めざめてソラウ   作:デミ作者

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イリヤちゃん引けません(憤怒)

書けば出るらしいので書いてみました。
お客様、こちらがお求めのめざソラプリヤ編です。

あ、番外編を書くにあたっての注意点が幾つかあるので書いておきます。
・本編の未到達部分についての盛大なネタバレがあります。
・構想中の本編から接続した話なので、本編の内容が変わる可能性もあります。
・このソラウちゃんはみんな大好き最弱英霊を中に取り込んで、最弱英霊にお洗濯されたアレと繋がってるのでナチュラルボーンホーリーグレイルです。
・このソラウちゃんはロリです。

以上の注意点が問題ない方はどうぞ。


番外編
ダークネス魔法少女プリズマ★ソラウちゃん


 落ちる。

 墜ちる。

 堕ちる。

 不本意ながら慣れ親しんだ暗黒の泥濘の中を、真っ逆さまに落ちてゆく。何が原因かは分からない。何を理由とするのかも分からない。そして、何を目的とするのかも分からない。俺に解るのは、ただ俺が世界の垣根すら越えて落ちているということだけだ。

 

『――ハハッ、アンタは本当にオレを飽きさせてくれないな。オレと()()()()()とはいえ、そのオレをゲート代わりに平行世界へ跳ぶなんて正気の沙汰じゃ無い――最も、お前にとっては全く寝耳に水なんだろうけどな!』

 

 声がした。

 この声も、俺にとっては慣れ親しんだ――否、慣れ親しんでしまったモノ。ここ最近は聞こえなかった分消えたと思っていたが、どうやらそうでは無いようだ。

 全く、いつ聞いても、何度聞いても人の神経を逆撫でする喋り方だ。此方を嘲り嗤っていることを隠そうともしない声。けれど、まあ、彼奴の経歴……というか存在そのものを考えれば、それだけで済んでいるのが御の字と言うものだろう。

 

『おいおい、物騒なこと考えてくれるじゃねえか。そもそも、オレを受け入れようとしたのはお前の方だろ? オレの軽口くらい軽く流しこそすれ、そうまで目くじら立てて気にするのは美容に良くないと――』

「……全く、どうしてお前はその()を被ったのやら。どうせなら、まだ俺と関わりのある方を模せば俺も色々と眼福だったものを」

『ま、それはオレが覗き見たのがお前の中の知識だったからとしか言えねえわな。お前の中にある知識のオレ、それがお前の言う関わりのある方じゃなくこのカタチだったからオレはこうなったんだ。言ってみりゃ、お前のせいだわな――ソラウちゃん?』

 

 けらけら、と笑う声に顔を顰める――現在顰める顔が残っているのかはともかくとして。暗闇に落下しながら薄れていった身体の感覚は、とうの昔に感じられなくなっている。

 だが、それでも良いと俺は思った。俺と『こいつ』は今や一心同体。奴が消えようと俺にはメリットしか無く、逆に俺が死ねば奴も消える。そんな状況で奴が嗤っているのを見れば、おそらく次に出会う事態がどのようなモノかも察しがつくと言うもの。多分――

 

「それほど危険が無くて、でもそれなりに危険な目に遭って、かつ非常識で心労のかかる立場に置かれるんだろうな……」

『ッハハ、大当たりだぜ。ま、お前さんの知らない事態に遭うってことじゃない――少なくとも、今オレが把握している限りでは。容易に戻って来れはしないが、戻ってくるとなれば時間軸だけはきちんと合わせてやるさ。だから安心して――』

 

 視界が開ける。落下する感覚が収まってゆく。無限の落下から有限の落下へ、闇は閉じ、眼下に開けるのは近代的な街並み。

 

『――逝ってこいよ、我が愛しの宿り木サマ』

 

 その言葉を最後に……彼奴の意思は、今まで通りに何処かへ消え失せた。同時に、落下の速度がぐんと上がる。重力が身体を引き、服の裾がばたばたとはためく。このままでは地面に激突するのは必至。この速度でコンクリートにぶつかれば、無残な血のシミになるのは避けられないだろう。絶体絶命、そんな状況を前にして俺は、

