フランカフェの日常   作:杉崎 三泥

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肆の巻 「ざっざ~ん!」

 「ボンジュール!いらっしゃいませでござるー!」

 

 『メイドカフェの島』。たくさんの喫茶店があちらこちらに乱立する島。その中でも、表では喫茶店として営業しながら成功をおさめ、人気急上昇中。裏では従業員が忍者として島を調査するお店があった。その店とは…。

 喫茶店「フランカフェ」。それが店の名前である。

 

 

 島の謎であるルーンの存在が判明してから10日が経過した。調査も前回で大幅に進んでのだが、ここからがどうもうまく進まなかった。

 まず、このルーンの存在はわかっても場所がわからないため探す必要がある。だが、管理者も何もかもが隠されているためにそこから調べなければいけない。

 だが、この島の住人がそれを気にすることがないために情報が少なく足がかりがつかめないのだ。

 悲しいことにフラン率いる忍者一同は完全に手詰まりとなっていた。

 

 昼の営業は夜の調査が右肩下がりに対し、真逆であった。営業はいつも通り盛況で、順調に売れている。売上金はどうなるのかというと、純利益の約8割が営業をしている5人で分けられ、残り2割が里に寄付される。店を建てた分のお金はほとんどこれで返し終わっているため、売れ行きとしては上々であった。

 

 常連客の皆さんは特にコーヒーを一般客の何倍も頼んでおり、お金がさすがにそろそろ心配であった。骨の折れていたボーンソルジャーの方は骨が茶色になるまで飲んでいるし、鬼の人はというと、

 

 「ユッカ…かわいいよ、ユッカ…」

 

 とブツブツつぶやいていた。ボーンソルジャーの人とちゃんと話していたので、意識はしっかりしているみたいだが、大丈夫だろうか。

 大事なことなので一応ですが、変な薬は入っておりません。シュガーポットには砂糖しか入っておりません。決して危ないものは入っておりません、はい。

 そういった、いつものメンバーに加え、2人から師匠と呼ばれる蜂のモンスターもいた。こちらのコーヒーの量は2人のたくさんのコーヒーを合わせても届かない量であった。売上的にうれしいことではあるが、彼の財布は…。

 

 

 今回はそういった昼のお店のお話から離れ、夜の調査のお話。

 

 営業が終わり、アヤメが就寝したころ。いつもの3人の忍者がお店の屋上に輪になって集まる。もちろん、全員、それぞれのしのび装束を着ている。

 

 「なかなか進まないね~、だれかルーンの場所知ってる人いないかな~?」

 

 と、調査の進展の行き詰まりを指摘するミカン。

 

 「それがいないから、今こうして詰まっているのだろう…シャクリ…」

 

 それに対し、冷静に返すのはリンゴ。いつも通りりんごを食べながらの発言だ。ちなみに彼女はりんごを食べないと精神的に老人と化してしまうため、常にりんごを食べている。くいすぎではないか、とアヤメに心配されたこともあったが、昼飯や、夕食も食べれているので本当に大丈夫なのだろう。

 2人がうーんと悩んでいる間に、フランは一つ提案を考えていた。その提案を口に出す。

 

 「我が姉妹(スール)達よ、一度森に行ってみないでござるか?」

 

 この島は、他と違う点が様々あるが、それでも森や山などはもちろんある。

 フランたちは今まで居住区域の調査を続けてきたが、そこに限界が生まれたためフランは一度視点を変えるためにも、この島で調査をしていないところを調査することを考えていた。

 

 もちろん、悩んでいた2人も案は浮かばないため、これに賛成した。

 また、森では何が起こるかわからないため、3人で行動することにした。大半の魔物は基本的には有効だが、闇によって凶暴化されている魔物はそれに含まれないからだ。それぞれが秀でた能力を持っているとはいえ、単独行動は危うい。

 

 3人は町はずれにある森に向かうことにした。忍者の能力を駆使して走ること約5分。

 森はオバケでも出そうな感じでおどろおどろしかった。ミカンとフランは兵器層であったが、リンゴだけが顔を真っ青にしていた。持っている食べ物とは全く色の違う顔になりながらリンゴは言う。

 

 「わ、私は山の方の調査にい、い、いこうではないか」

 

 もちろん単独行動は危ないのでフランが諭す。

 

 「リンゴ、先ほども言ったでござるが、一人は危ないでござる。セッシャたちと一緒に行動した方が安全でござるよ?」

 

 真剣に心配しているフランの言葉にノーとは言えず、震えながらも、

 

 「わ、わかった」

 

 と返すリンゴ。その眼は涙目になっているし、足も震えているがフランとミカンは微笑むばかりで気づいていなかった。

 

 そんなことを森の入り口でやって、森の中に入っていく。

 案の定、森の中には闇によって凶暴化した魔物がいて、戦闘となった。中にはカメレオン系もいたため、敵が急にあらわれたことでリンゴが失神することが何回かあった。

 幸いにして、全員怪我もなく森の開けたところまでは悠々と進んだ。リンゴは最後までフランの腕にしがみつきながら怖がっており、後々トラウマにならないことを祈るばかりであった。なぜ、トラウマの心配をしているかというと、うわ言のように、

 

 「モリコワイ…モリコワイ…モリコワイ…モリコワイ…モリコワイ…」

 

