通りのど真ん中で両陣営は向かい合っていた。
「やはりあの程度では脅しにもならなかったか。それでこそ倒す価値があると言うものだ。」
対する奴良リクオは無言で、暫く睨み合いが続くと思われたが奴良リクオがいきなり一人で前進する。百鬼夜行大戦の火蓋が切って落とされた。
両陣営は数において拮抗していても、質においては奴良組が上回っている。幹部同士の戦いではそれが顕著だ。四国勢は次第に追い詰められていく。このままでは黒崎一護の出番がろくに無いまま終わりかねない。
追い詰められた玉章は魔王の小槌の真価を解禁した。周りの妖怪達を敵味方問わず手当たり次第に斬りだしたのだ。ソレによって妖刀の畏はどんどん強大になっていく。
黒崎一護や奴良組の面々は勿論黙って見ていたわけでは無い。黒崎一護が止めようと月牙天衝を放つが、妖刀で迎撃されることで逆に霊力を吸収されてしまったのだ。だが、今の月牙天衝が一度に吸収できる限界のように視えた。玉章も余波の衝撃を受け、幾ばくかのダメージを負っている。
「効いてるな。だったら――――卍解!天鎖斬月!!もうそろそろ夜が明ける。日が昇る前にいっきに終わらせるぜ、玉章!」
「玉章、テメェはその刀に踊らされてるだけだ。お前自身は百鬼を率いる器じゃねぇんだよ。いくぞ、一護!」
玉章は黒崎一護の高速機動に追いつけず、翻弄される。しかし、黒崎一護は袈裟懸けに斬りかかる寸前で突如停止した。一瞬であるが故に気づいたものは仕掛けた者以外居なかったが、六枚の光の板が身体に刺さっていた為だ。玉章はその隙を逃さず、逆に黒崎一護を袈裟懸けに斬った。
「一護!無事か!?」
「ああ、なんとかな。ワリぃ」
「気にするな。もう一度いけるか?」
「ああ、大丈夫だ。もう時間がねぇ。次でキメるぜ。」
黒崎一護は霊圧を全開にして正面から突っ込む。玉章は辛うじて反応が間に合い、鍔競り合いに持ち込む。だが、それこそが黒崎一護の狙いだった。零距離から最大級の月牙天衝を放ち、魔王の小槌を弾き飛ばす。同時に、ついに太陽が顔を出し始めた。
「一護、あとはオレ/ボクに任せて!」
玉章は隠神刑部狸としての神通力で対抗する。しかし、奴良リクオの新たな畏には通用せず右腕を切り落とされた。
ウルキオラはその様子を意外と近くから観察していた。黒崎一護が全く気づかなかったのは縛道の二十六・曲光を自身に掛けて透過し、霊圧を最小限に抑えていたからだ。
「今回の偵察は俺個人にとっても中々有意義だったな。おかげで黒崎一護の今の力量を測ることが出来た。」
霊圧や容姿から推測するに、どうやら黒崎一護はこの時代に流れ着いて未だ間もないらしい。ついでに奴良組の戦力も大凡ながら把握できた。
ならば、もうここに居る理由も特にない。ウルキオラは京都に帰還した。