艦隊の咆哮 〜戦場を彷徨う鋼鉄の漂流者〜   作:正海苔

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4-8 丑三つ時の海峡と地獄への水先案内人

10月14日0210時 スリガオ海峡北側

レイテ島アナハワン沖、北東70キロ地点

 

出雲がレイテ湾口への突撃を防ぐ為に、シャドウ・プラッタ(超巨大光学迷彩戦艦)とそれに従う70隻の深海凄艦艇が待ち構えており。

ここを突破されれば、揚陸艦艇が危険な状態になるのは明らかだった。

 

その頃、ある艦橋では、1人の艦息(・・)がこう口ずさんでいた。

「てっきり、サマール島を回ってレイテ湾に来ると思っていたんだが中々、歴史通り(・・・・)の線引きには従わず。抗い続けるか。出雲よ…西村艦隊の全滅(・・)という結末に……な」

 

そして……自分達が何故?超兵器がこの世界に転移した疑問(・・)について考えていた。

 

実は超兵器達は皆、檜垣達(・・・)がこの世界に迷い込む更に1年前、つまり深海凄艦が現れてからの3年後(・・・)に漂白していたのだ。

彼ら超兵器は1度は出雲の手で撃沈(・・)された筈が、何故かこの世界(・・)に転移し艦息(娘)になった、更には同じようにこの世界に来た超兵器達と行動を共にしていた。

 

彼らの行動理念は2つあった。

1つは、再度、出雲との決着を晴らすこと。

そしてもう1つは、我々がまた超兵器達だけでこの世界を統治していこうという考えだった。

 

手始めに彼らは既に(・・)組織的な統制では無く、既に軍閥化されていた各地の深海凄艦の当主達に接近して、超兵器という逸脱した戦闘能力を持つ彼らとその世界(・・)にいる艦娘(・・)とやらを倒す力を与えてようと、変わりに代償として一部の戦力をこちらの指揮下に置けという内容に、深海凄戦姫や各地の中枢凄姫達は諸手を挙げた。

 

何しろ、彼ら(超兵器)がやって来るまではズタボロもいい所で、ミッドウェーにしろウェーク島、クェゼリン環礁にしろとことん取られ放題だった。

 

だが彼ら超兵器達がこの世界に漂白したのと同時に、マリアナ諸島の守備隊と艦娘が突然、消失(・・)し、変わりにいたのは幾千数百の航空機と100隻以上の無人と化した(・・・・・・)艦艇だけだったし、グアム島3ヶ所の飛行場も同様だったのを手土産代わりに深海凄姫達に提供し、戦力の拡充を図らせた。

 

無人の艦艇や航空機を深海凄艦(・・・・)として蘇らせ、それを境に各地に散らばる深海凄艦達は一大反撃を実行し、太平洋や大西洋、ソロモン海、珊瑚海、豪州等を瞬く間に占領をしていき、そして……出雲が現れる2016年7月の世界の線引き(・・・)になっていた。

 

「さぁ来い出雲、貴様の相手はこの俺だ。」

 

 

シャドウがこの世界において自分達の存在意義を考えていた頃、出雲はまだスリガオ海峡の中間手前を戦闘しながら40ノット近くで航行しながら戦闘継続をしていた。中間地点に達する前には第2陣で展開していた深海凄艦は、ほぼ潰走状態になっていた為問題は無かったが…

 

「緊急報告、2方面から魚雷艇が大挙して本艦に接近中‼︎会敵まで20分‼︎」

その報告を聞いた出雲は、半ば一言叫ぶなり絶句してしまった。

「おいおい、マジかよ!」

 

無理も無いのである。いきなりレーダーの死角、今で言えばレイテ島側カバリアン湾とディナガット島側メルガール湾から魚雷艇(・・・)100隻近くが一斉に出現したので多少泡食ったが…

 

「どうします、艦長?」

「決まっているさ、俺たちに殺意を持って立ち塞がる阿呆共いるならそれを撃滅するのみよ」

 

すぐさま航海長と水雷長にある装置の起動状況を確認させた。

「航海長、水雷長、システム(リマ)補助装置(謎の装置k)起動済み(・・・・)か?それとそいつは確かローレライと同等だったな」

 

その答えに航海長が答えた。出雲の顔がニヤリとしながら…

 

「はい、戦闘前から起動してありますし、もちろん画像越しで海底の地形から艦船を投影することも可能です。」

 

出雲は台座に備え付けの電子海図と投影画像を確認すると……

 

