「ボンジュール!いらっしゃいませでござるー!」
『メイドカフェの島』。たくさんの喫茶店があちらこちらに乱立する島。シャオフーの話を後回しにしすぎて、シャオフーファンに怒られるのを怖がっている作者が題材にしている店があった。そのお店の名前とは…。
喫茶店「フランカフェ」。それが店の名前である。
雲一つない晴天で太陽がさんさんと輝くお昼頃。まだお客もまばらで常連さんたちが集まって、
「イベント一緒にやらないか?」
「相互したり、同タイプだとポイント上がるぞ」
と、よくわからない言葉を混ぜながらわいわいと楽しくやっていた。初めてくる人も何人かおり、常連さんたちは今日は高いほうではなく、普通のコーヒーをゆっくりと飲みながら過ごしていた。
そんな中、キョンシー姿の少女シャオフーがフランカフェを訪れ、驚くべき事実を口にしたのだった。
「もしかするとのぅ?そのルーンはわしの母が作ったものかもしれんのじゃぁ…」
シャオフーと話していたお店で働く少女、フランがその話に困惑しながらも食いつく。
「シャ、シャオフー殿、それはどういうことでござるか?」
「実はのぅ…わしが死んでしまった理由はしっておるじゃろぅ?」
同様に困り顔で話をするシャオフーが自分の死の理由を知っているか、フランに聞く。その話はもちろん、飛行島の仲間であるフランにも伝わっているので、フランも悲しそうにしながらうなずく。
「知っているでござるよ…。
シャオフーがなぜおばあちゃんのようにしゃべりながらも少女の姿をしているのか。それには理由がある。
シャオフーは元々とある村に住んでいたごく普通の村娘であった。両親も健在で毎日の暮らしに不満などなく幸せに暮らしていた。
しかし、その平和は長く続くことはなかった。
シャオフーがまだ小さい頃に戦争が近くで起こっていた。
村のそう遠くないところでは人同士でお互いの頭を狙い、弓を引いて矢を撃つことで頭を狙うのはもちろん、剣によって乱戦を繰り広げては首が飛び、血が飛び、悲鳴が木霊し、腕は斬り飛ばされ、誰の血かわからなくなるまで戦った後に残るのはだれがどうするのかわからない、ただただ、大量の人の死体が残る。そんなことを繰り返していた。
シャオフーの両親はもちろん、村の人たちは自分たちが巻き込まれるのを恐れた。もちろん、兵として男の大人は戦争に駆り出されるため、シャオフーの父も例外ではなかった。その際に、父は兵の荷物を背負って見送ってくれるシャオフーに
「父さん、少し出かけてくるからね」
といって本当のことは告げず、シャオフーの頭をなでて死地へと向かった。
女子供、老人は戦争にはかりだされなかったが、村全体に残る男は老人。戦いがすぐそばで起こっている中で救ってくれる人もいないため、村は戦争の恐怖に脅かされていた。
シャオフーの母はせめて娘だけでも、という決心の元シャオフーに『とあるルーン』をかわいいパンダのポーチの中に入れて、シャオフーに一人で生きていけるようにお守りとしてそれを渡した。そして、安全な国に逃がすことでシャオフーは生きていけるようにしたのだ。
その後、無事に母はシャオフーを安全な国に送ることができた。そして、母は寂しそうに、しかし、それを表情に出さずに笑顔にしながらも、
「私のところに帰ってきてはだめよ。また会えるから…その時まで、一人で頑張って生きてね…」
と、シャオフーと約束し、二人は離れた。
だが、シャオフーはこのころ、まだ小学生くらいで母に甘えたいくらいの年ごろであった。その母に一人で生きていくように、顔を合わさない約束をしたのだとしても、シャオフーには辛すぎた。
一目会おう。生きて、母に会いたい。
その思いでシャオフーは、その国に送られて数か月経った晴れた日の夜、国から出て暗い森を進んで自分の村へと向かった。母の顔を浮かべながら、その思いだけで。
しかし、その思いが届くことはなかった。
その森はちょうど片方の陣営が夜襲を受ける直前であった。夜襲を仕掛けようとしていた部隊が先行していたのだが、その際に森を横切るシャオフーを敵と勘違いして、
パァン!
