めざめてソラウ   作:デミ作者

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エルメロイ二世の事件簿の第四巻を待ってたら更新が遅れました。
いや、所長出てますからマリスビリーも出てるかも知れない、出てたら口調とか気を付けないとって判断でした。

それはそれとして8/19はソラウちゃんのバースデーです。
祝いましょう。


ソラウちゃんとパパと所長のパパと

 重苦しい音を立ててドアを押し開く。もう慣れはしたが、まだ小さかった頃は扉を開けるという一動作にすら苦労したものだ。

 場違いな感慨を抱きつつ、銀のワゴンを室内へ運び入れる――応接室のソファに向かい合って腰掛けていたのは、見慣れた父親と見慣れぬ壮年の男性。その二人へ向けて、俺はゆっくりと頭を下げた。

 

「失礼致します、お待たせ致しました。お茶とお菓子をご用意致しました、お父様」

「ああ、ありがとうソラウ」

「他にご要望はございますか、お父様?」

「いや、充分だ」

「承知いたしました。それでは、私のような第二子がお二人の邪魔をしてはなりません。私はこれで下がらせて頂きます」

 

 一度目よりも大きく、恭しく礼をする……ほんの少し、俺と長年付き合った者しか分からないような好奇心と不服の表情を浮かべながら。

 勿論この動作、そして浮かべる表情すら計算ずくだ。憂いを帯びた表情の中に好奇心と、思わず庇って構いそうになる小動物的な要素を絡める。向ける相手が父親で、そしてこのような状況であるならば、先の行動は十全に読めたようなもの。即ち、

 

「まあ、待ちなさいソラウ。……マリスビリー、娘を紹介させて頂いても構わんかね?」

「勿論だとも。先程のブラム少年は魔術師の家系の跡取りとして、非常に良く出来た子供だった。同じソフィアリ家の娘と言うのならば、是非ともご紹介願いたい」

「そういう訳だ。ソラウよ、此方は私の大事な客人。失礼の無いように挨拶しなさい」

「宜しいのですか――いえ、失礼致しました。それでは、有り難くお受けさせて頂きます 」

 

 ――来た! 予想通り、一度引いてみせれば父は此方に配慮をしてくれた。最早身内程度ならばある程度行動をコントロール出来るようになったことに軽く満足を覚えるが、今はそんなことに構っていられない……もっと重要な事案が目の前に存在するのだから。

 その事案とは、言わずもがな『マリスビリー・アニムスフィア』。かのオルガマリー所長の父にして、これから未来において設立される――あるいは設立される可能性のある、カルデアという組織の所長となる人物。

 では、何故このマリスビリー氏が重要な事案と成り得るのか、なのだが……それはこの世界、あるいはこの世界の未来についての不確定さに起因する。

 端的に言うと、現時点でこの俺のいる世界が『Fate/zero』なのか『Fate/stay night』なのか『Fate/Grand Order』なのか、あるいは可能性は少ないが『Fate/EXTRA』なのか、それともその他外典のどれかであるのか――つまり、()()()()だか判明していないということである。まあ父や兄、そしてその他の外部の講師達の話を聞く限りに於いてはエクストラであったりアポクリファであったりはしなさそうではあるが。

 ともかく、『俺のいる世界がどれをベースにしているのか分からない』と言うのは大きな問題である。何故なら、俺の生死に直接関わってくるのだから。

 そして現状、俺の辿りそうな運命は大別して二つの世界線(ルート)に絞られている。

 一つは、俺の居る世界が『Fate/zero』、あるいは『Fate/stay night』であった場合。これならば話は簡単だ。俺の覚えている、忘れられない情報と知識――魔術を満足に使えるようになってから魂の奥底に強く焼き付けた――を駆使し、どうにか生き残るために動けばいい。難易度こそ非常に高いが、結末や道筋が分かっているというのは大きなメリットになる。……最も、このzeroやSNであったとした場合、もう一つ()()()()()が待っているのだが。

 そして、もう一つが『Fate/Grand Order』の世界であった場合。もしも俺の存在する世界が此方であった場合は――俺の生存は、()()()()()になる。少なくとも、二〇十六年までは。何故なら、この『Fate/Grand Order』の世界に於いて、聖杯戦争はただ一度のみしか開催されていないのだから。