「よし、水測長とここいら辺の水深、再確認しといて頂戴‼︎アレ(・・)をやるかもしれないからね」

 

その台詞を聞いて副長は嫌な予感と感じた。

 

「艦長……まさか⁉︎」

 

「そのまさか(・・・)だよ副長、艦内の固縛ガッチリしとけよ私物(・・)もね…あっ、万が一の時と思って酔い止め飲んどいてね〜こればかりは保証(・・)出来ないから」

 

これを聞いた副長は大急ぎでマイクのスイッチを入れた。

 

「総員、手の空いてる者から可動品、私物の固縛を至急かかれ繰り返す……」

 

この後副長は、部屋に戻ると薬を飲み急いで私物を固縛したという。

 

この放送を聞いた乗組員は大慌てになった。

 

「お前ら部品や工具はガッチリ固縛しておけ‼︎あんたどこ行くの?」「いや〜俺のコレクションが……」「やる事やってから行け‼︎」

「お前だって言えないんじゃないか〜?個人的趣味の山は?」

「待てやおい、何故知っている?」

「あらかじめダンボールに入れといて隠してくださいよ〜、見ちゃった物は仕方ないですからね〜」「君、もしかして強請りかい?」「なんの事でしょう?記憶?知らない子ですね」「おいお前ら‼︎はよ固縛作業やっとけよ〜私物もな、後で見に行ったら部屋(・・)がごった返しになっても知らんからな〜」「そうだった。はよやっとこ」

 

外では夜中なのに昼間のように明るく、お互い鉛弾の応酬してる最中にも艦内の妖精さんは自由(・・)な人なんだと……まぁ、元は全員、人間(・・)だけどね〜。

 

なんだかんだと準備をし終えた0230時には、固縛の準備(・・)が完了したと連絡が入った。

 

「左舷側から40隻、右舷側から68隻、ざっと108隻はいますよ艦長?」

「…そうだなぁ……さてと、魚雷艇の始末に取り掛かるかっと、ついでにこいつらの魚雷(・・)の性能知りたいしそれでは、迎撃始め」

 

同じ頃、2ヶ所から同時奇襲を開始したPT小鬼(PTボート)達は確信を持って出雲に魚雷攻撃を仕掛けた。

 

「アームドウィングさんから譲ってくれた誘導魚雷なら……勝てる、108隻から4本の魚雷、合計432発の誘導魚雷を(かわ)せてみろ、化物め‼︎」

 

「艦長〜魚雷が接近しております。数は……432発‼︎」

 

「ハッ?432発?しゃーない水雷長、対魚雷防御並び両舷魚雷管、全弾発射、敵魚雷の300手前で全て自爆させろ‼︎、それで針路を狂わせる」

 

「了解、両舷全魚雷並び、対潜ロケット弾、発射用〜意急げ‼︎」

「こちら魚雷班、両舷各1号〜6号魚雷発射管、準備完了です」

「対潜ロケット弾全基発射準備良し」

「了解、全魚雷発射管、全門斉射始め同時に対潜ロケット弾発射‼︎」

 

出雲から対潜ロケット360発、魚雷が60発が一斉に打ち出された。

「水雷長から報告です。対潜ロケット弾、全弾着弾、全魚雷の3割撃破成功‼︎なお観測の結果は……誘導魚雷(・・・・)の可能性あり?艦長……」

 

半ば出雲が艦娘達の後ろ盾をしているように、深海凄艦にもあるだろうと……

 

「あぁ……間違いなく、超兵器が後ろ盾(・・・)してるね、可能性としては技術支援と現物支給(・・・・)の両方だな」

「もし、この艦が海峡を通らなければ……西村・志摩艦隊の全滅(・・)は確定ですか?」

 

「まぁ〜奴らに取っても相当、予想外の展開になった事には変わりは無いだろうな俺や超兵器共にとって、この世界のイレギュラー(・・・・・・)そのものであり()の付いた幽霊がいる」

 

「それが艦娘と深海凄艦に多大な影響(・・)を与えた……ですか」

そして出雲自身は両目を閉じながら、腹心の部下である部下達にこう呟やきながら話した。

 

「俺にとってこの世界に飛ばされて来て、やる事はただ1つ、全ての超兵器を海中へ没せしめ、己が自らもこの世界から姿を消すこと(自沈処分)……かなぁ」

 

「艦長……それ、あの子達の目の前で言ったら最悪な展開になりますよ」

「こればかりは口が裂けても言えないよ」

 