 

「よっ――と」

 

 ()()()()、速度を軽減した。

 何ということはない、嘗て礼装と化した水晶などに付与していた浮遊魔術の応用だ。今となっては諸事情で魔力にも余裕がある俺にとってはこんな程度朝飯前。魔力を調整し、だいたいの目線を合わせ、魔術回路をオフにして地面に降り立つ。

 

「……っ、おあっ!?」

 

 降り立つ――筈が、何故か合わせた筈の目線よりも遥か下に着地した。視界の高さが合わない、まるで地面に沈み込んだかのように。

 何者かの魔術干渉の気配はない。無論、足が地面に沈み込んだ感覚もない。

 ならば、この現象は一体どうしたことか――疑問に思ったのは一瞬だった。

 服の袖が余っている。ズボンの裾も、靴の大きさも、ついでに下着も。成長し、ナイスバディになった俺に合わせて設えた筈の一張羅が、だぼだぼになっている。両手を掲げて顔の前に持ってきてみれば、袖から出したその手は明らかに小さくなっている。この現象が意味するところを、俺は一つしか思い浮かばない。

 

「……俺、若返った?」

 

 口から漏れたその言葉もまた、随分昔に卒業した筈の懐かしい子供ボイス。図らずも仮説を実証してしまったことに、俺は少し溜息を吐いた。吐いて、ズボンの裾を引きずりつつ歩く。

 近くに駐車してあった車の窓を鏡にして顔を確認してみれば、確かに俺は若返っていた。年の頃は、およそ十二歳前後といったところか。

 幸いなことに、魔術回路や魔力、そして結んだ契約や内包するモノに関しては俺――この世界に墜ちる前の、成人していた俺と変わりないらしい。であるならば、少なくとも寝泊まりする場所くらいは簡単に把握できるだろう。そこらの一般人に暗示をかけて金を供出させれば良いし、最悪歓楽街の恋人用ホテルにでも泊まればいい。

 

「――『遠見』。ふむ、この近くに歓楽街は無いか。仕方ない、今宵はそこらの一般人に暗示をかけて、一晩泊まるとするか。……しかし、やっぱり魔術って便利だよなぁ……いや、本当はあんまり悪用しちゃいけないんだけど。でもまあ、生きていく為には――ッ、これはっ!?」

 

 魔術回路を起動し、『遠見』の魔術を使用し周囲の地形を探っていた俺の背筋にぞくりと悪寒が走った。これは魔力反応。此処から少し行った先で、大規模な魔力の奔流を感知したのだ。

 明らかに、これは大魔術クラス。こんな市街の直ぐそばで感じられていい魔力ではない魔力に、俺は自然とそちらへ向かって駆け出していた。勿論、原因を突き止めてそれを解決するため――ではない。何が起きているのかを把握するところまでは間違っていないが、それは事態を解決する為ではない。その事態の重さを把握し、確実に危険が及ばない所まで逃げる為だ。

 俺の活動方針は昔から一貫している。『ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリとして生き残る』、これだけだ。これを曲げようとしたのは、後にも先にもただ一回しか無い。だから、今回とてそれを曲げるつもりは――

 

「……あ、ヤバい曲げそうかも」

 

 一瞬だった。身体に強化を施し近くの家の屋根に飛び乗り、そこから視力を強化して件の魔力反応のあった場所を覗き見て、一瞬で心が揺れた。

 そこに居たのは、桃色のファンシー&キューティな衣装に身を包んだ幼女と、黒髪をツインテールにした赤い少女。型月厨なら誰でも分かる我らがヒロイン、イリヤと凛だ。しかも、イリヤの衣装とその場所を鑑みるに事態がより明らかになる。

 ――つまり、ここはプリヤ世界。愉快型魔術礼装に選ばれたカレイドの魔法少女達が織り成す、愛と勇気と熱血と、そして女の子同士のいちゃいちゃラブラブが満載の世界だ。

 

