女心は複雑怪奇 作:はるぴー
今日は初めて図書館の当番をやる日。ああ面倒だ。
俺はやはり、入る委員会を間違えたようだ。せっかくの昼休みと放課後が...
だが入ってしまった物はしょうがない。仕方なく俺は図書館のカウンターに座る。
ちなみにこのカウンター、椅子が一個しかない。だから未紗が来たら...
立たせよう。これは早い物勝ちなのだ。残酷だが仕方ない。
とか思っていたのだが、
10分後
まだ未紗は来ない。いつもここまで用意が遅い事はないのだが...
すると、カウンターに図書委員担当の先生がやってきた。
「あら、北条君。仕事大丈夫?」
と聞いてくる。俺は、
「もちろん大丈夫ですよ。こんなのすぐに慣れました。」
と答えた。若干高慢な答えな気がするが。
「そう、それは良かった。そういえば廣瀬さんは?」
あ、それを訊くか先生。
「まだ来ないんですよ。まあなんか事情があるんでしょうね。」
と俺は答えた。サボったかすっかり仕事を忘れたとかいう可能性も否定できないが、
そんな事を先生の前で言うわけにはいかない。これは俺の優しさ...
でもなんでもない。さっき彼女を立たせようとしたのは誰だ。
そしてその日の昼休み、結局未紗は来なかった。
「いったい何があったんだ...?」
俺は気になった。こういうのって大抵何かあるからだ。
ちなみにその日は放課後の仕事は無かった。
***
翌日
朝、教室で未紗が話しかけてきた。
「昨日から図書館の当番だったの?言ってよ。私知らなかった!」
「...」
いや、先週委員会あったばかりじゃん。あなたの記憶力どれだけ酷いの。
ちゃんと当番の紙配られたよね。
と口に出しては言えないのが俺である。
「ああごめんごめん、忘れてたよ。けど、当番表くらいはちゃんと確認して。」
忘れてたのはどっちだ。
そして昼休み。俺はそうそうに給食を食べ終え図書館へ向かおうとする、だが...
「待ってよ。」
またも止められる。ちなみに彼女はまだ給食を食べていた。
「じゃあ早く給食食ってよ...」
もう嫌だ。なんか俺都合の良い道具になってない?
「どうして俺はこんな目にあわなきゃいけないんだ...。」
図書館で、俺はそう呟いた。なぜそんなことを言ったかって?それはだな...
本の貸し出しとかの手続きをするんだが...
一言でいうと面倒だ。何故かって?
まず本の貸し出しをする人はそう多くない。
昼休みはまだしも、放課後利用する生徒は少ないし、
一般の人も来るには来るがそう多くはない。
だから本来はのんびりできるはずである。実際、俺は借りるor返す人が少ない時、
ぐーたらと過ごす予定であった。しかしである。
現実はそうは上手くいかない。俺は、本棚の本を整理するという重労働をさせられていた。何故かって?
それはだね、俺がのんびり椅子に座って寝ようとした時、
委員長さんが偶然やって来た。そしてこう言ったんだよ。
「そんな暇だったら書架の(要は本棚の)整理でもしたら?」
その時、俺の休息は終わった。そんな事やりたくはないけど断りようがない。
言ってる事は向こうが正しいんだから。
なのでしぶしぶ仕事してるんだが...
「理不尽だ...」
何故かである。俺だけ咎められ隣の未紗は無罪放免だった。それを追及すると。
「だって未紗はちゃんと仕事やってたじゃん。」
いやそうだ、傍目から見たら、俺はぐーたらしていて、
未紗はまじめに貸し出し作業やっていたように見えただろう。けれど真実は違う。
俺は、「仕事をやらせてあげた」だけなのだ。決してサボろうとしたわけじゃない。
(さぼりたかったが。)
それは30分ほど前の事。それまで貸し出しや返却の手続きは俺がずっとやっていた。
といってもバーコードを読み込むだけなのだが。
すると突然、未紗が話しかけてきたのである。
「ねえ、私にもやらせてよ。」
は?俺は理解できなかった。
こんな、ただ淡々とバーコードを読み込むだけの作業、何故やりたいんだ?
まあやらせてと言われたので仕方なくやらせたんだが...
「あれ、出来ない!」
酷い有様だった。何回やってもバーコードが読み込めないのだ。
要は下手だった。コンビニのレジ打ちとかやった人ならわかると思うが、あれは
適切な角度でやらないと反応しない。それが、未紗はできていなかった。
なのに、見かねた俺が、
「出来ないんだったら代わろうか?」
と言ったのに、
「やだ、私がやる!」
と言ってきかない。なぜこんなくだらない物に意地を張るんだ。それが理解できない。
そして1分後...
ようやく読み込めたようだ。
「できた!ようやくうまくいった!」
なんかすごい喜んでる。それくらいのことではしゃいでどうする...
と思ったので、
「そんな事で喜んでどうするの?俺一発で成功させたけど?」
と皮肉を言ってみた。しかし...
「うるさい!」
バシン
...叩かれた。どうして俺が叩かれなきゃいけないんだ...
「痛い、何も叩くことはないでしょ。僕は本当のことを言っただけだ。
だから、僕は悪くない。」
そう文句を言っても...
「うわ、なんかムカつく。人がせっかく喜んでたのに。」
と返される始末。もう一度言おう。
俺なんか悪い事した?
とまあ、その後、この小生意気な未紗に貸し借りの手続きをずっとやらせてたんだが、
その結果がこれである。
未紗は悠々と貸し出しと返却の手続きをしているのに対し、
俺は本の整理をずっと続けている。これ意外ときつい...
本棚はなにせ高いので、俺がぎりぎり届くレベルの高さから本をとったり、
逆に下にかかんだり。腰痛持ちじゃなくても腰が痛い。
そしてふとカウンターを見たとき、未紗と目があった。その時の表情が忘れられない。
なんとニヤリと笑みを浮かべてたのだ。悪魔め。これを見越して俺に...
なんてことはないだろう。けれど悲しい。
何故俺はこんなにも報われないんだ...
そして俺の重労働は、図書館が閉館する午後5時まで続いたのであった。
***
午後5時。図書館の閉館時間だ。
「ふー終わった。」
俺は大きく伸びをした。ようやくこの重労働から解放されたのだ。喜びもひとしお...
「ようやく終わった。あー疲れた。」
と未紗が言う。
「いや、バーコードピッってやっただけでしょ。なんで疲れるの。」
もう本当に嫌だ。なんでそっちがのんきに疲れたとか言ってるんだ、
俺の苦労も知らずに...
ともあれそうやってトホホとため息をつきながら、俺は帰路へつくのであった。