出雲や副長、そして艦橋にいた乗組員は同じ気持ちだった。

 

彼女達は死に物狂いで出雲を止めるだろうと……

 

「はい、今の話はこれで終わります。雰囲気が葬式モードだから気持ちを切り替えましょう」

 

出雲と副長の話が終わったちょうど、全ての魚雷を自爆(・・)させ約5割は防ぐことが出来た。

 

だけど、まだ86本(・・・)の誘導魚雷が出雲に迫って来ていた。

 

「水雷長、どっちの魚雷が早く着く?」

「右舷側が18秒早く着弾します。」

 

(仕方ない、奥の手を使いたくは無かったが…この際、やらないより一層やったほうがマシ(・・)だわ‼︎)

「甲板長、右舷アンカーを落とせ、今すぐだ!急げ‼︎同時に左舷側の魚雷群に向けて再度、対潜ロケット弾発射‼︎」

「了、了解」

 

ーガラン、ガラガラガラガラガラガラガラガラ

 

右舷側、揚錨機(ウィンドラス)のブレーキとクラッチを解除すると勢いよくアンカーが落ちていった。

 

ちなみに台風時、投錨する場合は本船の長さ2.5〜3倍の長さ分のアンカーと30m級の水深があれば大抵の海域で可能である。ちなみに出雲の搭載錨節数(1節=25m)は各舷80節ある、これを長さにすれば全長と重量は共に膨大な重さだ。話を戻すとそういうことになります。

 

「着底まで5…4…3…」

「総員、何かに掴まれ吹っ飛ばされるぞ」

「やっべ、急げ‼︎」

「2…1…着底‼︎」

 

ーガァン、ガァキィィィー!

 

投錨したアンカーが急激に張り出したので、船尾側が大きく浮き上がり左に振られる。それと同時に時計回りへ大きく右スライドしながら。魚雷を回避していった。

 

「見張り班より報告、誘導魚雷58本、回避成功‼︎」

「良し、左舷側40ミリ機関砲群並び30ミリ複合CIWSでただちに残りの魚雷を迎撃、破壊しろ‼︎同時にデコイをばら撒け」

「了解、敵誘導魚雷接近!、機関砲、CIWS撃ち方始め」

 

ードンドンドンドンドンドン

ーバァァァァァァァ

 

勢いよく毎分900発を誇る40ミリ連装機関砲と、ロシア製の複合CIWS(パ ラ シ)に搭載する毎分9000発の発射速度を誇る。30ミリガトリング砲2基から放たれる。30ミリ砲弾の弾幕の豪雨が魚雷を迎撃するが……

 

ーズドォン

 

水面下から来る魚雷には多少は無理がある。

 

「報告、左舷側に魚雷6発被弾しました。」

「こちら艦長、各部署被害報告頼む」

「シールド蓄積率は67%問題なし。甲板長より報告です。バラスト区画に穴が空いたと報告ありましたので外壁から修理するよう伝えてあります。」

 

「どうりで痛いわけよ、使用したのは磁気信管かな?他の状況は?」

「そのようです。ですが、損壊したのは左舷区画の105ミリロケット発射機1基だけです。幸い給弾前だったので誘爆はありませんでした。各種兵装、機関、通信、航海計器共に正常以上無しです。」

 

「んじゃ、下手人を始末するか……」

「すでに照準済みです。敵魚雷艇まで距離7千‼︎」

 

この間にすでにアンカーは巻き取りを終えていたので、航行の阻害になるような物は無くなった。

 

その傍ら、魚雷攻撃を仕掛けて撃沈したと思いきや、なんとアンカー使いながら横滑り(・・・)していったのである。

 

攻撃失敗と判断した魚雷艇達はすぐさま逃げようとしたが……後の祭りだった。何故ならすでに捕捉(・・)されていたのだ。

 

「1発、悪ガキ共にお仕置きしてやるわ〜」

「全門、撃ち方始め〜」

 

逃げようとする魚雷艇達の背後から機関砲弾の袋叩きが待っていた。

ある魚雷艇は搭載する機関砲で反撃したが、スズメの涙程度では全くと言って無力に等しかった。

 

かくして奇襲を仕掛けた魚雷艇108隻はことごとく叫び声をあげながら沈んでいった。

 

残るはシャドウプラッタ率いる護衛艦隊とデュアルクレイターの残存する揚陸・輸送艦隊だけだったのだと……同時にタクロバン市街地北西部と空港では深海軍海兵隊と戦闘を継続していた。

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