虚無の魔神   作:千本虚刀 斬月

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31話 千年

 

 

 

 その頃、花開院の陰陽師達と天海の戦いも佳境を迎えていた。

 

「皆どいてー!黄泉送葬水包銃・改 神獣奉弓!!」

 

ゆらが必殺を期して放った一射は天海に命中し、仮面を消し飛ばした。しかし、その素顔は予想外に醜く老いさらばえていた。素顔を周囲の者達に見られたことで天海は激昂する。

 

「おお・・・・・ウア゛ア゛ア゛アアァァ!!おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれ!!!絶対に許さんぞ、糞餓鬼共が―――――!!!」

 

いままで傍観していた天海が遂に本気で攻勢に回ったのだ。

 

「呪層界・怨天祝祭!」

 

怨天祝祭は次に放つ術式の威力を約2.5倍に上昇させる呪術である。

 

「消し飛べ!呪相・炎天!!」

 

緋彩の業火が周囲を包み込む。殆どの者はその身を灼かれ倒れ伏している。竜二を除いて。

 

「ふん、最後まで守られおって。其れなのに未だ出来ないのかね?まあ、お主の苦労は良く分かるぞ。才無き者は、どれだけ万全の準備を整えても分相応の成果しか上げられぬもの。」

 

「・・・ああ、そうかもな。死に物狂いでやってもこの様だ。アンタの結界の構造も攻略法も頭で分かっていても、スペック不足。なんで、コイツを使わせて貰うぜ!?洗い清めろ『村雨』」

 

「村雨だと!祢々切丸をも上回る退魔の霊刀か!?一体どこでソレを手に入れたと言うのだ!!」

 

「あの魔神サマからだよ。行くぜ、天海!―――泡沫の波濤!!」

 

竜二は浄化の清水によって全ての不浄を無慈悲に洗い清める大洪水で地下水脈を用いた結界術式を美事に断ち切って退けた。

 

「ま、まさか・・・こんな、こんなことが!?おのれ、小僧―――!!!!!」

 

天海は再び呪層界・怨天祝祭を遣おうとする。だが

 

「遅い。―――断瀑!!」

 

竜二は刀身から滾々と湧き出る清水に高圧力を掛けて激流で天海を押し潰す。如かし、天海はしぶとく存命している上に怨天祝祭を成功させていた。

 

「ヌルいわ小僧!!喰らうが良い。大殺界・彼岸花!!!」

 

術者を一定以上まで追い込んだ者を猛毒に犯す報復の呪詛である。まともに食らえば間違いなく致命的。だが、突如として天海に雷撃が迸る。そう、此処に居るのは竜二だけではない。意識を取り戻した魔魅流がなけなしの力を振り絞って放った攻撃である。しかも天海は竜二にのみ集中していたため、ダメージは大きい。

 

「ぐはああぁぁ!」

 

それでも尚、呪詛の制御を失わない辺りは流石と言える。

 

「天海僧正、貴方を滅します!黄泉送葬水包銃・改 神獣奉弓!!」

 

ゆらのその威容は月と狩猟の女神アルテミスを彷彿とさせる。その弓につがえられた神威の矢は、確かに天海の心臓を抉り貫いた。

 

七代目当主、御門院 天海は完全に絶命した。

 

 

 

 

 

 ウルキオラと羽衣狐、黒崎一護は葵螺旋城の門前に到着する。

 

鬼童丸と茨木童子が率いる鬼の眷属達については、ぬらりひょん達が引き受けて抑えている為、奴良組達も直に追いつくだろう。

 

「へぇ、大した城じゃねぇか。」

 

「壮観じゃな。陰陽師共よ、御苦労じゃった。」

 

「けっ。まさか一族に呪いをかけた怨敵と共闘して、あまつさえ手助けすることになるなんてな。自分の運命を恨むぜ、全く。それから、コイツは返すぜ。」

 

竜二は村雨をウルキオラに投げ渡す。

 

「ほう、態々返却するとはな。律義な事だ。」

 

「うるせえ、これは俺のケジメだ。陰陽師として妖怪に借りを作りっぱなしなんてのは我慢できねぇんでな。残りの後始末は此方でやっておいてやる。お前等は行きたければ勝手に行け。」

