IS【Three Heroes ~白・黒・灰~】   作:オブライエン

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 再連載第1弾

 こんどこそ完結できるように頑張ります!!


Prologue  Black

「――ちら、こちら―――――機関、緊急事態が発生した!ISの起動実験に失敗、研究用のジェネレーターが暴走した、このままではジェネレーターがオーバーロードを起こしてしまう!こちらで何とか制御を試みているが、長くは持たない、誰かこの通信を聞いている者がいれば救援を求む!至急、救援を――」

 

 

 

 以上が、とある研究機関の残した最後の通信記録である。

 その機関は、ISが世界に普及した頃から、ロシアの極地に確かに存在していた。

大規模ではなかったが高い技術レベルを持っていた機関である。彼らの目的は、IS技術の更なる発展や、適応者の育成とはまた少し違っていた。高い技術力を結集させ、戦場にも即時適応するハイレベルな適応者を造り出すということに主眼が置かれていたのである。一体でも十分、二体や三体輩出されれば大成功といった塩梅だった。

 

 その研究機関は、《ラボ・アスピナ》という。

 

 アスピナは、《A》から《Z》までの26人の被験体を揃え、データを用いたシュミレーションを行わせていた。単純なシミュレーションだ。あらゆる戦場、あらゆるシチュエーションを再現しておきながら、最終目的は一つ。敵性存在と設定された。たった一機のISを撃破すること。

 しかしアスピナは、先ほどの通信を最後に、ある日突然地図上から姿を消すこととなる。

 

 原因はIS用の新型ジェネレーターの暴走による爆発。研究員と被検体は全員死亡し、周囲数キロに高濃度の汚染物質が撒き散らされ、爆心地付近は今でもA級汚染地帯とされている。ISの起動実験中の事故から起こった悲劇とされるが、数少ない記録を紐解いてもその記述に幾つかの疑問点が残る。

 

 

 

 プロジェクトの核となったISは、コードネームを《アンサング》といった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 Prologue  Black

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――中国、上海。

 アジアでも指折りの大都市であるため貧富の格差が拡大の一過を辿っており上海の一部はスラム化しているが、今も大企業の超高層ビルが増え続けている。その中に一際異彩を放つビルがあった。                                        

建物の表面が強化ガラスか人工大理石の白いパネルで覆われた、六〇階立ての白亜の城だ。

一人の若いビジネスマンが、異彩を放つビル――「上海国際出口汽車貿易公司」の本社ビルを訪れていた。出口とは中国語で「輸出」のこと。汽車は「自動車」にあたる。つまり、国際的な自動車メーカーだ。

 正面玄関から本社ビルの中に入ると、イベントホールのようなロビーが広がっていた。巨大な柱が規則的にならんでいる。ロビーは五階まで吹き向けで、エスカレーターが四基、エレベーター三十二基、移動のため用意されている。

 ロビーの受付でアポイトメントを確認してから、そのビジネスマンの青年はエレベーターに乗り込んだ。

 地下五階に下りると、ドアの外で一人も中国人男性が待ち構えていた。

 

「お待ちしておりました。王(ワン)明(ミン)と申します」

「どうも、如月修一郎です」

「今回は当社の『特別な商品』をチェックしていただく、ということで」

「はい、よろしくお願いします」

 

 ビジネスマンの青年――如月――はメガネをしていた。捕食獣の目をした、精悍な顔つき。山猫を彷彿させる均整のとれた筋肉質の体型。ブランド物のスーツ姿で、左手にアタッシュケースを抱えている。

 王明の案内で、如月は上海国際出口汽車貿易公司本社ビルの地下五階を歩く。華やかだったロビーとは打って変わって、地下は監獄のような雰囲気だ。

 

「如月さんは日本国内の大手軍事兵器メーカーの役員だとか」

「ええ。ある目的のためにそちらの『特別な商品』が必要に」

 