 その根拠が明示されたのは、『Fate/Grand Order』における期間限定イベントの一つ『Fate/Accel Zero Order』――通称ゼロイベ。その中で、はっきりとエルメロイ二世(ウェイバーちゃん)が説明している。

 つまり、この世界が『Fate/Grand Order』であった場合、俺は第四次聖杯戦争など存在しない世界で二〇十六年まで安穏と暮らした挙句、人理焼却に巻き込まれて死ぬ羽目になるということだ。

 今回の邂逅は、それを覆し得るもの。人理焼却がもしも成された場合に、生き残る術を得る為の邂逅である。そして、生き残る術を得る為には必ず事を成さなければならない。

 

 即ち――マリスビリー氏に取り入ること。これが必須だ。

 

「こんにちは、おじさま。私はソラウ、ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリと申します――高名な天体科のロードをこの目で見ることが叶い、光栄に存じます」

 

 男を籠絡する四十八の必殺技のうちの最も基本となるもの、ソラウちゃんスマイルを振りまきつつ、スカートの端を摘み一礼をする。長年叩き込まれた淑女としての礼節に則った、それでいて花の咲き乱れるような可憐さを香らせて、相手のハートをロックオンする。予習は完璧に済ませてある、故に好感を持たれることは間違いない。惜しむらくは、最近籠絡した相手がおじさまばかりであるという点か。

 

「おや、君は私のことを知っていたのかね」

「勿論です、ロード。偉大な父と兄の下にある存在とはいえ、私もソフィアリ家の端くれ。二人に恥を掻かせるような真似はしないように、研鑽と情報の収集に努めておりますので」

「ふむ、良い心掛けだ。やはり君も良く教育されているようだ。願わくば、私もこのような後継ぎを持ちたいものだな」

「恐れ入ります、ロード」

 

 下げた頭を上げ、しずしずとワゴンの側に戻る。そのままワゴンに乗せた紅茶と茶菓子を二人の前に置き、もう一度一礼。少なくとも無様を晒すことの無かった俺に、父はご満悦のようだ。相対するマリスビリー氏も、どこか緊張を解しているように見える。

 

「しかし、君達アニムスフィアが山から下りてくるとはな。余程のことが無い限り、君達は星の巡りにしか興味が無いものだと思っていたが」

「此処もその星の一つだろう? だが――今回私が君の所を訪れたのは、この計画が我々にとって、君の言う『余程のこと』だからなのだからだがね」

「そうだろうな、ロード・アニムスフィア。だが、何度要請されようと、このままでは首を縦に振ることは出来ない」

 

 父は、紅茶のカップに口をつける。対してマリスビリー氏の方は、茶にも茶菓子にも手を付けようとしない。心なしか、その表情は切迫しているように見える。窓も開いているというのに、じっとりと汗を掻いているほどだ。

 

「ロード・アニムスフィア。貴方がこうして設計図まで公開しているのは、この『天体図のようなもの』を完成させるために必要な肝心の魔術式が未完成だからだろう。完成する見込みすらない。君主(ロード)間でのツテが生まれると言えど、これには金は出せんよ」

「どうしても……どうしても駄目か」

「無理だ。そもそも、何故わざわざ我々ソフィアリに話を持ってきた? アニムスフィアは貴族主義派だろう。法政科はともかく、同じ派閥の鉱石科(キシュア)――エルメロイにでも頼れば良いだろうに。それに、エルメロイには天才がいる。私の教え子だが、彼の才能は当代一だろう。彼ならば足りない魔術理論の補強もしてくれるかも知れないぞ」

「エルメロイには既に話を通した。アーチボルトの若き俊英にも協力を要請した。だが――駄目だ、取り付く島もない。アーチボルトの倅の方は、理論にだけは興味を示してくれはしたが……」

 

 良い具合に議論が発展し、俺の存在は忘れられつつある。最も、そうなる為に一切の口出しをしなかったのだが。

 ともかく、好機(チャンス)到来といった所だ。ワゴンの側に控えた俺の立ち位置は万全、二人の注意は俺から逸れている。窓は開き、そこからゆるやかに風が流れ込んでいる。そして――最も重要な『天体図のようなもの』の設計図(スクロール)は、無造作に机の上に置かれっぱなし。杜撰な管理に見えるが、そもそも此処は降霊科(ユリフィス)のロードの家、それも応接室だ。外部からの魔術干渉など容易に跳ね除ける此処は、この敷地内でも安全な場所の一つと言えるだろう。

 ――だが、内部からの干渉にはどうか。

 一工程以下(ワンフレーズ)で、慣れ親しんだ魔術を発動する。魔術回路の起動は一瞬。発現する現象も、また一瞬。発動する魔術は低位の基礎魔術であり、魔力消費も無いに等しい。故に、この一連の企みは誰に露見することも無く、

 

 ――非物理置換、発動……!