 

「では、遠慮無くそうさせて貰おう。」

 

「サンキューな、竜二。」

 

竜二は悪態をつきながらその場を立ち去っていった。

 

「さて、行くか。準備は良いな?開門」

 

途端、凄まじいほどの霊圧が3人にのし掛かる。そして

 

「行かせぬよ。知っているかい?ここを通りたければ、我等咎人とクシャナーダ共を斃していくしか無いって。」

 

「いきなりかよ。いいぜ、今度こそキッチリとケリつけてやる!!」

 

黒崎一護は単騎で突撃する。クシャナーダ共が迎撃しようと巨腕を振りかぶる。

 

「チッ、黒虚閃(セロ・オスキュラス)

 

「月牙天穿!!!」

 

10居るクシャナーダのうち4体が薙ぎ払われるが、朱蓮は余裕の笑みを絶やさない。奴等にとってはクシャナーダなど所詮捨て駒でしか無いらしい。

 

黒崎一護は太金と紫雲を同時に相手取り、ウルキオラは残存するクシャナーダの殲滅に掛かる。

 

羽衣狐は、高度な幻術で群青を翻弄している。触手による範囲攻撃も妖狐の9尾を突破できる程ではない。理知性が残っていれば早い段階で幻術を看破され、攻略されていたかも知れないが今の群青だけならば充分撃破できる。だがそこに我緑涯が加わり、形勢は不利になる。

 

「あまり妾を舐めるなよ!?呪層界・怨天祝奉!!」

 

怨天祝奉は先の戦いで天海がつかった怨天祝祭の上位互換とも言える術で、次に放つ術式の威力を約4倍に上昇させる呪術である。

 

「貴様等になど用は無い、疾く失せよ!破道の八十八・飛竜撃賊震天雷砲!!」

 

直撃を受けた我緑涯のみならず、直線軌道上に居た2体のクシャナーダまでまとめて消し飛ばした。ただ、怨天祝奉は無理矢理威力を上げるだけで妖気の総量まで上がるわけでは無いのでやはり負荷は大きい。

 

だがその隙を群青は見逃さ無かった。羽衣狐は息を荒げながらも応戦しようとする。しかし、直前で群青は背後から刀剣解放して黒翼を展開したウルキオラに貫かれていた。

 

「羽衣狐、此処の連中は俺と黒崎一護で充分だ。お前は先に行け。決着を付けてこい。」

 

 

ウルキオラの背中はとても頼もしくて、しかし羽衣狐には幻影の如く儚いものに見えた。ウルキオラと黒崎一護は抑止力として異世界から召喚された存在であるらしい。ソレはつまり、元凶を排除して世界が安寧を迎えたときは、今度は二人が抑止の対象と為り世界から弾かれると言う事。だからだろうか

 

「ああ。・・・ウルキオラ、お主にはまだ言いたい事が沢山ある。だから、勝手に居なくなったりするなよ?」

 

今の羽衣狐にとって清明と戦う事に畏れは無い。ソレについては既に覚悟が決まっている。だが、別れも告げられないまま離ればなれになるのは嫌だった。

 

 

羽衣狐はウルキオラの裾を掴みながらとても不安そうに見つめてくる。だからウルキオラもそれに応える。

 

ウルキオラは羽衣狐に口付けしたのだ。

 

「大丈夫だ、安心しろ。お前が望むのなら俺はこの先も共に在り続けよう。だから行って来い。」

 

そして、彼女は死地に赴いた。その一言が、千年に航る旅の報いだったと微笑みながら。

 

 

「意外だな。お前があんな事するなんてよ。変わったな。」

 

「まさかな、俺があのような真似をするとは。これが心か。ああ、悪くない。」

 

「良いんじゃねぇの?しっかしリクオの奴、こりゃ完全にもってかれたなー。」

 

「ふん、出遅れた奴等の落ち度だ。さて、ここからは本気で征くぞ。───ついて来れるか?」

 

「へっ、てめえの方こそ、ついてきやがれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 




拮抗する死と命。背反する永続と永劫。だが永続は既に無く。千年の妄執はここに収穫の時を迎える。





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