「……となると、時系列が問題だが――それに関しては考える必要も無いか。()()()(あくま)()()で鏡面界に突入するのは、ライダー戦をおいて他に無いだろう」

 

 目の前で起こった事象が、俺のつぶやきを補強する。この距離からでも見て取れる程に初々しさを残したイリヤスフィールが杖を構え、魔法陣を通って鏡面界へと突入して行くのが見えた。となると、この少し後にはもう一人の魔法少女が鏡面界へと侵入し、そこで二人の顔合わせが発生するのだろう。

 ――しかし、と。そこまで考えて、俺は自身に笑いが込み上げていることに気がついた。理由は明白だ。だって、此処には『本物』のクラスカードが存在する。知識も理論も独自補填と改造を施した、俺が作製したピーキーな性能の贋作クラスカードではなく、本物が。

 そのカードには、効率的な置換魔術についての魔術式が搭載されているだろう。座へのアクセス方法や英霊置換に際してのノウハウも書かれているかも知れない。エインズワース特有の、置換魔術の秘奥もそこには存在するだろう。

 

「……ああ、欲しいなぁ。解析して、分解して、その全てを学びたい」

 

 ごくり、と喉が鳴った。知らずのうちに唾が溜まっていたようだ。

 アレを手に入れたい。手に入れたいのならば、手に入れるのが魔術師だ。その為にはどのような手段を用いるべきか――逡巡し、思考し、そして、

 

「……郷に入っては郷に従え……?」

 

 天啓が降りた。具体的には、割烹着を着たお手伝いさん的な感じの声で。

 そう、ここは平行世界。ソフィアリ家の監視の目も、ケイネスやその他との煩わしいしがらみも無い。そして、俺が『アレ』を宿している以上――おそらく、滅多なことでは死ぬ事もないだろう。

 

 ……ならば、少しくらい羽目を外しても良いのでは無いか?

 ……ソラウと成ってから二十年弱、ここまで必死に死なないようにやってきた、これはご褒美なのではないか?

 

 その甘美なる誘いの手を、俺は躊躇することなく取った。

 現在立っている家の屋根、そこから飛び降りつつその家の窓を魔術で開錠し侵入する。中にいた成人男性は、目を合わせるや否や暗示に堕ちた。そのまま彼のクローゼットから一番安そうなスーツ一式を拝借し、記憶を改竄し再び屋根の上へ。手に入れたスーツを魔術で加工しつつ件の学校を見張っていると、その視界に二人の女性が映った。

 見間違える筈もない。あの金ドリルと成人した俺――ソラウに勝るとも劣らない豊満な胸の持ち主は、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト。そして、その脇に控える幼女は美遊(ミユ)だろう。

 だとすれば、もう時間がない。転身し、鏡面界へと侵入を果たす彼女らを横目に()スーツへ施す魔術を加工させる。

 

 ――生地はそのままに、カタチを切って継いでゆく。

 ――色彩はそのままに、魔力を浸透させてゆく。

 余裕のある洋服を、身体にぴっちりと張り付くコスチュームへ。

 先ほど目にした二人の魔法少女、イリヤとミユの衣装を参考に、男物のスーツをレオタードちっくなフリフリでヒラヒラの衣装へと改竄してゆく。

 

「……色彩に、赤。ネクタイを加工」

 

 そうして出来た雛形に、ネクタイを分解した繊維で刺繍を施してゆく。勿論、その施す意匠は全て魔術的に意味を持つものだ。本家カレイドの魔法少女に及ぶように、物理保護や障壁、魔除け等といった意味合いを込めてゆく。

 そして――最後に全体の調整。二人の魔法少女を模して作ったそれを、俺の中に潜む『アレ』の魔力で染め上げ、カタチを変えてゆく。二人の魔法少女以外に参考にするのは、ゼロイベで登場した人型の逆月。彼女の衣装のように、禍々しくもどこか切なげな装飾を施す。

 

「……時間がない、早く着ないと!」

 