 

 窓から風が吹き込むと同時に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――!

 

「……あっ、お父様!」

 

 一工程以下(ワンフレーズ)での魔術行使など、求められる結果は大したものではない。ましてや、自分の礼装と化した水晶玉にならばまだしも、他者の持ち込んだスクロールなどに大きな変化を齎すことは出来ない。だが、今回に限ってはそれで良いのだ。

 なにせ俺の目的は、机の上に置かれた設計図を、風の仕業に見せかけて机から落とすこと――そして、それを俺がキャッチすることなのだから。

 咄嗟に手が出た風を装い、ひらひらと舞う設計図を掴み取る……果たしてそれは問題無く成功した。掴み取った一枚の紙切れには、事細かに文字や図が書き込まれている。その内容は複雑かつ難解であり、一般的な魔術師ならば四分の一もその内容を理解出来ないようなもの。本来ならば、齢十二の小娘に理解出来るような物ではないだろう。

 

「拾ってくれたか、ソラウ。客人の持ち込んだものだ、綺麗に返却するのが当然だからな。だが、どうも内容を見てしまったようだが……マリスビリー?」

「構わないさ。君の言う通り未完成品の上、そもそもその内容は彼女には理解出来な――」

 

 ――だが、その小娘が俺でなかったならばの話だが。

 

「……天体図、地球儀? いえ――これは、擬似天体。地球の、コピー?」

「っ、なんだと!?」

 

 マリスビリー氏が声を荒げ、けたたましく音を立てて椅子から立ち上がる。父は驚愕に目を見開き、しかしこちらをじっと注視している。父の反応は概ね予想通りだが、マリスビリー氏の驚き様は予想以上だ。

 ――後々考えてみれば、その驚愕は尤もだった。自らが心血を注いで作成した巨大魔術構造物の全貌を、複数枚ある設計図のうち一枚、しかも軽く目を通しただけで把握されたのだから無理もないというもの。

 だが、俺には『原作』の知識が存在する。原作知識は、この世界で生き延びる為に欠かせないものだ。だが、それはただ単に『原作の流れを知っているから有利である』という意味ではない。

原作の知識を所持しているメリット。それは、『あらゆる物事』が『何であるか』を知っているという点にある。

 原作の流れなど、この型月世界においてはあまりに不確定だ。一番の原作である『Fate/stay night』一つを取っても、開始時点から三つのルートが存在する。それほどに世界が分岐し得る以上、原作の流れは参考程度に留めておくべきだ。

 それよりも、目の前に現れた現象が一体どういうものであるのか、それを理解することが出来る知識こそ有用なのだ。

 

 例えば、魔術とはどのような物で、どのような種類が存在し、どのような使用例が存在するのか。

 例えば、時計塔とはどのような場所で、そこに属するロードとは何で、どんな人種が集まっているのか。

 そして例えば――そのロードの一人が持ってきた設計図に描かれている『カルデアス』とは、一体どのような用途で用いられ、どのような理論で構築されているのか。

 

 今回は、その知識が必要だった典型例だ。生存の可能性を少しでも上げるため、その知識とその驚愕こそが必要だった。驚愕し、俺に……ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリという魔術師に興味を持って貰うことが必要だった。

 

「……ソラウ。お前はそれが何であるか理解できるのかね?」

「……? はい、お父様。拝見させて頂く限りでは、地球に魂が存在すると仮定した上でどうにかその魂を観測できるカタチに押し込めようとしている巨大な魔術構造物のようだと考察いたしましたが、間違っておりますか?」

 

 座ったままの父から向けられた疑問に回答し、また質問をマリスビリー氏へと向ける。回答を聞くまでもない、正解に決まっているのだから。このカルデアス――あるいはそのプロトタイプの設計図に記されている理論は()()知っている。

 

