虚無の魔神   作:千本虚刀 斬月

21 / 41
21話 魔王

 

 ウルキオラと黒崎一護の戦いは傍目に見ても明らかにウルキオラが優勢であった。それでも黒崎一護は必死に食い下がる。

 

「・・・成る程。貴様が俺を引きつけ、奴良組が羽衣狐達を相手取る。その隙に陰陽師共が鵺を不完全な内に封印するつもりか。」

 

「ああ、あの鵺ってヤツさえヤれりゃこの戦いに勝ったも同然だからな!」

 

黒崎一護の剣戟をウルキオラは事も無げに受け流し、フルゴールで弾き飛ばす。音速さえ軽く凌駕する速度で白亜の塔に激突し、その衝撃で塔は崩壊する。もっとも、この虚夜宮は幻想に過ぎない為、誰かが崩落に巻き込まれる事も無く崩れた端から胡散霧消していく。

 

「貴様達は今の羽衣狐達を過小評価している。或いは、自分達を過大評価している。確かに万全の状態であれば極低いながらも勝算を見込めたかもしれん。だが先の黒虚閃で負傷、疲弊している。手の内もほぼ知れている。もはや貴様等が鵺の復活を止めるのは不可能に等しい。」

 

「オレ達の力を見くびるな!!リクオ達なら必ずやってくれる。もしソレで足りねぇならオレが鵺を斃す!ウルキオラ!テメェを斃してなあぁ!!―――――月牙天衝!!!」

 

ウルキオラは虚閃の連射で月牙天衝を相殺する。今のウルキオラは通常の虚閃なら威力を保ったままにほぼノータイムで撃てるようになっていた。流石にスタークの無限装弾虚閃(セロ・メトラジェッタ)には及ばないが、虚弾なみに速射、連発が可能なのだ。

 

「くそっ!そんなんアリかよ!?」

 

黒崎一護は虚閃の弾幕を瞬歩でかいくぐりウルキオラの背後に回る。だが

 

「甘い。破道の四・白雷」

 

「!!――――グガッ」

 

脇腹を穿たれた黒崎一護は失墜しかけるが、多少高度を落とした程度に止まった。勿論そのような隙を見逃すウルキオラでは無い。

 

「黒虚閃」

 

黒崎一護は為す術無く黒光に呑まれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 羽衣狐は自らは戦わず塔の天辺から高みの見物をしている。そしてそれはリクオ達にとって最もとられたく無い戦法であった。

 

「くそっ!あれじゃ不意を突いて鵺だけを封印するのは無理だな。それどころか近付くだけでも一苦労だぜ。」

 

奴良組の妖怪達の中には飛行能力を持つものも居る。だが今は迂闊に飛び上がるのは危険すぎる。ほぼ間違いなくウルキオラに撃ち落とされる事になるだろう。

 

『確かに難儀な状況や。でも結局やることは変わらん。鵺が完全復活する前に羽衣狐を破軍で止めて祢々切丸で斬る。で、鵺を完全に封印する。』

 

「はっ。言うは易しってな。・・・・・おい、奴良リクオ!お前の鬼纏だかなんだかでこの塔をぶっ壊せねえか!?」

 

「ハアァ!?無茶苦茶言うな!そんな威力の攻撃、一護ぐらいしか出来ねぇよ。」

 

「だがこのままじゃ羽衣狐を戦場に引っ張り出す事も出来んぞ。ヘタすりゃ直接戦う前に鵺が産まれちまう。」

 

『リクオ様、私に案がございます。青をここに呼んでください。』

 

「おう!その案ってぇのはなんなんだ!?」

 

『簡単に言えば青を畏襲て、その怪力で私を畏砲として放つのです。あの白亜の塔は物理的に実在するわけでは無く、京の怨念とあの者のイメージによって造られた幻想。ならば畏で打ち破ることも可能なはず!』

 

「へっ、成る程な。どのみちこのままじゃジリ貧だ。やってやりましょうや、若!!」

 

「てめぇら・・・ああ!いくぜ!!」

 

リクオは二人を同時に鬼纏い、さらに明鏡止水"桜"をも上乗せする。

 

「「「ううぅおおおおぉぉぉおらあああぁぁ!!!」」」

 

三人の畏を相乗させた攻撃を放つ。しかし、同時に一護が黒虚閃をまともに食らってしまう。

 

辛うじて偽りの虚夜宮を撃ち砕いたため、フィールドが現実の半壊した弐條城にもどる。しかしリクオ達は鬼纏を保てないほどに疲弊し、一護はどう見ても戦闘不能なほどの重傷。さらに茨木童子と相対している花開院や鬼童丸と戦っている遠野勢も優勢とは言い難い。何よりもう時間が無い。

 

「ふふん、認めてやろう。お主達はよく頑張った。じゃが、ここまでよ。清明が産まれるまでもうまもなくじゃ。見るがいい。」

 

とうとうナニカに罅が入り始めたのだ。さらにウルキオラが羽衣狐の横に降り立つ。

 

「くそったれ、正直言って詰んでやがる。・・・一応聴くが十三代目、裏技とかあったりするかい?」

 

『・・・・・ないな。羽衣狐独りだけならまだなんとかなったかもしれんけど、彼が居る以上は・・・』

 

「ようやく理解できたか?ならば、そろそろ幕を引くとしようか。貴様等との戦いなど、所詮は清明の誕生前夜の余興に過ぎないのだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 実はこの戦いを地獄の淵から密かに覗き見ている者達が6人居た。

 

その一人は山ン本五郎左衛門。江戸時代に人間でありながら数多の怪異を創作し、侍らせて江戸百物語組を創り上げた男。挙げ句の果てには本当に妖怪と為り果てて当時の奴良組に斃され地獄に落ちたモノ。実は山ン本は奴良組に復讐を果たすために清明と手を組み暗躍を重ねていた。内心では魔王の座を簒奪しようと企んでいる。

 

他の5人は永らく地獄に囚われた咎人達。紫雲、太金、我緑涯、群青、そして彼らを束ねる頭目である朱蓮。彼ら咎人達は清明が完全復活した後に行う清浄(従わぬ妖怪達の一斉粛正)に協力する見返りに地獄から解放を約束されている。もっとも、清明としてはウルキオラに対する牽制と保険くらいにしか考えていないが。

 

いかに清明が完全復活を果たそうとも、あの魔神が素直に従うとも思えない。だが敵に回すには危険すぎる。最悪の場合、復活早々に魂魄ごと消滅させられるという憂き目に遭いかねない。これは清明を含めた彼ら全員の共通認識であった。

 

彼等はその時に備える。

 

それぞれの思惑が交差し、邂逅するまであと僅か。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。