フランカフェの日常   作:杉崎 三泥

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参の巻 「きゅっきゅっきゅ~」

 「ボンジュール!いらっしゃいませでござるー!」

 

 『メイドカフェの島』。たくさんの喫茶店があちらこちらに乱立する島。数ある店があるためその競争率もなかなかであるにも関わらず、最近オープンし、有名になっている店がある。従業員たちはそれを知らずに今日も働いている。その店とは…。

 喫茶店「フランカフェ」。それが店の名前である。

 

 

 魔物達の居住スペースの調査から半月が過ぎた。調査してみれば、思った以上にこの町に不思議が多いことがわかった。

 まずこの島全体に影響しているルーンの存在だ。名前を「平和のルーン」という。影響範囲はこれいじょ広げられないらしく、効果は絶大だ。ルーンの影響下では争い事一切が起こらないように()()()意識が切り替えられるらしい。もちろん、お互いがじゃれあいの類であったり、友情的なものであったり勝負事であったりするものは例外のようだ。

 ただこの影響を唯一無視するのが、『闇』の存在らしい。どうも闇の魔物だけはその影響を無視し人に襲い掛かってくる。もちろんそれを倒すのは平和のためという扱いらしく、戦いは行える。

 このルーンのできた経緯などはまだ分からないが、これから調べることは決まった。このルーンの場所、また、それを管理する人だ…いったい誰なのか。

 

 そんな調査の進歩もさることながらフランカフェも絶好調の売れ行きである。

 まだ強豪とは言えないものの中堅といえるくらいはできる店として有名になり、昼から夕方にかけては席が埋まっているくらいだ。夜の調査も昼のお仕事があるため、二日に一回のペースにすることにした。

 そこまで店を有名にしなければいいのでは?と思うかもしれないが、なにぶん彼らは努力家でもあるため、手は抜けない。それにお客さんが喜んでいるのを見て喜ぶのも彼らであれば当然だろう。

 アヤメに関してはお客に紅茶を出して、それを飲んだお客さんが喜んでいるのを見ているのは紅茶を飲んでる時並みに至福の時間らしい。徹底した紅茶愛である。

 

 常連客も増えた。前回までに出てきた3人に加え、お父さんのような温かい包容力のあるマグマジンが来ていた。もちろん、いつもの状態では店が燃えてしまう…というか町が火事になってしまうため、マグマジンが一時的に人の姿になれる「ルーンヒューマン」なる、ネックレスのような道具のおかげで体温が多少高い人になることができる。もちろん、普通の人のように生活はできるし、いつでも元に戻ることができる。識別は簡単で使うときは必ずその道具を首に下げる必要があるので、それでわかる。

 普段は仕事が忙しいらしく、マグマジンの人も毎日来れるわけではないが、たまに来れる日には楽しく過ごしている。

 来れない日には通信機のようなもので彼らと話すことがあるらしい。その通信機のようなものは何かというと、なぜか男の忍者の人が厨房から出てきてルーンの力で動くラジオを持ってきてくれる。チャンネルを変えればヴィヴィのラジオも聴けるがこのラジオは特殊でマイクもついており遠距離の人と話せるようになっているらしい。

 

 そういった感じで変わらず、フランカフェは今日も営業していた。

 

 昼頃、近くでイベントがあるらしく珍しく客が少なく、フランカフェの面々はゆったりと食事をみんなでとっていた。

 フランは洋ナシのタルト、ミカンはサンドイッチにフルーツを挟んだもの、リンゴはリンゴパイ、アヤメはクラッカーと紅茶をいただいていた。もぐもぐとサンドイッチをたべ、飲み込んでからミカンがしゃべる。

 

 「いやぁ、みんなでおひるごはんなんて最初のころを思い出すね!」

 

 「そうでござるなぁ、今では満席がちょくちょく見れるくらいでござるから、セッシャだけおひるごはんがボッチでござるよ…」

 

