虚無の魔神   作:千本虚刀 斬月

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9話 幕間

 

 現在、ウルキオラはとある社に居た。羽衣狐から与えられた新しい拠点がこの社なのである。なぜなら、ここに祀られている神とは「虚無の魔神」であるからだ。正式名称は虚神殿といい、敷地面積はそれ程でもない。だが、本殿の奥にある管理人用と思われるスペースは2LDKと中々の広さだった。

 

この虚神殿は京妖怪達が畏を得るために建てたものである。神が不在で神体も祀られていない状態である為、参拝したところで御利益など何もないと思われるが何故かそれなりに盛況であった。客寄せの呪いでも仕込んでいるのか意外と利益を上げられているようで、京妖怪達の活動資金源の一つになっているという話である。

 

(もっとも、俺は一般的に崇められている善神や土地神とは異なる。どちらかと言えば、荒御霊や祟り神の類に分類されるようだな。)

 

そのあたりは、「怨念」や「怨霊」といった、"陰"に属する京妖怪達らしいと言えるかもしれない。ちなみに、ウルキオラの事を無断で神として祀った謝礼として、羽衣狐から御符らしきものを貰っている。コレを身に着けていれば一般人にも認識できるようになるとの事である。古の妖狐にして陰陽師・安倍晴明の母親だけあって呪術の心得が多少はあったらしい。

 

ウルキオラは羽衣狐に協力する代価として、幾つかの条件を提示した。

 

一つめが拠点となる場所。この虚神殿が正式にウルキオラの住所となったわけである。

 

二つめが個人的な活動資金。これについては、虚神殿の利益の中から賄われる事になった。流石に京妖怪程の大所帯ともなると経理担当の妖怪も居るようだ。今のご時勢、先立つものが無ければ妖怪と言えどもやっていられないらしい。

 

三つめが不定期的にではあるが遠出し、不在となる事。既にこの時代に流れ着いているかも知れない黒崎一護の探索である。承諾はされたが此方にも一つ条件を課せられた。立場上、安易には京を離れられない羽衣狐に共眼界で各地の名所を視せると言うものだった。このくらいの条件なら許容範囲内である。

 

ウルキオラの提示した上記三つの条件を羽衣狐が呑んだ事で再び協力関係が結ばれたのだった。

 

 

 

 

 

数日後、ウルキオラは食事の用意をしていた。本来なら人間の魂魄や妖怪などの霊体が主食なのだが、羽衣狐にやり過ぎるなと言われている。破面の場合は虚と異なり死神の領域に踏み込んでいるため、一応は通常の食事も摂取可能だ。稲荷寿司を作ろうと考えていたところに、羽衣狐がやって来た。学校が長期休暇であるため暇を持て余しているらしい。

 

「・・・・・暇なのか?表向きは大企業の会長の孫娘として有名なお嬢様学校に在学していると聞いたが。」

 

「うむ、学校も今は夏休みでな。生き肝集めの方も、本格的に動き出すには些か時期尚早じゃしな。煩わしい習い事も今し方終わったところじゃ。」

 

「そうか。用が無いなら失せろ。俺はこれから食事だ。」

 

「相変らずつれん奴じゃのう。まあよい。それで、何を食べるのじゃ?」

 

羽衣狐は台所を覗き込み、油揚げの存在に気が付いた。

 

「なっ!こ、この油揚げは!上質の大豆から一切の添加物なしで仕上げた極上の一品ではないか!!」

 

「防腐剤や化学調味料などの添加物に塗れたモノなど食えんからな。」

 

(狐が油揚げを好むと言うのはただの俗説では無かったようだな。)

 

ウルキオラは羽衣狐のテンションに呆れながらそんなことを考えていると、羽衣狐が自分にも稲荷寿司を食べさせてほしいと言ってきた。

 

「食いたければ酢飯を詰めるのを手伝え。」

 

結果として羽衣狐は作った稲荷寿司の7割近くを平らげて、悠々と帰っていったのだった。

 

 

 

 

 

 ウルキオラは鬼童丸と剣戟を交わしていた。もちろん本気の戦闘ではない。鬼童丸が修行に付き合ってほしいといってきたのだ。羽衣狐も未だ夏休みで相変らず暇を持て余しているのか見物している。

 

「いくぞ、ウルキオラ!ヌウウゥゥゥ――――剣戟・楠」

 

ウルキオラは鬼童丸の抜刀術を難なく斬魄刀で受け止め、左手で貫手を繰り出す。鬼童丸は咄嗟にもう一振りの刀を抜いて貫手の軌道を逸らして距離をとり、次の攻撃に備える。

 

「では、コレならば如何だ!――――剣戟・櫻花!!2刀による億万の花が吉野の山に散るかのごとくの高速斬撃だ!」

 

だが、ウルキオラは斬撃の尽くを右手の斬魄刀だけで打ち払って退けた。

 

「!!!――――――何・・・だと」

 

「そろそろ準備運動は充分だろう、鬼童丸。鬼の頭領の実力、まさかこの程度ではないだろう?」

 

「よかろう。其処まで言うのならば見せてくれる!」

 

鬼童丸は、妖力を全解放して正しく鬼と化した。

 

「剣戟・虚空。櫻花のさらに10倍の高速斬撃。攻撃した後には何もない、虚しさだけが残るのみ。故に、虚空。」

 

だが、剣戟・虚空はウルキオラに掠りもしなかった。ウルキオラは響転で鬼童丸の背後に回り、首筋に刃を添えていた。

 

「そこまでじゃ。双方、剣を収めよ。」

 

静観していた羽衣狐が静止を掛ける。

 

「鬼童丸、確かに貴様の斬撃は速い。だが、それだけだ。破壊力に欠けて、一定以上の防御力や耐久力を有する相手は仕留め切れんだろう。加えて言うなら、剣戟の最中は貴様自身の足が止まっている。まあ、あの斬撃速度を維持したまま動き回れるようになれば大抵の相手は容易に切り刻めるだろうがな。」

 

「ウルキオラ、おぬしの高速移動術を教えては貰えんか。」

 

響転(ソニード)をか?」

 

「良いではないか、ウルキオラ。その響転(ソニード)とやら、何かと便利そうじゃ。」

 

「・・・・・まあ、いいだろう。もっとも、響転を修得できるかどうかは貴様ら次第だがな。」

 

こうしてウルキオラは京妖怪達に響転(ソニード)を教えることになったのだった。

 

 

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