剣の精霊が夜刀神十香と言う名前を得て、クラスメイトになって大凡二週間。ゴールデンウィークに突入した。
五河士道やラタトスク機関は、まだまだ十香に掛かりっきりで目が離せず、狂三の攻略に乗り出せる余裕は無さそうである。
タダでさえ時崎狂三は最悪の精霊〈ナイトメア〉として悪名を轟かせている。加えて、敵とあらば冷酷無慈悲に斬り捨てる
この三名が組んでいることはもはや周知の事実であり、攻略に挑むのであれば本腰を入れて入念に準備を整える必要があり、半端な状態で挑むのは事実上の自殺行為と言っても過言では無いというのが共通認識になりつつあった。
そして、DEMを離脱して、何処かの国の特殊部隊にでも正式に移動してしまえば、例え
ソレに憤るアデプタス2こと崇宮真那。若くしてソロで
三名の活動拠点と目される天宮市に派遣のため各方面への調整、最新試作の精霊討滅兵装ホワイト・リコリスを使いこなすための訓練と秘密の仕込みの最中だ。DEMとしてはその間に、自立稼働人型兵器バンダースナッチの量産体制の確立までは済ませたいとも考えている。
僅かばかりの時間稼ぎとして、多少の小細工を弄する事にする。
探偵事務所で三名揃っている最中にソレはかかってきた。
『もしもし、ウルキオラさんでしょうか?監修の仕事が色々山積みなのに姿をくらませた馬鹿漫画家を探し出して欲しいのです。ええ、可及的速やかに』
あからさまに態度に出る眼前の駄精霊。
「依頼の漫画家と同一かは分からないが…今、眼前に、原稿は完成したと宣い余裕ぶちかまして飲んだくれている漫画家が居るな」
「ちょっ!!?」
『葬ですか、ではお伝えください。覚悟しとけよって』
「そうの字違うく無い!?葬送されちゃうの!?助けてくるみん!」
「二亜さん、お仕事頑張ってくださいね」
にっこり笑顔で死刑宣告を下した。
編集にドナドナされる怠惰な
「あらあら、マリアちゃんも中々情緒豊かになってきましたわね」
「そうだな。…いいことだ」
マリアが帰路についたところで、天気予報に無いゲリラ豪雨。
「あらあら、程良い日和でしたのに」
「この驟雨、〈ハーミット〉の仕業か」
「ああ、確かにあの子の霊圧ですわね」
空間震の予兆は無い。静粛現界か。
それと、〈ハーミット〉とは別の霊圧を感知した。乱雑に積み重なり、過剰に増大し、澱み、濁っている。まるで
「あらあら。久方ぶりに、少しは食べ応えのありそうな獲物ですわねぇ」
しかし、このままでは下手をすると先に〈ハーミット〉とかち合うかも知れない。せっかくの獲物、冷凍処理されてもつまらない。
「では、行くか」
ウルキオラは時崎狂三に肩に手を置き、獲物の潜むクラヤミに転移した。
今のウルキオラは空間転移も習得済みだ。〈
ソレは、そこに蠢いていた。
数多の死霊を寄せ集め、水で死んだという共通点を寄る辺に、呪術で無理矢理一括りにしたのだろう。ウルキオラの眼には、怨霊を雁字搦めにする呪詛の鎖が見えている。
三〇年前の
唯でさえ天宮市の大気霊子濃度は他よりも高く、重霊地である空座町に匹敵する。更に、五河士道や複数の精霊が常駐しているため、御し切れてない霊力が恒常的に垂れ流されている。おまけに、〈ハーミット〉の現界と、天相従臨に寄る驟雨。雨粒自体にも僅かとは言え精霊の霊力が籠もっている。
コレはそれらの要素が積み重なった結果だろう。コレ自体は大したものでは無い。動作は緩慢、理知性は低い、自我は稀薄、特殊能力も無い。そして恐らくは、単なる実験の産物でしか無い。
ただ、下手に斃せば怨念が呪詛となり土地にこびり付く。浄化の暇もなく積み重なっていけば、土地そのものがどんどん陰気に倦んでいく。まるで地獄の瘴気の様に、秘めたる本能や衝動を暴き立てようとしてくる。
そうなれば、精霊達も魔王に堕ちやすくなる事だろう。
適切に対処し、後腐れ無く片付けられる者は限られる。コレは流石に、後ほど山吹にも話した方が良い案件だ。