ラブライブ!サンシャイン!!×仮面ライダードライブサーガ 仮面ライダーソニック   作:MasterTree

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書きたい時に書くそれが自分流。
果南誕生日記念SS!
久しぶりの隼斗×果南SSです!!

時系列上ちょっと未来になります。



果南誕生日記念SS 星の海の下で

 

水面に身を預け、1人空を見上げてみる。

 

そこに広がるもう一つの海。

数多の輝きが生まれては消える、無限に広がる星の海。

 

そんな────近くて遠いこの空。

 

 

「This wonderful night sky…独り占めできんのはここに住んでる人の特権だよな…そう思わない?姉ちゃん」

 

 

「そうだね。ところで隼斗……」

 

「なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで変身してんの?」

 

少女─松浦果南が彼に問う。

 

その青年──天城隼斗は、何故か青い装甲に身を包み…仮面ライダーとしての姿でいた。

 

「ふと思ってさ。昔姉ちゃん言ってたでしょ?この季節は空気が澄んでるから星が綺麗だって。それなら海に入りながら星を見れたら最高じゃない?って思って…けどさぁこの時期の海って寒いじゃん?しかも濡れるじゃん?んで…思いついた方法が…」

 

「変身してぷかぷかしながら星を見る、と」

 

「そゆこと」

 

 

能天気にそう言う隼斗の言葉に思わず笑ってしまう果南。

いつも自分達を守り戦う為に纏う鎧をあろうことかこの青年は海に入りながら星を見る為に使っているのだから。

 

 

 

「そんな笑わなくても…」

 

「ごめんごめん!けど、それ本当によく見えるの?」

 

「このゴーグル部分を通して見ると結構よく見えるよ?姉ちゃんも見てみる?」

 

「でも、そのベルトって隼斗にしか使えないんでしょ?」

 

「あ、そうだった…けどプログラム書き換えればできなくも…いや、今からじゃめっちゃ時間かかるわ。ごめん姉ちゃん、忘れて」

 

「あぁ、そういうのあるんだね…」

 

 

「まぁ…全部が終わったら俺の見てた景色を姉ちゃんにも体験させてあげられるかもだし!それよりほら、始めよう!」

 

「そうだね!今日は天体観測するんだった!」

 

水面から飛び上がり、シグナルバイクを抜き取って変身を解除。

桟橋の上に着地する。

 

 

《オツカーレ!》

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「ところで望遠鏡は?」

 

「あるよ!もちろん隼斗のも!」

 

「久しぶりだな〜昔使ってたのまだあったなんて…!」

 

「ずっとしまっておいたからね。まだ使えるかな…」

 

ピント合わせをしながら角度などの調整を行う2人。

 

「ok…俺できたよ!姉ちゃんは?」

 

「待って…うーんこれがこうだから…」

 

「ちょっと貸して」

 

「あ…」

 

そう言うと隼斗は優しくポンと果南の肩を押して退かし、レンズや角度などを見始めた。

 

「うっわかなりズレてるよ姉ちゃんなにしてんのさ…」

 

「うるさいなぁ…しょうがないでしょ?すっごい久しぶりなんだから…」

 

「まー待ってなさいって!俺に任せてよ」

 

 

そう言って果南の分も調整を始める隼斗。

果南はその間、彼の横顔をじっと見ていた。

 

キリッとした表情、しっかりとした体つき。

そして高くなった背…まあ、こちらはやっと果南を追い越すかどうかという所なのだが。

 

 

果南の記憶にある隼斗は、幼い頃の彼が色濃く残っている。

 

幼少期から千歌や自分達との付き合いの方が長く、同性の友達との関わりが少なかった故かいじめられ、いつも泣いていた彼。

 

自分に守られていた────あんなに弱かった男の子がいつの間にやらとても頼もしくなり、今では自分や仲間達を守る側になり、しかも正義のヒーローをしている。

 

留学中で全く会わなかった期間があったとはいえここまで変わるとは『男子、三日会わざれば刮目してみよ』とは、よく言ったものである。

 

 

…大きくなったなぁ

 

