虚無の魔神   作:千本虚刀 斬月

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19話 羅城門

 

 

 

 リクオ達は百鬼夜行となり弐條城の前の堀川通りに集結していた。その中には花開院の陰陽師であるゆらと竜二と魔魅流に加え、第三の封印・鹿金寺で大敗を喫し重傷を負った雅次と破戸と秋房の3人もいた。傷もほとんど治っている。

 

「さあ、いくぜテメェ等。四百年分のごっそりと積もりに積もった因縁を、この際キレイさっぱりと・・・ケジメつけようじゃねぇか!!」

 

『ヒュウ!カックイイ!あ、花開院の皆の分も畏の羽織ちゃんともらってるで。』

 

「いるか!!」

 

「ソイツはかんべんだ。」

 

『皆聞け!この城のどこかにある鵺ヶ池っちゅーところが羽衣狐の出産場所や!』

 

だが京妖怪達が黙って素通りさせてくれる筈も無く、当然取り囲まれる。

 

「邪魔する奴ぁ遠慮無くたたっ斬って、三途の川ぁ見せてやるから覚悟ねえ奴はすっこんでろ!!」

 

土蜘蛛にも勝利してのけた今のリクオ達にとっては大半が有象無象の雑魚で容易に蹴散らせる程度の連中である。

 

覚と鬼一口でさえ陰陽師達によってあっさり滅せられた。だが、そんなリクオ達でさえ警戒するほどの畏を放つ魔物が出て来た。

 

三つの頭に五メートルに及ぶ体躯を誇る黒犬、地獄の番犬と名高いケルベロスである。

 

このケルベロスは三年ほど前ウルキオラに敗れて軍門に降ったのである。その戦闘能力は高く、土蜘蛛にも匹敵する。

 

「「「ウウウゥゥオオオオオオォォォォンン!!!」」」

 

この遠吠えによって生じた音波の衝撃は凄まじく、少なくない数の者達が竦み上がる。ケルベロスはその隙を逃すこと無く追い打ちを掛ける。三つの口から同時に焔を吐き出したのだ。

 

「くそっ、花開院を舐めるな!洛中洛外全方位金屏風!!」

 

雅次が金色に輝く結界を展開するが、ケルベロスの火炎の威力は結界の強度を上回っている。

 

「だったらこれでどうだ!」

 

雅次は全方位に展開していた金屏風の範囲を敢て狭め、前面に集約させることで結界の強度を飛躍的に上昇させた。そうしてケルベロスの火炎を防ぎきったのだ。

 

雨造が水をぶっかけ、冷麗が凍らせる事で僅かながらも動きを止める。

 

「いくぜ、つらら!今度はやれるな!?」

 

「は、はいっ!!」

 

「「鬼纏・雪の下紅梅!!!」」

 

ケルベロスはまともに食らい完全に氷結し、砕け散った。

 

「よっしゃ、行くぜ。目指すは羽衣狐の待つ鵺ヶ池だ!!」

 

 

 

 

 鬼童丸率いる鬼達は回廊の突き当たりにある大部屋で奴良組と花開院の連合軍を待ち構えていた。

 

「よくぞここまで辿り着いたな、小僧共。だが、ここから先に通すわけにはいかん!!」

 

弐條城全体が鵺の強大な畏に共鳴して振動しだす。

 

『・・・まずいな、出産が始まったんか?』

 

「っ!どけ、おっさん!」

 

「断る。貴様も妖であるのなら鵺の復活を共に祝福し、下僕として理想世界の建設に従事すべきだ。したがわぬなら・・・ここで死ね!」

 

「ふん、なるほど面白そうな話だし妖怪としての血がうずくのも否定しねぇ。だがなぁ、それでもオレらとオメーらとは違うんだよ。」

 

「なんだと?」

 

「てめーらみてぇにカタギのモン踏みつけにして上に立つってのはよ、オレの理想とはかけ離れてる。妖の主ならよ、カタギにゃ畏を魅せつけてやんなきゃな。」

 

「・・・フン、成る程な。結局のところ、どこまで行っても相容れぬ存在というわけだ。よかろう!ならば―――――いでよ羅城門!!」

 

周りの景観や地形そのものが一変する。

 

「弐條城は我等京妖怪の積年の怨念によって既にこの世のものでは無くなっている。そのため我等の思念通りに変化する。ここはかつて我等鬼の眷属の根城だった羅城門。――――さあ、行くぞ!!」