 ちなみに二人の会話は英語だ。

 王明の足が、長い廊下の突き当たりで止まった。分厚い鉄の扉の前だ。扉の左右に立っているのはただの警備員ではなかった。全長2・5メートルほどの大きさの金属の塊だった。

青と灰色の都市迷彩を施された機体は、それぞれ二本の手足を持ったロボットのような『装甲』で、指も五本ついている。しかし、人間らしいかと言われれば、答えはノーだ。頭にあたる部分が巨大で、膨らんだ胸部装甲もあるせいか、まるでドラム缶を被っているようにも見えた。首はなく、胸に直接固定された頭部が回転している。

 

「ここです」

「警備員の方が最新の駆動(パワード)鎧(スーツ)を装備とは、随分と厳重ですね」

 

 如月の言葉に王明は苦笑した。

 

「いえ、お恥ずかしい。当社のサイドビジネスは何かと敵を作り易いのでね、用心は欠かせない」

「大丈夫ですよ。商売相手は慎重な方がいい」

「ボディテックをしますので、此方に」

 

 と、駆動鎧を纏った二人の警備兵が如月に近寄った。駆動鎧の高感度マニュピレーターがジャッケットの裏側はもちろん尻のポケットやズボンの裾の裏側までまさぐる。

 

「では、改めて当社のサイドビジネス――『特別な商品』について説明させていただきます」王明は事務的な口調で言う。「我が中華人民共和国が行っている人口規制政策についてはご存知ですよね?」

「ええ。日本では『一人っ子政策』として有名な計画出産政策ですね。多少の例外はありますが原則的に一人の女性が産む子供の数を一人にする政策。中国の人口爆発を規制する為に制定された」

「その通り。満点の回答ですよ」

 

 そう言った、王明はカードキーで鉄の扉を開けた。

 如月もボディチェックを終え、警備員に一礼してから王明と共に地下の大部屋に入っていく。

 

「……一人っ子政策によって、中国の人口や出生率は理想的な数字に落ち着きつつある。しかし同時に様々な問題も生み出してしまった。その一つが――黒孩子(ヘイハイズ)――『黒い子供達問題』」

 

 部屋の中には、大量の檻が並んでいた。鉄格子を組み合わせただけの簡素だが頑丈な檻に、数十人の子供達が詰め込められている。コンテナの様に積み上げられた折の数は一〇〇を越える。つまり、この部屋は商品の倉庫なのだ。

「これが我が社の特別な商品――――黒い子供達」

 

 子供達は皆怯えた目をしていた。

 

「一人っ子政策下では、もし二人目の子供を産んだら捨てるか、政府に隠して育てなければいけない。また、跡継ぎが欲しい家は男子か女子、今の世は家によってまちまちですが目当ての性別の子供が産まれる子供を捨て続ける。そうやって、戸籍を持たない――――つまりは最初からいなかったことにされた子供たちが増えていく。それが黒い子供達」

「…………」

 

 子供達が助けを求めるような視線を如月は無表情で受け止める。

 王明は続ける。

 

「黒い子供達は学校教育や医療を受けることはできない。なにしろ戸籍上は『存在していない』わけですから。そんな子供達は、人身売買にはもってこいだ。誘拐しても、殺しても、何をしても問題にはならない。ここにいるのは社員が誘拐、もしくは親からはした金で買い取った『商品』です。存在しない彼らは警察も捜さない。奴隷にするもよし、臓器のストックにするもよし、人体実験に使うもよし――ISの実験に使うなら女子の方は適性検査をしているのでリストで確認しますか? もちろん適性が高い方が値は張りますが」

「はぁ……」

 

 如月が溜息をついた。それに含まれていた呆れのようなニュアンスに王明は気付かなかった。

 

「中国政府高官に賄賂を聞かせていますから出国は問題ありません。安全なルー

トがありますので、世界中の何処にでもお届けできます」王明はセールスマン風の媚びた愛想笑いを浮かべる。「――さて、ここから先はビジネスです。如月さんの会社はどの程度お買い上げするおつもりで?」

「全員(・・)だ(・)」

 