 タルトを食べながらしょんぼりとうなだれるフラン。ミカンやリンゴはまだ技能が発達しておらず、分身の術まではこなせないからである。

 ミカンとリンゴがしょんぼりする姉に謝る。

 

 「ごめんねーお姉ちゃん。でももっと頑張ってすぐ使えるようにするから待っててね!」

 

 「そう、気を落とすな姉よ…ワタシも今はまだだが、すぐにすべての忍術が使えるようになるぞ…なんてったってワタシは天才だからな…シャクリ…」

 

 頑張ろうという意思表示に握りこぶしを上にあげ、頑張るぞー!、とまでいうミカンと、リンゴパイを食べている時までなぜかりんごを手に持って食べているリンゴが慰める。

 

 「二人ともありがとうでござるよー。でも無理はしないでほしいでござるからね?ゆっくり頑張るでござるよー」

 

 二人の気遣いに感謝するフラン。この3人は本当に家族思いなのだ。

 アヤメも紅茶のおいしさに夢見心地になっていたが、

 

 「でも、そうですね。人員が少し足りない気がしましたね。厨房は忍者さんがしっかりとこなしてくれるのですが、交代要員いないのは問題として少し難がありますね。」

 

 と、冷静に分析していた。休憩時間が間にないため、何か手を考える必要があるともともとアヤメ自身も考えていたからだ。

 カフェという仕事上、一日中開ける必要はないが朝から夕方までは開けるべきだろう。なので途中の時間帯でしめるとしても昼前がベストだが、昼食を食う時間帯としては好ましくない。

 全員で、うーん、と悩むが答えが思いつかないので、フラン曰く、

 

 「じゃあ、明日までにいろいろ案を考えてまた改めて話しあうでござる」

 

 ということでこの話は終わった。

 

 昼食も終わって、イベントも終わったのだろう、再び人がきはじめガヤガヤとにぎやかになり始める。なんのイベントだったのか気になったミカンが女性客に聞いてみると、

 

 「星たぬき達によるふれあいイベントよ。最初に星たぬき達がダンスを踊って残った時間で星たぬきとのふれあい時間になるの。まぁ、4:1くらいでほとんどふれあい時間だったんだけどね」

 

 幸せな顔をしながら思い出す女性客。マスコット的存在の星たぬきならではの人気だろう。土偶の踊りならここまで人気はないだろう。

 さて、星たぬきのイベント。そんなイベントがあれば絶対に反応するあの人がいた。星たぬきのグッズを全種揃え、星たぬきを集める合図も覚え、星たぬきに似た専用パーカーまで特注したりなど、星たぬきに愛を注ぐ少女…そう。

 

 「キュッキュキュー!キュッキュキュー!キュー!ポンです!」

 

 元気に入ってきたのは青いローブをまとった少女、ポンだった。彼女がこういったイベントを逃すことはまずない。

 

 「いらっしゃいませでござるー!ポン殿元気でござったカー?」

 

 「はい!飛行島の星たぬき達もすごくかわいいですが、今日はイベントの星たぬき達に会いに降りてきました!あのもふもふ感が素晴らしいのですよぉ…」

 

 にへら~っと相好を崩すポン。とてもうれしそうだ。

 この島自体魔物と人間の共存がテーマなので、それは星たぬきも例外ではなく、そのために今までポンが体験したことのないイベントが行えたのだ。ポンにとっては最高であろう。回想に浸っていたポンはハッとして首を振り、

 

 「それでこの島に来たのですが、フランさんがここでお仕事をしてらっしゃると聞いていたので来てみました!秘密基地の時のお礼ができてませんでしたし…」

 

 「そんなのいいでござるよ~、セッシャも面白かったでござるし!」

 

 笑顔で手を振り、気にしないでいいでござる、と言うフラン。

 

 ポンは飛行島で秘密基地なるものを大工たぬきと仲良く一緒に作っていたのだが、大工たぬきが彼の生き別れの母親が見つけ、心配だから飛行島を離れ、自分も母親と一緒に暮らすのだという話があった。もちろんポンは大工たぬきと離れるのを嫌がったが、大工たぬきやアイリス達との会話により、またいつか会うことを約束することで別れた。

