艦隊の咆哮 〜戦場を彷徨う鋼鉄の漂流者〜   作:正海苔

53 / 60
今回、元ネタになっている南沙諸島は現実を元にしたものです。


5-4 南シナ海を睨む脅威と満天の星空〜前編〜

2方面作戦の戦力編成案、発表から4日後の23日……。

 

今から3日後に、ここシンガポールから日本へ物資輸送をする輸送船団とそれを護衛する大湊・横須賀連合艦隊が出発する為に、ここチャンギ基地に休養と補給を受けていた。

 

ASEAN派遣軍総司令「真田輝之大将」とチャンギ基地司令「伊坂香澄少将」の計らいで、基地内にある艦娘寮にお世話になっていた。

 

そんなある日、ASEAN派遣軍の両将から檜垣と萩沼提督そして、出雲の3人に基地提督の執務室まで来てもらいたいと基地の艦娘から伝えられ、3人はすぐ執務室に赴いた。

 

 

 

 

ーガチャンー

 

 

 

 

3人は執務室に入ると真田大将が出迎えてくれた、すでに時刻0920を回っていた。

 

「これはお三方、いきなりお呼び出して申し訳ないです。」

 

これに萩沼提督が対応してくれたので、出雲と檜垣は気が楽になっていた。

 

話を聞けば真田大将と萩沼提督は叔父と姪の間柄だという、世界は広いようで狭いと……そのように感じた。

 

「いえいえ、こちらこそ彼女達の宿舎を用意していただきありがとうございます……それで、ご用件は何でしょうか?」

 

これに伊坂提督が答えてくれた。

 

「はい実は……今月26日には日本向けの輸送船団が出発します…。貴方たちが護衛する輸送船団は途中、航路上にある南沙諸島沖を通過しますが…軍令部から火急の知らせが届きまして……。」

 

出雲はゴクリと唾を飲み込む。真田が話を続けた。

 

「軍令部から送られた報告書を見ますと、現在放棄された。南沙諸島には……」

 

「まさか?あの(中国共産党)の馬鹿共がベトナム戦争(・・・・・・)に占拠し、設置して廃棄された。対艦ミサイル発射機が再稼働し始めたと⁉︎それを大急ぎで出雲破壊しに、行ってもらいたいと言いたいんでしょうねぇ⁉︎」

 

萩沼提督がいきなり声を荒げて話しては、この時、出雲は心の底から嫌そうな顔をしていたみたいだ。だが真田は、構わずに言い放った。

 

「はい、そのまさかですよ‼︎」

 

呆れた表情で、出雲は真田に尋ねた。

 

「確か近くにはカムラン泊地の基地がありますよね⁉︎そこの艦隊で破壊しに行くことは出来ないのですか?」

 

ブルネイ泊地の艦隊は前回、レイテ防衛作戦に投入されたばかりで、現在は、艦娘達の休養と再編成に勤しんでいた。

 

「出来はしないが、軍令部からその島に廃棄されていたミサイルが、これだ」

 

そう言って、真田が伊坂提督に写真を見せるようにと話しをし、軍令部から送られてきた写真を出雲達に見せた。

 

「これが…、送られてきたミサイルの写真(・・)です。」

 

「…こいつは、YJー12(・・・・・)ですね。しかも陸上固定型の……」

 

「知っているのか?」

 

檜垣から全員にわかるように説明してくれと頼まれ、出雲は説明をし始めた。

 

「こいつは…俺たちがいた世界(・・)で中国軍が開発した。新型の対艦/対地攻撃超音速ミサイルです。最大速力はマッハ2.5超、爆薬200キロ、射程は400キロあり艦艇、陸上固定、車載用、航空機に運用可能なミサイルで、幾ら防御に優れる大和型でさえこいつの攻撃から逃れるのと迎撃はまず無理ですね……。しかし何故、こんな物があの島に?」

 

これに関して、檜垣からこの世界の情勢について教えてくれた。

 

「出雲、俺たちがいた世界とこの世界の情勢はか〜なり違うぞ‼︎しかも俺たちが知る太平洋戦争(・・・・・・)は無く、日本は枢軸国側では無く連合国側(イギリス主体)に加わり…そして敗戦した。」

 

「どういうこと?」

 

檜垣は出雲がこの世界に来る前に起きた事を話し始めた。

 

