書きたくなったので書きました。
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次の日の放課後、やつは突然現れた。
セブンスターズのことで再び召集がかかったので校長室に十代と万丈目と三沢の三人と一緒に向かったところ、ボーイと名乗る男は校長室で大暴れしていた。トランプを投げ、服を切り裂き威嚇し、東條創という男を出せと怒鳴り散らす。
すぐに扉を閉め、俺たち三人は身を潜める。
「なんだアイツ。なんで創のこと知ってんだ?」
十代がそんな疑問を投げると、万丈目がそれに答えた。
「さあな。だが、アレだけの大口を叩くんだ。相当な実力者だろう」
確かに、と三沢は軽くうなずいた。
ただ事ではない雰囲気に気を取られていた三人だが、その中で一人……三沢があきらかに苦い顔をする俺に気がづいたのか質問を投げかけてきた。
「……どうした東條。あの男について何か心当たりが?」
「あぁ三沢。たぶん、アレは俺の知り合いだ」
俺は意を決して校長室のドアを開けた。
ボーイと名乗る男はこちらを振り向いた。やはり、面影がある。
この自信満々の態度、喋り方……間違いない。
「相変わらず自己中心的だな光雄」
「……お前」
「分からないか?」
「いや、久しぶりだな東條」
沈黙がこの場を支配した。
その緊張感に校長先生でさえも、声を出すことが出来ないでいた。
それを光雄は真っ先に壊す。
「お前のことだから、セブンスターズと戦うメンバーになったんだろ?」
「だったらどうする?」
「そうだったら話は早い。俺と勝負しろ東條。俺はセブンスターズとして雇われた。目的は良く分からないが、デュエルをして鍵を奪えと言われたがそんな事はどうでもいい。俺は、お前に、リベンジしにここへやってきた!」
「勝手に話を進めんなアホ。ま、いいぜ。どんな勝負でも俺はお前に負けることはない」
「そんな軽口を叩けるのは今の内だぞ。勝負の内容はデュエルモンスターズ。だが、デッキはコチラで用意したものを使ってもらう」
「なに?」
「安心しろ、不公平な勝負にはしない。俺とお前、まったく同じデッキで勝負だ」
ミラーマッチ。
面白いこと提案してくるじぇねぇか光雄。
いいぜ、どんな条件でも俺はお前をぶっつぶす。
光雄は懐からデッキケースを取り出し、俺に渡してくる。
エクストラデッキはなし。
とりあえずどんなデッキか確認してからだな。
「勝負は30分後。デッキ内容を確認して準備を整えてからデュエル場に来い」
「分かった」
光雄が部屋を出て行き、俺はデッキの束を広げる。
「なぁ創。なんかピリピリしてるけど、アイツと何かあんのか?」
「ごめんな十代。俺、アイツは今までの人生の中で一番嫌いな奴だから」
「何があったんだよ?」
「明日香の大事な物を奪って泣かした」
あー、とここにいる全員が同じタイミングで呟いた。
俺は気にせずカードの種類ごとにデッキのカードを整理し並べる。
「まさか再会するとは思わなかったけどなっと。これで全部か」
デッキ内容は以下の通り。
■モンスター(19枚)
キラー・スネーク
お注射天使リリー
魂を削る死霊
イグザリオン・ユニバース
異次元の女戦士×3
同族感染ウィルス
首領・ザルーグ
ならず者傭兵部隊
ブレイドナイト
魔導戦士 ブレイカー
霊滅術師 カイクウ
天空騎士パーシアス
人造人間-サイコ・ショッカー
カオス・ソルジャー -開闢の使者-
聖なる魔術師×2
ファイバーポッド
■魔法(14枚)
押収
大嵐
苦渋の選択
強引な番兵
強欲な壺
心変わり
増援
光の護封剣
抹殺の使徒
ライトニング・ボルテックス
サイクロン
スケープ・ゴート
強奪
早すぎた埋葬
■罠(7枚)
激流葬
砂塵の大竜巻
奈落の落とし穴
破壊輪
炸裂装甲×2
リビングデッドの呼び声
「一昔前のグッドスタッフだな。禁止制限も今と違う」
万丈目がそう一言言うと、続けて三沢も言葉を発した。
