虚無の魔神   作:千本虚刀 斬月

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29話 黒装・御門院

 

 

 

 清浄が開始されたと聞き、場は騒然とした。九州の九十九夜行はあの土蜘蛛を輩出した蜘蛛一族として有名だったのだ。その状況でもウルキオラは冷静に思考する。

 

「ふむ。このタイミング、どう見る?ウルキオラ」

 

「十中八九、そちらは陽動で本命は京を狙ってくるだろうな。奴等にとって脅威となり得る者達、俺とお前、ついでに破軍使いが揃って不在の今こそ絶好の機会だ。」

 

「ついでにってなんやねん!?・・・そんで、どうするん?」

 

そこで夜の姿に変身した奴良リクオは宣言する。

 

「これよりオレは九州へ向かう!有志を募ろう。誰かオレと先陣きりてえ奴はいるか!!」

 

真っ先に名乗りを上げたのは二人。酒呑愚連隊若頭の獺祭と隠神刑部狸・玉章である。

 

「おう、ゆら。お前も行ってこいよ。」

 

「一護さん、でも・・・」

 

「今のあの二人なら問題なく京を任せられるさ。だろ?ウルキオラ」

 

「当然だ。」

 

 

 

 

 

 同時刻、ウルキオラの予想通りに京都に黒装・御門院の二人が現れた。黒装の中でもトップクラスの戦闘能力を持つ御門院 水蛭子と結界術に秀でた七代目当主、御門院 天海である。

 

そして、天空から八頭の(ウワバミ)が現れる。三代目である安倍 雄呂血の式神「雄呂血」でその威容は日本神話に謳われる八岐大蛇そのものである。

 

「オレの名は御門院 水蛭子!御門院最強の男だぁ!!」

 

「私は狂骨!羽衣狐様の側近だ!!お姉様とウルキオラに留守を任されてる以上、何としても京都も守り抜くよ!!」

 

「ハッ!!威勢の良い奴は嫌いじゃないぜ!いくぜ、炎の左翼!!」

 

「くっ、破道の三十一・赤火砲!!」

 

なんとか相殺する。だが水蛭子はまだ様子見の段階で全力とは程遠い。更に、もう一人が式神であろう巨大な蝸牛の群と八岐大蛇を待機させている。

 

「おい天海、手ぇ出すんじゃねぇぞ。コイツはオレは殺る!」

 

そう言って水蛭子は炎の左翼を連射する。数が多い上に範囲も広く、がしゃどくろと白蔵主が加勢しても守り切れない。このままでは被弾し負傷する者も多数出るだろう。だがそこに助太刀が入る。

 

「洗い清めろ『村雨』――――――蛟!」

 

浄化の清水で作られた多数の小龍が水蛭子の火球を喰らい尽くす。

 

「中国の故事に曰く、水で育った蛇は五百年で蛟となり、蛟は千年で龍となり、龍は五百年で角龍、千年で応龍となる。非才の俺ごときじゃ頑張っても龍止まりだが、お前相手ならそれで充分だ。」

 

京都を守護する陰陽師、花開院がこの事態に黙って居るはずも無い。竜二以外の者達も別同部隊や時間差をつけた波状攻撃に備えて万全の状態で本家に待機している。

 

「っんだ!テメェ!?ぶっ殺す!!」

 

「落ち着け、水蛭子。此奴は花開院の陰陽師だ。僕が相手をしよう。僕の結界の実験相手にふさわしい。」

 

「チッ!まあいいか。それに、この後には本命が控えてるわけだしな。」

 

「ああ。さて、初めまして花開院。僕は御門院七代目当主、天海。さあ、行け!僕の螺旋蟲ウゥゥ!!」

 

「デンデン虫なんて怖くなんて無いんだから!!いくよ、皆!!」

 

「おいおい、テメェ等の相手はオレだろうが?忘れてんじゃねぇぞ!火剋金連脚!!」

 

「縛道の三十九・円閘扇!こんなのぉ!!」

 

「…アレを防ぎきるとはな。思ったよりやるじゃねぇか、チビ。いいぜ、お前達は特別にオレの奥義で葬ってやるよ。」

 

水蛭子は炎と水という相反する属性を掛け合わせる。それによって生じる反発力を極限まで増幅し、破格の威力を持たせたのである。単純な威力だけならウルキオラの虚閃に匹敵するかも知れない。

 

「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 真理と節制 罪知らぬ夢の壁に僅かに爪を立てよ」

 

「散れ、五蘊皆球!!!」

 

「破道の三十三・蒼火墜!!!」

 

それは今の狂骨にとって渾身の一撃であったが、端から見てもその差は明らかであった。されど、狂骨は抗えぬ破滅を前にしても決して目を逸らす事だけはしなかった。

 

「例え力及ばずとも絶対に逃げたりするもんか!心だけは負けないんだから―――!!」

 

 

 

「嗚呼、良く言った。」

 

 

――――――王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)

 

その一撃は五蘊皆球と水蛭子自身をまとめて消し飛ばした。空間が大きく歪んでいる所為で天海が仕込んでいた封印結界も用を為さない。

 

「・・・・・ウル、キオラ?・・・お姉様!」

 

「俺達が着くまでよく留守を守った。」

 

「うむ、よく頑張ったな狂骨、そして皆の者。後の事は安心して任せるが良い。」

 

羽衣狐は狂骨を抱きしめて頭を撫でてやる。そして、雄呂血を九本の狐尾によって蹂躙していく。

 

「今の妾は少しばかり機嫌が悪い。加減はしてやれんぞ。」

 

羽衣狐は一旦、雄呂血から距離をとり九尾の先を向ける。

 

「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ―――――破道の三十一・赤火砲!!」

 

九尾全ての先端からガトリングの如く赤火砲を連続掃射したのだ。着弾する度に爆発を引き起こし、九発目で遂に紅蓮の業火が雄呂血を包み込む。収まった頃には雄呂血は跡形も無く焼尽くされていた。

 

 

 

残っているのは天海ただ一人。勝算はおろか逃走さえも不可能であろう。その場に残っていたのが本人であったのならば。

 

「ちぃ、蝸牛の粘液で作った分身か。どさくさに紛れて入れ替わってやがったな。逃げ足の速いこった。」

 

『カカカカカ、ここは退かせて頂きましょう。我が最高傑作たる葵螺旋城にてお待ち申し上げましょうぞ。その時は勢力を上げてもてなしましょう。カカカ』

 

「葵螺旋城か。天海と言えば江戸時代に徳川幕府のもとで葵城の結界を敷き三百年の太平を得た事で有名だが、今の奴の口ぶりじゃあただ使い古したモノを再利用なんてもんじゃ無くて最初からここまで見越して仕込んでたってのかよ?」

 

「つまり、お主では奴の結界は破れないと?」

 

「ふん、花開院の威信に懸けて総力を挙げて天海の結界を攻略してやる。必ず封印を解いてやるから黙って見てろ。」

 

 

 

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