 

 

「なんか言った?」

 

 

「なんでもなーい!」

 

「?…まあいいや。ほら、できたよ!」

 

「ん、ありがと♪」

 

 

調整を終えた望遠鏡を2人で覗く。

冬は四季の中でも星が観やすい時期であり、幼い頃は隼斗の父が天文学者なこともあってか家族ぐるみでよく天体観測をしたものだがこうして2人きりで観るのは初めてである。

 

「あ、オリオン座!」

 

「冬じゃ代表的な星座だね。望遠鏡がなくても観ようと思えば観えるし」

 

「あ、そうだ姉ちゃん!オリオン座がなんで冬に観えるかって知ってる?」

 

「オリオンが自分に倒せない獲物はいない!なんて言ったら神様が怒って、サソリをけしかけたらそのサソリに刺されて死んだ…それでサソリと一緒に天に上げられて星座になったけど、サソリが苦手でそれから逃げる為に冬に観えるようになった…だっけ?」

 

That’s correct!(正解!)まああくまで伝説の1つだけどね」

 

「隼斗のお父さんが聞かせてくれたからね」

 

「父さん星座関係なら神話も割と知ってるからね。そうだ、オリオン座といえばもう一つ神話があったな…」

 

「もう一つ…えっと…どんな話だっけ?」

 

 

「俺覚えてるよ!えっとね───」

 

頭の中にあった知識を自慢げに話そうとして

ふと思いとどまった。

 

オリオン座にまつわるもう一つの神話。

 

 

 

 

オリオンとアルテミス。

2人は互いに愛し合い結ばれるはずだった。

しかし2人の愛は悲劇的な結末を迎えることとなる───

 

アルテミスの兄 アポロンはオリオンとアルテミスが結ばれることをよしとしなかった。

 

海から出ていたオリオンの頭を、黄金の岩と偽りアポロンはそれをアルテミスに射らせた。

 

何も知らないアルテミスは矢を放ち、結果的にオリオンはその矢によって命を落とした。

 

そのことを酷く悲しんだアルテミスは、大神ゼウスに頼み彼を星座として夜空に上げた─

 

これがもう一つの結末である。

 

愛しあい、幸せだったはずなのに…理不尽な引き裂かれ方をした2人。

幼い頃にこの話を聞いた時はなんとも思わなかったが…今思うととても悲しく、そして何よりアポロンに対して怒りが湧いてくる。

まあいもしない神様に怒っても意味はないのだが……

 

 

だから俺は────この話が嫌いだ。

 

 

「……隼斗?」

 

 

「ううん、なんでもない!この話は…話さない方がいいかなって」

 

 

「話したくないくらいの内容だったの?」

 

 

「まあね。…自分がそんな目に遭ったら嫌だって思うくらいには…」

 

つい暗い表情になってしまう。

ダメだな…せっかく楽しんでいたのに、こうどうでもいいことで無駄に考えて……

 

でも───

 

もしも自分が、最期にそんな悲劇的な結末を迎えることになってしまったら…

 

果南姉ちゃんに殺される…いやいや考えたくもない。

ってか姉ちゃんはそんなこと絶対にしない!

 

 

 

だが───もし予想だにしない何かによって姉ちゃんと引き離されたら…

 

 

「隼斗?」

 

 

「…嫌だ」

 

 

ぎゅっと果南の上着の袖が掴まれる。

その手の主──隼斗は震えており俯いたまままるで小さな子供のように怯えていた。

 

「どうしたの隼斗?」

 

 

「姉ちゃんと離れ離れになりたくないよ…俺、ずっとずっと一緒にいたい…!」

 

「隼斗…」

 

3月が過ぎれば、果南達は浦の星を卒業。

果南はダイビング資格取得のため留学する。

永遠…とまでは行かずともまたしばらく別れることになってしまう。

 

隼斗は分かっている。

自分の大切な人が選んだ道なら、それを応援してやるのが自分の役目なのだと。

 

だが──もしもそのたった一度の別れが何かの拍子に“永遠“の別れになってしまったらと思うと…隼斗はとてつもない恐怖に襲われてしまっていた。

 