「い、いや……、間違っていない」

「そうですか、良かったです。父と家の名に、恥を塗らずに済みました。それにしても……美しい魔術理論を構築なされておられますね、ロード」

「ははは、これを一目見ただけで理論まで見破るとは、ソフィアリの娘は大した傑物のようだ。美しい君にそう言われると、天にも昇る心地だよ、リトルレディ」

 

 だが、話は思ったように転がって行かない――それもそうか、と考え直す。たかが十二歳の小娘が設計図の魔術理論を見破ったところで、単なる秀才としか捉えられないのは分かりきっていたことだ。だが、それでは足りない。いずれ発足する可能性のあるカルデアという組織に対して、これでは繋がりを持つことは出来ない。出来ないのならば――

 

「そんな、恐れ入りますロード。――ああ、でも……本当に素晴らしい魔術理論。ねえロード、お父様。これ、()()()()()()()()()()?」

 

 ――自ら、流れを引き寄せるまでだ。

 無邪気に笑い、そう告げる。顔はソラウちゃんスマイル、全身はソラウちゃんムーブ。淑女教育で身に付けた作法をふんだんに使い、なおかつ子供らしく悪戯っぽく。しかし、その声音には真に迫るものを含ませる。こんなもの、置換魔術よりも簡単なことだ。そして、簡単な分だけ結果も容易に予測出来る。

 俺の言葉に凍りついたのは男二人だった。先程、設計図が何であるかを当てた時よりも深刻な顔でこちらの様子を窺っている。その瞳の中に見えるものは――父は驚き、マリスビリー氏は驚きと期待の入り混じったものだった。

 

「……ソラウお嬢さん、その設計図に書いてある物を造りたいと言うことは、つまり()()()と言うことかね?」

「あまり言いふらす事ではありませんけれど、その通りですロード。但し、私なりのやり方になりますけれど」

「……構わないかね、マリスビリー」

「ああ、構わないとも。――じゃあ、少し我々に見せてくれるかね……リトルレディの魔術を」

 

 ――釣れた(フィッシュ)。内心でガッツポーズをする。

 本日の一件は、彼等に対して魔術を披露することが出来るかどうかが分かれ道だった。その為に少々強引に話を進めはしたが、その程度は仕方が無いだろう。俺は別に弁が立つ訳でもない、出来ないことも沢山ある。その中で、生き延びるために全力を尽くしているだけだ。

 だから、俺にとっては此処からが正念場だ。

 先ずは魔術回路を起動し、遠見の魔術から盗み取った座標指定の魔術式に魔力を通す。座標を調べる物体は、俺の礼装と化した菫色の水晶玉。自室にあるそれを捕捉し、非物理置換を駆使して浮遊させ、応接室まで運ぶ。廊下を突っ切ってきたそれを扉を開けて迎え入れれば、父やマリスビリー氏は大層驚いた様子だった。だが、此処で驚かれても困る。本当に見せたいものは、此処からなのだから。

 

「……置換魔術、発動。検索、惑星情報。物質情報(material)読込(read)……未完(incomplete)

「置換魔術だと?」

 

 疑問の声。しかし、己の裡へ埋没した俺の集中はそんな事では止まらない。

 

「置換魔術、一時停止――検索方式変更、使用理論、降霊魔術。惑星情報再読込(reload)……未完(incomplete)。情報量過多につき、読み込む情報を縮小化。大陸情報再読込(reload)……っ、ぐ、ううっ」

 

 ずきり、と魔術回路に痛みが走った。感覚としては、肌の下へ熱した針金を差し込まれる、という表現が近いか。全身から汗が噴き出し、呼吸が乱れそうになる。ずきり、ずきりと回路が悲鳴を上げる――しかし、魔術を行使する手は止めない。

 中途半端に魔術行使を止めれば、待っているのは破滅だけ。それに、もし破滅しなかったとしても今日の試みは全て無駄になるだろう。

 実を言えば、こうしてカルデアを構成するであろう要素に取り入ることは昔から考えていた。その内の手段の一つとして、その時期に未だ完成していない発明品を模倣することも考えていた。全ては生き残るために。ソラウとしての生をソラウから奪った時、俺は決意したのだ。俺はソラウになり、ソラウとして生き延びて見せると。

 故に、こんな痛み程度で、俺は諦めたりはしない――

 

「――再読込(reload)完了(complete)物質情報(material)、保持。置換魔術、一時停止。転換魔術、行使開始……!」

 