 そうして、ソレは完成した。魔法少女としてのファンシーさを保ちつつも赤黒に染まった、言うなれば『オルタ魔法少女』とも言うべきコスチューム。それに、俺は急いで着替えてゆく。

 脱いだ服を()の中に仕舞い、余った生地でチューブトップとホットパンツを作製しそれも仕舞い、ついでに泥から目元だけを覆う仮面を作製し身につけ、一息吐いた途端に――

 

「……戻ってきたな、魔法少女」

 

 魔力の本流。何もない校庭に魔法陣が描かれ、そこに四人の少女が現れる。桃色の少女、赤い少女、紫の少女、青い少女。原作通り、カードを持っているのは青い少女のようだ。

 会話こそ聞こえないが、彼女らは何かを話し合っている。赤と青が激しく言い合い、一方桃色と紫の間に会話はない。

 いける。まだ彼女らの戦闘経験が浅い今ならば、一撃を撃ち込んだ隙をつけば容易にあのカードを奪取できる筈だ。

 

「クラスカード、弓兵(アーチャー)夢幻召喚(インストール)

 

 呼び出すのは純潔の狩人。ギリシャ神話に名高い俊足の英雄。

 夢幻召喚に従って、俺の衣装が彼の英霊を模したものに変わってゆく。しかし、本来ならば受け入れるそれを俺は拒んだ。現段階で彼女らに『夢幻召喚』について知られる訳にはいかないからだ。

 よって、アタランテを夢幻召喚しておきながら俺の見た目はオルタ魔法少女のまま。こんな力任せの魔術行使が出来るようになったのも俺の内に潜む『アレ』の影響だが、それにしたってどんな反則だと苦笑を漏らす。漏らし、手に持つ弓を引き絞り――

 

「――『天穹の弓(タウロポロス)』」

 

 俺はここだと知らせるように、魔力を一気に噴き上げる。

 咄嗟に此方を向く四人。その中の一人、美遊・エーデルフェルトのギリギリ真横を狙い指を離した。

 発射。

 着弾。

 魔法陣が描かれていた校庭が、神代の一撃の前に呆気なく砕け散る。舞い上がる土煙。俺の矢と土煙から身を守ろうとし、狙い通りに晒した隙をアタランテの俊足で以って突く。

 

「――なっ、これは……サファイアっ!?」

『美遊様、攻撃です――ッ、魔力反応接近!』

「……残念。一手遅かったわね?」

 

 俺の動きに反応出来たのは美遊のみ。だが、反応出来たからと言ってカードを守り通せた訳ではない。すれ違いざまにカードを抜き去り、ついでに意味深に呟いておく。

 目的は達した、あとは離脱するだけだ。抜き取ったカードを胸元へ仕舞い込み、煙の中から美遊達に手を振って、アタランテの俊足でそのまま悠々と離脱を――

 

「……砲撃(フォイア)ッ!!」

「ッ!? 耐久強化(gain_con)!!」

 

 足に溜めていた魔力を防御に回す。瞬間的に発動した魔術が、飛来した魔力弾を掻き消した。反応は容易。だが、反応出来たからと言って……目的を達したことにはならない。

 

「……あら。逃げ果せるつもりが、失敗しちゃったわね?」

 

 砲撃の爆風で、土煙が払われる。

 そこに居たのは、先程と変わらない四人の少女。違うのは、四人が四人ともその瞳に敵意と疑惑を宿しているという点だけ。

 此方を射抜くように厳しい視線。ともすれば一触即発という空気の前に、彼女らは誰も口を開かない。そんな彼女らへ向かって、

 

「……でもまあ、構わないわ。あなた達程度なら、どうにでもなるもの」

 

 俺は、久し振りに高揚しながらそう言い放ったのだった。




あ、番外編、本編問わず拙作『めざめてソラウ』におけるソラウちゃんはロングヘアです。髪に魔力をこれでもかってぐらい溜め込んでます。

そしてプリヤ編のロリソラウちゃんの普段着は真っ黒なチューブトップとホットパンツです。

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