フランカフェの日常   作:杉崎 三泥

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弐の巻 「ラッキープレゼント!」「無暗にするな」

  「ボンジュール!いらっしゃいませでござるー!」

 

 『メイドカフェの島』。たくさんの喫茶店があちらこちらに乱立する島。その中でも最近オープンし、すぐに話題になった店があった。

 喫茶店「フランカフェ」。それが店の名前である。

 

 

 とある日の朝頃、開店前のお店の中でフランカフェの表に立つ面々がロッカールームで着替えていた。もちろん、フランカフェの制服にである。

 

 潜入任務ということで全員住み込みで働いている、いわゆる共同生活という状態だ。もちろんそれぞれの部屋が用意されており、そこから向かうのでもよいのだがミカンの希望でみんなでロッカールームを使うようにしている。なんでもミカンが言うには、

 

 「みんなでワイワイ一緒にいる時間が増えたほうがいいでしょー?この4人でいることなんてめったにないんだし!」

 

 ということらしい。フランは感動し少し泣いていたり、アヤメはほほえましく見ていたり、リンゴはいつも通りリンゴを食べながらそれを聞いていて、全員特に反対することもないので、そういうルールになった。

 

 着替えに行くのは、もちろん、起きてからすぐに、というわけでなくある程度自分の部屋で髪を整え、洗面所で歯磨きや顔を洗い、台所へまず向かう。料理は全員でやることにしていて、台所が広いのもその要因ではある。そして、全員が朝食を終えてから、着替えに行くわけである。その際は全員パジャマではあるが。

 

 そのパジャマはどんなのかというと、まず、フランはブルーの一般的な長袖長ズボンのパジャマではあったが、大きく背中に洋ナシ、両手両足の先にも洋ナシがプリントされており、洋ナシへの愛が詰まっていた。彼女の忍び装束にも洋ナシがプリントされていたが、あれも自分で作っているのだろうか…。

 ミカンは寝間着というより部屋着でライトイエローのTシャツにホットパンツをはいていた。彼女曰く、かわいい服は好きだけど、夜は早く寝たい、という話だった。

 リンゴは寝間着ではあるが、とてもかわいらしく、体をすっぽり覆う黒猫の服だった。フードがついておりそれをかぶれば、猫耳をはやした黒猫リンゴの完成である。いつもクール?にふるまっている彼女にしてはかわいらしいチョイスであったといえるだろう。

 ちなみに、アヤメは泊まりの用意などしていなかったが、アヤメの分は忍者側の厚意ということで水色の何の変哲もない雑貨屋でもありそうなパジャマを用意してもらった。安っぽそうな見た目ではあるが、素材に工夫が凝らしており着心地がとても良いものとなっている。

 

 

 フランカフェの居住スペースは2階にあり、アヤメ、ミカン、フラン、リンゴの面々の個室が用意されてあるが、台所のスペースを差し引いても、部屋には余裕がある。全員がいても大丈夫なほど、居間が広いのに、だ。

 これだけしっかりと作られているということは、それだけ任務が重要ということの表れかもしれない、といつも自分の評価が高いリンゴがドヤ顔で言っていたが、確かにそうかもしれない、とフランも思ったほどである。

 

 ちなみに男の忍者の人達はどうするつもりだったのかというと、それぞれ別のアパートを借りてそこに住む予定だったらしい。フランはそれを聞き、

 

 「部屋が余っているのでござるから、とまればよいのでは?」

 

 と、言ったところ、頭領に強く言われているので無理です、と顔が見えない状態でもわかるくらい真っ青になった雰囲気を出しながら、速攻で去って行ったのがフランカフェ初日の図である。

 本人が言うのだから仕方ない、と面々が納得していたが、アヤメはいったいどんな風に言われたのだろうか、とすごく興味を持っていた。彼女だけは帝国出身で特別に来てもらっているため、頭領のことは一切知らないからである。

 

 話は戻って女性のロッカールーム、といっても、男の忍者は裏方が基本なために、男性のロッカールームもあるにはあるが使われていない。

 各自がロッカーにしまってある制服に着替えつつ、話をしている。初めてロッカールームを使った時の会話の一部を切り取ると…

 