 

「姉ちゃん……いなくならないで……」

 

ポロポロとこぼれ落ちる涙。

果南の前で我慢しなくてはいけないのに、拭えど拭えど溢れてくる。

 

 

 

だが、それを堰き止めるかのように彼の体を優しい温もりが包んだ。

 

力強くない、むしろ柔らかな感覚。

果南が隼斗を抱き寄せていた。

 

 

「大丈夫。大丈夫だよ……」

 

「姉ちゃん……」

 

まるで小さな子供をあやすように、優しく、ゆっくりと果南は彼の背中を摩っていた。

 

「隼斗が何を考えてたのかは分からないけど…心配しないで。私はここにいるよ」

 

「・・・」

 

「隼斗が戻ってきて一年で今度は私が海外に行くことになっちゃったけど…私は大丈夫。隼斗が生きてる間は、私もちゃーんと生きてるから。私を守り続けてくれる、ヒーローがいるんだもん」

 

「姉ちゃん……」

 

「だからほら、顔あげて。せっかくカッコよくなったのに台無しだぞ?」

 

頬に手を当て、隼斗の顔を上に向かせる。

涙の流れた跡と赤くなった目元が彼の内の悲しみを物語っていたが、服の袖で目を擦ると、また笑顔を見せた。

 

 

「…うん!!」

 

 

「ん、よし!さ、続けよう!」

 

 

「あ、ちょっと待ってて!」

 

すると隼斗はお気に入りのジャケットのフードを漁り始める。

色々と物が飛び出してきてはまた再収納されていき、やがて1つの箱が飛び出てきた。

 

青い箱に緑のリボンでラッピングがされている。

 

「はいコレ!誕生日おめでとう果南姉ちゃん!!くだらねえ話してたからすっかり忘れて渡しそびれるところだった!」

 

「わぁ…!開けてもいい?」

 

「もちろん!」

 

箱を開けると、そこには1つワイドバングルが入っていた。

水色ベースで黄緑色のラインが入っており、その中心には蒼く輝く宝石のような石が埋め込まれている。

 

「おお…!ブレスレット…?」

 

「そう!色々考えたんだけどさ…結局これに決めた。実は俺の手作りなんだぜ?」

 

「隼斗が作ったの!?」

 

「ま、ライダーシステムに比べりゃチョチョイのチョイよ。博士に協力してもらって防水加工とか防腐加工もしてあるから、海で泳ぐ時でもno problem!」

 

「すっごい!嬉しいよ、ありがとう隼斗!」

 

「どういたしまして!あ、ちなみに……」

 

隼斗が右腕の袖を捲ると、内側からはそれと同じ物が出てきた。

 

「あ、お揃い!」

 

「そう!と言ってもこっちは試作品だから…まあでもお揃いなことに変わりないから!」

 

 

「これならいつでも一緒、だね!」

 

「うん!あぁそうだ、もう一つ…姉ちゃん、すごい言うの後になっちゃったけど今言うね」

 

「まだ何かあるの?」

 

「まあね!……果南姉ちゃん」

 

 

 

 

 

 

生まれてきてくれてありがとう!

 

俺と出会ってくれてありがとう!!

 

────俺を守ってくれて、ありがとう。

 

 

HAPPY BIRTHDAY!松浦果南姉ちゃん!!

 

 

誕生日特別編 終わり。

 

 

 

※後日、この事を言いふらした果南によって隼斗はしばらくイジられることになるのだが、それはまた別のお話。

 




神話にまつわる恋愛ごとって大抵理不尽な悲劇なの本当心にきますよね…特に今回の題材としても少し扱ったオリオンとアルテミスなんてこれ調べた時マジで心に来ました。

大切な誰かとの別れ。それは遠い未来かもしれませんし、もしかしたら明日、明後日、すぐ次の瞬間かもしれません。
もしその『ある日』が突然来てしまったら…
この話ではそれに怯える隼斗を入れてみました。

今回はここまでです。
次からはまたコラボ編になると思います!そちらも是非お楽しみに!!


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