フランカフェの日常   作:杉崎 三泥

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陸の巻 「にょろっとしてるよ~ん」

 「ボンジュール!いらっしゃいませでござるー!」

 

 『メイドカフェの島』。たくさんの喫茶店があちらこちらに乱立する島。それはさておき、この前置きが早くも6話になってネタ切れで次から何書けばいいか、筆者が困ってる小説の題材となっている島があった。その店の名前とは…。

 喫茶店「フランカフェ」。それが店の名前である。

 

 

 時は夜、フランカフェ屋上にて忍者組が集まってのこと。

 

 「いやだぁ!もうあの森は嫌だぁ~~~~!!」

 

 叫んで屋上をごろごろと転げまわっているのはいつもはクールで通っているはずのリンゴ。なぜ彼女がこんなにも嫌がっているかというと…。

 

 「仕方ないでござるよ、リンゴ。セッシャ達は山に調査に向かわねばいけないのでござるから、その()()()()()()は通らなければいけないでござる」

 

 そう、前回森に行った時、リンゴは大変なトラウマを抱えたのでしばらくは調査がおやすみになっていた。なので、今日から調査を再開ということになったのだが、森と同様調査していない山が、森を経由するところに位置していたのだ。

 前回通った時よりは木が少なく明るい道で森を通る時間もそんなにないのだが、リンゴはそれを聞いても完全に渋っていた。

 

 「リンゴ!私たちもいるし大丈夫だよ!」

 

 「ミカンのその根拠のない自信はどこからくるのだ…ウウッ…シャクリ…」

 

 ミカンが胸の前で両手を握りしめて励ますが、叫ぶのをやめたリンゴはりんごを食べながら皮肉を返し、体育座りとなって顔を伏せてしまう。

 皮肉を言われてもよくわかってない感じで、褒められたと思い、どや顔をしているミカンをしり目に、フランがリンゴの近くまで行き背中を軽くたたきながら励ます。

 

 「リンゴ、前回よりは明るいでござるし、大丈夫でござるよ。山に一直線で進めば、特に暗いところは通らないでござるし」

 

 「うう…わかった、姉上…」

 

 わずかに期待していた『留守番』という選択肢がないことを察したリンゴはしぶしぶと腰を上げる。

 こうして、忍者3人は再び森へと入っていった…。

 

 

 そして、現在。

 

 「オーララー…迷ったでござるねぇ」

 

 「なんでだろうね?ちゃんと山が見えてる方向に進んでたんだけどね?」

 

 「…………………」

 

 リンゴはすでに気絶しているため、ミカンに背負われている。

 

 なぜ、こうなっているかというと、話は戻る。

 フランが山から森までの距離的な感覚だけなら、フランカフェの屋上で見たときに10分走れば山につくと思っていた。しかし、今こうして迷ってから1時間以上は森の中にいる。

 途中、町に戻れるかミカンが試してくれたところ、そちらは問題ないらしい。ものの1分で帰ってきた。ということは、近寄れないように何か細工がしてあるのだろうということは容易に想像ができた。

 しかし、道を適当に進んでも意味がないということがこの1時間で思い知らされたのであった。もちろん、対策も何もないので戻るしかない。

 

 こうして、山への調査1回目は失敗に終わったのだった。

 

 ちなみに、リンゴが起きていたのは森に入ってから15分ほどで、いきなり出てきたコウモリで驚いて今に至る。途中暗いところに入るときもあったため、こればっかりは仕方のないことだろう、とフランもミカンも温かい目でリンゴを見ていた。

 もちろん、この後寝るときにリンゴはたいそう自分で自分を責めていたそうだ。そして、2度目となる3人で一緒におやすみすることとなった。

 

 

 翌日、いつも通り朝食を終え、全員でメイド服に着替えているときのこと。

 忍者3名が着替え終わった中、アヤメが「また…」とか言いながら服に着替えるのに手間取っているのを恨めしく見つつ、リンゴが他2名に話しかける。

 

 「それで、どうする?あの結界のようなものの通り方が分からないと、調査ができないぞ…シャクリ…」

 

 「そうでござるねぇ、またこの町で調査するしかないでござるが、そんな情報が出るかどうか…」

 

