鬼子   作:なんばノア

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第二章 祓魔来客
file1.日常


滲む風景に溶け込めない蛍光色。

己以外全てを跳ね除け我を主張する(さが)からか、この曖昧な世界に溶け込むことが出来ない。ソレは世界の異端物(ホコリ)となる。

形有ればソレは存在し、ソレ有れば形を繕う。

この因果は何者にも阻まれることのない一方通行(ストレイト ライン)

眠ることにすら意味を見出せない不死の肉体(カラダ)

生に喜びなど皆無。全てが当たり前。変化の無い世界と自分。―――あぁ、退屈極まりない。まるで案山子(カカシ)だ。

 

――――決して動かない時間を抱え、

 

逃れられぬ運命を背負い、

 

行き先も未だ掴めぬまま、

 

世界の片隅で中心に立つ。

 

不動を復す()の理を、各々脳裏に焼き付けよ。行先は未だ知れず、

理解の及ばぬ未踏の果てへ―――。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二章、「祓魔来客(フツマライキャク)」――――――――

 

 

 

 

 

 

 

夏休みが始まって早くも4日。

いや、早くもではない。私にとってこの4日は内容が濃すぎた。

とても、とても長く感じれる。本当は2週間程経過しているのではないか―――と、思えてくる程に。

しかし、現実は事実だけを肯定する。

日めくりカレンダーは7月24日を表示し、テレビを付けてもそう。

「はぁ、」

無意識ではあるが口から零れたため息。

何故かは言わずもがな。夏休みとはいえ、朝とは憂鬱なモノだ。それに加え、この度し難い現実。特に昨日は最悪だった。そして―――、

「どうしたのさ、カオ。ため息なんて漏らして」

いや、その話は今は置いておこう。

「いや、昨日のアレが・・・ね」

 

―――一昨日。ブラハムと私は福山城で、数日前まで私たちの担任だった勝又先生、本名をルー=ウェステル・シャッテン・ヴラゴ。死徒と対峙した。一昨日の戦いは私たちの勝利。しかし、すんでのところで先生を逃がしてしまった。私たちは昨日、朝から捜索をした。主に城を周辺に、近くを散策した。

しかし、彼を見つけることは出来なかった。

そして、思わぬ形で先生は発見された。

朝の報道ニュース、芸術文化ホールの下。無残な死体が全国放送でテレビに流れたのだ。

無論。見逃すはずもなく、ソレは私たちの目に止まった。

 

「まさか、芸術文化ホールで発見とはねぇ。アレは驚いたし、まだ謎が残っている」

「謎?」

「疑問に思わない?ヤツは死徒。日光を浴びれば確かに滅びるだろうけど、明らかに死に方が違うように思える。テレビ越しだから正確な判断がつかないけど、明らかに誰かの手による死だよアレは」

誰かの手による―――とは、私たち以外にも吸血鬼を追っている人間が居たという事だ。

「私たち以外に吸血鬼を追う人間、・・・そんな人居るかなぁ」

「そりゃ居るよ。その手の専門、聖堂教会の連中とかね。あとは福山の霊脈の管理者。一昨日の無断結界展開は頭に来ただろうし・・・いや、でも彼女の手によるものならもっとこう―――」

一昨日から思っていた疑問なのだが、聞くタイミングが無く、今まで保留になっていた事がある。

「ねぇ、霊脈とか、管理者とか、何?」

ふと、感じた素朴な疑問だ。

丁度、ブラハムが朝ごはんを作り終えた。

「さ、召し上がれ」

本日の朝食はシンプル且つ理想的。

目玉焼きにウィンナー、その隣にはサラダと。なんとも朝食らしい朝食のメニューだ。

そして、先程から臭っていた香ばしくも甘やかな、えも言えぬいい匂い。昨日仕込んでいたフレンチトーストだ。

「いただきます」

切り分けたトーストを1口。そこで、私の世界は変わった。

「―――!」

表面は軽く焦げ目を残しており、しかしながらそれがまた絶妙な香ばしさと噛みごたえを両立させた、なんとも言えぬ融合性。

外は弱めながらサックリとしており、その反面内側はフワッフワ。中までバターと卵の風味が行き届いており、上にトッピングされたメイプルシロップや砂糖がそれを更に引き立てる。

