虚無の魔神   作:千本虚刀 斬月

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軍勢ゆきゆきて喇叭を吹く
耳鳴り止まず星屑のごとく
軍靴の轟き雷鳴のごとく


28話 御門院家

 

 

 葵螺旋城の結界の中、小柄な少年が廊下を歩いていた。

 

この少年の名は安倍 有行。少年の形をしているが、清明の子孫で安倍姓の四代目当主として六百年以上の時を生きている。

 

「おい、遅ぇぞ。何をチンタラやってんだ。烏帽子、曲がってるぜ。ったく、オレより500才も年上とは思えないくらいだらしのねぇ奴だな。」

 

ドレッドヘアを後ろで束ねた少年が有行に話しかけてきた。九代目当主、御門院 水蛭子である。

 

「二人共、速く入りなさい。歴代当主がお揃いよ。」

 

白い着物に装飾の施されたローブを纏った女性。三代目当主、安倍 雄呂血だ。

 

部屋の中心にいた、白い装束に黒い羽織の男は三人が入ってきたのを確認する。この男こそ羽衣狐(葛の葉)の孫にして安倍晴明の実子。千年もの間、御門院家を纏めてきた二代目当主、安倍 吉平である。

 

「いざ、清浄の時来たり!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウルキオラと羽衣狐の二人で東京に来ていた。羽衣狐はポニーテールでノースリーブの白いタートルネックに黒のミニスカートとニーソックスという格好である。平日の昼間で何時もの黒いセーラー服だと警察に補導されかねないからだ。その場合、隣のマフィアの幹部の如く白のスリーピーススーツを着熟すウルキオラはもれなく職質をかけられ「黙れ、ゴミが」とキレる事になるだろう。

 

そもそも、彼等が東京にいるのは奴良組の三代目から正式に招集をかけられたからである。だがこの二人、端から見れば美男と美少女である。どうしたって周囲の耳目を引きつける。あちこちで写メを撮られまくってTwitterやSNSに投稿されていた。

 

「新宿駅にカップルなう。マジパネェレベル(^o^)」「すっげー美人。芸能人かな?」「男のオーラ。ぜってーカタギじゃねーわwww」「ウホッ!いい男(*´ω`*)」「イケメンキター(≧∀≦)」「リア充爆発しろ!(`Д´#)」「腕なんか組みやがってチキショー(ノД`)」

 

もっとも、直接声をかけてくる者はほとんど居ない。たまに居てもウルキオラの一睨みであっさり退散していくヘタレチキンばかりである。一人「ティンときた!キミ達、アイドルに興味は無いかね?」と粘るものも居たが、丁重に断りを入れお引き取り願った。

 

「まったく騒々しい街だ。」

 

「うむ。その上、不躾なくせに度胸のない輩ばかりよ。嘆かわしいのぅ。」

 

(このような状況でなければ存分に堪能出来たであろうに。誠に残念じゃ。)

 

羽衣狐も薄々予感しているのだ。この戦いを最後にウルキオラはこの世界から消えてしまうのではないかと。だからそんな場合ではないと理解していながらも我儘を言ってウルキオラをデートに付き合わせているのだった。

 

 

 

 

 

 

 ウルキオラと羽衣狐は浮世絵町にある奴良組の屋敷の門前に到着した。羽衣狐の衣装もフォーマルスーツになっていた。

 

ここからは京妖怪達を束ね、上に立つ者として振る舞わなければならない。正直、未だに迷いや悩みを抱えている。でもそんな自分を、それでもウルキオラは黙って待ってくれて居る。

 

(嗚呼、妾とウルキオラが巡り会えた奇跡に改めて感謝しよう。この戦いの結末が例えどのようなものであろうと後悔だけは決してするまい。)

 

羽衣狐は決心した。愛しき息子である清明をこの手で斬る事になろうとも、ウルキオラがこの世界から居なくなろうとも、胸を張って前を向いて歩き続ける事を。

 

「さあ、征くか!」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は逢魔時を過ぎ去り、奴良組には日本全国の名だたる百鬼夜行が集まっている。頃合いを見計らって上座にいる奴良 リクオは会議を開始する。

 

「国内18地方総元締の皆様、および構成員500以上の大組織の皆様。そして花開院の次期頭首殿。高いところから甚だ失礼いたしやす。奴良組三代目奴良リクオでございます。今夜お呼びしたのは件の清浄についてでございます。」

 

「ここからは私、妖怪界の書記係である文車妖妃がご説明いたします。清浄とは、1000年前に鵺こと安倍晴明が行った自身に従わぬ者達の大粛清。当時、数多の妖怪達が滅ぼされ歴史は一度途絶えかけました。しかも今回は鵺本人に加え、子孫である御門院家と地獄の咎人達までいます。そしてその清浄は数日以内には開始されるでしょう!」

 

「皆さんの里が消えて無くなるのです!阻止する為には安倍晴明を何としてでも斃さなければならない!今こそ、全ての妖怪達は協力し合いこの窮地を凌がなくてはならないのです!!」

 

『――――――――――――――――・・・・・・・・・・』

 

「奴良組は臆したということだな?その清浄に」「鵺なんざ儂等からすればどうと言うことも無い」「そうじゃ。儂等を舐めるなよ、若造風情が」「ぬらりひょんはどうした?貴様では話にならん!」「それとも、本当に臆したのか?」「関東妖怪も落ちたモノよ」

 

そこで五月蠅いゴミ共を黙らせたのは意外にも黒崎一護だった。霊圧を解放しながら一喝したのである。

 

「ちょっと黙れ。おいウルキオラ、コイツ等にあの時の戦いを視せてやってくれねぇか?ソレが一番手っ取り早ぇだろ。」

 

「・・・分かった、良いだろう。」

 

ウルキオラの共眼界で安倍晴明の実力の一旦を初めて垣間見た妖怪達は戦慄している。

 

「皆さん、あっしらには各々守るべきものがあるはずだ。その為に先頭にたって身体を張るのが百鬼を率いる主の役目なんじゃないんですかい!?馴れ合おうとも軍門に降れとも言いはしない。ただ清明を倒す為にお力を貸していただきたい!!良き、闇夜の為に!!」

 

どうやらコイツ等は奴良 リクオをまがりなりにも百鬼夜行の主であると認めたらしい。だがそこに傷だらけの鴉天狗が飛び込んできた。そしてその鴉天狗の報告は九州では清浄が開始されたという驚愕の内容であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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