 「おお…アヤメ殿は見かけによらず…すごいでござるな…」

 

 「そ、そんなにじっくり見ないでください…普段は邪魔なのでさらしで押さえてるのですが、服を脱ぐとですね…」

 

 「アヤメは着やせをする?人なんだねー!」

 

 「クックック…私とて成長すれば…ううっ…シャクリ…」

 

 とのことらしい。深くは書かないでおこう。

 

 男の忍者も来るのは開店の10分前ほどに到着するのが定時となっており、厨房の道具の手入れが終わるころには開店できるように調整している。彼女たちもそれがわかっているので、着替え終わるのもいつも通りの時間、開店の1時間前に終わるようにしている。なぜ、1時間前かというと、表の机をふいたり、机にシュガーポットの残りがちゃんとあるかの確認などをするためである。

 しっかりと彼女たちも仕事していた。

 

 そんなこともあって、フランカフェも1か月ほど続いた。最初の呼び込みの成果もあり、常連客が付き、いつも来る人のおかげで収支としてはプラスになっている。前に大きい鬼の人が来たのだが、その人も、今度は背骨にひびの入ったボーンソルジャーさんと同じように高いコーヒーを飲んでいた。お互い知り合いらしく、よく話をしている。

 ボーンソルジャーの人はのんびりと飲んでいるときのほうが多いが、鬼のほうはすぐに飲み終えると、

 

 「今日も周回するぞー!」

 

 と、張り切ることが多い。周回とは何のことかはわからないが、本人はとても楽しんでいる風であった。

 

 

 朝の客層が落ち着き、昼に差し掛かるころ、アヤメがカウンターで紅茶を楽しんでいた。客も1人2人しかおらず、フランとミカンもカウンターのアヤメ側のところにある椅子に座って休憩している。リンゴは言わずもがな自己分析をしながらリンゴを食べていた。仕事をしているのだから問題はないが、彼女はあの状態がおそらく休憩しているのだろう。その証拠に、いわゆる「ジ○ジョ立ち」をしているリンゴのつぶやいている内容を聞いてみると…

 

 「…なのであるからして、私のこの圧倒的な仕事ぶりゆえに客もすぐにさばいてしまい、空き時間ができてしまい私はこの空白の時間ではやることがなくなってしまった。ゆえに自己分析を行うことでこれよりもさらに仕事の精度が上がってしまうのだろう。それはいけないと、休憩を入れることでそれを阻止しようと試みてはいるのだが、やはり私の才能が自己分析を余儀なくして…」

 

 だ、そうだ。もちろん一部である。

 

 やはり、この時間はのんびりとしていて、完全に昼になればまたあわただしくもなるため、この時間が彼女たちにとっては至福となっていた。午後になれば人が一気に増えるだけでなく、継続的にお客さんが来るために、休む間もない。

 なので、のーんびりとしていると、外から胸に響く重低音の音が近づき、止まった。リンゴ以外が何事かと入り口に目を向けると、フランにとって見慣れた2人がやってきた。

 

 「マール殿!ガレア殿!ボンジュール!来てくれてメルシーでござるよ!」

 

 やってきた黒い羽と白い羽を持つ2人の幸運の天使がやってきた。手を振りながら笑顔でやってきた少女、マールといつもの通りクールな表情を崩さない男、ガレアだ。

 

 「やほやっほ~♪元気してる?」

 

 「マールが行きたいというので来てみた、俺も少し気になってたからな。迷惑じゃないか?」

 

 マールとガレアは比喩ではなく本当に天使で、人に幸運を与えたり、運を奪ったりすることができる。マールはもっぱら与えることしかできず、ガレアは両方できるが、基本的に運を奪うことをやっている。

 運を与えすぎると周りの人が不幸になるなどの問題があり、無闇に与えたりしてはいけないのだが、マールはまだまだ未熟ということもあり、ガレアが面倒を見ている。

 彼らには込み入った事情があるのだが、それはまた別の話…。

 

 マールは茶熊学園の制服で来ていて、ガレアはバイクに乗ることを考えてか黒いスーツにゴテゴテとした腕と足の鎧部分を装備するいつもの服装であった。脱ぐのが面倒くさいのか、はずそうとはしないようだ。フランが時計を見て疑問が浮かぶ。