あぁ、ダメだ。こんなフレンチトーストを知ってしまったら2度とフレンチトーストなど作れない。

「さっきの話―――」

「ん?」

ブラハムが喋り始めた。

「や、食べながらでいいから。

霊脈、管理の説明をさせて貰うよ」

「霊脈ってのは所謂地脈ってヤツでね。その土地の霊力の強さを表したモノなのさ。

土地の霊力が強ければ強いほど、その土地での大規模な魔術的儀式を可能とする。それこそ、魔法を発動できるほどにね?そして、この福山はトンデモなく霊力が強い、とても優れた霊脈地だ。これ程の霊脈地は、僕の知りうる限り日本には4つ程しか無いだろうね。その強い霊脈を管理し守護しているのが管理者」

「4つ・・・?」

「うん。4つまず一つ目はアオザキの管理する『三咲』。二つ目はトオサカの『冬木』。三つ目は『京都』なんだけど、ここがまた複雑でね。土地の管理を担っているのがナカジョウ。そして土地の、霊脈の栓として、その守護を担うのがツチミカド。それと、協会」

「―――協会?」

「あぁ、大きく三つの部門から形成された魔術師たちの自衛管理団体。それが、魔術協会。」

魔術協会―――。ふむ、

「そして、最後にここ、『福山』。どれもコレも優れた霊脈地だが、三咲は別格。アソコは日本で唯一魔法の起動を可能とする場所だ」

―――話を聞けば聞くほど、新しい疑問が生まれるのだが、これは必然だろうか。

「魔法と魔術ってどう違うの?なんか、私から見たらどっちも同じような気がしてならないんだけど・・・」

「そうだね。確かに、傍から見たらちょっとした魔術でも魔法の様に見えてしまうんだろうね。けど、魔術世界ではその違いがハッキリと区分されている。魔術。とは、人為的な神秘の模倣。対して、魔法とは神秘そのもの。いや、冗談抜きで魔法は誰にでも使える代物じゃない。紛うことなき神秘を人の身で具現するんだ、それはそんじょそこらの霊脈地では起動することは不可能だろう。現在正式に魔法として認定されている奇跡は僅か5つなんだけど―――もっと詳しく聞きたい?」

「いや、いい。多分難しくて理解出来ない」

クスクスと微笑みブラハムは話すのをやめた。

この土地の管理者って、どんな魔術師なんだろう―――。

 

 

 

 

□ ■

 

 

 

 

「あー、美味い。」

公園のベンチにふんぞり返ったカソック姿の男。片手には缶ビール。

真っ昼間からアルコール飲料を片手に公園で時間を過ごすその様は、さながらダメ人間のお手本と言えよう。

「そこのダメ人間。仕事は終わったんですか?」

突如目の前に降っておりた、これまたカソック姿の女。

「報告だろ?面倒くせぇからやんねぇよ」

「バカ言ってないでさっさと仕事済ませて下さい。先輩」

そう吐き捨て、男がふんぞり返っているベンチを足で蹴り倒した。

「痛っ!―――お前さぁ、上司に向かってソレは無いんじゃない?フウヤ君?」

「でしたらもっとしゃんとして下さい。確かに先輩の戦闘技術は卓越してますが、それ以外の仕事がからっきしなら全くの無能です。」

「はっ?無能?この俺が!?」

「それ以外での適切な表現が見つかりません。」

男は静かに立ち上がり、盛大に被った土埃をはらいながら倒れたベンチを元に戻す。

「いいんだよ俺は。書類仕事やその他雑務はこなせない。無理。だから、お前が居るんだろ?」

「それはそうですが、向上の努力くらいはしてください。このままでは身がいくらあっても足りません。」

「いやいや、お前はお前が思ってる以上に優秀な人間だよ?」

手に握った缶ビールを最後まで飲み干した後、空いたそれを握り潰す。そして、ゴミ箱へと放った。見事1発ナイスシュート。丸め放ったそれは綺麗にゴミ箱へと吸い込まれた。

「うっし!」

そんな馬鹿げた事で喜んでいる様はまるで子供。男は容姿も童顔で、よく子供と間違われるが、実の年齢は100をゆうに超えている。人ですらない人、この男の同僚は大凡人外に相当する類なのだが、この男はその中でもまた特別。この呪いが身体を蝕む限り、男の時は止まったままなのだから。

 

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