葵螺旋城の最上部にて白装・安倍姓と黒装・御門院達が集まっている。清明降臨の予兆があった為だ。
そして地獄の門が開かれ、数多の妖怪達が地獄より顕現する。その畏は並大抵の百鬼夜行など比較にもならない程強大で、最後に鵺が降臨する。
その場に集った末裔達は皆、膝を付き頭を垂れている。
「よくぞ我が帰還すべき地を千年にわたって守り通してくれた。礼を言うぞ、息子達。」
「おそれながら清明様。清浄を開始する前に、一つ具申致したく存じます。東京の浮世絵町に日本全国から数多の妖怪達が集結しつつあります。更に奴良組と花開院、そして京妖怪は現状、協力関係にある模様。」
「私が出よう。羽衣狐単独でさえ埋葬蟲を容易く殲滅してのけるだけの領域に達している。そんな相手に侮りや出し惜しみなど愚の骨頂であろう。」
「ふむ、黒崎一護とウルキオラ・シファーについては我等咎人に任せるがいい。清明殿、その際はクシャナーダ共を借りるぞ。」
クシャナーダとは咎人を永久に蹂躙し続ける地獄の番人である。地獄と言う世界の端末と言っても過言では無い存在で、多数存在し地獄中の至る所を徘徊している。ギリアン同様に知性は希薄でどれもが同じ姿で巨大な体躯に緩慢な動作だが、戦闘能力は「十刃落ち」と同等かそれ以上。しかし、清明は服従させ使役することに成功した。もっとも、流石の清明も十体が限界だったが。
「其れは構わないが、如何に私といえどクシャナーダ共の制御は骨が折れる。十体全てとなると準備には幾ばくかの時が必要だ。」
「それじゃあ雄呂血様、僕の式神の夜雀達も連れて行ったください。きっと役に立ちますよ?」
「奴良組の連中は鬼の眷属が始末しよう。」
「カカカ、では花開院の陰陽師共は僕が相手を仕ろう。」
清明もその方針には異論が無いらしい。
「いいだろう――――――征け!!」
『ウオオオオオオォォォォォォォ―――――!!!』
同時刻、奴良組では決起集会が開かれていた。葵螺旋城の封印結界、そして迎撃に現れるであろう天海は竜二を中心とした花開院の陰陽師達が破る手筈に為っている。
「いよいよ決戦だ!この場に集いし妖怪達よ。総攻撃を開始する!!」
その宣言を終えたところで、葵螺旋城から鬼達が進撃を開始した。
「どうやら先手は取られてしまったようじゃな。流石は清明、相変わらず機微に賢い子じゃ。」
「まあ当然だろうな。いくら何でも、この期に及んで警戒を怠る程に愚昧ではあるまい。それと、全く同じ霊圧が十というのは気になるな。咎人のものとは違うようだが随分と似ているな・・・」
「この霊圧は多分、クシャナーダっつう地獄の番人だな。とりあえず城の結界から出てくる様子が無いのは助かったぜ。あんなのに街中で暴れられたらメチャクチャになっちまう。っと、来やがったぜ。」
奴良組の本家に強大な雷が降り注ぐ。二代目当主、安倍 吉平の基本にして奥義たる「天候制御」の術である。だがこの場にはその程度、意にも介さぬ『魔神』『鬼神』『天狐』の三柱が存在する。
ちなみに天狐とは一千の歳月を経て強大な能力を獲得した狐で神獣の一角とされている。一部の地域では憑き物の一種で、強力な神通力を獲得すると言われている。
「縛道の八十一・断空」
「卍解!―――月牙天衝!!!」
万物を打ち砕く閃光を、されどウルキオラは容易く防ぎきる。そして黒崎一護の一撃は文字通りに天を衝き叢雲を霧散させて退けた。
奴良組達妖怪連合軍には鬼童丸と茨木童子が率いる鬼の眷属達が問答無用で挑みかかる。そして羽衣狐には三代目当主、安倍 雄呂血と6羽の雀が襲いかかる。
夜雀達は黒い羽を周囲に撒き散らす事で、相手の視力を完全に封じる能力で安倍 雄呂血が切り札を召喚する時間を稼ごうとする。だが羽の多くはウルキオラと黒崎一護が素で発する霊圧に押し潰されているため、6羽がかりでも普段の7割ほどしか効果が無い。
もっとも、仮に十全の効果であっても結果は変わらなかっただろう。羽衣狐はいちいち目に頼らなくとも探査回路で周囲の妖達を正確に補足出来ている。結局、十二秒で片付いた。
「流石は羽衣狐。清明様の母親なだけの事はある。だが、最も偉大な式神使いであるこの雄呂血の切り札を前にしても余裕でいられるかな?我が身を糧に顕現せよ!!古代大魚 悪樓!!」
「ほう。悪樓、確か神話において日本武尊に討たれた悪神じゃったな。ちょうど良い、試し斬りさせて貰うぞ。―――散在する獣の骨 尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪 動けば風 止まれば空 槍打つ音色が虚城に満ちる」
羽衣狐は雷吼炮をそのまま放つのでは無く、高密度に練り上げ三尾の太刀に纏わせていく。
死神には高濃度に圧縮した鬼道を直接身体に纏い戦う瞬閧と言う高等技法が存在する。それに対し、羽衣狐はあくまで刀身のみに纏わせ収縮させていく。
「消し飛べ、元素の塵まで!
悪樓は一刀両断され、紫紺の稲妻に包み込まれる。そして、雄呂血は力を使い果たした処に
「迷わず逝くがよい。破道の五十四・廃炎」
主従揃って屍さえ残さず退場した。