虚無の魔神   作:千本虚刀 斬月

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40話 リトライ

 

 

 

 

 

 目当ての人物(五河 士道)の元に駆け出したと同時に、相手の方も此方を目指して駆け出した。

 

偶々進行方向が重なった訳では無い。縛道の五十八・掴趾追雀でウルキオラと時崎の通信ラインを補足し、二人の位置を割り出した上での移動である。

 

十中八九、別時間の時崎狂三と繋がっていて、時崎狂三が霊圧感知と術式発動を担っているのだろう。

 

 

響転(ソニード)でいきなり目の前に現れたウルキオラに、少年は少々驚きながらも意を決したように喉を鳴らす。

 

「――ウルキオラ・シファー」

 

「……俺を知っていると言う事は、余計な前置きは不要と言う事で良いな?」

 

時崎も影から這いずり出て来るや、少年に短銃を向ける。

 

「お、俺は五河士道。今から五年後の世界から来た!狂三の刻々帝(チカラ)を借りて!」

 

時崎は怪訝そうに目を瞬くが、ウルキオラは話を進めに掛かる。

 

「…未来の時崎とリアルタイムでの通信が可能な状態なのか?」

 

『あらあら、流石はお師匠様。相変わらずの単刀直入、話が早くて助かりますわね』

 

「っああ!……えっと、俺の身体に触れてくれれば狂三と話せるようになるらしい」

 

時崎はやや躊躇していたが、ウルキオラが即座に掌を肩に置くのを見て、それに倣う事にした。

 

時崎狂三は簡潔明瞭に順序立て説明をした。

 

「……成程、歴史改変のためには俺達の協力が必須だと…」

 

「ああ、頼む!力を貸してくれ!!」

 

五河士道は土下座の勢いで腰を折り頭を下げる。

 

「……いいでしょう。微力ながら、お力添えさせて頂きますわ」

 

「俺もそれで良いが、具体的なプランはあるのか?」

 

 

プラン1 

未来から来た鳶一折紙を押し止めつつ、鳶一両親を説得して避難させる事で、悲劇を阻止する。

確かにウルキオラと時崎の力なら押さえ込む事は可能だろう。欠点としては、抜本的解決にはならず、あくまでその場しのぎで、抑止力やら修正力やらで似たり寄ったりの結果に収束する可能性も考えられる。例えば、鳶一折紙が諦めずにリトライしにくる、とか。それに、余り考えたくは無いがノイズの精霊が先程の記憶を持ち越している場合、行動が読めないのも大きな不安要素だ。

 

プラン2

鳶一折紙の最重要目標、怨敵であるノイズの精霊(ファントム)を天宮市からなんとかして可能な限り退かせる。

殺し合いとなれば十中八九こちら側が死ぬだろうが、撃退ならばギリギリ可能なラインか。五河士道としてはヤツと相互理解したいという思惑もあるようだ。

 

プラン3

いっそ鳶一折紙とノイズの精霊(ファントム)の戦闘は避けられないものと割り切って、好き勝手全力で暴れさせる。

ウルキオラがそれとなく天宮市の被害の少ない戦場へ誘導し、時崎はこの時代の鳶一一家の側に控え、有事の際には影の空間に引きずり込む事で『死』を回避する。

 

 

 

 

数分後の公園にて、五河士道とウルキオラはブランコで物憂げに揺れる少女を監視している。

 

ソレは唐突に出現した。

 

「!…小僧、逸るなよ?」

 

「っ……ああ、わかってる」

 

事前の作戦通りに、五河琴里の精霊化と暴走は黙認する。

 

正しく大爆発を引き起こし、衝撃波と業火が天を衝き、一帯を蹂躙する。

 

余波をウルキオラが防ぎ五河士道は事なきを得るが、泣き叫ぶ幼い義妹と火災の余りに非道い有様に苦渋の表情を浮かべる。しかし、意を決して

 

「――おい!」

 

声をかけられたファントムは、あからさまに狼狽する。間近に控えているウルキオラを気にする余裕すら無くしたかのように、呆然と立ち竦んでいる様にも感じ取れる。

 

我に返ったのか、ファントムは逃げるように走り去っていく。

 

予想外にして不可解のリアクションの所為で、此方の方が思考停止に陥りそうになる。

 

「(何なんだ?あれはまるで、死んだはずの知人に遭遇してしまった人間の様なリアクションではないか……)」

 

()()()()自分達を圧倒していた際の面影など微塵も無い、只人のような有様……

 

 

成り立ての五河琴里からある程度離れると、ノイズの精霊は停止して五河士道に向き合い、ノイズを取り払い姿を現す。

 

とは言え、先の戦闘時とは似ても似つかない別人の容姿。

 

「……まだ『私』を見せるわけにはいかないから、仮の姿で失礼するけど、せっかく話せる機会なのに障壁越しというのも味気ないからね」

 

暫し両者の質疑応答が為されるが、やはり踏み込んだ質問ははぐらかす。側に控えているウルキオラのことは当然ながら、五河士道とリンクしている未来の時崎のことも随分警戒している。

 

「おい」

 

「……なにかな?」

 

「俺とて話をするのに割り込んだり時間を急くのは性に合わんが、悠長にしていられる状況でもないのでな。……間もなく、来るぞ」

 

「?…来るって、ASTのこと?」

 

「…憎悪に駆られ復讐に窶した光の精霊が、だ」

 

その瞬間、時空転移してきた鳶一折紙が現れる。

 

流石に初手の光線は多少の配慮が見られ、いくらか加減されていた。だが怨敵を眼前にして、あっと言う間に狂乱をフルスロットルまで加速させる。僅か数分の戦闘で、殺意の籠もった光線の檻が〈ファントム〉を捉え、しかし容易くすり抜けられる。その程度は事前に想定していたのだろう、〈ファントム〉の脱出先に極大の光線を打ち下ろし

 

黒虚閃(セロ・オスキュラス)が地面に着弾する手前で迎え撃ち、消滅させた。ちょうど〈ファントム〉を挟み込む位置で。

 

「!?…邪魔を、するな!!あいつは私が殺す!!」

 

「まあ、ソレを殺す分には一向に構わんがな、街の上で戦うなら角度を考えろ。あるいは、場所を移せ」

 

ウルキオラは背後を指さしながら淡々と告げる。

 

そこには、未来の五河士道に避難誘導される、この時代に生きている鳶一折紙とその両親が居た。

 

ソレを見た鳶一折紙は己の復讐劇の全容に察し至った。理解してしまったのだ。

 

その事実は、今現在の光景は、鳶一折紙にとってパンドラの箱と形容するに相応しいものだった。

 

「・・・あ゛っ嗚呼、アアアアア!…ウア゛ア゛ア゛アアァァ!!」

 

情緒が滅茶苦茶になり、慟哭をあげながら『現代』に帰還する。

 

 

「――それで、貴様は如何するつもりだ?」

 

偽りの外装も剥がれ落ちて真の姿を露わにしている〈ファントム〉に訪ねる。

 

「私もおいとまさせて貰うよ。今日の目的は取り敢えず達したしね。君にも多少興味はあるが……これ以上は良いこと無さそうだ」

 

言うやいなや早々に隣界に逃げ去っていった。

 

 

 

 

 

 




そういえば、このルートだと折紙の出番が激減するんじゃね?

まあ、仕方ないか…
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