虚無の魔神   作:千本虚刀 斬月

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37話 活動基盤

 

 

 

 

 

 着の身着のままで異世界転移して先ずやるべき事と言えば、その世界の知識を得、活動基盤を築く事だろう。

 

そのために時崎狂三に対して協力関係を持ちかけた。トドメを刺さない事を条件に。

 

生憎この世界は野生の魔物が当たり前に出現するファンタジーでは無く(なお、自分(ウルキオラ)や精霊たち)、冒険者などと言う分り易くて手っ取り早い仕事も存在しない。当然、魔王軍が人類征服を企み進軍しているなんてことも無い。

 

元々斥候任務を多く熟してきた経験、相応以上の霊能力者でなくば認識不可能な隠密性能、有事の際の戦闘力、これらを活用しつつ情報収集と基盤構築の手段として一先ず探偵に落ち着いた。時崎狂三の伝手やコネでは流石にマフィアや傭兵と言った類いのものは無理だったのと、最初の内は余り悪目立ちしすぎない方が良いだろうと考えたのも理由だ。

 

ただ、初期投資額の捻出や物件の間借りの手続き等に暫しの猶予が欲しいと言う。

 

正直、金については最悪、手頃なヤクザの事務所にカチコミかけるなりすれば良いかと考えていた。まあ、面倒が無いなら何よりだ。

 

諸々の手筈が整うまでウルキオラはこの世界を視て回る事にした。時崎狂三との連絡については、常に分身体が一体以上付き纏ってくるし、いざとなれば『天挺空羅』があるので問題なかろう。

 

霊力探査を全開した結果、精霊以外にも反応があったのだ。霊圧は極微弱(ゴミ)であり、単なる浮遊霊か、霊感のある程度の人間、どちらかだろう。少々残念だが、虚や死神、妖怪の類いという線は無い。

 

気配の漂う路地裏に踏み込む。そこに居たのは有象無象の雑霊共。胸に因果の鎖や孔は存在しない。当然、欠魂(ブランク)や思念珠でも無い。

 

「ひいぃっ!!」

 

何故か慄いている精霊〈ナイトメア〉。分身体といえども、数万倍の霊力差があるのだ。霊装無しでも干渉すら出来まいに……あの程度の稀薄な霊体など近付いただけで霊圧で壊滅するのがオチだ。

 

……しかし、彷徨う魂魄と言うには薄すぎる。輪郭を失い、もはや現世に融解する寸前だ。反面、中央の一体は抜きん出た霊力を誇っている。とは言え、並の(ホロウ)レベルではあるが。

 

見えてる?ねえ、見えてる?ミエテル?

 

その一体が、明らかに視えてる反応の時崎狂三に寄ってきた。その様相は混沌から這い寄る死霊そのもの。

 

「     」

 

可聴領域を超越した声音をあげてウルキオラに縋り付いてきた。

 

「…おい、鬱陶しいぞ。離れろ」

 

コイツが何故こうまで恐怖しているのかさっぱり理解できない。……もしかして、人間は蜚蠊や鼠にビビり散らかす事が希によくあるが、それと似たような感覚なのだろうか?

 

「影の能力で全部まとめて吸い尽くしてやれば良かろう。足しにもなら「時喰みの城!!」

 

一秒とかからずに亡者共と死霊を影に引きずり込んだ。もし影の吸収に味覚が伴っていたなら、きっと夏場2日放置麦茶のような味だろう。ヤミ―であれば盛大に毒づきながらキレ散らかしているところだ。

 

時崎狂三は盛大に顔を顰め、霊力の制御が大いに乱れた挙げ句に霊装になって全開放状態に。ヒステリーを起こしていた。

 

女がこの状態になったとき、男が迂闊に声をかけるのはむしろ逆効果であると、ウルキオラはそう学習していた。それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――あらあらあら、ちょうど良いところに。いつもなら喰べるに値しない小物ですけど、今はとにかく口直ししたかったので……いただきます」

 

男共は時崎狂三の異様さに後退る間もなく一瞬で影に墜ちていった。

 

しかし、こうも霊力を撒散らせば当然の如く

 

⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠⚠―――――

 

けたたましく鳴り響くサイレン。

 

やらかした張本人である時崎狂三は即行で影に待避していた。

 

ゴミを視るような視線で見送るや、数人のASTが飛んできて、周囲一帯に特殊な力場を形成し覆い尽くす。

 

全体的に脆弱で稀薄な結界だが、全身をくまなく不躾に睨め付けられるような不快さ。

 

各々が武装を構えた状態でウルキオラに徐々に迫ってくる。

 

成程、現代の魔術師(ウィザード)顕現装置(リアライザ)を以て顕現させる特殊結界随意領域(テリトリー)。コレを使えばウルキオラのことも知覚できる様だ。

 

流石に都合3度目ともなればそれなりの対策は考えつくか。

 

「…ん?」

 

よく見たら相手に覚えがある。昨夜虚閃(セロ)で撃墜した連中だ。

 

決して軽症では無かったはずだが、わずか一日で問題なく戦線復帰出来る程度に回復するとは。

 

とは言え、根本的な実力差は如何ともし難い。

 

ウルキオラは刹那で連中の背後に回る。

 

「「「「「!!?」」」」

 

驚愕の様相。やはり響転(ソニード)であれば奴等の感知をすり抜けられる。

 

身体を反転させて武器を此方に向け直す間に容易く手刀で斬り捨てる。致命傷を負った連中は撤退の余地もなく影に引きずり込まれて消えた。残っているのは小隊長と思われる1名のみ。必死の通信で可能な限りの情報を伝達している。

 

「……遺言は伝え終えたか?ならば、死ね」

 

結局、最後まで抗いはしたものの、部下の隊員達と同じ末路を辿ったのだった。

 

 

この事件を以てウルキオラには〈ホロウ〉の識別名が付けられた。総合危険度は暫定AAである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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