虚無の魔神   作:千本虚刀 斬月

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とっくに失くしたハズのソレを

今更になって追い求める

―――――――心の所在を



7話 ウルキオラ・シファー

 

 

 

 

 大阪上空・高度1300メートルにて、二人の戦いは予想外の形で終わりを迎えた。空間に孔が開き、両者揃ってその孔に飲み込まれたのである。

 

空間に孔が開いた理由は、当然ながら二人の戦いの余波である。地獄の門すら打ち抜く完全虚化状態の黒崎一護の虚閃と、刀剣解放第二階層状態のウルキオラの王虚の閃光をぶつけ合ったのだ。コレによって周囲一体の空間に多大の負荷がかかっている処に、最後の暴発がトドメとなってついに空間が耐え切れず崩壊してしまったのである。

 

ウルキオラは、時限の狭間と言うべき空間にいた。黒崎一護の姿は見当たらない。そこはあらゆる色彩が無秩序に入り乱れていて、極彩色にも白にも黒にも見えた。加えて、上下左右前後といった方向の感覚も酷く曖昧だ。その中でウルキオラは何か大きな奔流に流されていく。一秒にも永遠にも感じられたが、漸く出口らしきものに行き着いた。

 

先程までの黒崎一護との戦闘で相当に霊圧を消耗していたが、念のため刀剣解放第二階層状態は維持を継続している。何しろ出口の先がどのような場所、状況なのかわからないのだ。用心に越したことは無いだろう。

 

出口の先は周囲をコンクリートで、地面をアスファルトで舗装され、一定の間隔で電灯が設置されている場所だった。そこはトンネルだった。ウルキオラは一瞬元の世界の現世かと思ったが、黒膣を開口出来ず、周囲に妖怪の気配があることから違うと判断せざるをえなかった。恐らくは、先ほどまで居た世界の別の時代なのだろう。

 

その妖怪とは、奴良組系「ガゴゼ会」の屍妖怪達の事である。

 

ウルキオラはそのような塵同然の雑魚など食らう気にもなれない。とりあえず危険は無さそうなので刀剣解放を解除して、トンネルから出ることにした。

 

(一先ず情報収集だな。ここが何時、何処なのか。それが解らなければ今後の方針も定まらん。もっとも、今の俺には無理をしてまで元の世界に帰還する理由など既に無いのかも知れんがな。)

 

ウルキオラは図書館を探すことにした。図書館なら情報も容易に調べられるし、休息も可能だと考えたからである。食事も必要だが近くに手ごろな獲物が居らず、調達しようにも資金を持ち合わせていない。しかも、ウルキオラは霊体であるが故に通常の人間では認識できない。食事については後で考えるとする。

 

因みに、それが理由でその図書館には怪奇現象の噂が立つ事になるのだがそれはまた別の話。

 

 

 

 予想は出来ていたがこの世界に空座町は存在しないようだ。ここは東京の浮世絵町。こちらではアレから400年程の月日が流れていたらしい。元の世界の現世にほど近い時代に流れ着いたのは幸いと言えば幸いだが。

 

大阪上空でのウルキオラと黒崎一護の戦いは伝説として語り継がれているらしい。ウルキオラは「虚無の魔神」、黒崎一護は「冥府の鬼神」として豊臣政権の終わりをもたらした神であると伝えられていた。逸話では、二柱の神が降臨し、大阪の町に壊滅的な損害をもたらした事で淀殿は豊臣政権の終わりを確信し、自決したことになっていた。

 

伝説の中には、ウルキオラの事を旧約聖書に登場する明けの明星とも呼ばれた堕天使ルシファーと同一視するものもあった。黒崎一護は羅刹天(仏教の天部の一つ十二天に属する西南の護法善神で破壊と滅亡を司る神)と同一視されている説もあった。大阪には二人の事を崇め奉った社まで存在すると言う有様である。

 

一通りの情報を調べ終えたウルキオラは、探査回路の範囲を町全体まで広げてみる。すると、大阪城に乗り込んできた妖怪達の霊圧を幾つか感じ取れた。

 

(どうやらあの女狐はぬらりひょんと名乗った妖怪に斃されたらしいな。しかも、宿願とやらは未だ果たされていない。ここで集めた様々な情報からそう判断するのが妥当だろう。)

 

最も気がかりなのは黒崎一護の霊圧を感じ取れなかったことである。揃って同じ孔に飲み込まれた以上黒崎一護だけが別の世界に流された可能性も低いだろう。考えられる可能性としては既にこの時代に居て、今は探査回路の及ばない程に距離が離れているのか。それとも、もっと先の時代まで流されたのか。

 

ウルキオラは大阪、京都に向かう事にした。そのどちらかであれば羽衣狐の事も解る可能性が高いと考えたからだ。流石に、配下だった京妖怪達も奴良組に全滅させられた訳ではないだろう。やはり拠点があるに越したことは無い。

 

 

 

 

 

 

 ウルキオラは大阪城跡地にいた。あの戦いの煽りで半ば崩壊したものの、その後修繕され今ではメジャーな観光地になっていた。すぐ近くには淀殿の慰霊殿と「虚無の魔神」と「冥府の鬼神」が奉られた祭殿も建てられていて、中々に賑っている。そこで探査回路を拡げてみると覚えのある霊圧を感知した。鬼童丸である。

 

「久しいな、鬼童丸。」

 

「!!・・・貴様、ウルキオラか?あの鬼神との戦いで諸共に時空の狭間に封印されたと聞いていたが復活したのか?」

 

「・・・・・まあ、そんな所だ。」

 

「ちょうどいい。羽衣狐様も400年の時を経て漸く転生なされたところだ。今は、表向き大企業の会長の孫娘として生活している。ウルキオラよ、再び我々に協力してくれんか?今度こそ悲願達成の絶好の機会なのだ。」

 

ウルキオラはこの要請を受諾し、鬼童丸と共に羽衣狐のいる京都に向うのだった。

 

 

 

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