虚無の魔神   作:千本虚刀 斬月

22 / 41
22話 不退転

 

 

 

 

 羽衣狐の前には今まさに破軍の使い手と祢々切丸の担い手が揃っている。もっとも、破軍使いは経験不足な未熟者の小娘で、祢々切丸の担い手であるぬらりひょんの孫も疲弊の極致にあり明らかに衰えている。雪女が一人駆けつけてきたがそんなモノはまさしく焼け石に水だろう。

 

「さあ、余興は終いじゃ。おとなしく往生せい、ネズミ共!君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 真理と節制 罪知らぬ夢の壁に僅かに爪を立てよ―――――破道の三十三・蒼火墜!!」

 

「させるかー!!黄泉送葬水包銃――!!!」

 

「くそっ!地を這え〝言言〟」

 

「我が身にまといし眷属よ、氷結せよ!客人を冷たくもてなせ!!風声鶴麗――!!!」

 

3人は氷の壁を展開することで蒼火墜を凌ぐものの、羽衣狐は即座に二尾の鉄扇を取り出し追撃する。

 

「甘いわ!破道の五十八・闐嵐!」

 

本来なら斬魄刀を回転させてそこから竜巻を放つのだが羽衣狐は鉄扇を使うことで芭蕉扇のごとく爆風を相手に叩き付ける術となったのである。

 

破軍使いの小娘とぬらりひょんの孫だけは吹き飛ばされること無くその場に留まっていた。周りの連中が身を挺して必死に守ったのだろう。

 

「フン!じゃがそれに何の意味がある?この期に及んで、たった二人で何が出来るというのだ?」

 

「ふ、二人だけじゃ・・・ねぇさ。」

 

「!!い、一護!?」

 

「ひどい怪我やけど大丈夫なんですか!?」

 

ウルキオラが羽衣狐の一歩前に出る。

 

「意外だな。少なくとも鵺が産まれるまでは意識を取り戻すことは無いと踏んでいたんだが。」

 

「はっ、さっきのそよ風のおかげで目が覚めたんだよ。・・・・・ウルキオラ、オメェ何で羽衣狐に従ってんだよ?」

 

「・・・勘違いをしているようだな。俺はあくまでも羽衣狐個人に協力しているにすぎん。決して上下の関係では無い。」

 

「じゃあオマエ、鵺が復活した後はどうすんだよ?さっきの言いぶりじゃ素直に従うって訳でもねえんだろ?」

 

「・・・そうだな。場合によっては手を貸すくらいはしてもいいと考えている。まあ、ソイツの態度次第だがな。」

 

これを聞いた羽衣狐は密かに白目をむいて震えた。

 

(こ、これは妾がしっかりと間を取り持たんと大変なことになりかねんのぅ・・・)

 

「それよりも、いいのか?孵化はもう目前だぞ?いっその事、復活を阻止するのは諦めてその後のことを考慮し備えたほうがまだ建設的な状況だがな。」

 

実際にナニカが砕け散り、殻の欠片が降り注ぐ段階にまで至っている。

 

「!!清明?清明なの!?おおお、清明・・・待ちわびたぞ!」

 

京妖怪達は歓喜に沸き立ち、奴良組と花開院達には諦観の念が立ち込める。

 

「永かった。清明を想い続けて、何度となく転生を繰り返した。しかし、その度に望みは断たれてきた。嗚呼、千年にわたる旅も漸く報われる。」

 

「っまだだ!まだ終わってねぇ!!終わらせて、たまるかよっ!」

 

奴良リクオは気炎を上げる。しかし、現実は無情である。例えどれだけ想った処で、彼等には絶望的なまでに力が足りなかった。

 

「前座は疾く舞台から捌けよ!」

 

羽衣狐は九尾を展開し、二尾の鉄扇から四尾の槍・虎退治に持ち替える。

 

「っ!――――月牙」

 

ウルキオラは虚閃による牽制で月牙を撃たせない。

 

「黒崎一護、貴様の相手はこの俺だろう。余所見をする余裕があるのか?」

 

「・・・そう言う割に攻めて来ねぇのは舐めてんのか?」

 

「この戦争の勝敗はもはや誰の目にも明らかだ。だが、俺と貴様の勝負は違う。貴様は傷つき劣勢になるほどにあり得ないはずの勝機を掴みうる。全く非合理で不条理な奴だ。」

 

「それって褒めてんのか?」

 

「少なくとも、警戒すべき曲者とは評価している。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奴良リクオは羽衣狐の刺突をずらす事で致命傷だけは避け続ける。

 

「ぬらりくらりとやり過ごしおって。本当に往生際が悪いのぅ。」

 

今更奴良リクオが何を語りかけようと羽衣狐が揺らぐ事は無い。この戦いには既に勝っている以上、敗者の戯れ言に耳を傾ける必要など無いのだ。ウルキオラが居るおかげで精神的にも余裕があり、現状を俯瞰で見渡すことが出来ている。

 

そのため、破軍使いの小娘が巨大な欠片によって生じた死角からの奇襲にも難なく対応してのけた。

 

「無駄じゃ。縛道の三十九・円閘扇!・・・縛道の三十・嘴突三閃。貴様は後で生き肝を喰ろうてやる故、それまで大人しくしているがよい。」

 

「ゆらっ!く、おおおぉぉ!!」

 

奴良リクオは祢々切丸を振りかぶり突貫してくる。槍の鋒で太刀筋を逸らし柄で足払いをかけ体制が崩れたところに、フルスイングの薙ぎ払いを胴に見舞う。手に伝わる感触から察するに肋骨が折れてそのまま臓腑に突き刺さった様だ。

 

「――――――――――――――――――――」

 

奴良リクオ派手に喀血し、倒れ伏す。

 

そして、同時に鵺/安倍晴明が完全復活を果たしたのだった。

 

「――――千年間ありがとう、偉大なる母よ。」

 

「おおお!よい、よいのじゃ。清明・・・其方を愛してる。」

 

千年ぶりに再会した母子は熱い抱擁を交わす。

 

「母よ、あなたのおかげで私は再びこの一歩を踏み出せる。――――――――――二度と戻れぬ、三千世界の血の海へ」

 

 

 

 




咎人一名追加します。まあ、かませとしてデスが。原作二巻とアニメ299話に出て来たあのゲス野郎です。




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。