 如月は何処か気だるげに言った。

 

「は?」

「ここにいるヤツ全員だ」

「かなりの額になりますが、大丈夫ですか?」

「金なら問題ねェよ。はなッから1セントも払う気ねェからなァ」

「……な!」

 

 如月の変調を察した王明が指を鳴らすと、出入り口の扉が開いて、さっきボデ

ィチェックをしてきたものを含めた六機の駆動鎧が部屋に雪崩れ込んでくる。

 四メートルほどの距離で、駆動鎧たちは如月に対シェルター用ショットガンの銃口を向けた。しかし、如月は気だるげな表情を崩さない。

 銃口を向けられても震えるどころか眉一つ動かさず、冷や汗も一切かいていない。

 

「王明。テメェはここまでで三つミスをしてる」

「なんだと」

「まず、オレがかけてるこのメガネは超小型ビデオカメラを内蔵しててな、テメェの悪事の動かぬ証拠ッてわけだ」

 

 メガネを外して、スーツの胸ポケットにしまう。

 

「次に、オレは如月修一郎じャねェ。如月修一郎てのはオレの上司が用意した架空の存在だ、実際には存在しねェんだよ」

「じゃあ、お前は誰だ?ICPOの犬か?」

 

 王明の問いに如月修一郎と名乗った男は自分を含めたこの場にいる者全てを嘲るように嗤った。

 

 

「上司の言葉を借りるなら、我等は過去の亡霊であり世界の影。悪の秘密結社『亡国機業(ファントム・タスク)』

オレはそれのエージェント、アンサングだ」

 

 

「亡国機業? テロ屋風情が警察の真似ごとか?」

「テメェはやり過ぎたんだとよ。一定の国に多量の優れたIS適性者を供給されるのはうちにとっても問題らしい」

 

 国家に寄らず、思想を持たず、信仰は無く、民族にも還らない国際テロ組織――亡国機業(ファントム・タスク)。

 目的不明、存在も不確か、その規模もわからない。無軌道にあらゆる国家にテロ活動を行なう謎の犯罪組織。アンサングはその亡国機業が誇る精鋭揃いの戦闘チームの内の一人だ。

 

「それがどうした……」王明が苛立ったように舌打ち。「そのメガネを処分すればいいだけの話だろう。そしてお前を殺す」

「いいか、テメェが犯した三つ目のミスだ。これが決定的だッたな――テメェは亡国機業を舐め過ぎだ」

 

 ざわり、と場に緊張が満ちた。動こうとしないアンサングに敵意が突き刺さる。いかに正体不明の組織のエージェントであろうと生身で四機の駆動鎧の狙われて無事で済むはずが無い。王明はごくりと生唾を飲み込み、決心して全機に攻撃命令を、

 

 

 

 

 

『遅ェよ』

 

 

 

 

 

 アンサングの姿が、消えた。

 無音。

 速いなどというものではない。始めからそこに居なかったのではなかったのかと思うほど、その動きは怪物的だった。思い出したように割れる床のタイルだけが、その場にアンサングがいたこと示している。

 割れたタイルの欠片が床に落ちて音を立てた頃にはもう、アンサングの展開した光の刃が六機の駆動鎧を余す事なく標準していた。

無数の切断音は、アンサングが描いた斬撃数に反して一つに重なって聞こえた。 

 まばたき一回分の猶予すらなかった。吹き抜けた疾風はその痕跡として、凄まじい風と轟音だけを残し、既にその殲滅行為を完了していた。ほぼ時間差ゼロで、ただ一度の功勢で。

 二機の駆動鎧が何もできずに細切れにされ、四機の駆動鎧の首と胴体が切り離された。一秒未満の間に鉄くずと化した巨体が芸術的な切断面をさらして崩れ落ち、それから数瞬遅れて空中に取り残された頭が次々と落下して転がった。

 初動から完殺まで人間ごときの目では何一つ見えない。それどころか機械の高感度センサーであっても、アンサングの行なった機動が感知出来なかったに違いない。

 