「この世界では1941年(昭和16年)にはヒトラーが暗殺されてナチス政権が崩壊し、また1946年(昭和21年)にはモスクワでクーデターが起きてスターリン政権は崩壊、また日中戦争終結後に国民党(中華民国)共産党軍(中華人民共和国)は内戦を再開した。その後、中国は二分されて。今、一つの大陸には二つの国家(・・・・・)が出来上がり存在している。中国共産党が1965年から勃発した…ベトナム戦争中のどさくさ紛れに南沙諸島の領有権(・・・)正式獲得(不法占拠)し…更に2年後の1967年には、ベトナム派兵(・・・・・・)してきた自衛隊は再度(・・)、戦争をする羽目になった……。なぜ?ベトナムへ派兵していたかという理由は、この世界の日本にはすでに日米共同の南ベトナム援助協定(・・・・・・・・・)があったようだ。」

 

そして、こちらの歴史(・・)と同じようにベトナム戦争が終結したが…中国共産党は性懲りも無く、同じ共産党系統のソ連から海上ルートを使い密かに不法占拠と基地拡大を継続していた。

 

だが…2010年に深海棲艦が発生してからは、その諸島一帯を放棄していたが…中華民国(台湾)沿岸部が壊滅状態になったのを見計らい、遂には国共休戦協定を破棄し、第2次国共内戦が勃発した。

ちなみに意外な事に、2016年になっても未だに継続していた。

 

「なるほど、そしたらよ、近くにはカムラン泊地があるだろう?まさか……。」

 

「残念ながらこのミサイル基地を破壊する為に向かいましたが…出雲さんや横須賀基地の艦娘達が持つミサイル迎撃に適応した装備を持っていなかった為目的地を手前にして、敗走いたしました。」

 

「つまり何ですか?現時点で極長距離から攻撃が出来かつピンポイントで正確に破壊出来る装備を持つ艦艇ったら……」

 

「もちろん、貴官の出雲だけという、非ッ常にキビシ〜ッ、状況になりますね、ハイ」

 

真田大将が、出雲に向けてサラリと言った。出雲は、檜垣と萩沼提督の方を見て言った。

 

「提督、俺は構わないですが…彼女達には何と言うんですか?特に飛鷹と隼鷹には……。」

 

「私のほうでうまく誤魔化しておくわ、

出雲、叔父さん(真田大将)はこういう人だけどいざとなったら頼りになる人なの、今回ばかりは力を貸して欲しいの……お願いよ」

 

たまにズボラな提督だが…眼前で瞳を潤ませて、出雲に懇願しているしちゃっかり手まで握っている。

 

「分かりました、この依頼、お引き受けいたしましょう。」

「ありがとう〜出雲‼︎」

 

萩沼提督は出雲の頬にキスし、更には……

 

「ほら香澄!貴女からもお礼言いなさい‼︎」

 

「う、うん、分かったよ。薫お姉ちゃん(萩沼薫)

 

今の伊坂提督の言葉に出雲は驚いたので、萩沼提督に聞いてみた。

 

「提督?もしかして全員、親族の方…ですか?」

 

「えぇ、真田大将は私の父さんの兄弟で、香澄ちゃんは母さんの兄弟の娘さんよ」

 

そう言って、伊坂提督は出雲の反対側の頬にキスをした。当然キスをされた出雲の顔は真っ赤になっていた。

 

檜垣は出雲達を見てケタケタ笑っており、そして真田大将と檜垣提督の方を見て言った。

 

「とりあえず。大将、萩沼提督、そうなると出雲を今日の夕方迄には出撃させないといけないのでは……。」

 

「出雲、出撃迄にどれ位時間がかかるの?」

 

命令(オーダー)さえ頂ければ、3時間程で出撃が可能です。」

 

「解りました。それでは出雲、出撃準備を願います。」

 

「了解致しました。直ちに出撃準備に取り掛かります!」

 

そこに、ノックの音が響いた。そしておもむろにドアを開けて入って来たのは、なんと青葉(横須賀)だった。

 

「おはようございます。萩沼提督はいらっしゃいますか?」

 

「おはよう青葉、どうしたの?何かあったの?」

 

だが…間の悪いことに。

 

「ごめんなさい司令官、私()さっきの話し(・・)……青葉、先ほどの話を全部(・・)聞いてしまいました。」

 

「へぇ〜、話を全部……全部。ん?なぁ、なぁんですってぇ!」

 

当然、萩沼提督の口がぽっかり開いたが…。そして心の底ではこう思った。よりによって1番聞かれたくない艦娘に…

 

