自分の周囲にいきなり得体の知れない実力者が降って湧いたらどう対処するか?
第一に、排除する。強制的な実力行使も視野に入れる。第二に、徹底的に無視して関わらないようにする。第三に、懐柔するか協定なりを結ぶ。
第一は、先ほどの分身体とASTとの戦闘の様子を見るに非常に困難と判断せざる得ない。第三は、現状では相手の行動原理が不明すぎる。
しばらく影からの様子見に徹して、臨機応変にプランをシフト。ベストは懐柔、ベターは不干渉、最悪は敵対と言ったところか。
雑に指針を定めたところで、立ち去ろうと踵を返し
「貴様が本体か」
気が付いたときには既に眼前に居た。
先程の女共の本体がコイツであるのは疑いない。
霊圧は抑さえているようだが、霊威が段違いだ。
だが、些か風体は異なる。
「――たしか、甘ロリとか言うファッションだったか?…理解し難いセンスだ」
ボソリと呟く。
「なにゅを!?―――」
噛んだのか…
「っっ~~~!!――
霊装とやらに換装し、短長2丁の古式銃を両手に構えた。
「きひひひひひっ!まぁさか極上の獲物がワザワザ出向いてきてくださるなんて!さあさあさあ、どう料理いたしましょうか!?」
「………成程、大した霊圧だ。
訊きたかった情報は粗方聴き終えているため、正直言って戦う理由は特にないのだが。しかし、銃を向けられて何もせずに引き下がったとあっては舐められる。それは不快だ。仕方ない。
ウルキオラも斬魄刀を抜き構える。その刀身は刃文も反りも無くなり樋は空洞になっていた。
ただ、またASTとやらに集ってこられても鬱陶しい。
「っ!?――おいでなさい!〈
おそらくは死神の卍解に匹敵する、
ウルキオラも霊力を上昇させる。ただし無駄に範囲は広げずに、その身体と斬魄刀に纏う。重厚に、濃密に、硬く、鋭く。
ウルキオラは刹那の虚脱感に襲われ、霊圧が揺らぐ。その機を逃すこと無く影の弾丸が全身の急所に迫り来る。
「――甘い」
その全てを斬魄刀で切払い、分身体共を瞬く間に掃討。
「っ!?――〈
巨大な時計の『Ⅶ』の部位から銃に力がリロードされた。
剣であっても、得体の知れない弾を直接受けるは悪手だろう。
しかし、弾がぶつかり合った距離が近すぎた。敵の魔弾の効力は
「あはははははははっ!!いかに強大な力を持っていようと止めてしまえば意味がありませんわねぇ?」
魔弾の効力が切れ、復活したウルキオラは全身に衝撃を感じ、面貌を歪める。
だが、それだけだ。
もし今のが空間震かそれに匹敵する破壊力の技であったならそれなりのダメージは負わせられたであろう。しかし、空間震は結界のせいで発動不可能。分身体の動員による数の暴力もまた同様に結界のせいで不可能。近接戦闘能力の差でリロードの隙もほとんど見いだせない。
一方、ウルキオラも内心で驚愕していた。時計の形状からして予測はしていたが、それでもまさかと思わずにはいられなかった。
「(まさかこの女は十二通りの方法で時間に干渉できるのか?・・・・・だが恐らく、制約なり燃費なりの問題も抱えているはず。でなければ道理に合わない。――確かめてみるか)どうした?そちらが来ないのなら、こちらからいくぞ」
「ッ〈
先程までの憎まれ口を叩く余裕すら無くしたようだ。今度は『Ⅰ』の部位からリロードする。その際に、金色の時計盤となっている左眼の針が急激な動きを見せた。霊力もそこそこ減衰している様に見える。あれだけの能力なのだ、バラガンくらいの霊圧でなければ多用は相当な負担だろう。
「ああ、成程。その欠点を補うための『影』という訳か」
それとて恐れるものでは無い。虚脱感を感じるのは足が触れている間だけだった。現に、虚空を足場にして『影』から離れている今は何の問題も無い。
短銃を自身のこめかみに発砲したナイトメアもとい時崎狂三とやらが動き出した。ともすればゾマリの
「…時間加速か。だが、そうだと分かってしまえば対処可能だ」
時崎狂三は加速された己が五体を武器としてウルキオラに突撃を敢行する。だが、格闘技術そのものは卓越しているとは言い難いレベルであり、先読みして捌ききるのにさしたる苦は無かった。一分程して魔弾の効力が切れたのか、大きく飛び退る。
どうやら、一度発動した能力は永続では無く短期で効力が切れ、使用の都度にリロードが必要なのだろう。
「〈
今のウルキオラは開放状態で使用していた
時崎狂三は古式歩兵銃を持った左腕どころか、背後の
「満身創痍だな。…万事休す、か?」
首筋に刃を沿い当てながら訊く。
「…わ、わたくしは、まだ死ぬわけには……」
総身を震わせながら、血反吐を吐くように喉から絞り出したその言葉には、怨念にも近しい『心』が込められていた。
「…ふむ、それならば――」
ウルキオラが提示した