 

 「あれ?2人とも学校はどうしたでござるか?」

 

 いつもならまだ学校の時間である、祝日でもないのであるはずだが…と、フランが疑問に思うのは当然だ。

 マールはあー、と苦笑している間にガレアのほうが説明してくれた。

 

 「カムイ校長がなんでも『私の出番が最近少ない!そう思っていたら、夏にまた私の出番が来たのでちょっと本気出すために休校にします!』といって、今日は休みになったんだ。わざわざ学校まで行ったのに、そういわれたからどうしようと思っていたら、マールが『フランちゃんがお店出したんだって!行ってみようよ!』っていって半ば無理矢理にな…」

 

 器用に声まねまでしつつ、そういってマールのほうを見て嘆息するガレア。

 

 「だからごめんってばー!ガレアったらすぐ根に持つんだからー!」

 

 「すまんすまん、だから叩くな」

 

 それに対して怒りながら軽くポカポカとたたくマール。たたかれながら謝るガレアだが、よく見ればマールもガレアも笑っているようだった。彼らのきずながとても深いことが見て分かる。

 怒って叩き満足したのか、マールは再びフランに向きなおし、

 

 「今日はお客さんとしてきたんだよ~。何があるのかな、フランちゃん?」

 

 「あぁ、それならこれがお勧めでござるよ!」

 

 フランはメニューを空いている席から取ってきて、店の人気商品をマールに勧める。

 

 「俺はコーヒーを頼む、あと軽い食事で何かあれば」

 

 ガレアはコーヒーを頼むついでに、マールに軽食を選ぶよう一任して席に座り、そのまま机に腕を枕にして寝てしまった。ゴツゴツした服装だが寝にくくないのだろうか、とミカンが見ながらひそかに思っていた。

 と、そんな感じで遠巻きに見ていたアヤメとミカンにマールが気づく。

 

 「あーミカンちゃん!久しぶりー!飛行島以来だね!」

 

 「マール!元気だった?」

 

 「元気だよー!学校に行ってからも友達が増えて楽しいんだー!ミカンちゃんもイメージガールのお仕事は終わったの?」

 

 「うん!ちゃんと終わったよ!氷の親善大使って人にもたくさん感謝されたよ!」

 

 ミカンのほうがマールに気づくと、お互い走り寄っていった末にお互いの手を取ってブンブンと上下に振りあいながらそんな話をしている。

 

 実はこの二人、マールがぽっぽと飛行島で遊んでいるのが見かけられるようになったころにミカンがそれを見かけて興味を持ったのが出会い。お互い気が合い、ミカンがぽっぽに乗せてもらったり、マールが手裏剣の投げ方を教わったりでとても仲が良い。

 また、ミカンがイメージガールをやり始めてから、マールが茶熊学園に通うことになり、それから数か月連絡は文通だけになっていたのだが、こうして会えたのは偶然の産物のであるが二人にとってはとてもうれしいものだった。

 

 そうやって二人で再会を喜んでいる間にアヤメがガレアにコーヒーをだしに行く。腕枕で寝ていたガレアはそれに気づき、アヤメに軽く礼を言うと黙々とコーヒーを堪能していた。目を細めて味わっているようで何も言ってないがおいしいのだろう。

 

 ミカンとの再会を喜びながら、マールはアヤメに気づき質問をする。

 

 「アヤメちゃん、だよね?初めまして!カモメちゃんにお世話になってるマールだよ!よろしく!」

 

 アヤメのことはよくお世話になっている上官で頼りになるのであります、とカモメによく言われており飛行島で見かけてはいたのだが話す機会がなかったまま、今に至る。

 

 「これはご丁寧にありがとうございます。アヤメと申します。今後ともよろしくお願いします」

 

 マールの挨拶に笑顔と礼で返すアヤメ。もちろん、この場合での礼は頭を下げるほうの礼だ。アヤメがカモメの学校でのことについてマールに聞き始める。学校ではうまくやれているのか、だとか、成績はどうなのか、などなどである。もちろん、カモメからも報告書は届いてはいるのだが、やはり友達関係などの情報が一番聞きたいのだそうだ。

 一方でこの風景を見続けているリンゴはというと…

 