 「ミカン達、もうほとんど町の全部に行ったもんね~…」

 

 う~ん、と唸る一同。

 

 「よし、入った。また今度胸の部分を仕立て直してもらうように申請を出しておかないと…あれ?皆さん、そろって難しい顔をしてどうしたんですか?」

 

 ようやく、服に着替えられたアヤメが出入り口の前で悩んでいる3人に質問する。リンゴだけは胸の部分を特に睨んでいた。

 

 「いや、実は、でござるね…」

 

 フランが代表して、調査で山に向かえなかったことを話す。

 もちろん、この調査のことはアヤメにもお店の初日の時に話してある。町の住人の情報のほとんどは、アヤメが営業の時に老人たちに聞いたことだ。

 

 「そうでしたか…そうですねぇ、今までに若者が数名山に向かっていったそうですが、みんな口をそろえて『山に近づけない』と話していたそうです。それを気にする人は住人にはほとんどおらず、近づけないなら行かなくていい、という感じになったんだそうです」

 

 老人たちでも行く方法は知らないらしい。

 

 「そうでござるかぁ、困ったものでござるねぇ…」

 

 それを聞き、フランもかわいらしく眉を八の字にする。

 

 フランたちの調査はここにきてストップしてしまった、ということだった。

 

 

 ひとまずは何らかの情報が得られるまで町のほうで頑張ろうということとなり、いつもの通り、一同は昼の営業に精を出すことにした。

 今日来ている常連組は、鬼の人と最近新しく見かけるようになった執事のような人だった。

 燕尾服といわれる特徴的な服を着ているのだが、彼の一番の特徴は彼の胸ポケットに入った懐中時計を約5分ごとに見るということだ。手元では何かをしているのだが、フラン達も仕事があるためじっくりとは見れないし、見ているのも失礼だと思ってスルーしている。長方形の薄い物体のようなのだが…。

 また、たまに4分で懐中時計を見て

 

 「時短成功!」

 

 と、いきなりしゃべりだす時があったりするのだが、彼もコーヒー中毒なのだろうか。隣の鬼の人みたいに『ユッカLOVE』と書かれた服を着だすのか、心配である。

 もちろん、この時、両者ともにコーヒーを飲んでおり、8杯目に突入していた。

 

 

 そして、いつもの客が落ち着く時間帯になってきたころ。

 腰のところに白い蛇を引き連れ。下は白のズボン、上はその鍛えられた腹筋を出し惜しみせず、首に絡むような帯の模様の服に、右手は赤、左は白の豪奢な手袋をした、長い白髪の赤い目の男が入ってきた。

 

 「にょろっとしてるよ~ん」

 

 彼の名はイシュプール、もとはただの白蛇だったのだが、とある島で信仰をあつめ、結果として神様となった者である。そして、彼はいろいろな人の疑問がなぜかほぼすべてわかるという能力を持つ。

 そんな彼がどうしてここに…。元々、彼は彼の島で起こっている問題を解決するために旅をしているのだが…。

 

 「うんうん、わかってるよ。でも、さ。ひとまずは、目の前の問題から、ね」

 

 「いらっしゃいませ~でござる!どうしたでござるか、イシュプール殿?虚空に向かってうんうんとうなずいて、奇妙でござるよ?」

 

 入ってきたイシュプールをフランが対応する。何気に地の文のことを意識されているのは彼だからなのか…?

 

 「うんうん、かもしれない、けど、とりあえず、目の前の彼女に、ね。助言を…ね?」

 

 再び虚空に返事をするイシュプール。そして、それを「?」とおもいながら見るフラン。地の文への反応はいいので早く先に進んでください。

 

 「うん、フラン君。君の疑問も仕方のないこと、だけどこれは必要なことだから許して、ね?」

 

 「???分かったでござる?」

 

 完全に混乱で頭が「?」でいっぱいになっているフラン。しかし、次のイシュプールの言葉で頭が再起動する。

 

 「君の疑問は…()()()()()()、だね」

 

 「!イシュプール殿何か知ってるでござるか!?」

 

 一気に食いつくフラン。フランを除くほかのメンバーも冷静に仕事をやっているようにみえるが、アヤメは紅茶を飲む手を止め、リンゴもりんごを食べながら鋭い目つきでイシュプールを見る。