 と、白目をむきながら言っているからだ。特に森の中で霊が現れたとかのイベントがあったわけではないのだが、ふとした拍子で転んだ時に普段なら平気な虫が目の前にいたせいらしい。霊が横ぎったとか勘違いして、その瞬間から気絶していた。もちろん、フランが気つけをしておこしました。

 

 そういったこともあって、現在森のひらけた最奥部。広さは歩ける場所が学校の教室2つ分ほどに、湖がある。特に変わった形跡はないが、ここだけ魔物がいないことに忍者一同は違和感を感じた。

 3人で手分けして辺りを調べることにした。リンゴが中心部分、ミカンが周辺部分、フランが湖の担当に分かれた。

 10分ほど調べてみたが誰一人として特に何も見つからなかった。何かしら隠し階段とかが見つかるかと思っていたので、全員がしょんぼりとしている。気を取り直すようにフランが話し始める。

 

 「まぁ、成果はなかったでござるが、まだ山のほうがあるでござる。リンゴも山のほうなら大丈夫でござるよね?」

 

 「もちろん、大丈夫だ…」

 

 足を震わせ、リンゴを食べることを忘れながら返答するリンゴ。

 フランとミカンはそれを横目で見ながらも、ミカンがフランに質問する。

 

 「でもお姉ちゃん、あの湖はほんとに何もないの?」

 

 「そうでござるねぇ、湖周辺はしっかり調べたでござるが何か細工があるようでもなかったでござるよ」

 

 指で円を描いて首を横に振りながら残念がるフラン。

 

 「そっかー。一番怪しいとすればあれなんだけどねー…」

 

 そういってミカンが湖のほうに近づく。

 

 「落ちないように気を付けるでござるよー」

 

 「わかってるよー…あ!」

 

 ミカンが返事をして湖の近くでしゃがみこみ、調べようと体を前に倒したところでミカンの胸元から蜜柑が湖に落ちてしまった。

 

 「あー私の蜜柑がー!」

 

 「まぁ、仕方ないでござるよ」

 

 もったいないことをした、と落ちた蜜柑の行方を悲しそうに見続けるミカンをさとすフラン。

 と、その時。湖の中心から急に泡が出だしたではないか!

 

 「うわわ!なんだなんだー!?」

 

 ミカンがそれを見て驚く。

 その間にも泡の勢いはまし、ついに中心にうっすらと影が見え…

 

 「ざっざーん!!」

 

 桃色のふんわりとした長い髪をそのままおろし、まるで天女のような服装の女性が現れた。その名も…

 

 「湖の妖精、ディーネですわ」

 

 突然現れた女性ディーネに対して、忍者の反応はというと…リンゴだけ再び失神していた。他2名は、

 

 「おーディーネ殿!お久しぶりでござる!キャドゥーをどうぞでござる!」

 

 「うわー綺麗だね!ディーネさん!そういえば、ミカンの蜜柑が落ちたんだけどしらないかな?」

 

 といった様子であった。この時、2人ともリンゴのことは既に忘れていた。

 ディーネは先ほど落ちた蜜柑がミカンのものだと聞いたので、

 

 「そうですか、この蜜柑はあなたのものですか」

 

 「あ、それそれ!拾ってくれたんだ!ありがとー!」

 

 「いえいえ、ミカンさんは正直者ですね。お返ししましょう」

 

 そういって持っていた蜜柑をミカンに手渡すディーネ。

 

 「正直者なミカンさんにはこの『金の蜜柑』と『銀の蜜柑』も差し上げましょう」

 

 と、どこからともなく取り出した、金色に輝く蜜柑と銀色に輝く蜜柑もディーネはミカンに手渡した。それに対してミカンは困惑するものの、

 

 「え?いいの?」

 

 「はい、どうぞ」

 

 「ありがとう、ディーネさん!後で大切に食べるね!」

 

 と、普通にもらった。

 なお、湖の水はきれいで澄んでいて、まだ皮のついてる蜜柑だったため、あとでおいしくミカンがお食べになりました。

 そして、今まで寝ていたと思われていたリンゴが目を覚ました。今までの話を聞いていたのでりんごを湖に投げ入れようと、甲子園ピッチャーさながらの投球フォームを取ったところでディーネが、

 

 「不法投棄は許しません!」

 

 と、湖の水を水鉄砲にしてリンゴにあてた。高圧力だったために、リンゴは再び地面に倒れた。もちろん、りんごは手放さずに。

 それが終わると、フランがディーネに聞く。

 

 「ディーネ殿、このあたりに不審な人影とかはなかったでござるか?」

 

 「いえ、私の湖には少なくとも不法投棄はなかったですわよ?」

 

 「そうでござるか!ご協力ありがとうでござる!」

 

 丁寧に頭を下げるフラン。

 

 「いえいえ、では、私はこれで失礼しますわ。不法投棄はしてはいけませんわよ」

 

 といいながら、ディーネは手を振りながら湖に沈んでいった。

 

 「またねー!ディーネさーん!」

 

 ミカンもそういって沈むディーネに最後まで手を振っていた。

 もちろん、リンゴは失神したままだった。

 

 

 ディーネとの別れを済ませたフランとミカンは倒れているリンゴを担ぎ上げながら店に戻った。今回のリンゴは完全にお荷物だったため、夜寝るときに目を覚ましたころにはすっかりいじけていたという。曰く、

 

 「だめだめだぁ~…私はだめだめだぁ~…うう~…シャクリ…」

 

 といった感じだったとかなんとか。

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