「青葉?この内容を黙秘する変わりに何か要求することある?それに…私達(・・)って、まさか……。」

 

ガチャン

 

執務室入り口のドアが、おもむろに開いた。そこには飛鷹と隼鷹、大和ら艦娘達と八雲が、執務室のドアにへばり付いたまま雪崩れ混んで来た。それを見ていた出雲が呆れて言う。

 

「…おいおい、お前達いったい何してるのさ?それにみんな街へ出掛けて行ったんじゃないのか⁇」

 

出雲がみんなに問いかけると皆の代表で、飛鷹が答えてくれた。

 

「私達は出雲と一緒に、街へ出かけようとって誘おうとしたら、出雲の姿が見えなくてさ…、そしたら提督達と一緒にここの提督に呼ばれて執務室に行ったって話を聞いたのよ。そしたら…」

 

飛鷹が申し訳ない様な顔つきで話していたのを、彼女に替わって出雲が喋った。

 

「青葉と一緒に全員で、先ほど(破壊依頼)話を全て聞いてしまった…と、言いたいんだね?そうでしょ?」

 

出雲は、飛鷹の肩に手を置いた。その時飛鷹の肩は、僅かに震えていた。1人(・・)で勝手に、艦娘達(・・・)に傷を負わせない為にまた。戦いに赴く為に行こうとしていると…。

 

だけど彼女達は、出雲1人だけ危ない橋を渡らせたくなかった、それについては皆同じ気持ちだった。今度は出雲や提督達が反対しようと意地でも参加すると言う意思表示は横須賀基地の艦娘全員、一致していた。こればかりは萩沼提督も彼女達の考えに同意して、出雲を見て言った。

 

「出雲、これは私から本心で言うけど、彼女達の気持ちと同じよ貴方を1人で行かせたくはないのよ、こればかりは分かってちょうだい」

 

「・・・う〜ん・・・どうしようか?」ポリポリ

 

出雲は右手を頭を抱えながら仕方なく溜息をついた。だが、彼女達を置いて行けば帰還した時にはどうなるか検討もつかないし、逆に連れて行けば真っ先に危険な目にあうのかのどちらかだった。そこで檜垣は出雲と艦娘達にある(・・)提案をした。

 

「出雲、彼女達の数名(・・)を出雲の補佐で乗船させては、どうだろうか?これなら双方にとっても悪い話はないと思うが……」

 

出雲は少しばかり目を瞑りながら考えてた。そして、考えついた末についた結論を提督に話した。

 

「分かった。ならば日本向けとトラック諸島向けの部隊から、それぞれ12名〜16名ずつ選抜してください、ですが…今回は事があれなので今日の16時には此処シンガポールを出港したいと思います。」

 

そして、提督に話した後、出雲は艦娘達に向けて言った。

 

「今先ほど、提督に話したが、お前達もこれなら納得してくれるかな?」

 

艦娘達はお互いの顔を見合わせては頷きあい、その問いに答えるように代表して金剛が、出雲に向けて話し始めた。

 

「出雲さん、ありがとうございマース。私達の我が儘を聞いて嬉しかったデース‼︎」ダキュ

 

そう言い放つと、いきなり出雲に抱き着いてきた。

 

「あー、金剛さん、お気持ちはありがたいけどさ〜周りの雰囲気がおそろしい事になってるからさ、ねっ⁈」

 

如何やらみんな、金剛と同じことをしたかったのか、全員一斉に殺気を金剛に向けた。もちろん金剛型の姉妹達(・・・)も同様に。

 

「ブ〜、出雲さんが言うなら仕方ないデース、その代わりにっ…えぃっ‼︎」

 

大人しく引き退ったと思いきや、いきなり出雲にキスをしたのだ。それも唇に、この金剛の大胆な行動にはいきなり驚いたが、その時我に返った。艦娘達が、金剛を出雲から引き離しては姉妹達からお説教をした。

 

その時提督は、出雲と艦娘達に向けて言った。

 

「さぁ、みんな‼︎とりあえず話がまとまったようだから、食堂に集合して、お昼を食べる前に早く決めましょうね⁈分かった?」

 

提督の指示に艦娘達は「はーい」と声をあげて、散々と食堂に集合して行った。

 

檜垣は、萩沼提督が執務室を退室する前に声をかけた。

 

「萩沼さん、貴女はこちらに残って日本向けの部隊指揮を執ってもらえますか?肝心な時に指揮官が2人共居りませんでは何かと不便でしょうし、南沙諸島へは私が行きます。」

 