 ミカンだけは、聞いているように見えて、実は何も聞いていなかったため、普通に仕事をこなしている。

 

 「まぁ、落ち着いて。ちゃんと話すから、ね」

 

 一気にイシュプールに詰め寄るフランをイシュプールがフランの肩を軽くたたき、落ち着ける。

 

 「そ、そうでござるね。すまないでござる…それで、知っているのでござるか?」

 

 フランも落ち着きを忘れていたことを謝りつつ、先を促す。

 

 「僕も人探し、でいろいろなところをいったから、ね。この島にも、ね。2,3回来たんだよ。それで、同じように結界があったからその時に解決方法を、ね」

 

 「そうなのでござるか!ぜひ教えてほしいでござる!でもなんで…」

 

 「うん、わかってるよ。なんでそんなことが分かったのか。でも僕もこう見えて神様なんだから、ね」

 

 前述のとおりイシュプールは白蛇が信仰を得たことにより、神様となっている。と言っても人の疑問に先回りして答えられるのは、それでは説明がつかないが。

 

 あ、反応しないでください。

 

 「うん、それは後々…ね」

 

 「?イシュプール殿、そっちには何もないでござるよ?」

 

 再び虚空に向いてしゃべるイシュプール。フランも何かあるのかとそっちを見るが、壁しかなかった。

 改めてイシュプールがフランに向き直り、小声で話す。

 

 「で、行き方なんだけどね。魔物の居住区にある空家の一つに、ね?地下へ続く階段があるんだ」

 

 「あ、それなら自分もみたでござる。確か、お酒の倉庫でござるよね?」

 

 いろいろな家がある中、空家が少ないはずの魔物の居住区で特に目立たないよう普通の外観の家が空家になっていたのがフランには印象深く思え、覚えていた。

 

 「そうだね。でもあそこにはさらにもう一つ階段があるんだよね。壁のどこかに押せるところがあってね。そこを押せば地下への階段が開くのさ」

 

 「なんと!そうなんでござるか…」

 

 重要な手掛かりを得られたフラン。おそらく今日にでも山へ行くことができるだろう。そして結界があったということはそれだけ、あの山に何かあるのだろう。

 そういえば、イシュプールが行き方を知っているということは…

 

 「イシュプール殿は行ったのでござるか?山へ」

 

 「ううん。山へ行けるのを確認したらすぐに帰っちゃった。そのスイッチは長いこと押された形跡はなかったんだ。それを考えると、僕の探し人もおそらく…と思って、ね」

 

 そういって、首を振るイシュプール。ちなみに、彼の探している人は既に見つかっており、何度かあっている。

 フランも先ほどのイシュプールの情報を手元のメモに書き留めた。そしてメモをしまい、イシュプールに礼を言う。

 

 「貴重な情報、メルシーでござる、イシュプール殿!あ、何か食べていくでござるか?」

 

 「お、そうだね。何かいただこうかな」

 

 「分かったでござる!じゃあ、セッシャのおすすめを持ってくるでござるね!」

 

 厨房のほうへとフランが駆けていく。その間にアヤメが紅茶を入れ、イシュプールに出してくれた。

 そして、待つこと5分。フランが持ってきたのは…

 

 「お待たせでござる!『激辛洋ナシタルト』でござる!あまから、というやつでござるよ!」

 

 それを聞いたイシュプールは目の前の赤いタルトと対照的に顔を青くし、

 

 「クェーーーーー!!!トウガラシはやめてよーーーーん!!」

 

 といった。そう、彼は実は辛いのは苦手なのであった。

 もちろん、善意を無駄にするわけにもいかず、イシュプールはこの後紅茶を10杯おかわりして、なんとか食べきったそうだ。

 

 こうして、思わぬところから大成果を得られたのであった。

 

 

 

 

 そして、その日の夜。無事営業を終えた後、屋上にて山に行く話をすると、

 

 「え!?山へのいき方わかったの!?」

 

 と、一人、話を聞いていないミカンが驚いていた。本当に聞いていなかったのか、とフランとリンゴもあきれ顔であった。

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