 菫色の水晶玉に、魔力が注ぎ込まれてゆく。水の中に垂らした絵の具のように魔力は広がり、薄菫の球体の中に真っ赤な花が咲き、次第に収束してゆく。行った手順はいつも通り、置換魔術で情報をコピーし、転換魔術でそれを上書きするだけ。今日はそこに、情報のコピーの為に降霊魔術を、魔力の収束の為に更に転換魔術を併用したのだ。

 慣れない魔術すら駆使し、そこまで苦労してなお、出来上がるのは本物よりも小さく、情けない出来栄えの、カルデアスとは呼ぶ事の出来ない代物だ。しかし、現状でこの理論を全う出来るのは俺だけだという自負もある。その誇りで、魔力に最後の指向性を与え、

 

「……物質情報(material)上書き(install)……!」

 

 ――水晶玉の中に、星の魂の一部を写し取った、ブリテン島とユーラシア大陸の縮小図を描き出した。

 

「ふぅ、ふぅ、はあ――」

「まさか……信じられん。我々アニムスフィアがどれだけ知恵を絞ろうと完成せず、エルメロイの天才ですら理論構築に多大な時間が掛かると言った代物を、こうも……」

「どう、ですか、ロード、お父様。全部を再現は出来なかったですけど、出来るところまでは――ふぅ」

 

 水晶玉を浮遊させながら、膝に手を突いて荒く呼吸をする。ぽたぽたとカーペットに落ちる汗を拭おうとした時、不意に柔らかいものが押し付けられた。顔を上げる。其処にあったのは、いつも父が使用しているハンカチだった。

 

「良くやった、ソラウ。正直なところ、お前がここまで研鑽を積んでいるとは思わなかった」

「お父様にそう仰って頂けたのならば、私も努力した甲斐があるものです。お父様とお兄様、二人の恥とならぬように――きゃっ!?」

「お嬢さん、いや、ミス・ソラウ! 君は天才だ、神童だ! 君の才は素晴らしい! 君がもしもソフィアリの子息でなければ、直ぐにでも我が養子として迎えたいところだ――流石に現実的でないことは把握しているが、ね。だが、ミス・ソラウ。君の才、諦めるには惜しい。どうだね、その才能を私達アニムスフィアに貸してくれはしないか?」

 

 急に肩を掴まれ、興奮気味に捲し立てられる。マリスビリー氏は興奮した様子で、俺の肩をがくがくと揺さぶる。歳は相応に重ねていると思えない程の力の強さだ。対抗し腕を掴み、それでも逃げられず父に助けを請い、どうにか其処から抜け出せば大きく息を吐く。そうして、俺はマリスビリー氏に相対した。

 

「えっと、お誘いと高い評価をありがとうございます、ロード。ですが、私はソフィアリの娘。家の事を疎かにする訳にはいきません。あくまで私は家に付随するもの、父の所有物ですから」

「……うむ、それはその通りだが……」

「ですので、ごく偶の機会。可能であれば助力するという形で良ければ、喜んで。私の魔術の研鑽にもなるでしょうし。……その、構いませんか、お父様?」

「ああ、構わんとも。お前はブラムと違い、刻印の移植に時間を割く必要もない。可能な限り彼等の助力をし、自らの糧を増やすといい」

「――っ、ありがとうございます、お父様!」

「うむ。さ、疲れたろう。お前は部屋に戻りなさい、ソラウ。後は私が彼と話をしておく。決まったことは後で伝えよう」

「はい、お父様。それでは――失礼致しました」

 

 荒い息をとり繕い、ドレススカートの端を摘み一礼。二人へ向ける笑顔は満面の笑み、その裏に隠した感情は歓喜。

 疲労はしたが、目的は達した。世界がどう転んでも、これで生き延びる手段は増えた。生存に繋がらなくとも、カルデアとコネクションを持つことは様々な技術を学ぶことに繋がる。

 湧き上がる達成感を噛み締めつつ、俺はゆっくりと応接室を後にしたのだった。




このソラウちゃんまだ十二歳なんだぜ。

ちなみにケイネス先生なら、時間さえかければ大体原作通りの時期に一人でカルデアスを完成させられます、というぐらい天才って扱いにしてます。ケイネス先生ってば冠位ワンチャンある位ですし、まあ多少はね?

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