という音を響かせ、撃った弾はシャオフーの胸を打ち抜いた。
音を響かせてしまったその部隊はその音が相手の陣営に知れたかもしれないと危惧し、シャオフーの心配などすることもなく、任務失敗を告げてその場から即座に立ち去った。
この時の音は夜襲される陣営には届いてはいなかったのだが、結果的にシャオフー一人だけが取り残されることとなった。
シャオフーに撃たれた弾丸は脇腹を貫通。すぐに止血すれば助かる見込みがあったのだが、誰も近くを通らないし、助けてくれる人もいない。なにより、まだ小さかったシャオフーにはその痛みは激痛で、自分の死を覚悟してしまった。
それゆえにシャオフーは死んでしまった。
しかし、シャオフーのポーチの中には彼女の母が入れた特別なルーン『束縛のルーン』があった。
束縛のルーンはシャオフーの魂を彼女の死体に束縛することで、シャオフーはしんでいながらも生きている、という謎の生命体として生き返ることとなった。
最初のうちは彼女自身も戸惑った。自分はいったいどうなったのか。死んだはずなのに体が動く。けれども、自分の思った通りにはうまく動かせない。困惑しながらもかろうじて動くことができたシャオフーは自分の村へと向かった。
シャオフーが無事に着いたとき、村は燃えていた。
道には遊んだシャオフーの友達が血を流しながら倒れ、飴をくれたやさしいおじいちゃんは体中に穴をあけながら扉に座り込み、その眼はうつろだった。
その光景を目にしたシャオフーはあまりの光景に目を見開き茫然として、その場に座り込んで自分の胃にあったものを吐き出した。そのはいたものは近くで死んでいた近所のおばさんの血と混ざり、何とも言えない色になって、また吐いた。
幸いだったのは村を襲った人たちは既にいないようで辺りには木や藁が燃える音しかしないことか。
この様子だと…と思ったシャオフーは絶望したが、それでも母の顔が見たい一心で自分の家へと急ぐ。道中にあった、友達の死体に自分の目からあふれる涙を落としながら。
自分の家に着いたとき、もちろん、燃えていた。しかし、母の死体は見当たらない。なので何とか中に入ろうとしてみる。
扉は蹴破られており、中も火の勢いはすごく、燃えていた。しかし、その中であってもシャオフーの体は熱気を無意識的に切り離し中を探した。もちろん、感覚はなくても彼女の体は熱気によって体力をむしばまれていく。熱すぎればやけどもするだろう。それでも、懸命に母の姿を探し続けた。
燃えたことによって倒れそうになっている柱をうまくくぐっていく。何とか道をみつけ、奥まで行った。
そして、見つけた母はうつぶせに倒れていた。
シャオフーは見つけた母の安否を後にして、お姫様抱っこで彼女の母を担いですぐに家を出た。彼女の力では無理なはずだが、死んだ体のおかげで従来の力よりもさらに力が出せるようになっていた。
燃え盛る家がぎりぎり倒れる前に家を出たシャオフーは急いで燃えていない木の近くまで行き、母をきにもたれさせ、母の息を確かめた。奇跡的に、母は苦しそうながらも息をしていた。しかし、母は足にすでに数発撃ち込まれており、失血死の直前であった。
その時、母は苦しいながらも自分が移動したのを感じ、目を開ける。
「……ぁ…シャ……オ……?」
「お母さん!?大丈夫!?」
かすかに声を出せた母にシャオフーがうれしさのあまり母に泣きつく。
しかし、母に残された時間は少ないことを母自身がよく知っていた。なので、何とかできる限りこれからについてと、自分がした研究を話そうとした。
「シャ…オ…よく………聞いて……ね…?」
「うん!何、お母さん!?」
顔を挙げたシャオフーは涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。そして、母もシャオフーの体から、おそらく…ということに感づいていた。
「シャオ……生きて…!…わ…たしね…?………平…和…になる、ように……頑張ったから…」
自分の苦しみを何とかこらえながら、母は自分が作り出したルーンの話をしようと懸命に口を開く。しかし、シャオフーは無理に話そうとする母が苦しそうなことを感じ、止めようとする。
「ぐずっ…おかあざん!もうこれ以上しゃべったらだめだよ!?死んじゃうよ!」
「シャ…オ…私の…ポケット……あとで…みて…ね…あなたが…生き……てて…よかった……………………………………」
言い切った母は、目を開いたまま死んでいた。彼女の表情はとても穏やかでシャオフーが生きていたのを祝福しているようだった。
シャオフーはその場で長く泣いていた、気づけば朝になっていた。母の死もあったためにとてもじゃないが、すぐには立ち直れずにいた。そして、シャオフーは母のポケットにあった唯一の手帳を言われたとおりに取り出し、しかし、視ることはせずにパンダのポーチに入れて記憶とともに封印し、旅を始めることにした。
それは何十年、何百年、と続いていくこととなった…。
それからしばらく経ってシャオフーが飛行島の仲間となったときのこと。