 

鬼童丸と茨木童子を筆頭に鬼達が一斉に襲いかかる。

 

「つらら!もう一度やれるか!?」

 

「ムッ!させぬ!!」

 

鬼童丸は奴良リクオが鬼纏う前に響転で間合いを詰めて鍔競合いに持ち込む。

 

「その業はケルベロスを斃すほどの恐るべき威力ではある。だが一度見せたものがそうそう何度も通じると思うなよ、小僧!」

 

そこに二人の坊主が割って入る。

 

「黒!青!」

 

「リクオ様、鬼纏を習得なされたとはいえまだ不慣れなご様子。ご教授しんぜよう。鬼退治は我等と共に!!」

 

「我等を舐めるな!神速剣戟・梅木!!」

 

だが黒坊主は無数の武器を繰り出すことで互角に渡り合う。

 

「いいですか、若。鬼纏にゃいくつかやりかたがあるんです。さっきの雪女とのヤツは畏砲!威力はあるがスキもでかい。」

 

そこに茨木童子が奇襲を仕掛ける。

 

「貴様がぬらりひょんの孫か。闘いの最中に余裕かましてんじゃねぇぞぉ!!」

 

「させぬ!憑鬼槍!!」

 

「いけー!強毛裸丸!!」

 

「ああん!?・・・誰かと思えば鹿金寺にいた陰陽師共じゃねえか。まだ生きてやがったのか。」

 

「奴良くん!こいつの相手はウチ等にまかしてや!!」

 

「おう!そっちはまかせたぜ、ゆら。」

 

「舐めるなと言ったはずだ。――――櫻花」

 

奴良組の四人をまとめて薙ぎ払うが、手応えからして大したダメージは与えられていないだろう。

 

「ならばもう一度だ。櫻花!!」

 

だが鬼童丸の神速剣戟は奴良リクオの新たな御業によって防がれる。

 

「黒よ。てめぇの畏、確かに鬼纏った!!ヤツを斬れと、怖ぇぐらいに滾ってやがる!!」

 

「・・・フン!――――虚空!!」

 

しかし仕留めることが出来ない。

 

「何っ!ワシの剣戟を、止めよるか!?・・・まさか虚空を持ってしても互角とはな。」

 

鬼童丸の刀はあちこち刃が欠けていた。

 

「チッ!このままでは刀の方が持たんか。・・・ならば」

 

鬼童丸は刀を納める。勿論諦めたわけでは無く、速さの質を変えることにしたのだ。

 

「神速抜刀術・虚閃(こせん)

 

剣戟・楠に響転の速度と全体重を上乗せした必殺の一撃である。奴良リクオが剣を振り千の刃を出すよりも速く首を刎ねる事さえ可能だろう。

 

「ではな。死ね!」

 

だが鬼童丸は失念していた。かつて遠野の里で見た筈の奴良リクオの畏を。

 

「鬼纏・畏襲。こいつは、オレ達二人の畏を襲ねたもんだ。」

 

鬼童丸とて伊達に鬼の頭領を務めているわけでは無い。鏡花水月が解けて攻撃に移るまでの一瞬の隙を見逃すこと無く虚空を放つ。

 

結果として鬼童丸自身は無傷で凌ぎきったものの、刀が耐えきれずに砕け散ってしまった。茨木童子も陰陽師達の連携に苦戦している。

 

「武器を無くしたアンタに何が出来る?おとなしくどきな。」

 

「・・・・・確かに貴様を仕留められなかったのは残念だ。だが、我々の・・・勝ちだ。」

 

その瞬間、巨大な黒い球状のナニカが床をぶち抜きながら上昇していく。

 

「そうだ、奴良リクオ。あれが、我等の宿願だ!!」

 

ナニカに寄り添う羽衣狐が高らかに謳い上げる。

 

「妾はこの時を千年待ったのだ。妖と人の上に立つ、鵺と呼ばれる真の魑魅魍魎の主が、今ここで産まれる。皆のもの、この良き日によくぞ妾の下に集まった。京都中から、そしてはるばる江戸や遠野から妾たちを祝福しに。皆のもの、大義であった。」

 

京妖怪達は一斉に歓声を上げる。同時に、球状だったナニカが巨大な赤子のカタチに為っていく。

 

羽衣狐はいつものセーラー服を身に纏い、命を下す。

 

「さあ、守っておくれ。純然たる、闇の下僕たちよ!!」

 

 

 

 

 

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