 しかし、急なことだったために秘密基地は完成しておらず、それでもポンは一人で頑張ったのだがなかなか難しかった。そこに通りかかったフランが一緒に手伝ってくれたおかげで、無事完成した。

 そういった経緯もあって、ポンとフランは友達であった。

 

 「そうですか…あ、じゃあこんなのはどうですか?」

 

 肩を落としたポンだったが、何かを思い出したのか、ローブの下から何かを取り出す。それは…

 

 「ジャーン!星たぬきのぬいぐるみですよー!他にもありますがこれが一番人気かなと思って!どうぞ!」

 

 そういって、手渡したのは赤色の星たぬきのぬいぐるみだった。サイズはちょうど腕の中に納まるくらいのサイズでもふもふなのが見てわかるほどのもふもふ感だった。

 

 「おお!かわいいでござるなぁ…癒されるでござるなぁ…」

 

 フランも笑顔でぬいぐるみを抱く。よほど気持ち良いのだろう、幸せそうな雰囲気が店に広がる。フランは、ほかの人の分もほしいのでござるがよいでござるか?と聞くとポンも、タヌキストが増えるならぜひ!と喜んでプレゼントしてくれた。

 タヌキストとはもちろん星たぬき愛好家のことを言う。

 

 その様子を見ていたリンゴが、

 

 「飛行島にいたときも気になっていたのだが、なぜ、いつもそのローブをつけているのだ?気にいってるとはいえ、四六時中つけている気がするぞ」

 

 「リンゴさんもこんにちはです!それはですね…実はこのローブでいる時間が増えてしまい、逆にこのローブを着ないと恥ずかしくなるんです…」

 

 変なことだとわかっているのだろう、苦笑いしながらもこたえるポン。さらに気になっていたことを聞くリンゴ曰く、

 

 「別にその下には服を着ているのだろう?だったら大丈夫なのではないか?」

 

 「そうなんですけど…なんででしょう?」

 

 「いや、天才の私でもさすがにわからないぞ…シャクリ…」

 

 あきれながらもいつも通りりんごを食べるリンゴ。

 

 ひとまず、フランが席に案内し数分後、ポンの注文をミカンがとりに行く。

 

 「はーい!ご注文をどうぞー!」

 

 「この『星たぬきカレー』で!」

 

 目をキラキラさせながら注文するポン。まるで新しいおもちゃを与えられた子供のごとく目を輝かせていた。とはいっても、同じ部類のミカンゆえにいつも通り注文を受ける。

 

 「『星たぬきカレー』が1つだね!飲み物はどうするのー?」

 

 「水だけで大丈夫です!」

 

 「わかりましたー!少々お待ちくださーい!」

 

 なお、ここに至るまでのミカンの接客はいつも通りで純真な元気さがそれはそれで人気となっている。丁寧ではないが元気なミカンのキャラが受けているらしい。

 アヤメは品のよさと静かさで人気となり、カウンター席のほうでおじいさんやおばあさんのいい話し相手となっている。もちろんアヤメの大好きな紅茶を一緒に飲みながら。

 

 その後も、フランがしゃべりたいゆえに分身の術で接客しながらポンと話し、気づけば夕暮れになっていた。時間もいいころ合いだったので、

 

 「シショーとアイリス殿とキャトラ殿にもよろしくお伝えくださいでござるー!」

 

 といって、店を出て飛行島に向かうポンに手を振りながらお別れした。

 もちろん、もらった星たぬきはミカンとリンゴとアヤメの各々に渡すことにした。そして、お店の営業時間が終わり、全員が星たぬきを自分の部屋に持って行ってこの日だけは、みんなタヌキストとなった…。

 

 なお、星たぬきのぬいぐるみのもふもふによりこの日だけは忍者の調査はなかったとか、なんとか。

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