赤髪の少年のルーンによってその記憶がよびさまされることとなった。もちろん、その時のつらさを思い出したゆえに、その場で泣いた。しかし、仲間たちに励まされ、シャオフーは母の分まで生きることを決意した。
フランとシャオフーはその話を確認もかねて話した。もちろん、シャオフーやアイリスから聞いていた飛行島の面々はつらい顔をして聞いているし、常連客は先ほどまでの遊びの空気が完全に霧散していた。
空気が重くなり、何とも言えない空気になったのをとりなすようにフランが話を促す。
「それでシャオフー殿…その話がどうしたでござるか?」
シャオフーも周りの空気を察したのか、話を続ける。
「それがのぅ…実はその時の手帳なんじゃがのぅ…」
シャオフーはその後、自分のポーチの中にある手帳のこともちゃんと思い出していた。彼らの励ましの後に読んでみれば、それは母がひそかに行っていた研究の結果のメモでった。
名を『平和のルーン』。読んでみると、完成するまで試行錯誤を続けていたのがわかる。そして、メモの開始日時はシャオフーが生まれたころであった。
シャオフーの母もシャオフーと今生の別れにするつもりはなかったのであった。最初のうちは日にち飛び飛びのメモだったのだが、戦争が近くなったころから、メモは毎日のように書かれていた。そして、研究結果の最後には必ずシャオフーの成長についてだったりが書かれ、そして、それに対しての母の喜びようも。
仲間たちには気づかれなかったが、シャオフーは一人その日記を見て胸が熱くなる思いを抱いた。こんなにも母は自分を思っていたのだ、それを感じるだけでその場に崩れ落ちた。そして、自分も母をこんなに好きだったのだということを思い出したのだった。
今の今までこれを黙っていたのは、伝えるようなことではないと思ったのと、手帳に書かれていた自分の成長の親バカさを見せるのが恥ずかしくなったからだ。伝えようと思えば必ず実物を見せることになると思ったからである。
話し終えたシャオフーは先ほどまでの困り顔よりも少し照れながらその手帳を出す。
「これがそうなんじゃが…」
フランも先ほどの話を聞いていたので、
「なるべく最後のほうは見ないようにするでござるね…」
と、苦笑いであった。
手帳にはフランが見たのと同じものがあった。その効果も確かに一致しており、作ったのは間違いなくシャオフーの母であろう。フランはそう確信した。
しかし、ここで疑問が残る。
「シャオフー殿、この研究が終わった最後の日時はシャオフー殿の母がお亡くなりになった日からどのくらい離れているでござるか?」
辛い質問ではあると思ったが、必要なことだと思い、フランは最後のページをシャオフーに見せながら渡す。
「ふぇっふぇっふぇ…わしも年寄りじゃから、しっかりとは覚えとらんよぉ…ただ、そんなに離れとらんかったと思ったのぅ…」
シャオフーからすれば何年も前のことだし、つらい記憶だ。そんなことまで覚えているわけがないだろう。フランは申し訳ない気持ちになっていた。
「そうでござるか…変な質問をしてごめんなさいでござる…」
「ふぇっふぇっふぇ…かまわんよぉ、フラン」
頭を下げて謝るフランにシャオフーが笑顔になりながら気にするな、と手を振る。
問題はこの完成したルーンを
ならば、いったい誰が…調査の要点はそこにありそうであった。
その後、重くなった空気を振り払うように、その場にいた人たちには高いコーヒー半額キャンペーンを行った。常連はフランたちの言わんとすることがわかったので、それに乗っかってがつがつ飲み始めることにした。来ていた蜂の師匠と、骸骨さんはゆっくり飲んでいた普通のコーヒーを水のように飲みほした後に、高いコーヒーを10杯分それぞれ頼んで一気に飲み始めた。
そして、最近来るようになった、みゃおんと鳴く子猫にはスイカがこっそりミルクを与えていた。アヤメも一緒になって子猫をなでながら、かわいいねー、と話して遊んでいる。
フランはシャオフーに老人に人気のある紅茶をアヤメにお願いしながら、シャオフーとお話することにした。キャトラとはうまくやっているか、などが主である。なんだかんだで、シャオフーとキャトラはおばあちゃんと孫のような関係で仲がいいので、キャトラの話を聞くと、シャオフーはうれしそうに話すのであった。
そして、常連メンバーである鬼の人とTシャツに『3&PEACE&ユッカ』と書かれた2名は毎日高いコーヒーを飲みながら誰かの訪れを待っているようだった。片手にはいつでもとれるようにカメラを持ち、まるでゴ○ゴ13のような顔で二人とも待機していた。
リンゴは相変わらず、りんごをもぐもぐと食べて、フランもなんとか空気を直すことができたのだが、厨房の方ではミカンがしゃがみこんでうずくまり、泣いているのを男の忍者が慰めていた。感情が豊かなミカンには少し辛い話であったのだろう。男の忍者が泣いてるミカンの頭をやさしくなでていた。
フランたちの調査をこれによって進んだのだが、少し辛いその話に一同は少し、心が重くなったのであった。
第壱章はメイビーそろそろ終了です。第弐章は特に決めてませんがまったり書きます。