「今じゃ禁止カードに指定されているパワーカード満載だな。キラー・スネーク、ファイバーポット、苦渋の選択や心変わり。それに破壊輪。しかもテキストはエラッタ前のものだ。変則ルールってことは、おそらく効果処理も当時のものを使用するはずだろう」
よく見れば確かにそうだ。
光雄は詳しくルール説明をしていなかったが、おそらくわざわざ一昔前の環境デッキを用意するって事は当時のルールでデュエルするってことだろう。
「あの光雄とかいう奴も同じデッキなんだろ? となると色々警戒しなくちゃいけないこと多くねーか?」
「確かにな。十代の言った通り、例えば強欲な壺を使って聖なる魔術師を伏せるプレイング。これを安易にやってはならないのは分かる」
「さすがだな十代、万丈目。俺もそれはデッキを見た瞬間に思ってた。通ればほぼ勝ちみたいな流れだけど、抹殺の使徒、ブレイドナイト、ならず者傭兵部隊に退かされることも考えなくちゃいけない」
そういった除去の有無は相手に委ねるものではない。
より高度な囮プレイが要求される。
デッキを見たとき俺は真っ先にそう思った。
「創……この勝負、相手のリソースを予測し、自分のリソースを管理し、そしてゲームの方向性を決める能力が試されるぞ」
三沢は的確なアドバイスを始めた。
「まずは勝ち筋を知っておくべきだ。ザルーグや押収、強引な番兵などで連続ハンデスして相手の動きを縛り付けて何もさせない動きや、サイコ・ショッカーで罠を封じてカオス・ソルジャーなどの強力なアタッカーでの純粋なビートダウン狙い。または破壊輪のバーンダメージ……」
三沢の言う通り、ひと昔のガチデッキだけあって勝ち筋は無数にある。引きの差で一方的な勝負になることも予測できてしまう。
今の環境以上に1枚1枚のアドバンテージを考えてプレイすることを強要されるだろう。
カード1枚1枚の効果は強力でなおかつシンプル。だが、とても奥が深いプレイングを要求されるシンプルとは程遠いゲームだ。
やり方次第では簡単に負けてしまうだろう。
「まずはステータスの把握をしようぜ東條! 相手も同じデッキってことはモンスターのバトルは大事になってくるはずだ」
十代の言う通りだな。
デッキ構成から見て、このゲームはモンスターセットが頻繁に行われる。異次元の女戦士などの攻守のステータスを無視して除去できる手段もあるとはいえ、リバースモンスターも採用されているし、モンスターの守備力の数値を見ていくと面白いことが分かる。
「デッキの大半のモンスターの守備力は1500以下……だが、モンスターセットの可能性があるカードはリバースモンスターを除くと異次元の女戦士とキラー・スネーク、そして魂を削る死霊の3種類か。そして異次元の女戦士の守備力は1600……これを突破できるモンスターは――」
俺がモンスターに目を通して確認している最中、万丈目がすぐに答えてくれた。
「効果で突破可能な同じ異次元の女戦士とならず者傭兵部隊。戦闘だとお注射天使リリー、イグザリオン・ユニバース、カイクウ、カウンターが乗った状態のブレイカー、そして手札が1枚以下の時のブレイドナイト。あとは上級モンスターになるな」
数えるのはえーな万丈目。
確かにその通りだ。同族感染ウイルスの効果は表側じゃないと効果破壊できないし、安易に場に出して戦闘しようものなら異次元の女戦士に除外されて貴重な除去要因を失う。
となるとデッキ40枚中、これを突破できるモンスターは14枚だが……カオス・ソルジャーやサイコ・ショッカーといったゲームエンドに持っていけるモンスターは異次元の女戦士にはぶつけたくない。かつカイクウも相手のカオス・ソルジャーを出させないようにするモンスターだからこれも除くとなると、実質11枚になるな。
こう数えてみると意外と多く、モンスターの戦闘においてお互いに突破できずに膠着状態になるってことは少ないだろう。
「異次元の女戦士か……厄介だな。3枚入っているし、増援もあるからこのカードは間違いなくデュエル中に登場することになるだろう。気を付けろよ東條」
三沢が顎に手を添えてそう言ってきた。三沢の中でもデュエルのシュミレーションができているのだろう。
どんなゲームになるのか、きっとそのシチュエーションが見えている。
