ウルキオラは鬼童丸達と共に東北にある妖怪の隠里に来ている。この里の妖怪達は中立を謳い、全国の組織に人材を派遣している。
「よくまぁ京くんだりからおいでなさった。ろくな歓迎も出来ず心苦しいですな。」
「気の利かぬ挨拶はいい、赤河童殿。率直に言う。20人ばかり優秀な兵隊を売ってほしい。」
「・・・・・無理ですな。ウチとしては京にそこまで恩義があるわけでもねぇですし。」
「だからって奴良組とつながられちゃ困るんだよ。」
「ワシらはあくまで中立。そうやってイチャモンをつけるなら―――また沈むぞ。」
空気が張り詰め、神経がひりつくような緊張感が場に満ちる。そこに今まで静観していたウルキオラが割って入る。
「鬼童丸、俺達はケンカを売りに来たわけでは無いはずだ。コイツ等が中立を全うする限り此方としても特に問題ないだろう?」
「だがウルキオラ、コイツ等が奴良組に何人も派遣した場合はどうする。」
「どうもしない。どこの誰であろうと敵対するなら容赦なく殺すだけだし、そうで無いなら必要以上に構うことも無い。コイツ等とて仮にも傭兵であるならその程度の覚悟は出来ているはずだ。」
赤河童達は思うところはある様だが、反論すること無く曖昧な表情を浮かべ沈黙している。
「それと鬼童丸、俺達に今必要なのは工作兵や衛生兵の類いだろう。戦闘面においては俺が鍛えてやった上、返り討ちにしてきた退魔師共から接収した武器が有るだろう。むしろ今の編成は些か以上に攻撃に偏りすぎている。」
「それで問題があるのか?京の封印を解いて弐條城を落とす事が出来ればいい。その頃には花開院の陰陽師共も大半が壊滅しているだろうよ。」
「・・・俺が奴らの立場ならあえて守りを捨て封印を解かせる。そして羽衣狐が鵺を産むまでの僅かな期間に、温存した全ての戦力とあらゆる手段を駆使してピンポイントで羽衣狐を暗殺しようとするだろうな。」
「むう、確かに。400年前はそれでぬらりひょんにしてやられたのだったな。」
「ああ、今回も奴らと花開院が手を組む可能性は高い。ぬらりひょん程に暗殺に適した能力を持つ妖怪もそうは居ない。警戒はしておいて然るべきだ。」
「ふむ、成る程な。赤河童殿、どうだ?」
「・・・そうですな。医者は無理ですが間諜の心得のある者ならば10人程ならなんとか、と言ったところですかな。」
「やむを得んな、一先ずはそれで手を打とう。では赤河童殿、それで頼む。」
遠野との商談が成立し、京に帰ろうとしていたところで鬼童丸がある者を見つけた。洗濯中の奴良リクオである。
「ん?あの顔は、まさか」
その顔を見た配下の一匹である牛力が問答無用で襲いかかる。しかし、直前で感づかれ避けられる。牛力はすかさず追撃を仕掛けようとするが、畏を発動されたため見失う。
「あん?どこに行った?」
「惑わされるな。」
鬼童丸は部下をたしなめると、自身の畏を解放し奴良リクオの畏を容易に断ち切った。
「あのぬらりひょんの畏がこうも容易く断ち切れるはずが無い。そうか、貴様はウルキオラの報告にあった孫か。ちょうどいい、ここで始末していくとしよう。」
鬼童丸は刀を抜き、その切っ先を向ける。部下達も完全に臨戦態勢である。
「400年前、ぬらりひょんによって羽衣狐様が討たれてから我等の時は止まった。だが、羽衣狐様は復活し宿願も間近。刎ねた貴様の首は羽衣狐様への手土産に、胴の方は貴様の祖父に送りつけよう。狐文字で宣戦布告を添えてな。」
牛力は再び奴良リクオに襲いかかる。だが、闖入者によって右腕を切り落とされた。
「何やってんだ?俺等の里で暴れやがって。京妖怪さんよぉ。殺すぞ!?」
「何だお前。食い殺したろか、バカが。」「吊し決定。」
鬼道丸の部下達と鎌使いが戦い出す前に奴良リクオが先ほどのものとは別の畏を発動させた。
「イタク、ソイツはオレの敵だ。思い出したぜ、鏡花水月。」
「お前の畏は切られただろうが!喰らえ、俺様の鬼憑・牛力千力独楽!!」
だが、通じない。もう一人の断鬼も加勢するが攻撃を当てるどころか、あっさりと畏れに呑まれ二人まとめて一撃でやられてしまう。
「昔、じじいに聞いたことがあった。ぬらりひょんとは夢幻を体現する妖だってな。」
(ぬうぅ、これは意外や危険な畏。潰すなら今!)
鬼道丸は2鬼を倒して油断している奴良リクオに斬りかかろうとするが、ウルキオラは制止をかけた。
「なぜ止める、ウルキオラ!?」
「頭に血を上げすぎだ、鬼道丸。周りをよく見ろ。」
遠野の若手妖怪達に取り囲まれていた。
「今ここでコイツ等を殲滅するつもりか?」
「・・・いいだろう。だが、ぬらりひょんの孫に手を貸したことは覚えておく。奴良組とつるめば皆殺しだ。」
鬼道丸は踵を返すが、呼び止めるものが居た。
「あら、おじさん達。まさかこのまま帰れると思っているの?帰りたければ、この遠野の里で暴れたことを大声で悔いなさいな。」
ウルキオラは一々付き合うのも面倒なので、霊圧を解放してぶつけることで黙らせることにした。
「行くぞ、鬼道丸。もうここでの用は済んだのだろう?」
「あ、ああ。しかし、凄まじいな。慣れているはずの俺達でさえ圧倒されるのだ。こやつ等のような餓鬼共ではひとたまりもあるまい。」
実際、奴良リクオや遠野の若手妖怪達は身動きすらままならず、立っているのがやっとと言った有様である。
「まあ、これで奴良組とつるんで俺達に刃向かう愚かさは理解できただろう。遠野の諸君には賢明な判断を期待する。」
鬼道丸はそう言い放つと里の結界を切り裂いた。
「さて、それでは京に帰還するとしようか。」
次回はちょっと一護視点に移る予定です。