 「む…あの黒い服の戦士…なかなか強そう…私に匹敵するか…?シャクリ…」

 

 と、ガレアを見ながら謎の対抗心を燃やしていた。もちろんガレアも気づいてはいたが、特に何もなさそうなのでコーヒーとマールが頼んでくれたサンドイッチを堪能していた。

 そんな感じでガヤガヤと一部は黙々と時間がたち、客もそろそろ増えそうな時間なのでマールとガレアもお暇させていただくことにした。

 

 「今日は来てくれてメルシーでござるよ、2人とも!また来てほしいでござる!」

 

 フランが2人に感謝を述べる。マールの方は両手を左右に振りながら、

 

 「こちらこそだよー。ミカンちゃんとも話せたしアヤメちゃんともおしゃべりできたしとっても楽しかったよぉ」

 

 といい、ガレアはいつものクールな様子で

 

 「コーヒー、うまかったぞ。サンドイッチもなかなかだった。また機会があればくる」

 

 と、お店の味が気に入ったようであった。

 2人は勘定を済ませ、手を振りながら出口から出ていった。フランは頭を下げながら、

 

 「メルシーでござるよー!」

 

 と、言う。その数秒後にはふたたびバイクの重低音が響き、だんだんとそれが遠くなっていったのだった。

 

 そうして、午後の営業が始まり再びフランカフェも忙しくなる。常連客も来はじめ、満席一歩手前位まで人が来た。表でオーダーを取るのはフランとミカンだが、人員が足りなければフランが分身をするため、人手に困ることはない。さすが忍者といったとこだろう。

 いつものボーンソルジャーの人は今日はおらず、代わりに大きな鬼と、Tシャツにジーパンをはいた普通の人が飲みに来ていた。Tシャツには大きく「3&PEACE」と書かれている。2人(?)はとてもよさそうに話しており、武器スター?やらガチャ?やら、よくはわからないがとても楽しそうに話している。すでに彼らの頼んだコーヒーは数十杯となっているが大丈夫なのだろうか…。

 

 それからさらに時間がたって夜。無事営業も終わり、男の忍者はいつも通り別のところに帰宅する。女性陣はロッカールームで着替えてから再び上へ戻る。そういえば彼らは昼食をどうしているのかというと、人が少ない時間帯にフランが分身し、アヤメとミカンとリンゴがサンドイッチなどの軽食を食べ、その後フランが食べるという形式で解決した。便利です、分身。

 夜も朝と同様、全員でご飯を作り、マールとガレアが来たことについていろいろ話す。もっともリンゴはガレアのことが気になっていたようであったが、それはまた別のお話。

 

 そして各自部屋に入り就寝…というわけではなく、やはりアヤメ以外の忍者組が情報収集に勤しむため忍び装束に着替え屋上に集まる。彼らの得られた情報はこの1か月でずっと調べていたのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 普通の町は、基本的に商人があくどい事をしたりするのがわかったりするので成果0はまずありえないはずだ。なのにこの町ではわかっていること以上の情報がない。そこに彼らは違和感を覚えていた。ミカンが今までやってきたことにより忍ぶことを多少改善されたのか、小声で話す。

 

 「変だねー?私でも何かわかるのに、お姉ちゃんがいてもわからないなんてねー」

 

 「そうでござるな…もう少しこの町を深く探ってみる必要があるでござるね…」

 

 フランが返す。リンゴはそこで少し気になったことを言う。もちろん片手のりんごは手放さない。

 

 「そういえば、この町に来ている魔物は魔物の居住スペースで寝泊まりしているはず…まだそこには手を付けていないよな?…シャクリ…」

 

 この町は魔物と人が共存する珍しい街だが、それでも壁が存在する。それが居住スペースの別離だ。基本的に無害といえど、それでも怖く感じる人がいるためにこの形をとっている。

 フランとミカンもまだそこには手を付けておらず、リンゴの一言により方針が決まった。

 

 「では我がスール達よ。いつも通りの時間に戻るでござるよ!」

 

 「うん!」「了解だ…シャクリ…」

 

 全員一斉に消える。

 夜は更けていく…忍者たちの調査の成果が出るのはまだ先のようだ…。

 

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