「分かっているよ三沢。だけど、相手が上級モンスターを出してきた時に頼りとなるのが異次元の女戦士だ。採用枚数的にこれがカード間のメタを回してくれることになるだろうさ」
すると万丈目が魔法カードや罠カードを数枚手に取った。それは心変わりやライトニング・ボルテックス、激流葬、破壊輪といったカードだった。
「だがモンスターばかりに注目してもダメだ。むしろ、デッキ的には強力な魔法と罠が詰め込まれている」
「万丈目の言う通りだぜ東條。心変わりとか強奪とか、コントロール奪取カード1枚で勝負が決まっちまうこともあるだろうし、除去カードも豊富だ。特に罠カードは警戒しねーと一気にテンポを持っていかれちまうぞ」
「そうだな十代。召喚反応系は激流葬と奈落の落とし穴。攻撃反応系は
だが、と三沢は前置きして魔導戦士ブレイカーのカードを手に取った。
「魔法と罠を破壊できるカードの中でもこの魔導戦士ブレイカーの使い方はとても大事だ」
「どういうことだ三沢?」
良く分からない、と十代は首を傾げた。
だが、俺には分かった。なぜなら、俺もデッキにはブレイカーを採用しているからな。
ブレイカーは俗に奈落チェッカーとも言われているほどに、伏せカードの確認にもってこいのモンスターだ。しかも、今回はデッキの内容がお互いに分かっている状態。なおのこと
ブレイカー召喚時の情報アドバンテージの獲得は重大な事項になる。
「いいか十代。仮に相手の場にザルーグと伏せカードが1枚あるとしよう」
「うんうん」
「ここで魔導戦士ブレイカーを召喚した場合、相手はどんな行動を取る?」
「仮にその伏せカードが奈落とかだったら発動するだろうな。発動しないとザルーグは戦闘破壊されちまう」
「その通りだ。だが、この伏せカードが奈落の落とし穴といったカードでなかった場合、召喚時には発動できない」
「そうか分かったぞ! ブレイカーの召喚が通った時点で召喚反応系のトラップでないことが分かる。ならその伏せカードは攻撃反応系の
「さすが、のみ込みが早いな十代。じゃあ、次に攻撃だ。ブレイカーでザルーグに攻撃をしかけると相手はどんな行動を取る?」
「
「あぁ、当然そうなる。だがこれはアドバンテージで言えば1対1交換。お互いに損はしていない。まぁ、このシチュエーションの場合はブレイカーのカウンターを取り除いて伏せを破壊するのが定石のプレイングだがな」
「だけど、その伏せカードがフリーチェーンのカードだったら……?」
やばい。このブレイカー1枚でとんでもなく話が膨らむ。
これ以上は魔導戦士ブレイカーの使い方講座になりかねん……!
いったんストップだ! すとーっぷ!!
「ようするに! ブレイカーの召喚でかなりの情報が得られるってことだ。今回はデッキに押収といったピーピングハンデスもあるから、それと合わせると相手の伏せカードを正解に近いレベルで絞り込めるんだよ。時間がない。そろそろ片付けて、便所済ませてデュエルコートに向かうぞ!」
さぁ、4人仲良く連れションしてスッキリさせよう。
待ってろよ光雄。昔同様、コテンパンにしてやる!
……昔同様か。俺に出来るのか? 昔ってったって、俺自身であって俺じゃない記憶と体験なのに?
ふと意識すると思い出すが、別の世界線から来たってことをすぐに忘れて過ごしちまう。この世界に来てから3年くらい経つからか、この環境が当たり前すぎて、そして自分の記憶も当たり前のように自分の経験のように感じて。こんな心配をする必要はないのかもしれないけど、この事実を思い出すと不安になる。
いや……いま、俺が感じている感情と、やろうとしていることは確固たる事実としてそこにあるんだ。
この3年という時間はゆるぎない事実として存在した! なら、俺はその時間を! 経験を! すべてを信じて進むのみ!
さぁ改めて。
お前をぶっ倒すぞ、光雄ッ!!
いわゆる04環境です。
光雄君と戦わせようと思ったらギャンブルデッキだと思いますが、それじゃ面白くないと思いました。
ギャンブルデッキを期待していた人はごめんなさい。