 結果として王明が見えたのは蒼白い光が黒い化け物の手の中に納まっていくところだけだった。

 黒。真っ黒。全ての色を呑み込む艶消しの黒。夜闇を切り取ったかのような漆黒の全身装甲を纏ったアンサングが無数の複眼で静かに狼狽した超明を見ていた。

 

「馬鹿な…………ISなのか……」

 

 猛禽を連想させる鋭利な頭部を埋め尽くす月光色の複眼、あらゆる無駄を極限まで削り取った細く鋭いエッジの効いた鋭角的な装甲。それは人ではなく、なにか悪夢から這い出てきたような、ヒトとはかけ離れた化け物のような姿だった。

「ありえない!何故、男が、ISを使えているっ!  ?」

 

 世界を変えた最強の兵器。マルチフォーム・スーツ【インフィニット・ストラトス】通称ISは最大の欠陥として女性にしか扱えないという問題を抱えている。世界中が天文学的な資金をかけて研究を続けているが今だにその原因を掴めていない。だからこそ、男性のIS操縦者などこの世に存在するはずがないのだ。

 

「なんだ!? なんなんだおま――」

 

 言葉はそこで途切れた。アンサングが影のように動いたと思った瞬間、王明の身体を衝撃が襲った。アンサングが超明の胸倉を掴み、捻り上げたのだ。息が詰まり、王明はたまらず「かっ」と息を漏らす。

 

「テメェに質問する権利はねェ。オレの質問にだけ答えろ」

 無数の複眼がぎょろりと王明を睨みつける。自分に向けられた無機質な殺意に王明は「ヒッ」と短い悲鳴を上げた。

 

「『第四世代IS』、『プロジェクト語られぬ者(アンサング)』、『NO.2《B》』、『バティ』。何でもいい、この単語にどれか聞き覚えはあるか?」

「し、知らないっ! 聞いた事も無い!!」

「…………」

 

 宙吊りの状態でジタバタと暴れながら「助けてくれ」、「なんでもする」などと喚き散らす王明を数秒ほど観察した後アンサングは脱力し、胸倉から手を離した。無様に尻餅をつく王明。

 

「……また外れか。スコールのヤロウ、適当な情報よこしやがッて」

「た、頼む、助けてくれ! 人身売買からは手を引く、これからはアンタ等の手助けをしてもいい! だから見逃してくれっ!!」

「あ?」

 

足元で跪き、見苦しい命乞いを続ける王明にアンサングは心底どうでもよさそうに告げる。

 

「安心しろ。別にこの会社を潰そうだとか皆殺しにしようなんて考えちャいねェからよ。ただちョッと頭を挿げ替えて利用させて貰うだけだ」

「え、それって――」

 

 言い終えることは許されなかった。

 ドゴォ!!!!! と。

 脚部スラスターを全開にして放たれた音速を超えた神速の蹴りが王明の胸の中心に叩き込まれた。

 吹き飛ぶなんて次元ではなかった。

 吹き抜ける、もしくは塗りたくる。その場で王明の全身はケチャップを詰めた水風船のように破裂し、赤黒い何かが通路の壁一面へと叩きつけられた。

 

「フンッ」

 

 アンサングは何事もなかったように足を振って足についた血糊を落とし、通信の回線を開いた。相手は彼をここに送り込んだ上司だ。

 

「スコールか? 言われた通り悪事の証拠を押さえて王明は消したぜ」

『お疲れ様。それで、貴方の【探し者】の方はどうだったの?』

 

 通信の向こうから返ってきた清流のように透き通った若い女の声だ。アンサングは苛ついた調子で答える。

 

「完全な空振りだ。何が裏に精通したブローカーなら実験体の情報を知っているかも知れない、だ。黒い子ども達しか扱ッてねェじャねェか」

『随分と派手に売買してたからソッチの方にもツテがあるかと思ったんだけど肩透かしだったみたいね』

「いい加減、手がかりの一つぐらい寄越しやがれ。オレがなんのために亡国機業に所属してると思ッてやがる」

『はいはい、分かってるわよ。じゃあ、帰ってきたらまたすぐに任務に出てもらうわよ』

「あん? そりャあ、どういう意味だ?」

 