この話しを聞いた。萩沼提督は嫌そうな顔をしたが、長年、出雲と共にしていた彼ならよい、相談役になってくれるし彼の理解者でもあるから、心配は無いだろうと思い萩沼提督は檜垣に後をお願いした。

 

その後、提督はあえて本作戦の主目標は輸送船団の護衛ということになるのでそれぞれ部隊名を第1護衛艦隊(日本急行)第2護衛艦隊(ASEAN急行)として命名した。

 

横須賀の艦娘達は大急ぎで食堂に集まり、出雲に乗船する為のくじ引きが行われた。だが、人数が多い為か1番人数が多い陽炎・夕雲型は4〜6名に別れてもらい、それ以外は型式ごとに別れて各代表から1名ずつ選出してもらい決めることにしたのがいいが、皆くじ引きをする度には壮絶な駆け引きが展開していた。そして全員がくじ引きを終わると画面上に結果が出てきた。

 

・戦艦

大和、武蔵、金剛、比叡、榛名、霧島、長門、陸奥、ビスマルク、ティルピッツ

 

・空母

雲龍、天城(雲)、葛城、飛鷹、隼鷹、天城、赤城、加賀、土佐、大鳳、グラーフツェッペリン

 

・重巡

古鷹、加古、利根、筑摩

 

・軽巡

長良、五十鈴、名取、由良、鬼怒、阿武隈、阿賀野、能代、矢矧、酒匂

 

・駆逐艦

吹雪、白雪、初雪、深雪、叢雲、磯波、浦波、白露、時雨、村雨、夕立、春雨、海風、江風、五月雨、涼風、初風、雪風、天津風、時津風、島風、長波、高波

 

そして急遽、潜水艦娘6名を追加してもらい合計64名が出雲乗船の切符を手に入れた。

 

「おい⁈何これ人数がさ〜、倍以上いるけど大丈夫か?」

 

「いいじゃない、誰も来ないよりはいいでしょう?」

 

「まぁ、それもそうだな」

 

出雲が潜水艦娘達全員を投入する理由は、南沙諸島には洋上プラント(SAM基地)や陸上施設が複数確認されている為、その制圧には出雲乗艦の海兵隊が出番となると判断していた。

 

 

 

10月23日 1500 チャンギ海軍基地 バース前

 

あの時、くじ引きに当選した。艦娘達は大急ぎで在泊していた部屋を掃除し荷物を纏めて、出雲の舷梯前に集まった。

 

第1護衛艦隊の艦娘達は、南沙諸島制圧が終了次第では、輸送船団が北上してくる予定だったので彼女達には洋上艤装を携行してもらい、今回、乗船する艦娘達の半数は始めただったのか…事前に姉妹艦達から話しを聞いていたのでみんなワクワクしていたみたいだ。

 

「はい、それじゃあ、乗組員から宿泊する部屋を案内してもらってちょうだいね〜、何か分からない事あったら俺か副長に聞いてね⁈」

 

「では艦長、出港致しますか」

 

「そうだな、副長、甲板長に連絡、オモテ並び(トモ)シングルアップ」

 

「了解しました。甲板長、シングルアップしてください」

 

そう副長がトランシーバーで言うと、出港時には不要な係船索を船内に格納すると甲板長から準備完了と報告が入ってきた。

 

「艦長、出港準備が完了しました。」

 

「よし、副長、係船索を全て伸ばしてちょうだい、係船索を投棄し格納終了次第、全スラスターを起動‼︎」

 

「了解」

 

甲板長が全ての係船索を伸ばして、岸壁のビットに掛けてあるアイを外すと、外した順から係船索を巻き取りし始めた。

 

そして、全ての係船索を格納すると全スラスターで艦を左側へスライドさせ安全な距離に達した時点で。

 

「航海長、機関を前進半速(ハーフアヘッド)から巡航速力(ハーバーフル)へ」

 

「了解、巡航速力(ハーバーフル)に合わせ」

 

その後、機関を航海速力(前進原速)に合わせると航海長が事前に推進装置を起動状態にしてあるのを確認した。

 

「艦長、各種装置全て起動完了しました」

 

「よし、針路045度、速力100ノットに合わせ、副長は主な者を作戦室へ集めてちょうだい」

 

「了解しました」

 

画して、彼の国が遺した。負の遺産を破壊する為にシンガポールを出港した。

 

 

10月23日 1600 シンガポール 出港

10月24日 0000 南沙諸島

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。