 スコールの唐突な命令にアンサングは眉を潜めた。彼女の相手の都合を考えない身勝手さは何時もの事なのだが、流石に任務中に新たな任務を命じられるのは初めてだ。

 

『新しく調べないといけないことが出来たんだけど、それがどうも貴方の【探し物】にも関係してそうな案件なのよね』

「――んだと」

 

 アンサングの声の質が変わる。淡々として人間の声から、獲物の匂いを嗅ぎつけた餓えた獣のそれへと。スコールのため息が、通信から洩れた。

 

『相変わらずね……通信で話すようなことでもないから早く帰ってきなさい』

「了解、【ディザスター】で飛んで行くが構わねェな」

『ISでの移動は色々と目立つからやめて欲しいのだけれど……まぁいいわ。だけど、今の貴方は亡国機業のアンサングということは胆に命じておいてね。『プロジェクト語られぬ者』の【ジーク・キサラギ】さん?』

「――ッ」

 

 通信を強引に切る。その行動自体がスコールの下らない挑発に乗ってしまったことを意味する。そんな自分を恥じるように溜息を一つ吐いた所では彼は自分に向けられた視線に気がついた。

 視線の方に目をやると黒い子供たちがざわついていた。数人の子供はまるで神様でも崇めるような目で見てきてさえいた。王明と警備員達を倒したことで味方だとでも思われたのだろう。

 アンサング――ジークは心底面倒臭そうに深い深い溜息を吐き出した。

 

 自分は何故こうも変なところで甘いのだろうか。

 

「まず、オレにテメェらを助ける気はねェ。この後ICPOや武装警察――つっても分からねェか……簡単に言えば良い人達が助けに来るからがソイツらの言うことをちャんと聞いとけ」

 

 子供達全員に言い聞かせように中国語で告げる。すでに犯罪の証拠は手に入れた。この証拠を届ければ、ICPOと中国の武装警察が上海国際出口汽車貿易公司に突入し、一斉検挙と子供達の保護を行なう手はずになっている。そして、そうした浄化作業が終わった後、亡国機業に取り込む予定だ。なんのためにそんなことをするのかは末端であるジークは知らないし、別に知ろうとも思わない。

 

 

 それだけ伝えてジークは非常階段を使って一階まで上がる。その途中でけたましい警報が鳴り出した。誰かが王明達の死体を見つけたのだろう。ジークは気にも留めず登っていく。

 

 

 一階のロビーにたどり着くとシャッター降りて正面玄関はもちろんすべての出入り口が封鎖された。一般社員は一人の残っておらず、代わりに二十機以上の駆動鎧がジークを出迎えた。

 

「……」

 

ジークは脱力したようにだらりっと両腕を垂らす。両の掌に光の粒子が集い一つの形を成して行く。左手には片刃、渡りニメートルを超える黒塗りの野太刀、右手には二等辺三角形のような形状のアサルトライフルとなって手中に収まった。

 ガシャンッ! と、全ての駆動鎧が一斉にジークへと銃口を向ける。

 

「――どうせ同じ穴のムジナだ」

 

 今のジークの頭にあるのはスーコルが言っていた彼の【探し物】に関係する可能性がある新しい任務のことだけだ。【探し物】と【探し者】。彼はそれを見つけるために生きてきた。それを邪魔する――その情報を知るのを一秒でも遅らせるというなら、それは即ち彼の道を阻む敵だ。

 

「せいぜい恨めよ」

 

立ちふさがる者は全て斬って捨てる。そうした上で前に進む。ずっと昔に決めたことだ。

 

 

 

 

 

 

 それが彼の――亡国機業エージェント、コードネーム『アンサング』。IS【ディザスター】の専用操縦者。ジーク・キサラギの日常だ。

 

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